あすなろ日記別館小説部屋

18禁二次創作小説とオリジナルBL小説置き場です。

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HUNTER×HUNTER二次創作小説

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HUNTER×HUNTER「友情×愛情×恋情」

HUNTER×HUNTER部屋




 薄暗い地下室に鞭の音が鳴り響く。手枷足枷を嵌められて、

 鎖で壁に繋がれたキルアの虚ろな瞳には初めてできた

 友達との思い出が映っていた。生まれたままの姿で兄に

 鞭打たれる自分ではなく、夢の中の眩しい思い出だけを

 いつまでも見ていたいと願うように無邪気に明るく手を振る

 ゴンの残像を見つめていた。懐かしいと思うには数日しか

 過ぎていないのに、今ではもう昔の事のように懐かしかった。

 ゴンと共に笑い、戯れ、遊んだ日々がもう戻らないのかと

 思うと悲しかった。

 「キル。ゴンが会いに来たよ。試しの門を開けたそうだ。

 会いたいかい?」

 イルミが鞭打つ手を止めて、キルアに言った。ゴンの名を

 聞いて、正気に戻ったキルアはイルミの顔色をうかがうように

 大きな瞳で見つめたが、次の瞬間、諦めたように首を横に

 振った。そんなキルアを見て、イルミは

 「会いたいのなら、正直に言いなよ。キルはゴンが

 好きなんだろ?」

 と言った。

 「ち、違う。好きじゃない。」

 キルアは咄嗟に嘘をついた。

 「まだゴンが心配?自分の身を守る為にゴンを捨てたのにね。

 鎖に繋がれて鞭打たれても上の空でゴンの事を考えてる。

 罰を受け入れて反省しなければならない時間でさえもゴンが

 頭から離れないなんて、悪い子だ。俺はそんな悪い子に

 育てた覚えはないよ。人は自由を知ると欲深くなる。だから、

 自由を与えなかったのに、キルは自分の力で一時的にとはいえ

 自由を手に入れた。ミルキと母さんを刺してね。逃げた先で

 手に入れた自由はさぞかし楽しかっただろうね。開放的な

 気分を味わって、キルは何をした?セックスと殺人。そうだろ?

 人は皆、快楽を求める生き物だからね。でも、刹那的に生きても

 後悔するだけだよ。キルはゾルディック家から離れられない

 運命なのだから。俺とした約束覚えてる?」

 「お、覚えてるよ。」

 「それなら、いい。キルは俺だけのものだよ。」

 イルミがキルアの顎に手をかけ、そっと口づけした。

 舌を絡ませ、吸い上げながら、歯で唇の端を軽く噛んだ。

 「痛っ!?何するんだよ!?」

 「キルは悪い子だからお仕置きしないとね。」

 イルミはそう言うと、キルアの唇から流れる一滴の血を

 指ですくい取り、まるで紅をさすようにキルアの唇に塗った。


 「綺麗だよ。お化粧したお人形さんみたいだ。俺以外の他人に

 穢された唇は血で消毒しないとね。他にもゴンに触れられた

 場所全てを血に染めてあげようか?」

 恐怖した瞳を見開いて、怯えるキルアに

 「ふふふ・・・冗談だよ。キルは可愛いね。」

 と言って、イルミは満足そうに微笑んだ。

 「ゴンとは何回寝たの?正直に言ってごらん。」

 「・・・5回。いや、6回。」

 「ふ~ん。で、気持ち良かった?ゴンと俺どっちが良かった?」

 「・・・。」

 「誰にも指一本触れさせずに大事に育てたのにね。

 がっかりだよ。あんな子供のどこが良いのかな。寝た数だけ

 ゴンの指を切り落としてやろうか?」

 「兄貴。ごめん。俺が悪いんだ。お願いだから、ゴンには

 手を出さないでくれよ。」

 「キルはゴンの事が好きなんだね。分かったよ。ゴンには

 手を出さない。その代り、キルは罰を受けなきゃね。」

 イルミはそう言うと、高圧電流の機械を持ってきて、

 おびただしい数のコードがついたプラグを差し込み、コードの

 先端についた金属のクリップをキルアの手足の指全部に

 取り付けた。

 「電流。キルは好きだろ?この地下室の拷問器具は

 人体破壊するものばかり揃ってるけど、俺はドリルで

 穴開けたりとかって、好きじゃないんだ。電流が一番

 良いよね。キル。そうだ。胸にも付けてあげるね。」 

 イルミはキルアの胸の突起をぎゅっと摘まんで引っ張り、

 クリップで挟むと、こう言った。

 「可愛いよ。キル。次はどこに付けて欲しい?」

 「・・・。」

 「あ、間違えた。入れて欲しいだっけ?キルはここに入れて

 もらうのが好きだよね?」

 イルミはキルアの蕾を指で軽く突いた。

 「うぅ。」

 思わず呻いたキルアにイルミはクスッと笑って、指を抜くと、

 今度は長さ10センチ直径1センチの棒状の金属がついた

 コードの束を手に取り、ゆっくりと一本ずつキルアの体内に

 挿し入れた。


 「何本入れて欲しい?」

 5本入れて、裂けそうなくらいにいっぱいになったキルアに

 イルミが聞いた。

 「あぁ、あ、もうダメだ。兄貴。もう許して。」

 「まだ後1、2本は入りそうな気がするけど、肉が裂けたら

 可哀相だから、やめとこうかな。でも後1本だけ入れていい?

 ここじゃなくって、こっち。」

 イルミの指差した場所は尿道だった。

 「やだ!そこだけは勘弁してくれ!そんな太いの入らないよ。」

 「キル。我儘はダメだよ。今は罰を与えているんだからね。

 我慢しなさい。フフ・・・奥までは入れないから安心して。

 そうだなぁ。2センチくらい先っちょだけ入れてあげよう。

 それなら、我慢できるだろ?」

 イルミはそう言うと、有無を言わさず、手で掴んで先端を押し

 広げ、金属の棒を突き刺し、重みで外れてしまわないように

 コードをキルアの首に巻きつけ、垂直になるようにした。

 そして、約束通り2センチの深さで止めて、手を放した。

 「うわぁ・・・い、痛い。ああ・・・」

 痛がるキルアにイルミはこう言った。

 「キル。血は出てないから大丈夫だよ。大袈裟に騒がないで。

 それにしても、コードが余っちゃったね。本当の拷問だったら

 全部使って、口と耳や鼻の孔にも入れるけど、それをやると

 頭がイカれるから、キルにはしないであげるね。じゃ、今から

 電流を流すよ。心の準備は良いかい?」

 イルミは嬉しそうにニコニコと高圧電流の機械のスイッチを

 押した。


 「ああああ~!!うぅわあああ~!!」

 両胸と両手両足の爪先からと身体の中心から一気に電流が

 流れ込み、キルアは悲鳴を上げた。体内に深く挿し込まれた

 5本の金属は数分で熱を帯び、肉壁を焦がす恐れさえある。

 先端もチリチリと焼けるように痛い。常人では耐えられない

 痛みと苦しみがキルアを苛んだ。イルミは胸の飾りを軽く

 引っ張って、こう言った。

 「ビリビリって電流が身体を駆け巡る苦痛って、慣れると

 快感に変わるらしいよ。気持ち良いだろ?1時間もしたら、

 意識は飛んで、きっとハイになると思うよ。」

 「ああああ!!!」

 イルミは泣き叫ぶキルアの身体に触れ、先端に刺さった

 金属の棒を上下に動かした。何度も抜きかけては浅く挿し、

 透明な体液がキルアの先端から滲み出てくるのを見て、

 楽しんだ。そして、弄んだ後、抜き取り、首に巻かれたコードを

 グイッと引っ張って、キルアの根元に巻きつけた。

 「気持ち良い?キルがイクといけないから縛ってあげたよ。」

 「グッ・・・グォ・・・」

 下の方向に引っ張られて、コードが首に食い込んだキルアは

 声にならない呻きをあげた。

 「おっと、いけない。これでは首が締まってしまうね。」

 イルミは金属の棒がついた6本のコードのプラグを機械から

 抜いて、

 「落ちるのは、まだ早いよ。これからもっと楽しませてあげる。」

 と言った。そして、キルアの身体から5本の金属の棒を

 抜き取ると、自らのものを蕾に突き立てた。

 
 「あっ、ああ、あ、兄貴、ああ、あああ~」

 イルミに貫かれて、キルアは嬌声をあげた。

 「気持ち良い?久しぶりだものね。キルの身体に流れてる

 電流が俺の身体にも伝わってくるよ。こんなにヒクヒクさせて

 ・・・キルは本当に電流が好きだね。」

 イルミはキルアの耳元で囁くと、腰を激しく突き動かした。

 手足と胸についたクリップの電流はそのままキルアを苦しめ

 苛んでいた。

 「あ、ああ、ああ~」

 「キル。好きだよ。愛してる。キルはゴンと俺どっちが好き?」

 笑顔で見つめるイルミにキルアは切ない吐息を漏らしながら、

 こう言った。

 「ゴンは・・・友達で・・・兄貴は・・・兄貴だから・・・

 比べられない。」

 「ずるい答えだね。俺は肉親に対する愛情以上にキルを

 愛してるのに・・・キルは兄弟だから俺のこと好きなんだ。

 しかも、ゴンは友達だから寝たの?恋人じゃないんだ。」

 「そうだよ・・・初めてできた友達だから・・・俺が押し倒して

 ・・・俺のものにした。・・・ゴンは・・・俺と違って・・・

 何も知らない子供だったよ・・・」

 「普通の子はみんなそうだよ。キルは特別なんだ。6歳で

 天空闘技場に放り込まれるって聞いて、俺はキルを抱いた。

 親切な大人は子供に下心があるヤツだって教える為にね。

 実際にそういう大人が何人もいたろう?でも、キルは俺との

 約束を守って、2年間、誰とも寝なかった。俺は嬉しかったよ。

 絶対に俺を裏切らないって約束をキルが守ってくれたからね。

 キルが天空闘技場から帰って来た時、心の中で誓ったんだ。

 俺は一生、可愛い弟のキルだけを愛して、キル以外は

 抱かないって。」

 イルミは愛を誓う儀式のようにキルアに接吻した。


 「あ、兄貴・・・あっ、ああ、ああ~」

 イルミの愛に酔いしれるようにキルアは喘ぎながら絶頂に

 達した。そして、それと同時にイルミもキルアの中で果てた。

 「キル。愛してる。もう、どこにも行かないって誓ってくれ。」

 「兄貴。悪いけど、それは誓えない。俺は稼業を継ぎたくない

 んだ。だから、兄貴の傍にずっといるわけにはいかない。」

 「キル。ゾルディック家の人間は全員、暗殺者になるんだよ。

 それに、キルはもう立派な暗殺者だ。ハンターになりたいなら

 来年、またハンター試験を受けて良いよ。ライセンスカードは

 暗殺の役に立つからね。」

 「・・・。」

 「良い子だから。キルは俺の言う通りにしてればいいんだよ。」

 イルミはそっとキルアの頭を撫でた。しかし、キルアは

 強い意志を持った瞳でイルミを見つめて、こう言った。

 「俺は兄貴の人形じゃない。俺は敷かれたレールの上を歩く

 人生が嫌で、それを壊したくて家を出たんだ。兄貴のことは

 好きだけど、俺はまた家を出るよ。」

 「仕方のない子だね。勝手にしなさい。」

 イルミはキルアの頑固さに呆れたように溜息をついた。

 「もし、ゴンに捨てられたら、いつでも俺のとこに戻ってきな。

 俺の可愛いお人形さん。」

 「ありがとう。兄貴。」

 キルアはにっこりと微笑んだ。その屈託のない笑顔にイルミは
 
 苦笑した。キルアは愛も恋もまだわからない子供なのだ。

 希望に溢れる将来に向かって歩いて行きたいと願う幼い心

 だけで行動している。ただ、それを支える人間が兄から

 友達に変わっただけなのだ。大人になった時に愛というものが

 何か分かれば、それでいい。と、イルミは思った。イルミは

 最愛なる弟キルアに口づけした。人形はいつしか意志を持ち、

 人間になる。キルアにとっては身体を駆け巡る電流も痛みと

 快楽を与えてくれる媚薬に過ぎなかった。拷問道具が並ぶ

 地下室でマリオネットのように繋がれて吊るされている

 キルアはまさに闇の中で生きる人形だった。やがて、闇に

 光が訪れるようにゴンがやって来る。闇に染まっている

 イルミの心をキルアは傷つけたくなかった。愛を囁く抱擁は

 どんな媚薬よりも甘美な味がした。舌を絡ませ、イルミを

 受け入れ、闇に沈む人形のように再び抱かれながら、

 キルアは心の中で最愛の兄に別れを告げていた。


                          (完)



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HUNTER×HUNTER「愛欲×執着×盲愛」

HUNTER×HUNTER部屋



 「美しい。ゾクゾクするよ。」

 血に濡れたクロロを見て、ヒソカは興奮したようにニヤリと

 笑った。流れる河を失った峡谷は人に絶望しかもたらさない。

 羽をもがれた鳥のように空を見上げて地を這う無力さに

 クロロは涙を流した。

 グランド・キャニオンのような殺伐とした岩山の上で絶望と

 孤独と飢えと渇きと死への恐怖と闘いながら幾日も一人で

 過ごしたクロロの前にヒソカが現れたのは半時前の事だった。

 ヒソカは背後から突然トランプを投げて攻撃し、

 「やりにきたよ。」

 と言った。攻撃をかわしたクロロはこう言った。

 「今はそんな気分じゃない。念が使えないんだ。・・・今、

 戦ったら100%俺は負ける。」

 「なんだ。つまらない。でも、100%勝ちが分かっているなら、

 いたぶり殺す事もできるよね?フフフ・・・」

 「相変わらず、悪趣味だな。」

 クロロはため息をついた。

 「僕は狙った獲物は逃さないタイプなのさ。君は一度も

 やらせてくれなかっただろう。僕は何度もお願いしたのにね。」

 ヒソカはそう言うと、またトランプをシュッと6枚投げた。

 クロロは1メートルほど斜め後ろに跳んで避けた。そして、

 無言でヒソカを睨みつけた。

 「フフフ・・・その顔。たまらないよ。でも、念が使えないと、

 人は臆病になるのかな。数日前までの君なら、ほんの少しの

 動作で避けれたのに・・・随分、無駄な動きをするようになった

 じゃないか。今の君はまるで恐がりなウサギそっくりだね。

 そんなにぴょんぴょん跳んで体力がいつまで続くかな?」

 ヒソカはニヤニヤ笑いながらトランプをまた6枚投げた。



 ヒソカが10秒間隔で投げ続けるトランプはクロロの額、

 心臓、両腕、両足を狙ってくる。クロロは避けながらヒソカに

 近づき、ナイフで戦おうとしてもヒソカも走って逃げるから、

 なかなか近づけない。走りながら息も乱さず、正確な位置を

 狙い定めて投げてくるヒソカはたいしたものだとクロロは

 思った。それに比べて、数日間食べていないというだけで、

 体力に限界を感じてきた自分が情けない。息は乱れ、呼吸も

 苦しくなって、ますます無駄な動きが増えてしまう。ヒソカの

 最初の攻撃から1時間が経過した頃、クロロの左足に1枚の

 トランプが突き刺さった。痛みを感じて、クロロが足を見た瞬間、

 6枚のトランプが飛んできて、避けきれなかった数枚がクロロの

 身体に突き刺さった。

 「投げる方向と狙う位置を変えただけで、引っ掛かるなんて

 君らしくないね。10秒ごとに同じ所を狙って投げていたのは

 一種の作戦さ。もし僕が数秒間隔で投げていたら、君は用心して

 足を見なかっただろ。10秒。それだけあれば、傷を確認できる

 と思ったから、君は僕から1秒間も目を逸らした。

 僕は1秒間隔でトランプを投げる事ができるのにね。」

 ヒソカはそう言うと、今度は3回連続でトランプを投げた。

 18枚のトランプがクロロを襲い、両腕両足に突き刺さった。

 クロロはうずくまるように地に倒れた。刃物のように硬く鋭い

 トランプはクロロの皮膚を切り裂き、肉に突き刺さっている。

 下手に動いたり、倒れ込めば、手足の骨まで喰い込むだろう。

 深手を負わない為には両腕を伸ばしたまま立膝の状態で

 顔を地面に突っ伏すしかなかった。

 「痛いかい?」

 ヒソカは楽しそうに質問した。そして、ゆっくりと歩み寄り、

 クロロの手からナイフを奪い取った。

 「・・・殺せ。」

 クロロは諦めた顔をして、ヒソカと目を合わせないまま

 呟くように言った。

 「随分あっさりと降参したと思ったら、殺して欲しくなったんだ。

 念が使えないんじゃ生きてる価値ないからね。死にたいなら

 死なせてあげるよ。でも、その前に・・・楽しませてもらうよ。」

 ヒソカはニヤリと笑った。


 ヒソカはクロロの衣服を切り裂いた。露わになった白い身体にヒソカは口づけし、

 片手で尻を掴んだまま背後から手をまわし、胸に刺さったトランプを引き抜いた。

 傷口から血が溢れ、地面に滴り落ちた。

 「普通の人間なら心臓に達するくらい強く投げたけど、筋肉で止まってて

 良かったよ。筋肉は少しくらい痛めつけても大丈夫だよね?」

 と、ヒソカは言って、今度は肉を抉るようにして腹に刺さったトランプを

 引き抜くと、トランプから滴る血をクロロの双丘の谷間に垂らした。

 「痛いかい?でも、滑りをよくする為には濡らさなくちゃね。」

 「う、うぅ・・・」

 クロロは低い呻き声をあげたが、抵抗はしなかった。

 ヒソカがクロロの胴体に刺さっているトランプ全てを引き抜いた時には

 地面は血の池となり、まるで血の池に沈む白鳥のように両腕両足に刺さった

 無数のトランプの羽を広げて、クロロはじっと耐えていた。ヒソカは

 血に濡れた蕾を2本の指で突いて押し広げ、穴を覗いて、ほくそ笑んだ。

 「もう入るかな。」

 指をペロッと舐めて、ヒソカはそう言うと、雄々しく立ったものを

 クロロに押し付けた。

 「あっ。うっ。うぅ。あっ。」

 思わず漏らした吐息まじりの声にヒソカは

 「気持ちイイの?」

 と聞いた。すると、クロロは

 「イイわけない。」

 と、苦痛の表情を浮かべて言った。

 「でも、キミの中はすごく熱いよ。僕のを呑み込んで、嬉しそうに締めつけてくる。」

 「ち、違う。」

 クロロは否定した。大きな楔を身体に打ち込まれて、肉塊を吐き出そうとする

 身体の力が無意識に働いて、ヒソカを締めつけているだけに過ぎなかった。


 男を受け入れるのは数年ぶりで、本来なら苦痛を伴う挿入のはずだったが、

 不思議と挿入時の痛みはなかった。血を抜かれて力が入らなくなるほど

 弱らされ、血でベトベトに濡らされ、指で慣らされ、ゆっくりと挿入され、

 わざと淫乱に仕立て上げるような言葉を言われ、僅かに腰を動かし、焦らす
 
 ように身体の奥深くにとどまり、トランプの痛みを忘れさせる快感を与える

 ヒソカにクロロは絶望した。

 いっそ傷だらけの身体を破壊するごとく荒々しく抱いてくれたほうが

 マシだと思った。そうすれば、何も考えられなくなり、死や未来への不安が

 消えるからだ。ところが、ヒソカは優しく焦らしながら抱くので、

 凌辱されている屈辱感が身体を駆け巡り、ヒソカと繋がっている部分が

 熱く狂おしくなってしまうのだった。

 「初めてじゃないよね?凄く締まるよ。」

 ヒソカが耳元で囁いた。

 「キミは男も女も知ってるって噂があるのに、誰と寝てるのかイマイチ

 分かんないとこあったからねぇ。団長は何年も誰とも寝てないって

 聞いた事もあるけど・・・それって本当?パクから愛されてる自覚が

 あるのに、寝ないって酷いよね?僕みたいに男が好きならともかく、

 他の女にも見向きもしないし、キミは聖職者にでもなった気でいたの?

 皆から慕われ、パクから盲目的に愛されて、さぞかし、良い気分

 だったんだろうね。禁欲生活を長年続けていたのはパクに悪いから?

 キミはパクを抱きたくなかったんだろう?パクには性欲を感じない。

 でも、愛される事が心地良いから、他に彼女も彼氏も作らなかった。

 そうだろう?キミは愛情だけを欲する悪人だね。愛されても見返りを
 
 あげない悪人だ。」

 パク・ノダの名前が出たとたんクロロは身体の熱が冷めていく気がした。

 「キミは10代までいろんな男に抱かれてたんだろう?それなのに、

 キミは力を手に入れてからは愛してくれる人に身体でお礼するのが

 嫌になって、誰とも寝なくなった。違うかい?キミは聖職者を気取る

 偽善者だ。僕はキミみたいな人を滅茶苦茶に壊すのが好きでね。

 ずっとヤれるチャンスを窺ってたのさ。」

 「悪趣味だな。」

 ヒソカの言葉を黙って聞いていたクロロが吐き捨てるように言った。

 「ヒソカの推測は概ね当たっているが、俺が誰とも寝ないのはパクを

 繋ぎとめておきたいからじゃない。パクは仲間だから愛情を友情で

 返していたよ。」

 すると、ヒソカは眉をひそめて、こう言った。

 「可哀相なパク。ねぇ、知ってるかい?パクは死んだよ。」

 「・・・」

 クロロはパク・ノダの訃報に言葉を失った。子供の頃からの仲間が

 死んだのだ。おそらくは自分の為に・・・打ちひしがれたように

 クロロは空を見上げた。血塗られた大地に片方の頬をつけたまま

 目線だけを空に移して、自分の無力さにクロロは涙を流した。

 空は果てしなく青く、照りつける太陽はクロロを見下ろしていた。


 「ショックかい?愛してくれてた仲間が死んだんだものねぇ。

 でも、これからは独りぼっちのキミを僕が愛してあげるよ。

 僕は愛する見返りにキミの身体を貰うけどね。友情なんて

 僕はいらない。僕は身体が欲しいのさ。心が欲しいって

 言わないだけありがたいと思って欲しいよ。」

 ヒソカはそう言うと、腰を動かした。今までとは違い、激しく強く、

 痛めつけるように腰を突き動かした。

 「あっ、あ、ああっ。」

 クロロは喘いだ。トランプが刺さった羽のような腕を上へあげて、

 無意識に空を掴もうとした時、ヒソカがクロロの手首を掴んだ。

 そして、ヒソカは背中に捩じ上げるようにして、クロロの片腕の

 自由を奪い、腕に刺さったトランプを僅かに曲げて、肉を抉るように

 一枚ずつ引き抜き始めた。

 「うぁっ。うっ。ああっ。」

 再び血が吹き出し、血飛沫が青い空を汚した。

 白鳥は全ての羽をもがれても気を失う事すら許されず、

 耐えがたい快感で体内を支配されていた。

 「あっ。あっ。あっ。」

 苦痛を味わう度に規則正しい嬌声を発していたクロロの手を取り、

 ヒソカはゆっくりと腰を動かしながら小指に接吻した。

 「誓いのキスだよ。全てを失ったキミに僕が愛をあげる契約のキス。

 これからは僕だけがキミの欲しがる愛をあげるよ。そして、キミは

 これまでに味わった事のない世界を知る事になる。苦痛と快楽に

 溺れる快感に執着する世界にキミを連れて行ってあげる。」

 ヒソカは激しく腰を突き動かした。

 「あっ。ああっ、ああ~」

 クロロは快感に身体を震わせ、達してしまった。ヒソカもまた
 
 クロロの体内に欲望を放出した。息を切らして、俯せになったまま

 動かないクロロにヒソカは

 「ねえ。気持ち良かった?」

 と聞いた。

 「・・・」

 何も答えないクロロにヒソカは

 「足のトランプも抜いてあげようか?今度はキミの顔がよく見える

 体位でしてあげるよ。」

 と言った。クロロが空を仰ぐと、血で穢れたはずの空は透き通るように

 澄んでいた。何もかも諦めた血に染まった聖者の顔に太陽は優しく、

 絶望という名の光を降り注いでいた。クロロの瞳の奥にはニンマリと

 笑うヒソカの顔だけが輝いていた。

                             (完)



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ガンダムOO二次創作小説

ガンダムOO部屋




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ガンダムOO「ハロ」

ガンダムOO部屋



 凍てつくような雪の日の朝だった。刹那が目覚めると何故か

 ハロがいた。何者かが地球の刹那のマンションにハロを送り

 込んで来たのだった。刹那はハロを見つめながら頭をかかえ

 ていた。ピンポーン。ピンポーン。とインターホンが鳴って、

 ドアを開けるとロックオンが断りも無く部屋の中に入って来た。

 「ハロ~。会いたかったよ。」

 両手を広げてまるで運命の再会かの様にロックオンはハロ

 を抱きしめた。

 「お前が送りつけて来たのか?」

 刹那が聞くと、ロックオンは

 「実はアレルヤがやきもちやきでね。ハロばかり可愛がって

 いると怒って、目を放した隙に連れ去ってしまったんだよ。」

 「やきもちだけでそんな事をするのか?」

 「アレルヤはハレルヤに変わると凄くいじわるなんだ。」

 ロックオンは微笑んで言った。そして刹那の手をとり、

 「ハロが無事で本当に良かった。刹那ありがとう。」

 と、刹那の唇に突然口づけをした。

 「俺に触れるな。」

 刹那は怒った。

 「ごめん。嬉しかったんで、つい・・・」

 ロックオンは謝ったが、刹那は許さなかった。

 「出て行け。」

 押し殺した声でうつむきながら、拳を握り締めて言った。

 刹那はファーストキスを奪われて、動揺を隠すのに必死

 だった。すると、ハロが

 「セツナ ナクナ ナクナ ・・・」

 と、刹那の足元にすり寄って来た。

 刹那はその愛くるしさにほんの少しだけ心が癒されて、

 ハロを抱き上げようかとも思ったが、ロックオンのペットに

 慰められている自分が恥ずかしいような気がして、困惑した

 まま、ただ黙ってハロを見つめているだけだった。

 「刹那、本当に悪かった。」

 ロックオンがすまなさそうに微笑んで言った。

 「悪気はなかったんだ。ほんの1秒唇に触れただけのキス

 なんて挨拶がわりのようなものだろ。まさか初めてでもある

 まいし・・・そんなに怒らないでくれよ。」

 「帰れ!!」

 刹那は怒って、ロックオンを突き飛ばした。

 「初めてで悪かったな。帰れ!!」

 そういったものの刹那は少し頬が赤らむのを感じ、余計に

 腹立たしくなった。それを見られる事が恥ずかしくなって

 刹那は部屋を飛び出した。



 外は雪だった。

 昨晩から降り積もった雪は大地を覆い、街を包み込むように

 総てを白に変えていた。

 刹那はこの汚れた世界が雪によって浄化されるような気が

 して立ち止まった。

 空から雪の妖精が舞い降りて刹那の汚れた心を清めていく。

 刹那は空に顔を向けて、ゆらゆらと舞い降りる雪が肌に溶け

 ていくのを感じていた。

 刹那は雪になりたいと思った。

 汚れの無い純粋な心の持ち主だったら素直になれたかも

 知れない。でも、自分は汚れている。

 幼い頃、故郷では戦争で多くの人々が死んだ。

 親も兄弟も友達も皆、殺されていった。

 刹那は命じられるままに人を殺した事を今でも後悔している。

 善悪を誰も教えてはくれなかった。

 神の名の下に総てが許されると教えられていたのだ。

 幼い頃に、汚してしまった心は一生もとに戻らない。

 刹那は血に染まる前の自分に戻りたいと思った。

 雪のように真っ白な心だった頃に戻りたいと願った。



 携帯が鳴った。刹那は携帯に出た。

 「もしもし、僕、アレルヤだけど・・・実はハロに時限爆弾が

 仕掛けられているんだ。その時限爆弾はある言葉を言うと

 タイマーが作動して一分後に爆発する。その言葉は・・・

 う、痛い、頭が痛い。ハレルヤ、やめて、うぅ・・・」

 「おい、どうしたんだ?大丈夫か?」

 「アハハハ・・・・この体は俺様のものだ。ロックオンなんか

 死んじまえ。あんな奴、吹っ飛ばされちまえ。ギャハハ・・・」

 刹那は携帯を切ると、慌ててマンションに戻ろうと思った。

 ロックオンが心配でたまらなく胸が張裂けそうだった。

 刹那は走った。昨夜降り積もった雪で、舗道は凍っていて

 何度も転んだが刹那は走り続けた。ロックオンのもとへ・・・

 彼を死なせてはいけない。

 かたくなに心を閉ざしていた刹那に唯一優しくしてくれた。

 独りぼっちでいる刹那にいつも声をかけてくれた。

 彼の優しさが太陽のように眩しくて、出会った日からずっと

 魅かれていた。でも、幼い頃から大人たちに虐待され、

 裏切られ、人を信じる事をやめてしまった刹那にとって

 彼の好意は眩し過ぎた。素直になれなかった。

 太陽のように笑う彼を死なせてはいけない。



 だが、マンションに辿り着いた時にはもう、ロックオンの

 姿はなかった。刹那は不安に押し潰されそうになった。

 するとその時、背後から大きな手で目隠しをされ、

 「だ~れだ。」

 と、能天気な声で耳元で囁かれた。

 「ロックオン?・・・ふざけるな!」

 突然の出来事に刹那は驚いて振り返えると、無邪気な

 笑顔がそこにあった。

 「ロックオン何処に行って・・・」

 刹那は涙が溢れそうになった。言葉にならない感情を

 押し殺そうと刹那は必死に目を擦った。

 「ごめん。まだ怒ってるのか?気になって探してたんだぞ。」

 ロックオンは刹那の両肩に手を置いて、優しい眼差しで

 刹那の顔を覗き込んだ。

 「ロックオン、ハロに時限爆弾が仕掛けられているって

 アレルヤから電話があった。ある言葉を言うとタイマーが

 作動するって。」

 「本当か?ある言葉ってなんだ?」

 「分からない。でも、すぐに分解して爆弾を取り外そう。」

 刹那はドライバーを持って、ハロを捕まえようとした。

 「ハロ、ハロ、コワイ、コワイ、ブンカイ、キライ、キライ・・・」

 ハロは部屋中を逃げまわった。

 「ハロおいで。怖くなんかないよ。大丈夫だから。」

 ロックオンがそう言うとハロはロックオンの胸に跳び込んだ。

 「ハロ、ハロ、セツナ、コワイ」

 「よしよし、大丈夫だからね。良い子にしてろよ。」

 ロックオンはハロの頭を優しく撫でて抱きしめた後、

 ハロを押さえつけて、

 「刹那、やれっ。」

 と言った。



 刹那はハロの体を無理やりこじ開けると、小型時限爆弾が

 埋め込まれていた。タイマーはまだ作動しておらず、60秒

 にセットされたままだった。刹那が幼い頃、周りの大人たち

 はよく爆弾を作っていた。自爆テロ用からバスをリモコンで

 吹き飛ばすタイプの物まで様々な爆弾を作っていた。

 刹那は見よう見まねで覚えた爆弾に関する知識があったので

 普通の人より詳しかった。このタイプの時限爆弾は下手に

 取り出すとトラップが作動するのでハロから切り離せない。

 まずは黄色い線を切って、次に赤か青のどちらかを切るの

 だが、失敗すればその場で爆発する仕組みになっている。

 刹那には爆弾処理の経験がないので、黄色が安全という

 保証も無い。多分大丈夫だろうと思うだけで最初の一本が

 トラップだったら、それで終わりだ。刹那はいざとなると

 切る勇気がなくて、手が止まってしまった。

 一瞬の躊躇の隙にハロがまたジタバタ暴れだした。

 「おい!こら!動くなよ。」

 ロックオンがハロをぎゅっと押さえつけて言った。

 「良い子にしてたら後でご褒美をやるからおとなしくしてろよ。

 ハロ、愛してるから。」

 すると、ピー!という警告音が鳴り響いた後にカチッと

 音がして、タイマーが作動し始めた。

 アレルヤが言っていたある言葉とは『愛してる』だったのだ。



 もはや躊躇している暇は無かった。刹那は黄色い線を切った。

 何も起こらなかった。第一段階クリア。刹那は安堵して溜息

 をついた。しかし後2本のうち1本を切らなければならない。

 次は2分の1の確率でトラップだ。タイマーは39,38,37・・・

 無情に時を刻んでいる。もう一度配線を確認する時間は無い。

 刹那は赤か青かどちらにするか迷った。

 いっそハロを窓から放り投げれば、自分たちは助かるかも

 知れないが、街の人々にケガ人や死人が出てしまう。

 一般人を巻き込むわけにはいかない。それに今、ハロを

 見捨てたらロックオンが悲しむ。まるで家族のように

 可愛がっているのに・・・

 ロックオンには家族がいない。昔、刹那の仲間が殺したから。

 そのことを知った時のロックオンの顔が忘れられない。殺意

 に満ちた瞳で憎しみをぶつけて来た時、彼に殺されたいと

 刹那は思った。自分には使命があるから生きているけれど

 彼の為なら死ねる。ハロを助けなければならない。

 刹那は赤い線を切った。

 すると、ピー!という警告音とともにいきなりタイマーが

 00に変わり点滅した。トラップにひっかかったのだ。



 「危ない!」

 ロックオンが叫んで刹那を突き飛ばすように押し倒し、かばう

 ように覆いかぶさった。死ぬと思った瞬間、パンッ!とまるで

 クラッカーを鳴らした音が聞こえ、刹那たちは死ななかった。

 不思議に思って恐る恐る振り返って見ると、時限爆弾から

 花火が上がっていた。シューシューと火花を散らして花火は

 ハロの頭上で綺麗な花を咲かせていた。また同時にハロから

 ポンポンっとハート型の小さなチョコレートが飛び出していた。

 「何だ?これ。」

 二人は起き上がり、呆れてその情景を見つめていた。

 しばらくしてロックオンがハロから飛び出してくるチョコレート

 の一つを拾ってこう言った。

 「今日はバレンタインデーだったっけ?」

 その時、ロックオンの携帯が鳴った。アレルヤからだった。

 ロックオンは最初不機嫌そうにアレルヤの話を怒って聞いて

 いたが、やがて笑い出した。そして、

 「刹那にかわってだってさ。」

 と言って携帯を刹那に手渡した。刹那がいぶかしげに耳に

 当てると、アレルヤは

 「ロックオンへのバレンタインのプレゼントだよ。刹那。君は

 きっとチョコレートなんて用意してないと思ったから、代わり

 に僕が用意したのさ。じゃ、頑張ってね。」

 刹那が何か言おうとするとプチッと携帯は切られてしまった。

 「いたずらだったってさ。マジで死ぬかと思ったのにな。」

 ロックオンは笑顔でそう言った。

 「時限爆弾が爆発すると思った瞬間、とっさにお前を守りたい

 と思ったんだ。ハロの事は忘れてたよ。誰よりもハロが好き

 だったのに、死を前にして、俺の命よりもハロよりもお前の

 ほうが大切だって気付いたんだ。」 



 ロックオンはまっすぐに刹那を見つめた。

 「俺はロックオンの事を・・・」

 刹那が自分の思いを伝えなければと口を開いたものの

 伝えたい想いがいっぱいありすぎて、真っ赤になって黙って

 しまった時、ロックオンは刹那の唇に唇を重ねた。刹那は

 驚いて目を見開いたがすぐに目を閉じた。ロックオンの舌が

 刹那の舌に絡んでくる。初めての濃厚なキスを刹那は目を

 閉じたまま受け入れた。ゆっくりと優しく押し倒され、キスを

 しながら服を脱がされていく。首筋から胸に移動する唇に

 刹那はくすぐったさを感じた。ピンク色の可愛らしい突起は

 舌で転がされてツンッと立った。

 「感じやすいんだな。」

 ロックオンが意地悪く言った。刹那はカァッと赤くなって、

 その場から逃げ出したくなったが、押しのけようとした手を

 掴まれて、そのままひっくり返された。いきなり後ろ向きに

 されたかと思うと一番恥ずかしい部分にキスされた。

 「や、やめろ!」

 刹那が抵抗してもロックオンはおかまいなしに舌を這わせ

 てくる。舌が入り込む感覚に刹那は眩暈を感じた。

 「あっ。ああ~。もう、いやだ。なんでそこばっかり。」

 「たっぷりと慣らさなくちゃ。初めてなんだろ?」

 「ああああ~」

 刹那はイってしまった。ロックオンは刹那の放った白い液体

 を指で拭い取り、刹那の中に塗りたくった。たった指一本でも

 刹那の中は狭く二本入れるのは難しかった。だがロックオン

 はゆっくりと時間をかけて指を二本入れた。刹那はさっき

 イったばかりなのにまたイキそうになっていた。ロックオンが

 十分に慣らしたのを確認して刹那の中に入ってきた。

 「ああああああ~」

 刹那は挿入された痛みに喘いだ。自分の身体を引き裂く

 ような初めて味わう痛みに刹那は涙を浮かべた。

 「痛いか?」

 ロックオンが心配そうに刹那を見ていた。ロックオンはまだ

 動いていない。刹那を気遣って入れたままじっとしている。

 刹那はロックオンの首に手をまわしてしがみついた。

 「好きだ。ロックオン。もう、ずっと前から好きだった。」

 「知ってたさ。」

 ロックオンは刹那に口づけした。舌を絡ませながら刹那は

 蕩けるような感覚を味わった。不思議と痛くなくなった。

 「動いていい?」

 ロックオンが聞くと刹那はコクンとうなずいた。ゆっくりと

 気遣うようにロックオンが動く。刹那は声をあげてロックオン

 にしがみついていた。やがて動きが激しくなるにつれて

 刹那の意識は何処かに飛んでしまった。頭の中が一瞬

 真っ白になった時、二人同時に果てた。終わった後、

 ロックオンは刹那の身体を優しくティッシュで拭いてくれた。

 「良かった。あんまり切れてない。」

 ロックオンがぐったりしている刹那に微笑みかけた。刹那は

 眠気に勝てずにそのまま眠ってしまった。

 刹那が目覚めるとハロがいた。外は雪だった。寝ぼけた頭

 でぼんやりと夢だったのかと刹那は思った。闇の中で孤独

 に生きてきた刹那に太陽の眩しい光が注ぎ込んだ。

 「やっと目が覚めたか。よく寝てたな。」

 ロックオンが背後から刹那の顔を覗き込んだ。

 太陽はすぐ傍にいた。刹那はロックオンの手を掴み、

 太陽に微笑みかけた。

                          (完)



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ガンダムOO「刹那」

ガンダムOO部屋



 季節は夏。刹那たちはソレスタルビ-イングの所有する南の島に

 来ていた。

 久しぶりの休暇でいつもは大人しいアレルヤまではしゃいでいた。

 「ロックオン。早く早く~」

 「お~い。待てよ~。」

 万遍の笑みを浮かべて、アレルヤを追いかけて海辺を走る

 ロックオンの姿を刹那は遠くから見ていた。

 碧い海は太陽の光をキラキラと反射して輝き、押し寄せる白い波

 がロックオンの体にぶつかるたびに筋肉が躍動して泡波がはじけ

 飛び、生命力あふれる彼の姿はまるでギリシャ神話に出てくる

 神のように美しかった。

 「君は泳がないのかい?」

 ティエリアが独り砂浜で見つめている刹那の顔をのぞきこんで

 「せっかくの休暇なのだから、君も泳いだら良いのに・・・

 僕はちょっとやることがあるので失礼するよ。」

 ティエリアはノートパソコン片手にそう言うと去って行った。

 よく考えたら、水着に着替えておいて、泳がないのも変だ。

 でも、刹那は二人の中に入って行く気がしなかった。

 刹那の前には孤独の壁が総てをふさいでいた。

 見えない壁に囲まれて刹那は感情を表に出す事ができなかった。

 自分も彼のように素直になれたらどんなに楽だろう。

 刹那は壁に押し潰されそうになりながら、生きていた。

 誰かが壁を壊して、救い出してくれるのをじっと待っていた。

 ロックオンはまだ、助け出してくれない。

 それどころか、気づいてもくれなかった。

 刹那はただ黙って彼を見つめているしかなかった。


夏の陽ざしは暑い。照りつける太陽が刹那の肌を焼く。

 刹那は子供の頃に砂漠を歩かされた時のことをなぜだか

 思い出した。中東の聖戦は悲惨だった。

 敗北が近づくにつれ敵に追われるように拠点を移した事があった。

 飢えと乾きに耐えられない幼子は置き去りにされ死んでいった。

 満足な食事もあたえられずに銃を持たされて戦場に送り出された。

 刹那が兄のように慕っていた友達も戦死した。

 その死は刹那を悲しみの闇に突き落とし、深く心を苦しめた。

 刹那は二度と大切な人を失う苦しみを味あわないように

 親しい友達をつくらなくなった。

 刹那はガンダムマイスターになってからも心を閉ざしたままだった。

 だが、唯一ロックオンのことだけは気になっていた。

 刹那は優しくて太陽のように笑うロックオンに惹かれていた。

 彼を慕う感情を抑えきれなかった。

 しかし、いつも遠くから黙って見ていた。

 すると、その時、

 「お~い。刹那も来いよ~。」

 太陽が笑いかけた。

 「いつまでも砂浜に座ってると干からびちまうぜ。こっちに来いよ。」

 ロックオンがてまねきしている。

 刹那はグズグズと重い腰を上げてロックオンの所に行った。

 海の水はひんやりと冷たくて、汗ばんだ肌には心地良かった。

 「刹那、足元を見てごらん。魚がいるよ。」

 小さな可愛らしい魚が一匹泳いでいた。

 刹那は魚を見て微笑んだ。

 「やっと笑ったな。」

 ロックオンが刹那の頭をクシャッと撫でた。

 空は青く澄み渡り、海は何処までも広がっていた。


「バーベキューのしたくができたよ。」

 波打ち際にいつの間にかティエリアが立っていた。

 「それはありがたい。腹ペコだったんだ。食いに行こうぜ。」

 ロックオンは刹那の手を引っ張って走り出した。

 砂浜に用意されたテーブルの上にはご馳走がいっぱいだった。

 バーベキューの肉がこんがり焼けて、良い匂いがした。

 「美味しそう。これ全部ティエリアが作ったの?」

 アレルヤが目を輝かせて言った。

 「ああそうだよ。みんなが泳いでる間に作ったんだ。

 さあ、召し上がれ。」

 「いっただっきま~す。」

 皆、美味しそうに肉を口に頬張った。楽しい食事だった。

 ロックオンがジョークを言うたびにアレルヤとティエリアが笑う。

 いつしか刹那まで声をたてて笑っていた。

 幸せだった。みんなまるで仲の良い兄弟のようだった。

 明日には終わる幸せを予感してか、みんな明るくふるまっていた。

 食事を終える頃に、

 「刹那、髪が伸びたな。俺が切ってやろうか。」

 と、ロックオンが刹那の髪を触りながら言った。

 「うん。」

 いつになく刹那は素直にうなずいた。

 「よ~し。じゃあ、カリスマ美容師の腕前を見せてやろうかな。」

 ロックオンは手際よく刹那の首に布を巻き砂浜の椅子に座らせた。

 クシで髪をとかしながらハサミでチョキチョキと髪を切っていく。

 ティエリアとアレルヤはクスクス笑いながら食事の後片付けを

 はじめた。

 ロックオンは刹那の癖毛に悪戦苦闘しながらも毛先だけ切り

 そろえていった。

 頭の向きを変えるたびにロックオンの大きな手が刹那に触れる。

 刹那は美しい海を見つめながら、ロックオンを感じていた。

 世界が二人だけになったような気がした。

 この世界が永遠に終わらなければ良いと思った。

 「さあ、できたぞ。どうだいプロの腕前は?」

 ロックオンは自信たっぷりに鏡を差し出して言った。

 刹那は鏡を見て、(かなり微妙??)って思ったが、

 ロックオンがプロの美容師でないことを承知で切らせたので、

 何も言わなかった。

 ロックオンが刹那の首に巻いていた布をとって、

 「明日からまた宇宙だな。」

 と言った。刹那は黙っていた。

 楽しいひと時は終わった。


夜、刹那は寝つけなかった。

 明日、宇宙に行ったら、地球にいつまた帰って来られるか

 わからない。

 刹那はベッドから抜け出して、一人で浜辺に出た。

 静まりかえった夜の砂浜には刹那のほかに誰もいなかった。

 静寂が闇に溶け込み、星空が綺麗だった。

 幾千もの星が夜空に輝き、地球を見下していた。

 広大な宇宙は静かに地球を包んでいた。

 宇宙の中のちっぽけな星で、いがみあい、憎しみあっている

 人間はなんと愚かな生き物だろう。

 刹那は独りため息をついた。

 その時、後ろから何者かによって口を塞がれ、

 刹那は意識を失った。


目が覚めるとそこは見知らぬ基地の取調べ室だった。

 刹那は両手両足に手錠をかけられて拘束されていた。

 ぼんやりとした視界であたりを見まわすと誰かがデスクに腰掛け

 ている。男は不気味な笑みを浮かべながら刹那を見ていた。

 そして、刹那の意識が戻ったのに気づいてニヤニヤと笑いながら、

 白いコンクリートの床に転がされている刹那に近づいてきた。

 「ようやくお目覚めか?薬が効いてよく眠ってたな。」

 男はサーシェスだった。

 刹那は声にならない悲鳴をあげた。

 「久しぶりだなぁ。」

 サーシェスは刹那の髪をつかんで、顔を上げさせた。

 「お前が夜中に海辺をふらふら歩いてるおかげで、

 ずいぶん捕まえやすかったぜ。こちとら敵さんの基地の中まで

 潜入するつもりだったのによぉ。」

 サーシェスはおもしろそうに刹那の髪をグイグイ引っ張って

 「お前に聞きたいことがある。ヴェーダの少年に関する情報を

 はいてもらおうか?あれは人間か?それとも・・・」

 「知らない。なんのことだ?俺は何にも知らない。」

 「そうくると思ったぜ。」

 サーシェスは目をギラつかせて、楽しそうに髪をつかんだ手に

 力をこめて頭を引っ張り上げ、刹那の耳元でささやいた。

 「まずは拷問といくか?」
 
 刹那は地獄の底へと落ちて行く予感がした。



 そこが拷問室であることに気づいたのは天井に吊るされてから

 だった。刹那は手首をロープで縛られ、足がつくかつかないか

 くらいの高さに吊るされた。

 「早いとこはかないと痛い目みるぜ。」

 サーシェスは鞭をふりかざし、ニヤリと笑って言った。

 サーシェスが刹那のあごに手をかけて顔を近づけると、

 刹那は唾を吐きかけた。

 次の瞬間、サーシェスの目が怒りに燃えて、バシッと刹那の頬に

 平手が飛んだ。

 「つけあがりやがって。いったい誰に唾を吐きかけたと

 思ってるんだ。まさかこの俺を忘れたわけじゃあるまいな。」

 「覚えてるよ。あんたはなぜ傭兵やスパイの真似をしている?
 
 あんたの神はどこにいる?神なんて最初からいなかったんだ。

 あんたはただの人殺しだ。」

 「このやろう、育ててもらった恩を忘れやがって!」

 サーシェスの鞭がビュッと音をたてて刹那に振り下ろされた。

 打たれた所の服が裂けて破れた。重い一本鞭と違ってまだ

 女王様が使うような先の細い軽い鞭だったが、それでも何度か

 打たれたら服だけじゃなくて皮膚も裂けて血が滲むだろう。

 だが、刹那はフッと笑ってこう言った。

 「誰がいつ育ててくださいって頼んだ?

 戦災孤児の面倒をみてやってるなんて恩着せがましく言いながら、

 戦争のどさくさにまぎれて俺たちをさらって来たんだろ?

 全部知ってるんだ。テロリストに育てるために子供たちを誘拐

 してたって。あんたのせいでみんな死んだ。友達も誰もかれも

 みんな死んだんだ。」

 「うるせぇ!!このガキが。そういやぁ、おまえは臆病者のくせに

 反抗的な態度だったから、いつもお仕置きされてたな。

 ふっふっふっ。また、あの頃みたいにお尻を叩いてやろうか?」

 サーシェスは嫌な笑いを浮かべて、刹那の頬を撫でるように

 触りながら、耳元でささやいた。

 「思い出すなぁ。あの頃を・・・おまえはいつも子犬みたいな瞳で

 震えていたっけ?今夜はたっぷりと可愛がってやるから

 覚悟しやがれ。」



拷問室にムチの音が鳴り響く。

 刹那は声をこらえて唇を噛みしめ苦痛に耐えていた。

 サーシェスに引き裂かれた服が無残に床に散らばっている。

 刹那の背中はムチによって赤い印が縦横無尽に刻み込まれ、

 血を滴らせていた。

 縄で手首を縛られ、天井から宙吊りにされて、全体重がかかった

 手首は悲鳴をあげ、足は虚しく地を求めて彷徨っていた。

 「いいかげん、はいちまったらどうだ?」

 「知らないものは知らない。」

 「強情だな。」

 サーシェスは鼻で笑って、何か気が変わったのかムチを投げ捨て、

 刹那の耳を噛んだ。そして首筋をペロリと舐め上げ耳元で囁いた。

 「なぁ昔のこと覚えてるか?お前はいつも腹をすかせていたよな。

 俺らの食事を羨ましそうに物欲しげな顔で見ていやがるから

 ちょっと優しい声をかけて食うか?と聞くと缶詰やハムに釣られて

 何でもしたよな。」

 サーシェスは刹那の顔がこわばった表情を見て楽しみながら、

 さらにいたぶるようにこう言った。

 「おまえらガキは扱いやすかったぜ。順応力に優れてるっつうか

 昔の記憶なんてすぐに忘れちまって、殺せと言うだけで命がけで

 殺しに行くからな。いつだったか、お前の友達が自爆テロに志願

 したっけ?あいつのおかげで罪のない一般人が大勢死んだなぁ。」

 「やめろ!!」

 刹那は血を吐く思いで叫んだ。


「お許しください。サーシェス様。だろ?」

 サーシェスはニヤニヤ笑いながら言った。

 「昔みたいに、いい子になるからもう許して。って言ってみろよ。」

 サーシェスは刹那の耳たぶを甘噛みして、舌を入れてきた。

 耳の中を舌で舐めまわされる感覚に刹那は鳥肌が立った。

 サーシェスはさらに首から肩、そして背中へと口づけして行き、

 ムチで打たれた傷から滲む血を美味しそうに舐めた。

 サーシェスは刹那の血の味を楽しみながら、時折、傷口に歯を

 立てた。そして、さんざんいたぶった後、刹那の唇に触れた。

 「口あけろよ。」

 サーシェスはそう言うと、刹那に深く口づけをした。

 「痛っ!何しやがる!」

 サーシェスの口から一筋の血が流れた。刹那はサーシェスの舌を

 噛み切ったのだった。サーシェスは怒って、刹那の首を絞めた。

 指が喉に食い込み、刹那は息ができなくて窒息しそうになった。

 刹那が気を失いかけた時、サーシェスはわざと首から手を放した。

 刹那はゲホゲホと咳き込み、涙があふれた。

 「殺してやる。」

 刹那は憎しみを込めて、サーシェスを睨んだ。

 だが、サーシェスは楽しそうにこう言った。

 「俺はお前の反抗的な瞳が好きだ。だが、いつまでもつかな?

 そうそう、お前、虫歯はないか?麻酔なしで抜いてやろうか。」


その時、拷問室のドアが開いた。

 グラハム・エーカーだった。

 「そこまでだ。サーシェス。少年相手に拷問とは・・・何故、

 薬を使わない?あとは私がやる。下がって良いぞ。」

 「あいにくと俺は血を見るのが好きでね。歯の2、3本でも

 引っこ抜けば白状するさ。」

 「下がれと言っている。分からないのか?」

 サーシェスはグラハムに睨まれてしぶしぶ部屋を出て行った。

 「やっと君に会えたね。それにしても随分と痛めつけられたな。

 これからは私が君を支配する。薬は使うがね。」

 グラハムは冷淡な碧い瞳で刹那を見下ろすとナイフを取り出し

 ロープを切った。ドサッと刹那が床に倒れると、兵士が二人で

 手足を掴んで部屋の隅に置いてあったベッドへ刹那を運んだ。

 そのベッドには革製の拘束具が幾つもついていて、刹那は

 両足、太腿、胴、胸、首の5箇所をベッドに固定され、最後に

 両腕を伸ばした形で手首をベッドの端と端に拘束された。

 カラカラと銀色に光る医療器具を乗せたワゴンがベッドの側に

 引き寄せられるのを見て、刹那は恐怖に蒼ざめた。

 「怖がることはない。今から薬を打つ。注射する時少し痛い

 かもしれないが、すぐに気持ち良くなるからね。」

 グラハムは不敵な笑みを浮かべながら、刹那の腕を丹念に

 アルコールを浸み込ませたガーゼで拭いてから、注射針を

 さした。注射器の中の液体が刹那の身体に注ぎ込まれて行く

 に連れて、刹那はふわふわと浮遊感に似たものを覚えた。

 次第に脳が思考を停止し、何も考えられなくなってしまった。

 ぼんやりとぼやけて視界に映るものはグラハムの顔だけだった。

 「この薬には副作用がいくつかあって、たまに発狂する場合も

 あるが、たぶん君は大丈夫だろう。人間は死ぬ前に過去の

 記憶がさかのぼり、走馬灯のような夢を見るって知ってたかい?

 本当に死ぬ時には幸せだった記憶しか蘇らないが、この薬では

 死なないから、同じような現象が起きても悪夢を見るんだ。

 ほんの数時間眠っているうちに心を悪夢に浸食されて、目が

 覚めた時には発狂してしまうケースもあるが、運が良ければ

 従順な人形に生まれ変わる。さあ、眠りなさい。深い眠りに

 ついて、再び目覚めた時、君は生まれ変わるだろう。」



刹那はまるで暗示をかけられたようにゆっくりと目を閉じた。

 そして、深い眠りに落ちた。

 刹那は夢を見た。

 夢の世界で刹那は子供だった。

 
 温かな木洩れ日が眩しく輝いて、刹那に光が降り注ぐ。

 刹那は大きな木の下で犬と一緒にお昼寝するのが好きだった。

 この丘からは小奇麗な石造りの町並みが一望できる。

 刹那は白い大きな犬を枕にして、丘の上の木の下で美しい

 故郷の景色を眺めていた。

 すると、遠くから何十人もの男の人たちがゾロゾロと歩いてくる。

 皆、銃を手にして、暗い顔をしていた。

 その横を数人の少年達が無邪気に走りまわり、

 「万歳!万歳!戦争だ!戦争だ!」

 と、嬉しそうに叫んでいた。

 何処からか村の長老が現れて、刹那に語りかけた。

 「村の男たちは戦争に行った。白人と戦うのだ。

 白人たちを許してはならない。奴等は我々の平和を奪った。

 軌道エレベーターを造り、原油の値を下げ、我が国の油田を

 閉鎖に追い込んだ。その結果、失業者が町にあふれかえり、

 人々はパンすら買えなくなってしまった。

 アフリカの民が貧困に苦しんでいるのを知っているか?

 人々は畑を耕し、穀物を育てても、それを口にすることが

 できない。全ての穀物を家畜の餌にするため白人が買い上げ、

 穀物の値をつり上げているからだ。二束三文で土地を売って

 しまったアフリカの民は安い賃金で働かされ、自分で育てた

 穀物を食することができない。それだけではない。水の利権

 までもを白人は買いあさり、世界中の水を白人だけのものに

 しようとしている。アフリカの民が安心して飲める水は

 もう何処にもない。土地を手放し、飢えと渇きに苦しみ、

 貧困にあえぐアフリカの民のように我々はなってはならない。

 その為の戦争だ。神が我々に味方してくださる。

 神が我々を導いてくださる。これは聖戦なのだよ。」

 刹那は悲しくなって、泣き出した。


その夜、刹那の母はこう言った。

 「お父さんは戦争に行ってしまった。もう生きて帰って

 来れないから、お父さんには二度と会えないわよ。」

 大好きなお父さんがいなくなったと知って、刹那はまた

 泣き出した。母親はイラついたように

 「泣くんじゃないよ。」

 と言った。晩ご飯はシチューだった。

 刹那はお腹をすかせていたので、大好きなお母さんの

 作った美味しいシチューを喜んで食べた。

 母親はにっこり笑って言った。

 「美味しいかい。たんとおあがり。このシチューの肉は

 おまえが可愛がっていた犬だよ。家にはもう食料を買う

 お金が無いからね。最後の晩餐だよ。」

 刹那は吐いた。

 吐きながら、母親の顔を見ると、彼女は微笑んでいた。


翌朝、刹那の村は空襲に襲われた。

 空から数え切れないほどのミサイルが降り注ぎ、

 総てを破壊した。総ての命を奪った。

 一瞬で廃墟と化した村には死体の山が築かれた。

 だが、刹那は瓦礫に埋もれて生き残った。

 重い壁に押し潰されて、身動きもとれずに、

 独り地獄の光景を見ていた。

 そこへ赤毛の男が現れた。サーシェスだった。

 彼は刹那の身体に重くのしかかった壁を取り除き、

 刹那を助け出した。そして刹那を抱き上げてこう言った。

 「神の御加護によりお前の命は助かった。

 本来此処で死ぬ運命だったお前の命を神に捧げよ。

 俺がお前の父となり、立派な戦士に育ててやろう。」

 サーシェスは刹那を村から連れ去った。

 サーシェスのアジトには刹那と同じくらいの年の戦災孤児が

 たくさんいた。皆、お腹を空かせており、瞳が虚ろだった。

 毎日、塩味のジャガイモのスープやカビの生えたパンばかり

 食べさせられて、剣や銃の扱い方を教え込まれた。

 時には地雷を埋めに行かされたり、罪もない村から食料や

 金品を奪う手伝いをさせられたりした。そして逆らえば、

 殴る蹴るの暴力を受けた。

 サーシェスはある日、刹那たちに実施訓練だと言って、

 村人たちを殺させた。村には生き別れになった母がいた。

 刹那は母を銃で撃ち殺した。不思議と涙はでなかった。

 刹那はもう考えることをやめていたから、母を殺しても

 犬が死んだ時より悲しくなかった。刹那の心の中は

 虚無感でいっぱいだった。

 サーシェスは返り血を浴びて美しく汚れた刹那を満足げに

 眺めて、血に染まった刹那の手をとり、刹那の髪を優しく

 撫でながら、こう言った。

 「神はこの地を脅かす者を許さないだろう。

 白人に媚びへつらい服従する臆病者は死をもって償うべし。

 我々は総て焼き尽くされ灰になろうとも決して降伏しない。

 復讐を成し遂げる者こそ真の勇者なり。

 神の名のもとに我らは戦う。

 神の子よ。血の洗礼を受けた今日を忘れるな。」


一度落ちた闇からは二度と這い上がれない。

 刹那たちは人殺しの旅を続けた。

 刹那は命じられるままに何でもした。

 感覚が麻痺して不思議と死さえ恐ろしくなくなってしまった。

 来る日も来るも戦場で戦い、敵に命を狙われ仲間を殺され

 続け、戦いに疲れた頃、子供達を残して大人達は逃げた。

 刹那は自分を支配していた者にすら捨てられて絶望した。

 神は何処へ行ったのだろう。

 この世界に神はいない。

 刹那は途方に暮れて、神を呪った。

 ある日、刹那は戦いの中、空を見上げた。

 空には美しい粒子を放ち金色に輝くガンダムがいた。

 空から舞い降りた天使のような気高く美しい救世主に

 刹那は心奪われた。

 ガンダムの放つ光は希望の光。

 刹那が光に歩み寄るとそれは消えてしまった。

 希望を失った刹那は絶叫した。

 刹那の住む世界にはもはや死人しか存在しない。

 幼子の屍を敵のモビルスーツが踏み潰して街を破壊していく。

 無力な自分を刹那は呪った。

 そこで夢は覚めた。


刹那が目を開けて最初に見たものは白い天井だった。

 次に白い壁と白いついたてと白いサイドテーブル。

 何処かの病室のベッドで刹那は寝ていた。

 ステンレス製の棒に吊るされている白濁色の点滴は

 刹那の腕につながっていた。

 『ここはどこだろう・・・』

 刹那はぼんやりとした頭で考えた。

 そして、金色の髪と碧い瞳の軍服の男が刹那を見つめている

 ことに気がついた。その美しい顔立ちの男はずっと前から

 ベッドの隣の椅子に座って、刹那を見守っていた。

 「あなたは誰?」

 その問いかけに男は満足そうに微笑んだ。

 「目覚めたのかい?私はグラハム・エーカー。」

 「あ、俺、何も思い出せない。・・・俺は誰?」

 「君の名前は刹那だよ。私の可愛い天使。よく眠っていたね。

 君は記憶喪失にかかったのだよ。」

 「記憶喪失?」

 刹那は不安になり、必死に自分が誰なのか思い出そうとしたが、

 頭に霧がかかったように何も思い出せなかった。

 「本当に何も覚えていないのかい?」

 「はい。何も・・・」

 「君は私の従順な人形。私の命令には絶対服従だ。

 分かったかい?君は私のものだ。刹那、心配したよ。

 3日間眠り続けていたんだ。目が覚めて良かった。」

 グラハムは刹那の顎にそっと手をかけ、ゆっくりと顔を近づけて

 刹那の唇に口づけした。


刹那は白い壁に囲まれた四角い部屋に独り残された。

 もう一度あたりを見まわしてみたが、白で統一された部屋は

 なぜだか異質な感じがする。

 『ここはどこの病院なのだろう・・・』

 刹那は漠然と考えながら、ハッと気がついた。

 『窓がない。』

 この白い病室には窓がなかった。

 『ここは病院じゃない。』

 刹那は目が覚めてから、ずっと感じていた違和感に気づいて

 不安になった。

 刹那がベッドから起き上がり、腕に刺さっている点滴を

 引き抜こうとした時、扉が開いた。

 「ダメじゃないか。寝ていなさい。」

 グラハムが病室に入ってきた。グラハムは少し怒ったのか

 不機嫌そうに刹那を白いベッドに寝かせつけた。

 「スープを持ってきてあげたよ。飲みなさい。」

 グラハムはステンレス製のワゴンに乗った銀色のお皿から

 半透明に輝く薄茶色の液体を銀色のスプーンですくって

 刹那の口元に持ってきた。

 刹那がおそるおそる口にすると、意外と美味しかった。

 それはコンソメスープだった。刹那は具が入っていない

 コンソメスープを見たのは初めてのような気がした。

 「美味しいかい?3日間何も食べていないからね。

 最初は胃に優しいスープからにしたほうが良いと思って

 特別に作らせたんだ。」

 グラハムはにっこりと微笑んだ。

 「さあ、もっとお飲みなさい。」

 刹那はグラハムの機嫌が直ってほっとした。

 幼子のように口を開け、スープを飲ませてもらっていると

 不思議と先ほどの不安は消えいく。

 まるで雛鳥が親鳥から餌を与えられている時のような

 信頼感が生まれた。

 刹那は幸せだった。

 刹那は幼子のように甘えた目つきで媚びたように口を開き

 スープを飲んだ。

 刹那の腕には点滴の針が刺さっている。

 血管に常に注ぎ込まれるその薬には麻薬にも似た作用がある。

 また、グラハムの持ってきたスープにも同じ薬が入っている

 事を刹那は知らない。

 霧のかかった思考の中で刹那はグラハムだけを見ていた。

 グラハムは満足そうに微笑みながらスープを与えている。

 やがて刹那がスープを飲み終えると、グラハムは

 「今はまだ、ゆっくり寝てなさい。おやすみ。刹那。」

 と言って、刹那の額に口づけし、部屋を出て行った。

 グラハムが立ち去った後、刹那はゆっくりと眠りについた。
 
 テレビも時計もない白い空間には静寂だけが漂っていた。



 「あっ、あ、ああ~」

 密室に刹那の声が響く。

 「気持ち良い?」

 グラハムが指で真珠玉をかき混ぜながら聞いた。

 「ああ、いい、もっと~」

 甘い声をあげる刹那にグラハムは目を細めた。悪夢から

 目覚めた刹那は従順だった。毎日、与えられるスープには

 何も考えられなくなる薬が入っていて、ボーっとした思考の

 中で刹那は快楽だけを追い求めた。体内に入った真珠が

 刹那を責め立てる。2本の指でぐるぐるとかき混ぜるグラハム

 に刹那は懇願した。

 「ああ~、イク~、もうイかせて~」

 「まだダメだよ。」

 グラハムはそう言うと、優しく刹那に触れた。白い紐に

 戒められているそれの先端を指で軽くはじくと蜜を滴らせて

 刹那は嬌声を上げた。縛ってから既に2時間が経過している。

 吐き出す事のできない苦痛に刹那は限界まで昇りつめた。

 ガクガクと身体を震わせ、目から生理的な涙が溢れる。

 「もう解いて。お願い。」

 哀願する刹那にグラハムは意地悪な提案をした。

 「君が卵を産んで見せたら、解いてあげるよ。」

 グラハムは指を引き抜くと、刹那に足を開くように命令した。

 おずおずと刹那は両手で自らの太腿を掴み、グラハムに

 全てを曝け出した。ヒクヒクと動く下の口がぱくっと開いたかと

 思うと、コロコロと白い真珠が飛び出してきた。海亀が産卵する

 ように刹那は涙を流しながら真珠の卵を産んだ。だが、8個

 出したところで止まってしまった。

 「まだ2個残ってるね。10個全部出したら、解いてあげる。

 頑張って出してごらん。」

 刹那は必死で頑張ったが、随分と時間をかけても1個しか

 出なかった。あとの1個は直腸の奥深くに入り込んでしまった

 ようだった。グラハムは涙を流しながら卵を産もうとしている

 刹那にこう言った。

 「まだ1個残っているね。約束だから解いてあげられないよ。」

 そして、刹那の足を大きく抱え上げて、グラハムは刹那の

 身体に身を沈めた。



 涙に濡れる刹那の顔は可愛かった。戒めを解いてあげても

 良かったのだが、悪夢をまだ忘れられずに苦しんでいる刹那

 に苦痛を与える事で開放してあげようとグラハムは考えた。

 そうする事でよりいっそう刹那は自分が何者であるかを忘れ、

 過去の苦しみが夢となり現れる薬の効力が発揮されるのだ。

 刹那は混濁した記憶を打ち消すかのように腰を振り乱して

 喘いでいた。母殺しの罪を忘れようとして、大勢の人を殺めた

 自分に罰を与えるように刹那はかつてサーシェスに抱かれた。

 過去に汚れきった子供ほど洗脳し易い者はいない。罪と罰と

 快楽の味を刹那はすでに知っているのだ。純粋無垢の青年に

 この薬を使ってもあまり効果はない。開通の儀式に血を流し、

 発狂する者もいる。だが、子供の頃から仕込まれた刹那の

 身体は易々とグラハムを受け入れた。三日三晩責められても

 正気を保っている。

 「あっ、ああ~、もうダメ~、解いて。お願い。解いて~」
 
 泣き叫ぶ刹那の口を唇で塞いでグラハムは激しく腰を動かした。

 やがて、グラハムが刹那の中に放つと、刹那は苦悶の表情を

 浮かべてグラハムにしがみついた。ブルブルっと震えたかと

 思うと、シャーッと生温かいものがグラハムの腹を濡らした。

 グラハムは少し驚いて刹那を見ると、刹那は失禁していた。

 苦痛と快楽の中で羞恥に顔を赤らめる刹那にグラハムは

 更なる罰を与える事にした。刹那の失態を写真に撮った。

 そして、紐を解いた後、濡れたシーツの上で何度も犯した。

 刹那を罵り、嘲りながら、激しく強く抱いた。羞恥と快楽に

 苛まれた不浄の堕天使は自尊心を打ち砕かれ、悲鳴を上げ

 ながら何度も果てた。意識が薄れ逝く中で刹那はグラハムを

 愛していると錯覚した。本当に愛している人の名前を忘れて

 しまったのだ。グラハムは洗脳に成功した。もはや刹那は

 グラハムのものとなった。罪と罰と苦痛と快楽と羞恥。

 これは従順な人形に生まれ変わる為の儀式だった。


 
 刹那が拉致監禁されてから1週間が過ぎた。白い部屋に

 閉じ込められた刹那は白い天井を見つめていた。ベッドに

 横になって、何も無い部屋で何もせずに天井を見つめていた。

 刹那はここが何階なのかも知らなかった。窓の無い白い壁は

 外界から刹那を遮断していた。テレビも無く、時計も無く、

 昼と夜の区別もつかない部屋で刹那は白昼夢でも見ている

 ように天井を見つめていた。白い世界に吸い込まれて、

 汚れた自分が浄化されればいいと刹那は思った。グラハム

 に抱かれる為だけに自分が存在するような気がして、刹那は

 自分が何者であるかを忘れていった。ゴゴゴゴゴ・・・奇妙な

 機械音が天井から聞こえてくる。音は次第に大きくなり、

 騒音に変わった。ドカンっと爆弾が落ちたような音が聞こえて、

 グラッと揺れたかと思うと、ドシャッと天井と壁が崩れ落ちた。

 刹那はとっさに布団をかぶって難を逃れたが、布団から顔を

 出すと、刹那の視界には青空が広がった。ベッドから向うの

 建物の片面全部が消えていたのだ。あと1メートル近かったら、

 死んでいたかもしれないと刹那は思った。1週間ぶりに見た

 空は青かった。空には何機ものモビルスーツが戦闘していた。

 刹那はそれを映画のワンシーンでも観るように眺めていた。

 すると、1機の緑色のモビルスーツが全速力で近づいてきて、

 コクピットから人が出てきた。

 「刹那!!無事か?!」

 ロックオンが刹那を救出に来たのだった。

 「大丈夫か?怪我はないか?」

 刹那の肩に手をかけたロックオンの顔が凍りついた。

 ずり落ちた布団の下の刹那は裸だったのだ。



 「何故、服を着ていない。」

 ロックオンが怪訝そうな顔をした。

 「何かされたのか?」

 ロックオンが心配そうに刹那に聞いた。

 「なんでもない。」

 刹那はロックオンの手を振り払って俯いた。しかし、身体中に

 つけられたキスマークは何をされたのか物語っている。

 ロックオンは痩せ細った刹那の身体を抱きしめた。すると、

 「放せ。」

 刹那はロックオンを突き飛ばし、ベッドから飛び起きた。

 ロックオンは刹那の下半身にまでつけられたキスマークに

 困惑して目を伏せた。そして、怒りをあらわにして

 「誰にやられた?まわされたのか?」

 と聞いた。だが、刹那は答えなかった。その時、崩れた反対側

 にある部屋の扉が開いた。グラハムだった。

 「まわすわけないだろう。僕がたっぷりと可愛がってあげたん

 だよ。僕は刹那の望む事をしてあげたんだ。君らにはできない

 方法でね。刹那はもう僕に夢中さ。刹那、おいで。」

 グラハムが呼ぶと、刹那はグラハムの元へ駆けて行った。

 「キサマ、刹那に何をした?!」

 「フフッ・・・知りたいかい?」

 グラハムは不敵な笑みを浮かべた。

 「彼は私の人形になったのだよ。」

 「どういうことだ?」

 「こういうことだよ。」

 グラハムは刹那に口づけをした。刹那は嫌がるふうでもなく

 されるがままになっていた。ロックオンは信じられないものを

 見たという顔をした。

 「刹那から離れろ!!」

 ロックオンは銃を構えた。

 「ムダだよ。」

 グラハムは素早く刹那を盾にして、刹那に銃を渡した。刹那は

 ロックオンに発砲した。ロックオンは咄嗟に避けて撃ち返した。

 射撃の腕が良いせいかグラハムの肩に当たった。

 「チッ!!」

 グラハムは片手で肩を押さえて、後ずさり、ドアから逃げて

 行った。残された刹那は銃を持ったまま呆然としていた。

 ロックオンは無言で刹那から銃を奪い取ると、刹那を担いで、

 ガンダムに乗り込んだ。



 裸で戻った刹那を見て、ソレスタルビーイングの仲間は

 驚いた。何か着るものをとスメラギが言うと、ティエリアが

 自分の着ていたカーデガンを刹那の肩にかけた。そして、

 アレルヤに部屋に連れて行くように言った。ロックオンは

 刹那が裸で監禁されていた事と事情を聞いても何も話さない

 刹那の様子がおかしいと皆に説明した。とりあえず、アレルヤ

 が刹那の世話をする事になった。甲斐甲斐しく世話をする

 アレルヤに刹那は終始無言だった。

 「皆、君を心配していたよ。本当はすぐにでも探し出して

 救出したかったけど、刹那が誘拐されてから、敵の攻撃が

 激しくて、身動きがとれなかったんだ。ガンダムは4機そろって

 ないとダメだね。この1週間で相当のダメージを受けたよ。

 南の島に行くんじゃなかったってスメラギさんは泣くしね。

 ガンダムがあっても操縦できる者がいないんじゃ戦えない。

 敵は戦力を削ぐ為にガンダムマイスターを誘拐したんだと

 思う。刹那がいなくなって刹那一人に今まで随分助けられて

 いたんだなぁって身にしみて分かったよ。刹那を失うのは

 ガンダムを失うのと同じ事なんだなってね。あの基地を攻撃

 したのはロックオンの単独行動だよ。みんなは止めたんだ。

 誘拐された場所から考えて、刹那がいるのは多分あの基地

 だと思うってスメラギさんが推測しただけで、基地の中の

 何処に監禁されているかも分からなかったから、危険だって

 止めたんだけど、ロックオンは一人で飛び出してしまって、

 後から、僕達が追いかけたんだ。刹那は運が良い。あと

 1メートル攻撃がずれていたら、死んでいたよ。ロックオンも

 まさか刹那のいる部屋を破壊するとは思ってなくて撃ったん

 だって。許してあげてね。」

 アレルヤはにっこりと微笑んで刹那の手を握りしめた。だが、

 刹那は虚ろな目をして黙っていた。やや長い沈黙の後、

 刹那はぽつりとつぶやいた。

 「・・・寒い・・・」

 アレルヤがハッとして刹那を見ると、刹那はブルブルと

 震えていた。薬の禁断症状だった。



 薬漬けにされた刹那は薬が抜けるまで部屋に拘束される事に

 なった。刹那は完全な鬱状態に加えて、過敏になり、ちょっと

 した事にも怯えたので、部屋に閉じ込めて、アレルヤが世話を

 する事になった。刹那が帰還してからの3日間、食欲のない

 刹那はスープばかり飲みたがった。何故だか分からないが、

 スープを飲んだ時だけ少し落ち着くように見えた。

 「刹那ってコンソメスープ好きだったっけ?」

 美味しそうにコンソメスープをスプーンですくって口に運ぶ刹那

 にアレルヤは聞いた。すると、刹那は急に表情を曇らせて、

 「別に」

 と答えた。

 「スープ以外も何か食べたほうがいいよ。まだ食欲ない?」

 「・・・」

 「食べたら、熱測ってね。熱はなさそうだけど・・・」

 アレルヤが刹那の額に手を当てると、刹那はビクッとなった。

 「どうした?」

 アレルヤは刹那の顔を覗き込んだ。刹那は赤くなって、

 目をそらし、横を向いた。

 「刹那・・・してあげようか?」

 アレルヤが刹那の耳元で囁いた。

 「パブロフの犬って知ってる?スープを飲んでいる時の

 刹那の顔、すごく卑猥だよ。」

 アレルヤは刹那の下半身をズボンの上からぎゅっと掴んだ。

 刹那は驚いて

 「やめろ!」

 と、叫んだが、アレルヤはやめなかった。それどころか、

 ズボンを脱がせようとした。抵抗する刹那にアレルヤは

 「気持ちいいことをしてあげるだけだよ。心配しないで。」

 と言った。アレルヤの唇が刹那の下半身に触れると刹那は

 大人しくなった。快感が体中を駆け巡る。ソレスタルビーイング

 の仲間とはそういうことはしてはいけないと刹那はずっと

 思っていたのに、今まで一度もこんな事はしなかったのに、

 今になって、何故アレルヤはこんな事をするのだろうと刹那は

 疑問に思った。しかし、アレルヤにペロペロと舐められて、

 刹那の思考は停止し、とうとう声を抑えきれなくなった。

 「あ、はぁ、あぁ、ああ・・・もう、ダメ。」

 あっという間にイキそうになって、刹那は喘いだ。その時、

 突然ドアが開いた。乱れた姿のまま刹那はドアに目をやると、

 そこにはロックオンが立っていた。



 「何してやがる!」

 ロックオンはアレルヤにつかみかかった。

 「誤解だよ。ロックオン。僕は介抱してただけだって。」

 「どこが!嘘をつくなよ。へんな言い訳するなよな。」

 「刹那がまるで媚薬でも飲んだような顔してたからさ。我慢させ

 とくのも気の毒だから、一回ぬいたら楽になると思ってね。

 手伝ってやろうと思ったわけ。」

 「本当なのか・・・」

 「本当だよ。」

 アレルヤはニッコリと笑って言った。

 「でも、僕はもう退散するよ。続きはよろしく。」

 「ま、待てよ。」

 焦るロックオンを置いてアレルヤはにこやかに去って行った。

 残されたロックオンは途方に暮れた。

 「続きったって・・・男同士でどうやればいいんだよ。」

 ボソリと言った言葉を刹那は聞き逃さなかった。

 「帰れよ。嫌なんだろ。さっさと出てけよ。」

 刹那がロックオンを睨みつけて言った。刹那は好きな人に

 みっともない姿を見られた上に拒否されて、胸の奥に何かが

 刺さったように心が痛んだ。

 「刹那・・・」

 ロックオンは何か言おうとしたが、言葉が出ないらしく、しばらく

 黙って立ち尽くしていたが、やがて、ロックオンは意を決して、

 「俺、やるよ。」

 と言った。

 「や、やらなくていいから。」

 刹那は焦って断った。

 「遠慮するなって。」

 ロックオンが顔を近づけてくる。刹那が思わず顔を背けると、

 ロックオンは顎を掴んで正面を向かせた。唇を押し付けられ、

 舌が入ってきた。ロックオンの舌が刹那の舌を吸い上げる。

 舌と舌を絡ませながら、ロックオンの手が刹那の下半身に

 伸びた。

 「あっ、やぁ、やめろっ。」

 軽く掴まれただけで全身に電流が走ったみたいになった。

 身体の中心から湧き上がる快感に刹那は負けて、ブルブルッ

 と震えたかと思うと、ドクドクッと吐き出された白い液体で

 ロックオンの手を汚してしまった。凝視するロックオンの瞳に

 羞恥に顔を赤らめる刹那の姿が映る。ロックオンは濡れた手

 を刹那に見せて

 「気持ち良かった?」

 と聞いた。刹那はあっという間に達してしまった自分を

 恥ずかしく思って、顔を更に赤く染めた。



 ロックオンは刹那の足を大きく広げて、白い液体を小さな窪み

 になすりつけた。指を1本入れて、興味津々という顔つきで

 「痛くない?」

 と聞いてきた。刹那が首を横に振ると、もう1本指を差し入れて

 「痛い?」

 とまた聞いてきた。

 「何本入るかな。3本入りそうな気がするけど・・・

 3本入れていい?」

 指2本だけでいっぱいに広がったそこは3本入れるのは無理

 だった。無理やりねじ込めば3本入るのだが、苦痛を伴う。

 刹那は痛いのは苦手で、首を横に振った。

 「2本がいいの?」

 ロックオンが指を2本入れたまま聞いてきた。刹那は子供の頃

 サーシェスに乱暴に扱われていて、その後に寝た男達にも

 今まで指を何本入れたら良いなんて聞かれた事がなかった

 ので、すごく恥ずかしくなったのだが、刹那は小さな声で

 「うん。」

 と返事をして頷いた。すると、ロックオンはニコッと笑って、

 2本の指を動かした。始めはゆっくりと次第に速く、リズミカル

 にクチュクチュと音をたててロックオンは指を動かした。

 「あ、ああっ、ああ~」

 刹那はロックオンの指のリズムに合わせて腰を動かした。

 喘ぎながら腰を振る刹那に

 「ここ気持ち良いの?」

 と、またロックオンが聞いてきた。良いに決まってるのに何で

 聞くのかと刹那は思った。ロックオンは相変わらずニコニコして

 いる。刹那は何だかバカにされていないか心配になってきた。

 刹那は男を知っている事をソレスタルビーイングの皆に内緒に

 してきた。それが、拉致監禁されて、バレたとたん、アレルヤ

 が口でしてきた。ロックオンに至っては同性愛者でもないのに

 アレルヤに勧められて、こんなことをしている。刹那は別に

 自分が欲望のはけ口になるのはなんともないけれど、こんな

 のは嫌だと思った。刹那は急に悲しくなって涙が出てきた。

 大粒の涙を流す刹那を見て、ロックオンは驚いた。

 「どうしたんだ?」

 刹那は泣きながら

 「もう、やめてくれ。」

 と言った。

 「どうして?さっきまであんなに気持ちよさそうにしてた

 のに・・・何でだよ。」

 ロックオンが少し怒った顔で聞いてきた。刹那は

 「俺のことバカにしてるんだろ。好きでもないのに、ただ

 やりたいだけでやるんなら、いちいち聞くなよ。黙って、

 さっさと突っ込めばいいだろう。」

 「刹那。」

 ロックオンの唇が刹那の唇を塞いだ。噛み付くような荒々しい

 キスに刹那は目を閉じて、これでいいと思った。もう友達には

 戻れない。刹那はロックオンの背中に手をまわした。

 息苦しいほどのキスの後、ロックオンはこう言った。

 「刹那が好きだ。」

 刹那は耳を疑った。目を大きく見開いて、信じられないと

 いった顔の刹那にロックオンは

 「前からずっと好きだった。だけど、俺は男を好きになったのは

 初めてで、どうしていいのか分からなくて、ずっと自分の気持ち

 を隠してたんだ。俺は刹那を弟のように可愛がっていたのに、

 アレルヤにとられるのは嫌なんだ。刹那の喜ぶことは何でも

 してあげるから、いちいち聞くなって言うのなら聞かないから、

 だから、泣くなよ。お願いだ。刹那。」

 ロックオンの瞳には偽りも欲望も映っていなかった。ただ、

 優しさだけが真実の愛を映し出していた。刹那はロックオンが

 ニコニコしていたわけが分かったような気がした。刹那は再び

 ロックオンの首に手をまわすと、

 「入れて。」

 と、囁いた。



 大きくて熱いものが刹那の中に入ってくる。指で慣らされて

 既に柔らかくなったそこは苦もなく恋焦がれた人のものを

 受け入れた。ロックオンは刹那の肉の感触を味わうように

 内壁をこすりあげた。

 「あ、あああ~」

 いいところを突かれて刹那は嬌声をあげて喜んだ。ロックオン

 は刹那の足を肩に担いで胸の突起を指で軽く摘んだ。

 「あっ、あぁ~」

 「胸感じるの?あ、聞いちゃいけないんだっけ?」

 ロックオンがクスッと笑って言った。

 「意地悪。」

 刹那は拗ねたように言った。これまでにも羞恥心を煽る為に

 いろいろと聞いてくる男はいたが、ロックオンは天然だった。

 天性の明るさで喋り続けるのだ。ロックオンは両手でしつこく

 刹那の両の胸を弄っていた。快楽に弱い刹那は挿入したまま

 胸を弄られるのが苦手だった。快楽の波に呑まれた刹那は

 無意識に腰を振り乱して喘いだ。

 「刹那は淫乱だね。」

 先端からトロトロと蜜を滴らせている刹那を握りしめて、

 ロックオンは言った。そして、親指で先端から溢れる蜜を

 掻き出し始めた。

 「いっ、いや、やめっ!」

 痛みを伴う快楽に刹那は焦って抵抗した。

 「じゃ、自分でやってみせて。」

 ロックオンが刹那の手を下半身に持っていこうとする。

 「い、いやだっ!」

 顔を真っ赤にして抵抗する刹那にロックオンは

 「可愛いね。」

 と言って、口づけした。唾液が糸を引くほどの濃厚なキスを

 しながら、ロックオンは激しく腰を動かした。身体の奥まで

 深く貫かれ、欲望でいっぱいに満たされ、刹那は幸せだった。

 蕩けるように熱い身体は貪欲に吸い付き、無意識のうちに

 ロックオンを味わっていた。締め付けるたびに脈打つ感触が

 刹那を至福の喜びへと誘う。強く激しく深く愛されて刹那は

 絶頂を迎えた。頭の中が真っ白になって、刹那が絶頂の

 余韻に浸っていると、ロックオンはベッドから起き上がり、

 ティッシュを探した。

 「ティッシュ、どこかな。あ、あった。」

 ロックオンが無造作にティッシュで刹那の中からトロリと

 出てきた白い液体を拭いた。

 「いっぱい出しちゃってごめん。」

 「謝る事ないだろ。女じゃないんだから。」

 刹那が無愛想に言うと、ロックオンは

 「あ、そっか。」

 と笑った。あまりの無神経さに刹那はムッとしたが、ロックオン

 はニコニコとお腹についた白い液もティッシュで拭いていた。

 「刹那、俺のこと好きか?」

 ロックオンが不意に聞いてきた。好きに決まっているのだが、

 刹那は答えなかった。

 「嫌いか?俺は好きって告白したけど、刹那はどうなんだよ。」

 ロックオンが急に心配そうな顔で聞いてきた。ロックオンは

 刹那に片想いされていたことに気付いていなかったのだ。

 刹那は少し考えて、

 「嫌いじゃないよ。」

 とそっけなく答えた。

 「良かった。じゃ、俺と付き合ってくれるよな。俺だけのものに

 なってくれ。」

 「考えとく。」

 刹那は答えた。出会った時からロックオンに心奪われていた

 刹那は初めからロックオンのものだった。拉致監禁された

 1週間を除いて、刹那は誰とも寝ていない。太陽のように

 眩しく明るいロックオンに出会ってからの刹那は不浄である

 自分を隠し、乙女のように清らかな生活を送っていた。

 恋するが故に身も心もロックオンに捧げていたのである。

 だが、刹那は愛を告白する術を知らなかった。自分の気持ち

 を言葉で相手に伝える事のできない刹那は黙ってロックオンに

 キスをした。小鳥が啄ばむような軽いキスに親愛を込めて、

 子猫がじゃれるように恋人に絡みつき、宝物を手に入れた少年

 のように刹那は目を輝かせて、ロックオンを見つめた。

 ロックオンの瞳には刹那の笑顔が映っていた。


                              (完)



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秘密「疑惑」

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 運命の悪戯なんて信じないって思っていた。あの日までは・・・

 「今日から第九に配属になった佐伯洋介君29歳だ。」

 警視総監が連れてきた男を見て、薪の顔色が変わったのを

 青木は見逃さなかった。鈴木にそっくりの顔で背が高くて

 足が長いモデル体型の新人はさわやかな笑顔で

 「よろしくお願いします。」

 と挨拶をした。世の中には3人同じ顔の人がいるというが、

 鈴木に似ていて鈴木よりもカッコイイ男が目の前に現れた。

 青木は薪の視線が彼の顔に釘付けになった後、何か物思いに

 ふけったように遠くを見つめていることに気づき落胆した。

 薪さんは鈴木さんが好きだった。この事実は変えられない。

 自分なんかを薪さんが相手にするのは鈴木さんに似ている

 からだと第九の皆が噂していることも知っていた。鈴木さんの

 カッコイイバージョンが現れたらもうお終いだと青木は思った。

 「おい、あの新人、財閥の御曹司なんだって知ってたか?

 おまけに東大法学部を卒業した後、ハーバードに留学してFBI

 にいたんだってさ。超エリートだよな。」

 翌日、小池が面白そうに青木に言った。岡部はいつになく

 親切に新人に仕事を教えている。薪は書類に目を通しながら

 佐伯が気になるのか時折、彼を見ていた。青木は薪の行動

 すべてが気になった。心のどこかで薪は佐伯に惹かれている

 のではないかという疑惑が青木の中に生まれた。
                       


 「MRI捜査を開始する。」
 
 第九に緊張感が漂った。連続少年殺人事件の犯人はまだ

 不明である。すでに3人の殺された少年の脳を見ている。

 少年を監禁拘束、暴行し、生きたまま手足を切断している

 男は仮面をつけており、顔が分からない。少年の返り血を

 浴びて、真っ赤に染まった犯人は仮面をつけていても、

 笑っているのが分かる。犯人は狂ったように笑いながら、

 バスタブに切断した手足を放り込んで、再び少年を犯した。

 浴室は血の海だった。

 「う、ぐぅ、」

 「洗面器」

 青木は佐伯に洗面器を差し出した。佐伯は洗面器に吐いた。

 初めてMRIを見たものは大抵そうなる。

 「外でしばらく休みますか?」

 青木は佐伯を休憩室まで連れて行った。長椅子に佐伯を

 寝かせるとすぐに第九に戻った。別に置き去りにしたかった

 わけではないけれど、佐伯を励まそうとする気になれない

 自分に嫌気がさしたのだった。自分はつくづく心の狭い男

 だと思った。MRI捜査が終了してから様子を見に行こうと

 青木は思った。だが、誰よりも先に様子を見に佐伯のもと

 へかけつけたのは薪だった。

 「大丈夫か?」

 薪が寝ている佐伯の額にそっと手を当てて聞いた。

 「はい、ありがとうございます。大丈夫です。」

 佐伯はにっこりと微笑んだ。

 「ゆっくり休め。最初は誰でもこうなる。そのうち慣れるから。」

 驚いたことに薪が優しい言葉をかけている。青木は信じられ

 ないものを見たという気持ちでいっぱいになった。

 「またお食事に連れて行ってください。俺がおごりますから。

 今夜、あいてますか?」

 「ああ、何時にする?」

 信じられない会話まで聞いてしまったぁ~。

 青木はその場から逃げ出した。泣きそうになりながら廊下を

 走る自分が情けなくて涙が出そうになった。泣くな泣くなと

 自分に言い聞かせて帰宅した。数時間後、気がついたら

 青木は薪のマンションの前に立っていた。

                          

 ぼんやりとした月が空に浮かぶ頃、青木は薪のマンションの

 前に来ていた。薪のマンションに幾度も泊まっているが、鍵は

 貰っていない。薪は半年近く付き合った青木に鍵を渡していな

 かった。合い鍵は作らないという薪に青木は何も言えなかった。

 鍵どころかバレンタインのチョコレートさえ貰っていない。くれる

 と思っていたのにくれなかった。バレンタインの日に匿名で

 チョコレートが青木のデスクの上に置いてあった。青木は第九

 の皆に女の子からチョコレートを貰ったと自慢した。義理チョコ

 と分かっていても何個貰ったか自慢し合うのは毎年のことで、

 その時の青木は深く考えていなかった。しかし、薪は青木との

 ディナーをキャンセルした。仕事が忙しいと言われたのだが、

 薪は何か怒っているようだった。それ以来、青木が薪と二人で

 過ごした日はない。バレンタインの翌日に現れた佐伯のせい

 だと青木は思った。きっとあいつに心変わりしたに違いない。

 今頃はホテルにでも行っているのかも知れない。俺が最初に

 デートに誘った日、酔った勢いでホテルに誘ったら薪さんは

 ついて来た。随分と遊び慣れているみたいだった。俺は薪さん

 が好きだから恋人だって自慢したいのに誰にも言うなと薪さん

 に言われている。薪さんは鈴木さんの写真を捨てていない。

 俺よりもっと鈴木さんに似ている男が現れたとたんに俺は捨て

 られるのか?青木は頭を抱えてマンションの前に座り込んだ。

                            

 その時、一台のタクシーがマンションの前に止まった。

 青木がとっさに植木の陰に隠れると、タクシーから薪と佐伯が

 降りてきた。二人はいささか酔っているようだった。

 「薪さん、今日はありがとうございました。とても素敵な夜でした。」

 佐伯はそう言うと薪の肩を抱き寄せていきなり唇を奪った。

 薪は佐伯を拒んで突き飛ばした。だが、佐伯は薪の手首を

 掴んでもう一度、強引にキスをしようとした。

 「やめろ!!」

 青木が飛び出して、佐伯を殴った。

 「俺の薪さんに手を出すな!」

 青木は佐伯に言った。そして、薪の肩をそっと抱き寄せて

 「大丈夫ですか?」

 と聞いた。しかし、薪は何か言いたげな瞳で青木を睨んだ後、

 青木を振り払い、無言でマンションに入っていった。

 青木は慌てて薪の後について部屋まで入り込んだのだが、

 その間、青木が話しかけても薪は何故かずっと黙り込んで何も

 言わなかった。

 「薪さん、何でずっと黙ってるんですか?何か言って下さい。」

 「人が見ていた。人に見られたらみっともないだろ?」

 「薪さん、あなたって人はいつも世間体ばかり気にして・・・

 こんな時でも世間体とかにこだわるんですか?」

 青木はイラッとして薪をリビングの床に押し倒した。

                               

 青木は馬乗りになって薪のネクタイに手をかけた。

 「やめろ!バカ!」

 薪は抵抗したが、青木は薪の悪態をつく唇をふさいだ。

 無理やり唇に舌を割り込ませて薪の舌を吸い上げるように

 舌を絡ませた。息苦しいほどの長いキスをしながら、青木は

 薪のワイシャツのボタンを一つずつ外していった。そして、

 薪の白い肌にゆっくりと舌を這わせた。薪は快楽に弱い。

 さっきまで嫌がっていたのにもう抵抗する気もなくなったのか

 青木に身を任せている。青木がベッドに薪を運ぼうとすると、

 「ここでいい。」

 と薪は言った。薪は少し変わった場所でするのが好きだった。

 お風呂とか台所とか・・・玄関に入ってすぐ廊下で押し倒した

 こともあった。薪が誰と付き合ってそんな行為を覚えたのか

 青木は知らない。青木は薪の過去など知りたくもなかった。

 警視庁の中だけでも薪と一夜を共にしたという人間は多い。

 薪は否定しているが疑えば疑うほどきりがない。

 「あ、やめ、汚い・・・」

 青木が薪の最も感じる部分を舐めようとした時、薪が

 恥ずかしがった。

 「薪さん、洗ってなくても良いですよ。逆にシャワーを浴びて

 帰って来たら、どうしようかと思ってた。良かった。」

 「バカ、僕が浮気していると疑っていたのか?」

 「はい。今でも身体検査したいくらいです。舐めてる時に

 何も液体が出てこないと良いですけど・・・」

 青木は薪の身体の奥まで舌を入れて舐めた。ピチャピチャと

 音をたて、念入りに時間をかけて舐めた。

 「あぁ~あぁ~やぁ~もう入れて。青木~」

 「薪さん、もう欲しくなったんですか?今、入れてあげますね。」

 青木は欲しがってヒクヒクしている薪に自らの身体を沈めた。

 薪の中は熱かった。絡みつく薪に青木は夢中で動いた。


                               
 行為が終わった後、気だるそうに寝ている薪に青木は言った。

 「薪さんもう他の男の人と食事になんか行かないで下さいね。」

 「ん、なんだ、妬いてたのか?」

 「当たり前です。佐伯さんとはどういう関係なんですか?」

 「佐伯は鈴木のいとこだ。鈴木の母親の妹が玉の輿に乗って

 財閥に嫁いだんだ。顔がそっくりなのは血が繋がっている

 せいだ。あいつがまだ学生で日本にいた頃、鈴木と三人で

 何度か食事に行ったことがある。それだけだ。」

 「鈴木さんのいとこだなんて知りませんでした。」

 「誰にも言ってないからな。」

 「そういうことはちゃんと言ってくださいよ。俺、バレンタイン

 薪さんからチョコもらってないし、フラれると思ってたから・・・」

 「チョコレートならやっただろ?」

 「え?いつですか?もらってないですよ。」

 「お前のデスクの上に置いてあっただろ?」

 「あれ?あのチョコ薪さんからだったんですか?俺は

 てっきり・・・薪さん、すみません。でも、なんで直接

 渡してくれなかったんですか?」

 「照れるから。」

 薪はうつむいてボソッと言った。

 「薪さん、好きです。」

 青木は薪に抱きついた。チョコレートを渡す時に照れるから

 デスクの上にこっそり置いておいたなんて、ありえないくらい

 可愛い。なんであの時、薪さんからだって気づかなかったん

 だろうと青木は思った。

 「シャワー浴びてくる。」

 薪が素肌にワイシャツ一枚着ただけの格好で、抱きついてる

 青木を軽く押しのけて立ち上がった。青木はニヤニヤしながら

 「薪さん、一緒にお風呂に入りましょう。」

 と言って、薪の後にぴったりついてバスルームに入り込んだ。

 薪は何も言わずに黙っていた。

 「もう一回してもいいですか?」

 と青木が薪の耳元で囁くと、薪は魅力的な瞳に妖しい微笑を

 浮かべて

 「バカ。」

 と言った。二人の甘い夜はまだ始まったばかりだった。

                                (完)



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秘密 「疑惑」 2

秘密部屋



 「兄ちゃん待って。克洋兄ちゃん、待ってよぉ~。」

 「ハハハ・・・洋介、早く来いよ。」

 洋介は屈託のない笑顔で振り返った克洋の差し伸べた手を

 捕まえた。菜の花畑のあぜ道を二人で手を繋いで走っていく。

 五月晴れの空は何処までも青く、遠くに見える山々は

 都会では味わえない安らぎと癒しをもたらしていた。

 祖母の家に里帰りをすると決まって従兄の克洋に会えた。

 克洋は洋介が物心つく前からいつも遊んでくれた。

 ベビーシッターとは違い本当の友達のように遊んでくれる

 克洋が洋介は好きだった。蝶を捕まえにお花畑を走った

 幼い頃の記憶が夢に蘇る。洋介は死んだ克洋の夢を見ながら

 これは夢なのだとなぜだか思った。

 暖かな陽ざしを浴びて駆けまわる二人だけの幸せな空間は

 そう長くは続かない。いつの間にか克洋は大人になっていた。

 克洋は洋介の手を放して、美しい青年の元へ駆け寄った。

 「紹介するよ。薪剛。俺の親友だ。」

 悪びれもせず紹介する克洋に洋介は腹が立った。兄ちゃんの

 親友はこの僕だ。あんな女みたいな顔の奴なんかじゃない。

 僕に黙って親友を作るなんて許せない。洋介が怒っていると

 二人は立ち去ってしまった。

 「待って。兄ちゃん、待ってよぉ~。」

 置き去りにされて泣きそうな声で洋介が叫ぶと、克洋は

 「ハハハハ・・・・」

 と高笑いして薪の肩を抱き、いなくなってしまった。

 独り残された洋介は悔しくて泣いた。そして大泣きしていると

 夢から覚めた。

 ピピピピピ・・・・目覚まし時計の音がうるさい。

 佐伯洋介は目覚まし時計を止めると、のそのそとベッドから

 起き出した。また、あの嫌な夢を見た。幾度となく見る夢に

 佐伯はうんざりしていた。日本に帰って来てからは世田谷の

 邸宅を一軒もらって独り暮らしをしている。洗面台に向かい、

 顔を洗おうとしたが、口元に水がしみて痛かった。鏡には

 口の端が切れてあざをつくった自分が映っていた。

 「くそっ。あいつ許せない。」

 昨日、青木に殴られた口元を押さえて佐伯は鏡を睨みつけた。

                             

 月曜日 AM6:50

 公園のトイレで被害者の少年の手足が発見される。

 「ジョギングをしていた中年男性が公衆トイレに立ち寄った

 際にトイレの個室の洋式便器に切断された手足が4本投げ

 込まれているのを発見、警察に通報。ただちにその手足を

 鑑識にまわした結果、手足を切断されて殺害された少年の

 ものと判明。少年の遺体はすでに土曜日の朝、多摩川下流

 で発見されており、犯人は手足を冷蔵庫などで2日間保冷

 した状態で持っていたと推測される。なぜトイレに捨てた

 のかは不明だが、この連続殺人事件の3人目の被害者のみ

 1人目2人目の被害者と違う方法で死体遺棄されている。

 ここまでで何か質問は?」

 薪室長が淡々と説明する捜査会議を第九のメンバーは

 真剣な表情で聞いていた。青木も真面目に聞いていたが、

 つい寝不足であくびが隠せなかった。あくびをした途端、

 薪に睨まれた。しまったぁ。また怒られることをしてしまった

 と青木は思った。昨日4回はやりすぎた。薪さんのマンション

 で床に押し倒して1回。お風呂に一緒に入って1回した後、

 ベッドに連れて行って2回。しばらくしてなかったから昨日は

 つい4回もしてしまった。喧嘩えっちって燃えるんだなぁって

 思ったけど、翌朝、眠くて腰が痛くて大変だった。薪さんは

 腰がぬけるほどやったのに随分と平気な顔してるなぁ。

 さすが薪さん。一生この人について行こう。青木はニヤつく

 のを堪えながら必死に真剣な表情を作っていた。

                          

 「犯人の手口が急に変わったのはなぜですか?」

 小池が質問した。薪は書類に軽く目を通してから質問に答えた。

 「わからない。しかし、犯人はこの2週間で3人の少年を殺害

 しており、だんだん犯行が猟奇的にエスカレートしていると考え

 られる。1人目の被害者は特に目立った外傷もなく、公園の池

 で水死体として発見。死因は絞殺によるものである。被害者の

 年齢は14歳。JR吉祥寺駅前にある塾の帰り道で突然後ろから

 殴られて気を失い拉致される。死亡推定時刻までのおよそ4時

 間目隠しをされており、MRI捜査で犯人を確認できなかった。

 また、少年はいつも自転車で塾に通っていたが、その日は雨

 だったため、公園沿いの道を1人で歩いていた。事件当初は

 顔見知りの犯行ではないかと地元周辺を警察が捜査していたが

 手がかりがつかめず、2人目の被害者の遺体が多摩川上流で

 発見されてから第九にMRI捜査が依頼された。1人目の被害者

 及び武蔵小金井駅付近で拉致された2人目の被害者16歳と

 京王多摩川駅付近で拉致された3人目の被害者13歳との接点

 はいずれもない。この事件で共通して言えることは塾の帰りを

 狙った犯行で駅から徒歩10分から20分離れた人けのない場所

 を1人で歩いているところを後ろから鈍器で殴られ車に乗せられ

 拉致されている。おそらく犯人は駅周辺で好みの少年を物色し、

 気付かれないように自宅まで後をつけ、襲い易い場所を下調べ

 した上で計画的に拉致しているものと考えられる。」

 「犯人が何ヶ月も前から連続殺人の計画を立てていたとなると

 この先も第4、第5の被害者が現れる可能性が強いですね。」

 佐伯が手をあげて発言した。しかし薪はこう答えた。

 「1人目の被害者はいつもは自転車で塾に通っていたことから

 偶発的な犯行と考えられる。まぁ、雨が降るのを気長に待って

 襲ったという可能性もないとは言い切れないが・・・後の二人は

 電車で塾に通っていた為、いつも決まった時間に人けのない道

 を1人で歩いていた。下調べに何ヶ月もかけなくても1回後を

 つければ次の塾の帰り時刻に待ち伏せすることは可能だ。駅も

 繁華街は避け大きな公園などが近くにある駅を地図で探せば

 地の利に詳しくなくても数日間の下調べで犯行に及ぶことが

 できる。つまり、犯人は捕まるまで永遠に少年を襲い続ける

 可能性があるということだ。」
                        


 気を失っていた16歳の少年が頭から水を浴びせられて目を

 覚ました。少年が最初に見たものは仮面をつけた裸の男だった。

 少年は自分がビニール製の紐で縛られていることに気付いた。

 手は後ろ手にきつく縛られ、胸や首、そして太ももまでも縛ら

 れていた。ちょうど正座させられた格好で足首を縛った紐が

 後ろで縛られた手首を通って少年の首の後ろで結ばれている。

 バスルームの鏡に全身がよく映るように少年は座らされていた。

 何か叫ぼうとしても口に猿轡を咬まされていて低い呻き声しか

 出せない。

 「まだ眠いかい?クロロホルムって奴はよく効くな。」

 少年の頭からは血が流れていた。一滴の血が目に入り少年は

 混乱したように頭を振った。

 「痛いかい?かなづちで殴ったから頭が少し割れちゃったね。

 でも気を失ってすぐクロロホルムを嗅がせたから痛みはさほど

 でもないだろう?これから味わう苦痛に比べたらさ。」

 仮面の男はナイフを取り出し、少年の太ももを撫でるように

 ナイフで切った。そして少年を押し倒し、足を左右に開いて

 いきなり挿入した。レイプされた少年は錯乱したように呻いて

 いる。

 「薪さん、薪さん、大変です。佐伯がまた吐きました。」

 MRI捜査の最中に小池がゲロを吐いてる佐伯を指差して言った。

 薪は目を細めて

 「外に連れ出せ。」

 と言った。

 「小池、早くしろよ。臭いなぁ。ぞうきん、ぞうきん、誰か床を

 掃除してくれ。」

 岡部が第九の皆を動かした。

 「MRI、一時中断しますか?」

 青木が薪に聞いた。すると、薪はこう言った。

 「かまわん、続けろ。」

                           

 このシーンを全員で見るのは2回目だった。犯人が仮面をつけて

 いる限り殺害された少年の脳を何回見ても顔は分からない。

 拉致現場で一瞬少年が意識を失う寸前に写っていた映像も何回

 も繰り返して見たが犯人は帽子を深くかぶりサングラスをかけ

 花粉症用の大きなマスクをつけていて顔は分からなかった。また

 革製の手袋をしていることから指紋も見つけにくいと思われる。

 犯人の顔さえ分かったら身元さえつきとめたら、殺害現場である

 犯人の自宅を家宅捜索すれば事件は解決するのに身体の特徴

 だけでは捕まえられない。青木は食い入るように画像を見ている

 薪に疑問を持った。まさか薪さんはこういう筋肉質な男が好みの

 タイプとか・・・贅肉なんかどこにもない鍛え上げられた肉体美。

 背は高く足はモデル並みに長い。これだけスタイルが良かったら

 モテルと思うけど、なぜ少年を襲うかなぁ。あ、でも、顔は不細工

 だったりして・・・それとも顔に傷がある男とか。コンプレックス

 を持った人間ほど自分より弱者を狙う傾向がある。今回のように

 少年ばかりを襲っている犯人は何らかのコンプレックスを抱え、

 極度なストレスによる精神異常者のケースも多い。

 「青木、犯人の身体の特徴を調べろ。ホクロの数と位置まで

 正確に調べるんだ。」

 「はい。わかりました。」

 ホクロは右肩に一つ。左の腰骨の上に一つ。・・・

 こんなことして何になるんだろう。犯人が裸で町を歩いていない

 限り、ホクロなんて何の証拠にもならないのに・・・薪さんの

 考えていることが分からない。

 「腕にもあるぞ。見落とすな。」

 青木は薪に叱られた。薪は真剣に男の裸を観察している。

 ホクロの数を数えている間に行為は終わった。犯人はシャワー

 で少年の身体を洗い流し、体液が残らないようにしている。

 頭が良いのかもしれない。鑑識で何も出ないように細工して

 いるのだ。仮面もMRI捜査を想定してつけているのだと思う。

 青木は犯人が恐ろしくなった。犯人はナイフで少年を切り裂き、

 腹から血を流して泣いている少年に向かって笑いながら何か

 ブツブツ独り言のようにつぶやいている。何を言っているのか

 読唇術で解れば良いのだが、はっきりと口を開かないので

 読み取れない。青木は何を言っているのか何度も考えた末、

 犯人の唇のわずかな動きを真似て実際に発音してみた。

 「ハハハ・・・に・・・さ・・・ハハハ・・・に、兄さん。」

 薪の顔色が変わった。

 「兄さん、兄さん、と犯人は繰り返し言っています。」

 と、青木は薪に報告した。

                           

 翌日、佐伯が薪に辞表を提出した。

 「佐伯、この辞表は受け取れない。もう少し第九で頑張れないか?

 アメリカから帰国して第九に転属願いを出したのはお前だろ?」

 「はい。でも、いろいろと考えた末アメリカに帰ることにしました。」

 「佐伯、この前の事を気にしているのなら、気にしなくていい。

 今夜また二人だけで会えないか?」

 薪がずるそうに微笑んだ。そして、佐伯の唇の端にそっと優しく

 指先で触れて、囁くように聞いた。

 「まだ、痛いか?」

 佐伯は薪の行動に困惑したように目を伏せてこう言った。

 「青木さんに叱られますよ。」

 「青木とはそんなんじゃないんだ。」

 薪は上目遣いで佐伯を見つめた。誰もがハッと息を呑むような

 その妖艶さに思わず佐伯の喉が鳴った。ゴクリと生唾を

 飲み込む音が青木まで聞こえてくるようだった。

 「お金持ちのお坊ちゃんは良いよな。」

 小池が青木に耳打ちした。

 「あいつ1年間の研修期間を3週間に変えてもらってアメリカの

 FBIに戻るんだってさ。財閥の御曹司は上層部にも顔が利くから

 やりたい放題だな。日本に帰国してすぐに配属された部署を

 たった2週間で転属願い出して第九に来たのに、1週間も持た

 ないなんて。薪さんも引き止めることないのに。なんであいつ

 だけに優しいのかな。」

 小池は本当に疑問に思っているようだった。だが、青木は

 「そんなんじゃない」という薪の言葉にショックを受けて小池の

 言葉があまり耳に入らなかった。以前、俺が岡部さんとの仲を

 疑った時にも「そんなんじゃない」って言ったぞ。俺との仲が

 「そんなんじゃない」ってどういうことだ?青木の頭の中でまた

 薪への疑惑が浮上した。

                          

 その夜、薪は佐伯の家にいた。フランス料理を食べに行こうと

 言った佐伯に薪は家に行きたいと言ったのだった。佐伯は世田谷

 の邸宅に独りで住んでいる。古い洋館を思わせるアンティーク

 な家具。豪華なシャンデリア。絵画や壷などの調度品。この館は

 総てにおいて洗練されていた。

 「この家は古いのでお恥ずかしいのですが、亡くなった祖父の

 ものを譲り受けたのです。」

 「随分ときれいにしているな。住み込みのメイドでもいるのか?」

 「いいえ。月水金の週3日ヘルパーさんに来てもらっています。」

 「ふ~ん。じゃ、夜は独りか。夕食とかどうしている?」

 「外食ばっかりです。だからレストランを予約するって言ったのに

 せっかく薪さんが来てくれても冷蔵庫の中は空っぽで何も入って

 いませんよ。あ、そうそう、キャビアがあったかな。それから、

 お酒はドンペリで良いですか?」

 「フッ。あるじゃないか。」

 薪はニヤリと笑った。そして、チェストなどの家具を眺めながら

 こう言った。

 「素敵なアンティークだ。僕もアンティークに興味があってね。

 他の部屋も見せてもらえるかな。」

 「いいですよ。2階の寝室をご案内しましょうか?ベッドもキング

 サイズのアンティークですよ。」

 「それは楽しみだ。」

 「薪さん、寝室は階段を上がってすぐの部屋です。俺はシャンパン

 をとってきますから。先に行ってて下さい。」

 「わかった。」

 薪は微笑むとリビングを出た。階段は吹き抜けになっていて

 玄関ホールから美しい曲線を描いて2階へと続いていた。

 20世紀初頭の典型的な造りの洋館だ。おそらく佐伯の祖父が

 アンティークに凝っていて21世紀にそれらしく造らせたのだ

 ろう。薪は階段を上りながら考えた。バスルームはどこだろう。

 2階に上がると部屋がいくつもあった。寝室はすぐに分かったが

 他の部屋も見たくなって隣の扉を開けてみた。納戸だった。部屋

 の中に入ると右側の壁にもう一つ扉があり、巨大なベッドが置か

 れている寝室につながっていた。ここはウォークインクローゼット

 だった。青木の部屋より大きいと薪は思った。薪は無造作に

 積まれている衣装ケースや箱のふたを開けて中を覗いてみた。

 何個目かの箱を開けると、中に仮面が入っていた。連続殺人

 事件の犯人がつけている仮面と同じものだった。その時、佐伯が

 ドンペリを片手にウォークインクローゼットの扉を開けた。

 「何をしてるんです?」

 薪はとっさに何か言おうとしたが、黙ってしまった。佐伯はニコニコ

 笑いながら薪に近づき、いきなりドンペリで薪の頭を殴った。

 薪はドンペリの瓶が砕け散る音を聞きながら気を失った。

                           

 目が覚めると薪はベッドに縛りつけられていた。ビニール製の

 紐で両手首をきつく縛られ、ベッドの柱にくくられていた。

 足首も紐で縛られて左右に大きく開かされていた。薪は

 ぎょっとした。佐伯が仮面をつけていたのだ。薪のワイシャツを

 ナイフで切り裂き、首にナイフを押し当てた。

 「声を出すなよ。いい子にしてな。フフフ・・・たっぷりと

 可愛がってやる。」

 佐伯はナイフでズボンを切り裂き、下着までも剥ぎ取った。

 「や、やめろ。」

 薪は手足を縛られているため弱々しく抵抗したが、

 「うるさい!黙れ!」

 と、佐伯に顔を殴られてしまった。薪の美しい鼻から一筋の血

 が流れた。鼻血を見て興奮した佐伯は薪の下半身を掴んで

 足を抱え上げ、指を入れた。佐伯はローションもなしで、

 1本2本3本と指を増やしていく。

 「う、ううっ。い、痛い。」

 「何が痛いだって?感じてるくせに。この淫乱。」

 佐伯は痛がる薪を罵りながら3本の指をおもいっきり動かした。

 「ひっ、ああ~、ああああ~」

 薪は悲鳴を上げた。

 「大げさに騒ぐなぁ。4本入れたらどうなるかな。あれ?

 入らない。淫乱のくせに狭すぎないか?」

 佐伯はそう言いながら指を無理やり入れた。薪はメリメリと

 裂ける感覚に恐怖を覚えた。血が滲み溢れるのを見て、

 佐伯は指を4本一気に引き抜いた。薪の尻から血が流れた。

 更に興奮した佐伯は何かにとり憑かれたように薪の首を舐め

 上げてこう言った。

 「愛しいよ。愛しいよ。愛してる。」

 「貝沼?」

 薪の表情がこわばった。

 「佐伯、貝沼の脳を・・・いや、鈴木の脳を見たのか?」

                         

 狂気は人から人へと伝染するという。脳を見る者は感情移入

 しないようによほど気をつけない限り、狂気は見た者へと

 受け継がれる。佐伯は鈴木を経て貝沼の狂気にとり憑かれた

 のだった。佐伯は薪にこう答えた。

 「兄さんの脳を見たよ。日本に着いてすぐ・・・兄さんが死んだ

 のは事故なんかじゃなかった。あんたが殺したんだ。俺は兄さん

 が好きだった。俺は小さい頃から勉強勉強でちっとも遊ばせて

 もらえなかったから、本当の友達なんかできなかった。だから、

 従兄の克洋兄さんだけが親友だった。それなのに、あんたが

 大事な兄さんを奪ったんだ。大好きだったのに・・・」

 佐伯は泣いていた。そして、泣きながら薪の首を絞めた。

 「この人殺し!兄さんを返せ!返せ!」

 佐伯は薪の喉を潰すようにグッと指先に力をこめた。このまま

 殺されるかもしれないと薪が思った時、寝室の扉が開いた。

 「そこまでだ。」

 銃をかまえた青木が立っていた。

 「手をあげろ。ゆっくり手を放してベッドから降りるんだ。」

 佐伯はゆっくりと振り返ると両手をあげてベッドから降りた。

 「そのまま床に伏せろ。逮捕する。」

 青木が手錠を取り出そうとした時、佐伯がベッドに転がっていた

 ナイフを拾って青木を刺そうとした。だが間一髪のところで避け、

 青木は佐伯の腕を脇に挟んでナイフを叩き落とした。そして、

 腕を後ろにねじ上げて佐伯に手錠をかけた。佐伯は手錠をかけ

 られるとガクンと頭をたれ、急に大人しくなった。やっと観念した

 かのように見えたが、次の瞬間、突然目を見開きわめき出した。

 「俺は悪くない!全部この悪魔が悪いんだ!兄さんを殺した

 悪魔め!呪ってやる!」

 佐伯は薪に呪いの言葉を浴びせた。青木は驚いて佐伯の頭を

 後ろから殴った。佐伯が床に倒れこんでも何度も何度も拳を

 叩きつけた。

 「やめろ!青木。それ以上殴ると死ぬぞ。」

 薪が青木を止めた。佐伯は血を流して気を失っていた。

 やっと我に返った青木は縛られている薪のもとへ駆け寄り、

 手足の紐をほどいた。

 「遅いぞ。」

 薪がいつもの冷ややかな口調で言った。

 「すみません。」

 青木は薪に謝った。そして、自分の背広を脱ぎ、あられもない

 姿でベッドに座っている薪の肩にかけた。

 「すみません。もっと早く踏み込んでいたら、こんなことには・・・」

 青木は血のついたシーツを見つめながら泣きそうな顔をした。

 「ばか。お前のせいじゃない。」

 「薪さん。」

 青木は薪を抱きしめた。パトカーのサイレンが窓の外から聞こ

 える。今頃、手配していた警察の応援がかけつけたのだった。

 薪みずからのおとり捜査により事件は解決した。

                        

 嫌な事件だったと青木は思った。佐伯は逮捕起訴されたが

 警察病院に入院している。精神鑑定の結果、精神病棟に隔離

 されたのだった。

 「薪さん、犯人が佐伯だって何故わかったんですか?」

 青木が薪に質問した。

 「唇の形が同じだった。」

 仮面の下にわずかに見える唇だけでわかるなんてさすが薪さん。

 と青木は思った。しかも佐伯の唇は厚からず薄からずいたって

 普通の特徴のない唇だった。

 「それに身長187cmのモデル体型の人間は世の中に少ない。

 事件が発生したのも佐伯が帰国した数日後だ。佐伯は東京

 在住で地の利に詳しい。だが動機が最後まで謎だった。真面目

 で優秀な女にモテる奴がなぜ少年を襲うのか解らなかった。

 佐伯は鈴木の脳を密かに見て、貝沼の狂気が伝染したんだ。

 だから鈴木に顔や雰囲気が似た少年ばかりを襲った。僕は佐伯

 のことをノーマルだと思っていたから、飲みに行った帰りにキス

 された時には正直言って驚いたよ。でも同時に犯人だと確信が

 持てたから本人には気付かれないよう極秘に捜査した。」

 「敵を欺くにはまず味方からってやつですか。俺は本気で心配

 しましたよ。岡部さんから薪さんが佐伯の自宅のバスルームを

 確認してくる。いつでも踏み込めるように待機しておけ。と言われ

 たと聞いて、いてもたってもいられなくなりました。もし踏み込む

 のが後少しでも遅かったら殺されていたかもしれないんですよ。」

 「それはない。僕の上着のポケットに仕込んだ盗聴器が1時間

 途絶えたら合図しなくても踏み込むよう岡部に支持してあった。

 佐伯はいつも獲物を3、4時間かけてじっくりと料理する。最初の

 1時間はただレイプするだけで致命傷は負わされない。」

 「また、そんなこと言って・・・俺以外の奴にはもうやらせないって

 約束したのに忘れたんですか?」

 「・・・忘れてた。」

 青木は呆れてものも言えなかった。ただ、マンションのベッドの

 上で裸で寝ている恋人の顔を黙って見つめていた。

 「もう一回したいのか?」

 「薪さん。」

 「冗談だ。」

 薪はクスっと笑った。青木は何を考えているのかさっぱり

 わからない年上の恋人の危うい性質に翻弄されながらも

 自分が守ってあげないとこの人はダメになると思った。また

 口に出して言うと自意識過剰だと叱られるので黙っていたが、

 言葉で想いを伝える代わりに薪を抱きしめた。

 「やっぱりしたいのか?」

 薪は青木の背中に腕をまわして言った。青木は薪に口づけをして

 無言で薪の身体を弄った。言葉よりも深い愛を薪に伝えたい。

 薪の望む形で・・・身体を繋ぐことで伝えられるのならいくらでも

 身体を繋ごう。二人には時間がたっぷりとあるのだから。

 青木は薪を愛情で包み込むために抱いた。

                              (完)



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秘密 「疑惑」 3

秘密部屋



 兄さん、僕は本当に3人も殺したのかな。夢と現実の区別がつかないって

 言われたけど、僕には真実がはっきりと見えているんだ。僕は悪魔の罠に

 落ちただけなんだ。あの悪魔は僕を誘惑して鉄格子の檻に閉じ込めた。

 僕から総てを奪い、笑ってるんだ。悪魔が面会に来るたびに僕は怯え、

 頭が錯乱する。一年間、僕は鉄格子の窓から病院の庭を眺めて

 暮らしてきたけど、来週、別の病棟に移される。

 そこには頭のおかしい連中がいっぱいいて、毎日、そいつらと一緒に

 食堂で食事をするんだって。隔離されていたほうがまだマシだよ。

 自由時間には娯楽室でトランプをしたり、庭を散歩したりする事も

 できるって医師は言うけど、僕は悪魔以外とは口をききたくないんだ。

 僕を虜にする悪魔の白い肌が忘れられない。指に絡みつく肉の感触、

 流れる血、真綿で首を絞めるようにやんわりと細い首に手をかけた時の

 高揚感。兄さんのものを手に入れる事ができた喜びに僕は陶酔した。

 青木は悪魔にひれ伏す害虫だ。兄さんを不細工にしたコピーだ。

 僕は兄さんのコピーを従えて女王様気取りで君臨する悪魔が許せなかった。

 悪魔は僕に優しかったけど、あの優しさは偽者だった。偽りの優しさで

 僕に嘘をつかせた。僕は3人も殺していない。はっきりと覚えている。

 警察に捕まった時は頭が混乱していて、夢と現実の区別がついて

 いないんじゃないかと弁護士に言われて、刑務所に入りたくなかったら

 言う通りにしろと弁護士に言われて、3人殺したと自供したけど、

 本当は違うんだ。本当の事を言ったら、あの悪魔はどんな顔をするかな。

 薪さんが面会に来てくれて嬉しいと嘘をついている僕にどんな言葉を

 浴びせるのだろう。僕はここを出たら、真っ先に悪魔を抱こうと思っていた。

 誰にでも足を開く淫売だ。すぐに僕も受け入れるだろう。

 あいつが兄さんも僕も狂わせた。そうだ。あいつに復讐をしてやろう。

 このまま生きていても僕が病院を出る頃にはあいつはじいさんだ。

 今、あいつに復讐するほうが楽しいに決まっている。両親に手紙を書こう。

 そして、こうするんだ。貝沼のように・・・


 薪さんが総監に呼び出されて1時間が過ぎた。血相を変えて出て行った

 薪さんが心配だ。総監に問い詰められているのだろうか。

 青木は小池や今井たちの噂話を聞きながら、そんな事を考えていた。

 佐伯が自殺した事や誤認逮捕で薪が第九の室長を辞めさせられるかも

 しれないという噂はすぐに科学警察研究所全体に知れ渡った。

 佐伯の両親が遺書を読んで激怒し、総監に文句を言いに来たらしい。

 佐伯は財閥の御曹司だったから、きっと薪さんはクビになると皆が言っていた。

 薪が出て行ってすぐに佐伯の脳が第九に到着した。MRI捜査で事実を

 解明しなくてはならなかったが、ほんの短い期間ではあったものの

 同じ第九の仲間だった佐伯の脳は見ず知らずの犯罪者の脳と違って、

 見るに忍びないものがあった。薪の帰りが遅ければ遅いほど噂が

 本当のような気がして青木はいたたまれなかった。

 更に30分ほど経ってから、薪が戻ってきた。薪はいつにも増して

 蒼白い顔をしていた。だが、平静を装って、捜査説明を淡々と語り始めた。

 「佐伯が自殺した。昨日、病院の自室でガラス製のコップの破片で

 首の頚動脈を切り裂き、出血多量により死亡。病室には遺書が残されていた。

 MRI捜査の担当は青木。お前だ。」

 薪は青木に資料が入った封筒を渡した。

 MRI捜査は人払いをした別室での捜査だった。表向きは鈴木の脳を見た

 佐伯の狂気が皆に伝染するといけないからという理由だが、本当は裸を

 見られたくないからだった。おとり捜査であられもない姿をさらしただけでなく、

 鈴木と過ごした蜜月を佐伯はMRIで見ている。第九の全員に公開できる

 ものではなかった。だから、薪は青木と二人だけでMRI捜査を開始したのだった。

 薪は青木の後ろで腕を組み、黙って画面を見ていた。


 佐伯は雪の降り積もる美しい情景を長い間、見つめていた。

 それから、おもむろに机に向かい、便箋とボールペンを取り出して、

 手紙を書き始めた。手紙の内容はこうだった。

 『お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。

 僕は長い間、嘘をついていました。

 僕は悪魔の罠にはまり、警察に捕まりました。

 でも、真実は違うのです。

 僕は3人も少年を殺してはいないのです。

 本当の事を言おうかと何度も考えましたが、

 毎月、薪さんが面会に来るたびに甘いご褒美をくれるので、

 誰にも言えないまま、ずるずると生きていました。

 彼の美貌に僕も兄さんも人生を狂わされました。

 僕の脳を見てください。

 真実がきっとわかるはずです。』

 手紙を書き終えた佐伯はゆっくりとガラスのコップを手に取り床に落とした。

 割れて飛び散ったガラスの一番大きい破片を拾い上げ、洗面台に向かって歩いた。

 そして、洗面台の鏡の前に立ち、こう言った。

 「薪さん、僕は一人しか殺していない。」

 佐伯はガラスの破片を首に突きたて喉を掻っ切った。

 血は溢れ、血飛沫が鏡を赤く染めた。


 「薪さん、顔色が真っ青ですよ。少し休憩しますか?それか、

 あとは俺に任せて、休んでいてください。」

 「いや、いい、そのまま続けろ。」

 青木は薪を気遣って、数時間見ていた佐伯の脳のMRI捜査を一時中断しよう

 と思ったが、薪は続けるように命令した。MRIの画面には病院に面会に

 来ている薪が映っていた。薪は天使のような笑顔で佐伯に話していた。

 「ここを出たら、一緒に暮らそう。愛してる。」

 薪の背中から大きな黒い翼が生えていた。薪は

 「お土産を持って来たよ。」

 と言って、机の上に置いた箱を開けた。箱の中には少年の手が入っていた。

 「食べて。」

 薪は佐伯に悪魔のように微笑んだ。

 「美味しいのに。なんで食べないんだ?」

 薪は箱の中から指を千切って口に咥えてみせた。

 「美味しいぞ。食べろよ。」

 モグモグと美味しそうに指を食べる薪を佐伯は黙って見ていた。

 「喰えよ。」

 薪の命令に従って、恐る恐る箱に手を伸ばすと、一瞬で箱の中身がカステラに

 変わった。安心した佐伯はカステラを口に持って行くと、また、指に変わった。

 佐伯は指を床に投げ捨てて吐いた。MRIの画面を青木は直視できなくなった。

 佐伯の吐いた嘔吐物は人の指や目玉や肉片が散乱していたのだった。


 「止めろ。」
 
 薪が低い声で言った。青木はMRIの画面を停止した。

 「薪さん、およそ一年前まで巻き戻して捜査しましたが、

 だんだん酷くなる一方です。」

 「仕方がないだろう。佐伯は逮捕直後、錯乱状態にあった。

 精神鑑定で刑務所ではなく病院に入る事が決まったくらいなのだから、

 幻覚を見るのは当然だ。」

 「分かっています。佐伯の見ているものは幻覚ですね。」

 「ああ。だが、会話は一部を除いてはほとんど合っている。実際にあの日、

 僕は佐伯の面会に出かけて、差し入れのカステラを美味しいから喰えと

 言ったら、佐伯は吐いたんだ。あの後、佐伯は僕に毎月面会に来て欲しいと

 頼んだ。僕は佐伯が僕といる時だけ幻覚を見るという事を知らなかった。

 いつも笑顔で佐伯はブツブツ独り言を言うんだ。愛してるって。

 僕は鈴木の事でも思い出しているのかと思って、黙って見ていたが、

 僕に愛してるって言われた幻覚を見ていたなんて。

 僕は佐伯に愛してるなんて一度も言っていないのに・・・」

 「薪さん、自分を責めないでください。俺はあなたが軽々しく愛してる

 なんて言う人じゃないって知っていますよ。薪さんが面会に通った一年間で

 佐伯の幻覚症状はほとんど治っていますから。薪さんの背中の黒い羽も消えて、

 普通に会話ができてるじゃありませんか?佐伯が自殺する数日前の最後の

 面会の日には愛してるってセリフもなくなってましたよ。」

 「だから、自殺したんだ。佐伯は病気が回復するにつれて、幻覚も妄想も消えて、

 現実だけが見えるようになった。佐伯が3人も殺していない。1人しか殺して

 いないというのは、真実だろう。最初の2人と3人目とでは誘拐する際の手口が

 同じなだけで、殺し方が全然違う。最初の2人は目隠しされたまま殺されて、

 犯されている間ですら、犯人を見ていない。3人目だけがMRIを意識して

 仮面を被り、鏡に少年を犯すところを映し出している。殺された少年がたまたま

 鈴木の若い頃にどことなく似ていたから、顔で好みの少年を選んだと勘違いした

 んだ。誤認逮捕だ。僕は自分の推理能力を過信して、佐伯を罠にはめて逮捕して

 しまった。佐伯が錯乱状態に陥ったせいで、裁判もろくにせず、連続殺人犯に

 佐伯を仕立て上げてしまった。佐伯は一人しか殺していないというのに!」

 青木は泣き崩れる薪を抱きしめて、こう言った。

 「薪さん、落ち着いてください。最初の少年2人を殺した犯人は俺が

 必ず見つけ出しますから。」


 薪を仮眠室に寝かしつけて、青木は第九の皆が帰った後も一人でMRI捜査を

 続けた。誤認逮捕と薪はなげいたが、3人目の少年に関しては薪の推理した通りの

 犯行だった。1人目と2人目に関しては犯人の顔が一切分からないまま殺されている

 上に、少年を連れ去る際に、後ろから鈍器で少年の頭を殴った犯人の背格好が

 佐伯と似ていたのだから、間違えても仕方がない。おまけに佐伯がアメリカから

 帰国して鈴木の脳を見た直後に事件は起きている。誰もが佐伯の犯行による

 連続殺人事件と思って疑わないだろう。青木はこれは模倣犯だと思った。

 鈴木の脳を通して狂気に伝染した佐伯が連続殺人事件の模倣犯に自らなったのだ。

 薪さんが悪いわけじゃない。青木は何度も自分に言い聞かせた。

 夜中、薪は仮眠室で目を覚ました。静まりかえった第九の明かりが洩れている

 部屋のドアを開けると、MRIの画面に薪の裸体が映し出されていた。

 頬をほんのりと高揚させ、ベッドの上で足を広げる薪は可憐で、初々しく、

 今とは別人のようだった。

 「何を見ている。」

 MRIの画面を見ている青木に薪は問いかけた。すると、青木は振り返って、

 こう言った。

 「あっ、薪さん、もう起きたんですか?全然気付かなかった。

 今、鈴木さんの脳を見ている佐伯をMRI捜査していました。」

 「それは分かっている。僕は何故こんなシーンを見ているんだ

 と聞いているんだ。」

 「それは・・・」

 青木が説明しようとした瞬間、画面を見ていた薪の顔色が変わった。

 「これは、一体・・・」

 薪が息を呑んで凝視したものは、四肢が切断され、腸が引きずり出された

 薪の姿だった。

 「フラッシュバックです。鈴木さんは貝沼の脳を見てから、

 ずっとフラッシュバックに悩まされていました。」

 青木の説明が終わった時にはもう画面は変わっていた。

 佐伯が早送りで飛ばしたのかもう別の場面になっていた。

 「愛してる。愛してるよ。鈴木。」

 天使のように微笑む薪の顔が画面いっぱいに映っていた。

 その愛を紡ぐ行為が悲しくて、画面の中の薪が幸せであればあるほど、

 何故だか急に悲しくなった。無意識のうちに薪は一滴の涙を流していた。

 「薪さん。」

 青木が薪にハンカチを差し出すと、薪は自分が泣いている事に初めて

 気付いたようだった。

 「画面を見てください。画面の所々が白くぼんやりと曇っているでしょう。

 佐伯はこの映像を見て、泣いていたのです。この悲しい感情は佐伯の涙です。

 あなたが今、流した涙は佐伯の涙なんです。面会に来る度に佐伯が見ていた

 薪さんの幻覚は、『愛してる』という言葉は鈴木さんへの愛の告白の

 フラッシュバックだったんです。」


 青木は薪を抱きしめた。そして、顔を上げさせると、そっと涙を拭い、

 口づけをした。うっすらと開いた唇に舌を入れながら、青木は薪のネクタイを

 ほどいた。上着を脱がせ、ズボンのベルトを外そうとした時、

 「やめろ。」

 と、薪が抵抗した。

 「今更、恥ずかしがる事ないでしょう。夜、二人っきりになった時、

 前にも室長室でした事あるでしょ。」

 「ダメだ。あっ。」

 青木の手がズボンの中に滑り込み、薪に触れた。ギュッと掴まれて、

 薪は思わず声をあげてしまった。青木は薪を手で愛撫しながら、

 首筋にキスを落としていく。

 「薪さん、そこに手をついて後ろを向いてください。」

 青木は突然MRIの画面が見えるようにクルッと向きを変えた。

 画面の中の薪はベッドに四つん這いになって、鈴木に後ろを舐めてもらっていた。

 まだ恥じらいがあるのか、いやいやと首を振りながら、薄ピンク色の蕾を

 ヒクヒクさせていた。

 「鈴木さんの脳はすごい所まで良く見えますね。俺も死んだら

 誰かに脳を見られるのかな。」

 と言うと、青木は下着ごと一気にズボンを引きずりおろした。

 そして、薪の尻を掴んで左右に押し広げ、蕾を舐めた。

 「あっ。やめろ。いやだ。あっ。」

 薪は片手で青木の頭を掴み、押しのけようとしたが、青木はやめなかった。

 「ちゃんと画面を見ててください。」

 意地悪く青木は言うと、尻を掴んだまま両手の親指を入れて更に押し広げ、

 舌で内壁を舐めまわした。

 「あ、ああ。」

 「気持ち良いですか?薪さんのヒクヒクしてますよ。もう入れて良いですか?」

 青木は薪の返事も待たずに入ってきた。

 「うっ。うぅ。あっ。ああ、ああ~」

 「痛いですか?やっぱりローションなしじゃ痛いですよね?

 でも、処女じゃないから血はでないなぁ。」

 「な、何を言ってるんだ?あっ。ああ。」

 青木は腰を動かしながらMRIの画面を指差して、こう言った。

 「ほら、血が出てる。薪さんが痛がってるのに、あんなに興奮して、

 鈴木さんって酷い人ですね。初めての時にローション使わないなんて。

 俺、前にもこの映像見た事あるんですよ。どっちが誘ったのか

 気になるじゃないですか。薪さんって随分遊んでたくせに鈴木さんが

 初めてだったんですよね。それって、鈴木さんを殺したショックで

 遊び出したって事じゃないですか。傷つくなぁ。男としては。」

 青木はいっそう激しく腰を打ちつけた。

 「あ、ああ、ああ~」

 青木は嬌声を上げる薪の耳朶を軽く噛むと、優しい声で囁いた。

 「好きです。薪さん。愛しています。」

 「う、うるさい。黙れ。あっ、ああ~」

 「どうして俺には愛してるって言ってくれないんですか?

 鈴木さんにはあんなに愛してるって連発してるのに・・・

 俺も嫉妬で狂いそうです。」

 画面の中の薪は鈴木に愛を囁いていた。甘く蕩けるような愛の告白は

 ぼんやりと白く霞んでいた。


 翌朝、仮眠室で目が覚めた青木は時計を見て驚いた。

 慌てて第九に走って行くと、岡部が

 「青木、今何時だと思ってるんだ?!もう9時半だぞ。」

 と怒鳴った。

 「すみません。昨夜は徹夜だったものですから。寝坊してしまって、

 すみませんでした。」

 青木は深く頭を下げて謝った後、薪のほうを見て、小声で

 「起こしてくれたらよかったのに・・・」

 と言った。すると、薪は眉をつりあげて、こう言った。

 「起こしてだって?自分で起きられないような自己管理能力の

 ない奴は第九には要らない。今度遅刻したら辞表を提出しろ。」

 絶句する青木に小池がひそひそ声で聞いた。

 「お前、一体何をしたんだ?室長、朝から大荒れだぞ。」

 「おい!そこ。私語は慎め。それから、遅刻するような奴とは

 皆、口を利くな。分かったな。」

 「はい。」

 小池が慌てて返事をした。そして、そそくさと青木から離れていった。

 第九のメンバー全員が一斉に青木から目をそらした。集団無視か?!

 小学生のいじめじゃないんだから!と、青木は思った。そして、青木は

 孤独に一人で仕事をしながら、昨日やりすぎた事を後悔したのだった。


 夕方、青木は薪に報告書を提出した。

 「MRI捜査の結果、ほぼ薪さんの予想通りでした。佐伯は喫茶店の窓から

 3人目の被害者である少年が塾に入って行くのを見かけ、数十分後こっそりと

 塾の入口に置いてあるチラシを手に入れます。それは4月からの新入生募集用の

 チラシで塾の時間割が書いてあるものでした。誰でも自由に持ち帰れるので、

 不審に思う人はいなかったと思われます。数日後、塾の終わる時間帯に

 駅前の喫茶店に再び行き、少年が塾を出るのを見て佐伯はあとをつけます。

 少年の自宅の前まで尾行して、その日は何もせずに帰りました。そして、また

 数日後、車を止めやすい場所を探します。そして犯行当日、連続殺人事件の犯人と

 同じ色形のコートを着て、帽子を被り、マスク、サングラス、手袋をつけて、

 人けのない犯行現場に行きます。金槌で後頭部を殴り、クロロホルムを嗅がせ、

 拉致します。そして、浴室で少年を犯し、手足を切断し・・・」

 「もういい。2日間かけて、たったそれだけか?」

 「は?はい。」

 「真犯人を見つけるって言ったのは嘘か?余計なものばかり見ているから、

 2日もかけて、その程度しか調べられないんだ。もう今日は帰っていい。

 明日から1人目と2人目の被害者の脳を調べろ。」

 「お言葉ですが、薪さん。俺は佐伯が何故、模倣犯となったかを調べていたんです。

 また、新聞では得られない犯人の服装などの情報も佐伯が殺人課で見聞きして

 知っていた事も調べました。報告書を読んでいただければ、模倣犯である事を

 立証できます。」

 「おまえはバカか?そんな事は最初から分かっていた筈だ。

 鈴木の脳を見なくても、捜査はできたと僕は言ったんだ。もういい。帰れ。」

 青木は薪に冷たくあしらわれ、言葉もなく帰宅した。


 3日間、青木は薪に口を聞いてもらえなかった。毎日一人で朝から晩まで

 MRIを見続けて、とうとう犯人を見つけ出した。

 これでやっと薪さんに許してもらえると青木は思い、報告書を書く前に

 薪に知らせに行った。トントンとドアをノックすると、

 「入れ。」

 と言われた。薪は別室で佐伯の脳を見ていた。MRIの画面には鈴木が

 映っていた。子供の頃の鈴木が眩しいほどの笑顔で何処かの田舎のあぜ道を

 走っていた。壮大に広がる菜の花畑が綺麗だった。子供の頃の鈴木の顔は

 殺された少年にそっくりだった。青木は薪がそんな昔までさかのぼって

 佐伯の脳を見ている事に驚いたが、あえて何も触れず、

 「犯人が見つかりましたよ。」

 と言った。

 「やっと見つけたか。確証はあるんだろうな。」

 「はい。犯人は田中健太郎27歳。殺された少年の通う中学の理科の教員でした。

 1人目の被害者岡田大輝君14歳の担任ではなかったので、当初、捜査対象から

 外れるほど印象が薄く、見逃してしまっていたのですが、2人目の被害者

 大島勇一君16歳を2年前までMRIで調べたところ、容疑者田中健太郎は

 中学3年生の時の担任でした。田中健太郎は4月に岡田大輝君の学校に転任して

 きたのです。当初、大島勇一君に関しては高校入学以降しかMRIで捜査して

 いなかったので、容疑者が浮かんできませんでした。1人目の被害者と2人目の

 被害者は学区も違い、面識もなく、何の接点もなかったのはその為です。

 この連続殺人事件は暴行目的の快楽殺人ではなく、怨恨によるものでした。詳しくは

 MRIの画面を見せながら説明します。薪さん、こちらにいらしてください。」


 青木は薪にMRIを見せながら報告した。

 「まず最初に、一人目の被害者の岡田大輝君ですが、彼はクラスの男子から

 いじめにあっていました。いじめと言ってもからかい程度のもので、

 暴力をふるわれたり、お金を取られたりといった事はありませんでした。

 中2の夏休み頃から携帯に迷惑メールが月に数件送られてくるようになり、

 年が明けてからは週に数件『死ね』『殺すぞ』等の脅迫文ともとれるメールが

 送られてきました。また無言電話も何度かあった事からストーカーによる

 犯行かとも思われましたが、メールを送っていたのは岡田君をいじめていた

 クラスメイトでした。とにかくこの事件は紛らわしい事の連続で、被害者に

 深く関わっている人間から見つけ出そうとしても犯人は割り出せませんでした。

 岡田君は成績も中の上でまじめな生徒として先生達からは可愛がられており、

 担任でもない理科の教師が休み時間に話しかけていても、とりとめのない

 日常の一部分でしかなかったので、つい見逃してしまっていたのです。しかし、

 1月のある日、学校の下駄箱の上靴の中に画鋲が入っていて、知らずに履いて、

 画鋲がかかとに刺さり、泣いていた岡田君をたまたま通りがかった田中容疑者が

 保健室に連れて行き、保健室の先生が偶然いなかったため、田中が岡田君の足の裏を

 消毒し、バンドエードを貼った際に、田中が岡田君のズボンの裾に手を入れ、

 足首を撫で回しました。そして、『可哀相に。いじめられているんだろう?

 他に怪我はないかい?服を脱ぎなさい。アザがないか確かめてやるから。先生は

 心配して言ってるんだ。何だって?!待て!』と言って、保健室から逃げ出した

 岡田君を追いかけようとします。しかし、思いとどまったのか追いかけては

 きませんでした。それから約1ヵ月後、岡田君は殺されます。」


 青木はいったんMRIを止めると、薪にこう言った。

 「殺害された岡田君が田中容疑者に何を言ったのかは分かりません。

 ただそれ以降、全く話しかけていない事から、何かしら怒らせるような事を

 言ったのは間違いないかと思われます。」

 薪は溜め息をついて、少し考え込んだ後、こう言った。

 「田中容疑者が塾のある駅前辺りや被害者の家の辺りをうろついていた事はないか?

 確か一年前の報告書には放課後に被害者と接触した形跡はなかったはずだが・・・」

 「はい。確かに放課後の接触はありませんでしたが、田中は塾に通っていた事を

 知っていました。おそらく見つからないようこっそりと後をつけたのではないかと

 思います。MRIは被害者の目に映った画像しか見る事ができませんから。

 田中は数ヶ月間に及ぶ学校での休み時間のとりとめのない会話から、塾、自宅、

 放課後何をしているかなどの情報収集は十分にできていたと考えられます。

 岡田君は田中の事を親切な先生と思っていたようです。それが、あの保健室の日

 以降、学校の廊下で顔を合わせても目を伏せて視線を合わせないようにしています。

 それまでは週に何回か1、2分ほど立ち話をしていたのに、明らかに不自然です。」

 「実は以前に僕もこの場面を見て、もしやとは思ったのだが、これだけで犯人と

 決めつけるには状況証拠としては弱い。二人目の被害者とは高校入学以降の接触は

 なかったと思うのだが、何か見落とした点があったのか?」

 「はい。ありました。田中容疑者は保健室の数日後、大島勇一君の通う塾の近くの

 駅前の本屋に出没しています。偶然田中を見かけた大島君は声もかけずに数十秒間

 凝視した後、何事もなかったように漫画本を買い、本屋を去ります。そして、

 本屋を出る時に大島君は一度振り向いて、田中の姿が見えないのを確認して

 安心したように塾へと向かいました。もし、ここで田中の姿が確認されていたら、

 塾へ行く途中に後をつけているのが確認されていたら、容疑者として

 浮かび上がってきたかもしれませんが、尾行に気付かなかったのか大島君は

 田中を見ていません。高校入学以降殺害されるまでの間に田中を目撃したのは

 たった一度だけでしたから、当初の捜査で見落としても不思議ではありません。

 俺も中学校までさかのぼって脳を見なければ見落としていたでしょう。問題は

 中学校時代の田中と大島君の関係にあります。」

 「二人の間に何があったんだ?」

 「いじめです。」

 「いじめ?」

 「はい。正確に言うと、学級崩壊と言ったほうが良いのかもしれませんが、

 生徒による教師への悪質な嫌がらせが続き、担任を変えたほうがいいという

 保護者からの声も上がるほど授業妨害や誹謗中傷が耐えなかったようです。」

 「具体的にどのような事が起きていたんだ?」

 「まず、黒板に『ホモ教師』などと書かれたり、掃除の時間にバケツの水を

 突然かけられたり、イスに画鋲をまかれたりされていました。」

 「何故だ?原因は?」

 「田中容疑者はクラスのいじめられっ子を助けようとして、いじめっ子グループの

 ボスである大島君を殴りました。しかし、いじめられっ子の男の子が校長の前で

 いじめられていないと嘘の証言をした為、田中は暴力事件を起こした教師として

 厳重注意され、謝らされました。更に、常日頃からかばい、可愛がっていた

 いじめられっ子の男の子が田中にセクハラされたと訴えたので、田中は窮地に

 追い込まれます。その男の子は脅されて大島君の言いなりになっただけなのですが、

 田中は暴力教師、ホモ教師と罵られ、生徒達からいじめにあうはめになりました。

 学校側の態度は冷たく、転任するまでの数ヶ月間、田中は地獄のような四面楚歌の

 日々を送っていたのでした。」


 「なるほど。それで殺したのか。心機一転やり直そうとした田中は努めて穏やかに

 全ての生徒に当たり障りなく若干距離を置いて接していたが、保健室で何かが

 壊れたんだな。おそらく魅かれていた岡田君に何か酷い事を言われたんだろう。

 本来、正義感が強く熱くなるタイプの人間は大人しく目立たないように暮らす

 だけでもストレスが溜まるはずだ。ましてやいじめられた経験がある人間は心に

 トラウマを抱えるものだ。田中は可愛がっていたいじめられっ子の男の子に

 裏切られたと思っているのだろう。心に闇を抱える人間はふとした事がきっかけで、

 凶悪犯になる事がある。もし、保健室で岡田君に罵られたとしたら、それだけで、

 心が壊れる原因になりうる。」

 「はい。実際に田中はセクハラはしていませんから。保健室での行為は

 セクハラに入るのかもしれませんが、それ以外は一切ありません。」

 「容疑者の男性関係を調べろ。おそらく男性経験もあまりなく、禁欲生活が

 続いていたのではないかと思う。かなり抑圧された性欲が爆発し、一人目を

 殺害した後で、二人目への復讐を果たしたのだと考えられる。この連続殺人事件は

 青木の言う通り怨恨だ。快楽殺人と考えたのは僕のミスだった。よく見れば、

 被害者3人の顔は似ていないじゃないか?何故3人とも鈴木に似ているように

 思ったのだろう。」

 「薪さん、3人目の被害者、佐伯が殺害した少年は鈴木さんに似ていますよ。

 どちらかというと1人目の被害者の岡田君は佐伯に似た美少年で、2人目の

 被害者の大島君は俺に似ています。目が細くて背が高いところなんかそっくりです。

 世間一般的に考えたら、目の大きさが違えば、顔は似ているとは言いません。

 顔のランクも上・中の中・中の上と3人とも違います。でも、薪さんは殺された

 3人が自分の男3人に偶然それぞれ顔が似ていたので、被害者3人が似たような顔

 と思ってしまったのでしょう。俺も皆から鈴木さんに似てるって言われて

 いい気になってました。」

 「言っておくが、佐伯は僕の男じゃないぞ。」

 「はぁ。まぁ、そうでしたね。それより俺は薪さんの好みの顔で良かったです。」

 「何を言ってるんだ。別にお前なんか好みじゃないぞ。」

 「はいはい。分かりました。薪さんは俺の事なんか好きじゃないんでしたよね?」

 青木は少し拗ねたように言った。薪が何か言おうとした時、青木は突然

 薪を抱き寄せた。ゆっくりと顔を近づけてくる。青木の唇が薪の唇に触れると、

 先ほどの言葉とは裏腹に熱い口づけを交わした。長いディープキスの後、青木は

 「今晩、薪さんの家に行ってもいいですか?」

 と聞いた。すると、薪はこう言った。

 「調子に乗るな。お前は今日中に報告書を提出しろ。真犯人を捕まえるまでは

 おあずけだ。」


 翌日、薪と青木は中学校に訊き込みに行った。しかし、田中はすでに

 辞職しており、住所も引っ越して分からなくなっていた。

 「八方ふさがりだな。」

 ため息をつく薪に青木は

 「指名手配できませんか?」

 と言った。だが、薪はこう言った。

 「裏がとれてないのに、指名手配できるわけがないだろう?

 まだMRIで殺人の動機のある人物を見つけ出しただけに過ぎない。

 状況証拠すらないんだぞ。本人がいれば、何か揺さぶりをかけて、

 尻尾を出したところで任意同行で署に連行すれば、自白に追い込める

 かもしれないのだが、容疑者が行方不明では捜査ができない。逮捕状が

 とれなければ、所轄は使えない。八方ふさがりだ。」

 頭を抱えている薪に岡部がやって来て、言った。

 「室長、総監がお呼びです。」

 「チッ。こんな時に・・・」

 薪は不機嫌そうに舌打ちして室長室を出て行った。

 青木はもう一度MRIで犯行当日に犯人が映っていないか調べてみた。

 だが、1人目の被害者が犯人を見たのは鈍器で殴られた際に倒れながら

 振り向いた時の一度だけだった。犯人はサングラスをして、花粉症用の

 大きなマスクをし、帽子を深く被り、コートを着て、手袋をしている。

 見るからに怪しい格好だが、目撃者は一人もいない。クロロホルムを嗅がされて、

 気を失い、目が覚めた時には目隠しをされていて、犯人の顔が全く見えない状態で

 犯されている。二人目も同じで犯人の顔を見ていない。違う所といえば、

 尾行されている事に気が付いて、一瞬走り出したが、すぐに捕まって

 クロロホルムを嗅がされた後、鈍器で何度も殴られている。ほんの数十秒間か

 せいぜい1分間の出来事だが、大声を出せば、人けのない夜道でも誰か

 見に来るはずだ。それなのに目撃者は誰もいない。声を出さなかったのだろうか。

 車で連れ去られ、目が覚めた後も目隠しされ、口と手を縛られていて、

 声を出せず、身動きもとれずにいる。どこかの家のソファーで殴られ、犯され、

 痛めつけられ、首を絞められて殺されるまで少年は何も見ていない。

 田中容疑者のアパートは2階だった。駐車場に止めて自宅まで担いで帰ったら、

 誰かに見られるに決まっている。どこに連れ込んだのだろう。いや、待てよ。

 目が見えていないのに何故ベッドじゃなくてソファーだと思ったんだ?幻影だ。

 少年が触れて体感したものがぼんやりと浮かんで見えたんだ。だから、頭の上で

 両手を縛られていたのも分かったし、犯人が服を着たままのしかかっているのも

 分かった。あっ、これは車。車の中だ。犯人は車で連れ去った後、そのまま

 犯している。ソファーだと思ったのは車の後部座席だ。目撃者がいないのは

 自宅や隠れ家に連れ込んでいなかったからだ。もし、車の窓ガラスを

 黒いシールド張りにしていたら、外からは見えない。では、どこに車を

 止めたのだろう。人に見つからずに3、4時間駐車できる場所。河川敷だ。

 二人目の被害者は川に死体を捨てられている。一人目は池だった。いずれも

 近くに車を止めやすい場所がある。連れ去る時の数分間と死体を捨てる時の

 数分間に運よく人に見られなければ、目撃者はいない。連れ去る場所も

 大きな公園の横の道で夜間は滅多に車も通らない道だった。犯人は綿密な計画を

 立てて犯行に及んだに違いないと青木は思った。

 「ちょっと訊き込みに行ってきます。」

 青木は岡部に告げると、犯行現場に向かった。


 公園周辺で訊きこみをしてみたが、目撃者はいなかった。

 冬の公園は殺伐としていて、子供が遊ぶ姿も見られなかった。

 しかも犯行当日は雨が降っていた。雨の降る夜に公園に行く物好きはいない。

 池に死体を投げ込んでも誰にも見つからないだろう。青木は途方に暮れて

 公園の中を歩いていた。すると、携帯電話が突然鳴った。薪からだった。

 「もしもし。青木です。」

 「訊きこみに出かけたと岡部から聞いたが、何か分かったか?」

 「いえ。何も。」

 「だろうな。1年前に所轄の刑事が目撃者を見つけられなかった事件だ。

 お前が見つけられるはずがない。もう戻って来い。」

 「はい。でも、もう少し池の周囲を見て、公園を自分の目で見て調べてから

 帰ります。」

 「分かった。好きにしろ。そういえば、今日は1人目の被害者が殺された

 命日だったな。」

 「今日でまる一年経つんですよね。花でも買って来れば良かった。」

 「そうだな。」

 「じゃ、遅くなると思うんで、直帰してもいいですか?」

 青木は携帯電話を切ると、茜色に染まった空を見上げた。

 もうすぐ日が暮れる。青木は少年の死体が発見された場所へと向かった。

 すると、その途中、じっと池を見つめている背の高いさえない男が池の淵に

 立っているのを発見した。田中だった。思わぬ事態に青木は気が動転して

 「田中」

 と呟いてしまった。すると、田中は振り向いて、こう言った。

 「俺の名前を呼びましたか?お会いした事ありましたっけ?」

 「あ、いや、その・・・」

 青木は焦って口籠ってしまったが、田中は近づいて来て

 「どこかで見たような・・・どちら様ですか?」

 と聞いた。青木は下手な事を言って、逃げられては困ると思い、咄嗟に嘘をついた。

 「田中先生、お久しぶりです。学校をおやめになったと聞きましたが・・・」

 「やはり、父兄の方でしたか?大島君のお兄さんでしたよね?

 その節はどうも。」

 田中は意味深な笑みを浮かべて会釈をした。青木は人違いをされている

 と思ったが、話を合わせる事にした。

 「先生は今、どちらに・・・」

 「隣の市で塾の講師をしています。立ち話も何ですから、喫茶店にでも

 行きませんか?車をすぐそこに止めてありますから、よろしければ乗りませんか?」

 「はい。お願いします。」

 青木は危険だと分かっていながら、田中の車に乗った。


 「田中先生はどちらにお住まいですか?」

 車に乗り込んで間もなく、青木が聞いた。

 「隣の市ですよ。それより、大島君のお兄さんは確か大学4年生でしたね。

 就職はもう決まりましたか?」

 「え?あ、はい。おかげさまで。なんとか・・・」

 青木はMRI捜査で大島の兄に自分が似ている事は知っていたが、

 兄に関する情報はあまり覚えていなかった。下手に何か言って、他人に

 なりすましている事がばれるとまずいので、青木は話題を変えようと思った。

 「先生はあの池で何をなさっていたんですか?」

 「今日は殺された教え子の命日なんですよ。あの連続殺人事件の・・・

 お兄さんとはお忙しいご両親の代わりに家庭訪問の日に一度お会いしただけ

 ですけど、弟さんも連続殺人犯の魔の手にかかって、さぞやお辛かったと心中

 お察し致します。もうすぐ大島君の命日でしたね。そうだ。このまま川を見に

 行きませんか?少し早いけど、殺された大島君の為に花を供えたいと思います。

 よろしいですか?」

 「あ、はい。」

 青木はいろいろと聞き出すチャンスかもしれないと思って、田中の提案に応じた。

 車は死体遺棄された多摩川上流へと向かった。

 途中花屋に寄ると言いながら、結局、車はどこにも寄り道せず多摩川上流の

 河川敷まで来てしまった。すでに日は暮れて、真っ暗だった。

 田中は河川敷に車を止めると、

 「あんた、本当は誰なんだよ?」

 と言った。青木は突然の質問に面食らったような顔をして黙ってしまった。

 「最初、池で名前を呼ばれた時は大島の兄さんだと思ったよ。でも、

 あいつの兄貴が俺の車に乗ったりするわけがないんだ。しかも、あんたは

 大学生にみえない。大学生が就職活動でもないのに何で紺色のスーツ着て

 歩いてるんだ?それに、あんた、歳は20代半ばか後半だろう?

 22歳にみえないんだよ。」

 青木は顔をこわばらせて、胸元の銃に手をやろうとした。だが、その前に、

 田中にスタンガンを押し当てられ、気を失ってしまった。


 目が覚めると、青木は手を縛られ、服を脱がされていた。スタンガンのせいで

 身体が痺れたように動かなかった。

 「あんた、警察官だったんだな。嫌な予感が的中したよ。人の脳を覗き見する

 警視庁の捜査官だったとはな。あんたは大島や岡田の脳も見たんだろ?

 じゃあ、俺が2人を殺したわけは分かるな。」

 「復讐だろ。」

 「ああ、そうだ。復讐だ。保健室で岡田に『気色悪い。手を放せ。ホモ教師』

 と言われて、それまで我慢していた何かが俺の中で崩れたんだ。

 生徒を心配したって、あいつらには伝わらない。ホモだと罵られるだけだ。

 人の愛情が気持ち悪いと感じるような奴には仕返ししてやろうと思ったんだ。

 でも、最初は殺すつもりはなかったんだ。誰に襲われたか分からないように

 目隠しをして、犯した後は縛ったまま公園に置き去りにするつもりだったんだ。

 それなのに白いうなじを見ていたら、つい首を絞めたくなって、やってる最中に

 首を絞めて殺してしまった。慌ててそのまま池に放り込んだよ。1人殺したら

 2人殺すのも一緒だって思って、大島にも復讐したんだ。あいつには恨みが

 あったから、たっぷりといたぶって殺してやったよ。でも、3人目の被害者が

 出た時にはびっくりしたな。全く知らない奴が手足切断されて殺されただろ。

 世間では連続殺人事件だって騒いでたし、警察がバカで助かったけど、

 誤認逮捕された犯人が裁判で一人しか殺していないって言ったら、捜査が

 再開されるかもしれない。そう考えると、逃げたくなって、俺は学校に辞表を

 提出しちまった。塾の講師をやりながら、雲隠れしてる間もいつか捕まるような

 気がして落ち着かなかったよ。いっそ死んだら、楽になるんじゃないかって

 思ってさ。池を見てたら本当に死にたくなって、そんな時にあんたに声を

 かけられたんだ。それで俺は最後にもう1回ヤって死のうかなって思ったんだ。」

 田中の手が青木へと伸びた。

 「う、うぅ。」

 青木は首を絞められて呻いた。抵抗しようと足をバタつかせると

 「スタンガン3発くらっててよく動けるな。もう一発くらわせるか。」

 と田中は言って、青木の胸にスタンガンを押し当てた。

 「うわぁあああ」

 青木が悲鳴をあげた。田中は

 「これでまたしばらくは大人しいだろう。」

 と言って、今度は足を抱え上げた。

 「何するんだ?!やめっ!やめろっ!!」

 青木の抵抗もむなしく、田中はいきなり青木の中に入ってきた。

 「ぎゃああああ~」

 青木の絶叫が車内に響き渡った。


 身体が裂け、身体の芯から真っ二つに引き裂かれるような痛みが青木を襲った。

 殺されるという恐怖よりも初めて受ける屈辱に青木は涙を流した。

 痛みと苦しみと絶望の中で青木は田中に犯され、泣き叫んだ。

 「うわぁあああ」

 青木は涙で何も見えなくなるくらいに大声で泣き叫びながら、

 腸をえぐられる痛みに耐え切れなくて、気を失いそうになった。

 だが、体内の異物が激しく動く連続した痛みに身体が意識を手放す事を

 許してくれなかった。殴られるよりも辛い痛みに青木は号泣した。

 「ヘぇ。大人でも泣くんだ。ガキみたいに泣き喚いて、そんなに痛いか?」

 田中は目を輝かせて、涙でぐちゃぐちゃになった青木の顔を覗き込むようにして

 笑った。畜生、殺してやる!青木は心の中で殺意を抱いた。しかし、それと

 同時に田中が自殺しようと考えていた事を思い出した。あいつが死んだら、

 脳を見られる!青木は自分の無様な姿を人に見られるのが嫌だと思った。

 自分が犯されている姿をスクリーンに映し出されるなんて絶対に嫌だ。

 誰か助けてくれ!助けて!薪さん!助けて!青木は心の中で叫んだ。

 すると突然、銃声がして、車のフロントガラスが割れた。銃弾が

 撃ち込まれたのだった。田中は驚き、取り乱したように青木から離れて、

 外に出た。車の外には薪が立っていた。薪は拳銃を構えて、田中にこう言った。

 「手をあげろ。動くな。」

 しかし、田中は薪の他に警官がいないのを見て、青木が気絶している間に

 奪い取った銃を懐から取り出し、

 「こっちには人質がいるぞ。銃を捨てろ!」

 と、薪に銃を向けて言った。だが、薪は一瞬、目を閉じて考えた後、

 無言で発砲した。銃弾は田中の額を貫き、血飛沫が車に飛び散った。

 田中は声もなく倒れた。即死だった。薪は車に乗り込み、ハンドルを握った。

 「薪さん、何を?!」

 青木の言葉も無視して、薪は田中の頭を車で轢き潰した。

 「薪さん!」

 青木は恐ろしいものでも見るように薪を見た。薪はハンドルから手を放し、

 深く深呼吸してから、青木に言った。

 「これで田中の脳は誰にも見られない。もう大丈夫だ。」


 翌日、薪は総監に呼び出され、辞表を提出するよう言われた。だが、青木が

 医師の診断書を添えて、暴行を受けたと証言し、薪の正当防衛を主張した為、

 薪は謹慎処分で済んだ。青木は犯人が撃たれて車の前に倒れこんできた時に

 驚いて車を発車してしまった為、誤って轢き殺してしまったと嘘の証言をした。

 脳をわざと轢き潰した事を知られてはいけないと青木は薪をかばったのだった。

 青木は不慮の事故により、犯人を死なせてしまった事を謝罪し、自分も

 謹慎処分にして欲しいと申し出た。これによって、二人とも3日間の謹慎と

 始末書の提出だけで済まされたのだった。青木は犯人の自白による事件の全容を

 報告書にまとめて提出した。おとり捜査まがいの事件解決に総監は難色を示したが、

 やむなく、これを受理。連続殺人事件は幕を閉じた。

 そして、冬の終わりを告げる頃、青木の傷は癒えた。

 「薪さん、今日でもう来なくていいって医者に言われました。」

 「よかったな。青木。」

 「はい。2針縫った時はどうなることかと思いましたが、トイレに行っても

 痛くなくなりましたし、もう大丈夫です。」

 「そうか。今日は快気祝いだ。飲め。」

 薪はワインをあけてグラスに注いだ。青木が暴行を受けた傷は全治2週間

 という重症だった。青木は大人しく入院していれば良いものを、病院を

 抜け出して、総監と掛け合ったり、無理して仕事に復帰したものだから、

 なかなか治らなかったのだ。

 「乾杯。」

 グラスを傾ける薪を見て、人殺しの汚名を着てまでかばう必要はないと

 怒られても嘘の証言をしてよかったと青木は思った。

 「薪さんがGPS携帯を持たせてくれていて良かったです。薪さんが

 助けに来てくれなかったら、俺は殺されていました。薪さんは命の恩人です。」

 青木は薪に口づけした。そして、舌を絡ませて吸いながら優しく薪の服を脱がせた。


 一糸纏わぬ姿の薪を抱きかかえて青木は寝室へと向かった。

 薪はお姫様抱っこに少し照れて、

 「リビングのソファーでいいのに・・・」

 と言ったが、青木は

 「ダメですよ。ちゃんとベッドでしなくちゃ。俺は薪さんを

 大切に扱いたいんです。」

 と言って、薪をベッドへ運んだ。薪はいろんな場所でしたがるほうだったが、

 今日は事件以来、初めての夜だったので、久しぶりにちゃんと抱きたかった

 のだった。青木は

 「今夜は薪さんの好きなところばかりをせめてあげますよ。」

 と薪の耳元で囁いた。そして、耳朶を軽く噛むと、胸の突起を指で摘んだ。

 耳から首筋にかけて舐め上げ、胸から下腹へと舌を這わせた。

 既に大きくなったものを口に含み、丁寧に舐めあげた。青木が先端に

 舌を挿し入れると、薪は嬌声をあげた。

 「あ、ああ、ああ~」

 薪の身体がビクビクッと震えた。すると、達する一歩手前で青木は口を離した。

 「あ~」

 薪は身悶えしながら、淫靡な瞳で青木を見つめた。

 「薪さん、もっと足を開いてください。薪さんの好きなところを

 舐めてあげますよ。」

 青木は意地悪そうに微笑んで薪に足を開かせた。蕾はまだ触れてもいないのに

 ヒクヒクと口を開けたり閉じたりしていた。青木が舌を挿し入れて、

 内壁を舐めると、薪は蜜を滴らせて、悦んだ。青木は再び蜜を舐め取るように

 薪のものを舐めながら、指を薪の蕾に入れた。1本2本と時間をかけて

 増やしていく。指をクイッと曲げて、薪の体内の最も感じる部分を刺激すると、

 「あっ、や~、あ、あ、ああ~」

 薪は身体を仰け反らせて、果ててしまった。青木は薪の吐き出した欲望を

 総て飲み込み、

 「薪さん、気持ち良かったですか?もっとよくしてあげますよ。」

 と言うと、ローションをつけて、薪に挿入した。

 「あ、ああ、ああ~」

 薪は歓喜の声を上げて腰を使い、青木の背に腕をまわした。数週間ぶりに

 味わう薪の身体は熱くまったりと柔らかく絡みつき青木を締め付ける。

 青木は今にも達しそうになるのを堪えて、腰を動かした。薪の好きなところを

 探し当てて、激しく突くと、薪は先ほど果てたばかりだというのに、

 再び絶頂の波に呑み込まれていった。青木は薪の両足を掴んで、

 更に激しく深く腰を突き動かした。

 「あ、ああ、あああ~」

 薪が絶頂に達すると同時に青木は薪の中に放った。青木は

 薪に覆い被さったまま薪の髪を優しく撫で、口づけした。

 「薪さん、愛しています。たとえ、あなたに愛されていなくても、

 誰かの代わりだったとしても、一生あなただけを愛し続けます。」

 「馬鹿だな。青木は誰の代わりでもない。青木は青木だよ。

 僕は青木が好きなんだ。」

 薪は青木を抱きしめて微笑んだ。身体を繋いだままの睦言は

 甘く蕩ける媚薬の代わりにしかならない。交わっている時だけ優しい

 恋人の言葉に疑惑をいだきながらも青木は再び腰を動かし始めた。

 薪が誰を見て、誰を愛しているかなんて、誰にも分からない。

 多分それは一生背負っていく秘密なのだ。永遠に心が手に入らない恋人を

 青木は一晩中抱き続けた。


                                     (完)


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秘密「お見舞い」

秘密部屋



 太陽が沈みかけて空を赤く染める頃、高級マンションのドアの

 前に岡部は立っていた。

 両手にスーパーの袋を提げて、突然押しかけてよかったものかと

 今更ながら気にしていた。

 薪が倒れて高熱を出したと聞いて、仕事の帰りにお見舞いに来た

 のだが、インターホン越しの薪の声を聞いてから、すでに3分ほど

 待たされている。

 やはり迷惑だったかと悩み、差し入れだけして帰ろうかと思った

 瞬間、ドアが開いた。

 物憂げな表情で玄関に出てきた薪はパジャマの上に白いシルクの

 ガウンを羽織っていた。

 岡部は気恥ずかしくなって薪から目をそらして、こう言った。

 「あの、これ、差し入れです。食べてください。失礼します。」

 「なんだ。もう帰るのか。いいからあがれよ。」

 「えっ、いいんですか?」

 「見舞いに来たんだろ。入れ。」

 「じゃぁ、すみません。おじゃまします。」

 岡部がペコペコとお辞儀をしながら入ると、薪は玄関に鍵をかけて、

 黙ってリビングの奥のソファーに腰掛けた。

 部屋は白と黒のインテリアで統一されていて、きちんと整理整頓

 されて片付いていた。しかし、装飾品はおろか写真すら飾られて

 いない殺風景な部屋だった。

 岡部はまるで人が住んでいないモデルルームのような部屋だと

 思った。

 「薪さんにお粥でもお作りしようかと思って、いろいろ買って来た

 んですけど・・・あの、大丈夫ですか?」

 薪がソファーにもたれてけだるそうにじっと黙って岡部を見上げて

 いた。しかも聞いているのかいないのか分からないような感じで

 焦点の合わない目で岡部を見ている。

 「薪さん本当に大丈夫ですか?」

 岡部は心配して、薪の額に手を当てるとひどく熱かった。

 「ひどい熱があるじゃないですか。寝ていないと・・・」

 「39度くらい大丈夫だ。」

 薪は軽く振り払うそぶりをみせたが、岡部は薪の背中に腕をまわし

 寝室に連れて行った。

 そして、窓際に置かれているセミダブルのベッドに寝かせると、

 「ちゃんと寝てなきゃダメですよ。今お粥をつくってきますから、

 寝ててください。」

 と言って、台所へ向かった。

 キッチンも掃除が行き届いていて清潔に保たれていたが、

 岡部は冷蔵庫を開けて唖然とした。

 中にはミネラルウォーターとビールしか入っていなかったのだ。

 仕事が忙しいから料理なんてするわけがないと思っていたが、

 まさかここまでとは・・・

 岡部は食器や鍋はあるのかとそれすらも心配になってキッチンの

 棚や引き出しを開けてみたら、ちゃんと揃ってはいたが、かわりに

 ビタミン剤やらサプリメントの瓶がごろごろ出てきて、睡眠薬まで

 見つけてしまった。

 夜、眠れないと言っていたが、こんなものを飲んでいたのか・・・

 岡部は目頭が熱くなった。

 もともと食が細くて生活感のない人だったが、実際に殺風景な部屋

 と食料のないキッチンを見て、岡部は何があの人をこうさせたのか

 と考えるとどうしようもなく切なくなった。

 岡部はかろうじて流し台の下にあった調味料でお粥を作り、

 薪の所へ持っていった。

 「薪さん、お粥ができましたよ。」

 声をかけたが、薪は眠っていた。

 いつの間にか太陽は沈み、月が低い空に浮かんでいた。

 窓から差し込むわずかな光のみの薄暗がりの部屋には

 静寂だけが漂っていた。
                         

 岡部は薪の眠りをさまたげないように部屋の小さな照明をつけて、

 サイドボードに作ってきたお粥を置いた。

 そして、薪の寝顔をそっとのぞきこんだ。

 薪は熱があるためか苦しそうに眉をしかめて苦悶の表情を浮かべ

 ていた。

 うっすらと開いた唇からは甘い吐息が漏れている。

 寝苦しいのか着ていたガウンの前がはだけてシルクのパジャマの

 隙間から鎖骨が見えていた。

 薪の首は雪のように白く、片手でつかめそうなほど細かった。

 岡部は吸い寄せられるように寝ている薪の顔に近づいた。

 するとその時、薪の閉じた瞳からひとしずくの涙があふれて、

 「う~ん。う~ん。鈴木・・・」

 薪は寝言を言ったかと思うと岡部にしがみついてきた。

 「薪さん。ど、どうしたんですか。起きて下さい。」

 岡部は慌てて薪に言った。

 「鈴木」

 耳元で薪がつぶやく。

 その悲しい声に反応して岡部は薪を抱きしめた。

 薪の流した涙が頬を伝って岡部の頬を濡らした。

 岡部は薪の髪を撫でながら、優しく引き離して顔を見つめると、

 薪は寝ながら泣いていたのだった。

 「う~ん・・・むにゃむにゃ・・・」

 なおも寝言を言う薪に岡部はため息をついて独り言を言った。

 「薪さん、まだ鈴木が忘れられないんですか。俺じゃダメですか。」

 その時、薪の大きな瞳が開いた。突然、薪の目が覚めたので、

 岡部は動揺した。

 薪は不審そうに岡部をじっと見つめていた。

 独り言を聞かれたかもしれないと思って岡部は真っ赤な顔に

 なってしまった。

 「どれだけ寝てた?何か喋ったか?」

 薪は岡部に尋ねた。

 薪は寝言で何か言わなかったか心配しているようだった。

 「いいえ。何も。」

 岡部は薪を安心させる為に嘘をついた。

 「お粥ができたんで召し上がってください。」

 「うん。」

 「食べさせてさしあげましょうか?」

 「うん。」

 てっきり断られるかと思ったら、素直にうなずかれて、

 岡部はまた真っ赤になった。

 「自分で聞いておいて何を赤くなってるんだ?」

 薪は意地悪く言うと、微かに笑った。

 からかうつもりがからかわれたと知って岡部も笑った。

 「おまえがいてくれて良かったよ。」

 薪は岡部の手をとって言った。

 「薪さん。」

 岡部は薪の手を握りしめて真顔になった。

 「食べさせてくれ。」

 薪も今度は真剣な顔で言った。

 岡部は一瞬、躊躇したが、次の瞬間、魔法にかけられた

 かのようにお粥をスプーンですくっていた。

 岡部がおそるおそる薪の口元にスプーンを運んでいくと、

 薪は大きな瞳をさらに見開いて、スプーンをくわえた。

 そして、ごくりとお粥を飲み込んだ後、媚びるでもなく

 また口を開けた。

 岡部は薪にお粥を食べさせながら、これは何かの儀式の

 ような錯覚に陥った。

 上司にお粥を食べさせているだけなのに、信頼関係以上の

 ものが築けた気がするのは何故だろう・・・

 だがそれはつかの間の幻想に過ぎないことを岡部は悟っていた。

 熱が下がれば、いつもの冷徹な上司に戻るに決まっている。

 この人はただ淋しかっただけなのかもしれない・・・

 赤ん坊のように無心でお粥を食べている薪を見て岡部は思った。

 薪の美しさが男を狂わせることを本人は自覚していない。

 窓から差し込む月の光は二人を照らし、空に浮かぶ月は

 嘲笑うかのように二人を見ていた。
                  
                          (完)




   秘密「お見舞い」(エピローグ)


  僕は鈴木の夢を見る。

  銃口をこめかみにあてて泣いている鈴木の夢ばかり見る。

  「やめろ。鈴木。」

  僕の声は虚しく響き、鈴木には聞こえない。

  目が覚めるといつも僕は泣いている。

  僕はもう何年もこんな夢を見続けている。

  これはきっと僕にあたえられた罰なのだと思う。

  鈴木を殺した罰なのだ。

  僕はもっと自分に罰をあたえなければならないと思う時がある。

  鈴木の夢を見た日は食欲がなくて、

   朝から晩まで何も食べずにいることもある。

  眠るのが恐くて徹夜で仕事をしたりしたこともある。

  休日も遊びに行かないし、特に贅沢したいとも思わなくなった。

  死んだように生きることで自分自身に罰をあたえているのかも

  しれない。

  でも時々、淋しくてどうしようもなくなる時がある。

  39度の熱を出した時もそうだった。

  岡部が見舞いに来てくれた時、うれしかった。

  つい、甘えてしまった。

  朝から何も食べてなくて、このままじゃ死ぬんじゃないかと

  思うくらいに体が弱っていたので、

  岡部がつくったお粥をスプーンで食べさせてもらった。

  幼子のように口を開けて美味しいと食べた自分に僕は

  後でゾッとした。

  熱があったとはいえ、なんてことをしてしまったんだと後悔した。

  結局、岡部は昨日の夜、徹夜で看病してくれたのだが・・・

  熱が下がった翌朝、岡部になんて言ったらいいのかわからない。

  看病に疲れたのか僕の隣でいびきをかいて寝ている岡部を見て

  僕は途方にくれていた。

                             (完)


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秘密 「告白」

秘密部屋



  秘密 「告白」 1


 「たすけて、たすけて、たすけて・・・」

 悲痛な叫びが聞こえる。

 真夜中の残業で薪の寝言を聞いた青木は心配になって、

 薪に近づいた。

 第九に二人きり残って、仕事をしていたのだが、いつの間にか

 薪はデスクに座ったまま居眠りをしてしまい、自分の腕を枕にした

 うつ伏せの状態で眠っていた。

 薪はまた悪い夢でも見たのか涙でスーツの袖を濡らしている。

 この人はいったいどんな夢を見ているのだろう?

 親友を殺したことをいつまでも後悔して、苦しんで、

 夢の中で泣いている。

 俺には理解できないと青木は思った。

 「薪さん、薪さん、起きてください。」

 青木が肩を掴んで揺らすと、薪はハッと目が覚めて顔を上げた。

 「うなされてましたよ。かわいそうに。」

 青木はそう言ってハンカチを薪に差し出した。

 「かわいそう?」

 薪は大きな濡れた瞳を見開いて信じられないものでも見るように

 青木を見た。

 そして、ゴシゴシと自分のスーツの袖で目をこすって

 涙を拭いてしまった。

 また一言多かった。と青木は思った。

 プライドの高い人にかわいそうとは言ってはいけない言葉だった。

 たとえ、見るに見かね聞くに堪えない状態でも同情する言葉は

 不適切だった。

 薪は自分の醜態を取り繕うように青木を無視して、

 デスクに広げたままの書類を手に取り、読み始めた。

 青木は差し出したハンカチを黙って自分のポケットに

 しまうしかなかった。

 「データの修復は終わったのか?」

 薪は青木と目線を合わせないで聞いてきた。

 「後もう少しです。」

 「さっさと仕事しろ。」

 薪は冷たく言い放った。

 青木はしぶしぶMRIコンピューターの前に戻り、可愛くないなぁ

 と思った。顔は可愛いのに・・・

 薪は極度のストレスから睡眠障害に陥っていたのだが、

 夜眠れないため、やたらと昼寝をする。

 無防備にソファーに横たわり、聖書を抱えて幸せそうに眠る薪を

 青木はいつも眺めていた。

 夢の中で鈴木に会って、あんな第九の誰にも見せない安らかな

 顔をするのかと思うと、時折、腹立たしく感じることさえあった。

 結局は寝顔が最初、幸せそうであればあるほど、

 最後は泣くはめになるのだが・・・

 寝ながらポロポロ涙を流し、「鈴木」とつぶやく薪に青木は

 やるせなさを感じていたのだった。

 また、寝起きの悪い薪が寝ぼけて鈴木と間違え、青木に

 しがみついてきたこともあった。うるうるのすがるような瞳で

 「もう離さない。」

 なんて言われたら、男として我慢できない。

 数日前にも薪の色香に迷わされて押し倒す寸前までいったが、

 岡部が飛んで来て、二人を引きはがした。

 岡部は常に見張っていて、薪を守るように何かあるといつも

 すっ飛んで来るのだが、今日はその岡部がいない。

 真夜中の第九という密室に青木は薪と二人きりだった。
                    


 時計が1時をさした頃、青木の隣に薪がスッとやって来て、

 体が触れ合うか触れ合わないかくらいの至近距離に立ち、

 真剣なまなざしで青木の顔を覗き込んで聞いてきた。

 「寝ている間に何か喋ったか?」

 青木は蛇に睨まれた蛙のように答えにつまったが、

 すぐに気をとり直してこう言った。

 「薪さん。泉鏡花の『外科室』ってご存知ですか?薪さんはまるで

 うわ言を言うかもしれないからといって、麻酔なしで胸の手術を

 うける伯爵夫人みたいですよ。想いが強ければ強いほど無意識

 のうちに言葉を発してしまうのは当たり前のことなのに、

 薪さんはどうしてそれを秘密にするんですか?」

 薪は一瞬、眉をつりあげて、何か言い返そうとしたが、青木は

 「つらい思いをしてまで、守る秘密なんかどこにもないんです。

 俺は知ってます。薪さんが鈴木さんを好きだってことを!!」

 薪は驚いて、青木の頬を平手打ちした。

 薪は自分がたたいたのに、まるでたたかれたような顔をしていた。

 薪は蒼ざめて泣きそうだった。青木は薪の腕をつかんでひっぱり、

 体を引き寄せて抱きしめた。

 「薪さん。もっと現実を見てください。鈴木さんはもうこの世に

 いないんです。死んだ人の事をくよくよずっと考えていても何も

 はじまらないですよ。それなのに薪さんは何年も後悔し続けて

 誰にも言えず、独りで苦しんで聖書を抱えて眠っている。

 教会へ行っても祈るばかりで懺悔しなければあなたの罪は一生

 消えない。一生独りで罪を背負って生きていくつもりですか?

 あなたの罪を俺にわけてください。

 あなたの苦しみを俺にください。

 あなたの声を俺にください。

 俺があなたを幸せにしてみせますから。」

 青木は薪にくちづけした。

 そして、瞳からあふれて頬を伝う涙をそっと人差し指でぬぐいとり、

 長い濡れたまつげに接吻した。

 「幸せにします。」

 青木は愛を誓ったのだった。薪はただ黙って泣いていた。
 
 青木がもう一度、薪を強く抱きしめると、薪は素直に年下の男の

 胸に顔をうずめて、子供のようにすすり泣いた。

 青木はしばらく薪の頭を優しく撫でていたが、ゆっくりとこう言った。

 「薪さん、もう泣かないでください。これからは俺がずっとそばに

 いますから。あなたの笑顔をみせてください。

 俺はあなたの笑顔が欲しい。」

 薪は潤んだ瞳でまっすぐに青木を見つめて、やがて、

 はにかんだように微笑んだ。

 「青木。」

 「薪さん、あなたに泣き顔は似合わない。あなたは笑顔が素敵

 な人だ。やっと俺に笑顔を見せてくれましたね。」

 青木は写真でしか見たことのない薪の笑顔を自分のものにできて

 うれしかった。照れたように笑う薪の顔を青木はいつまでも

 見つめていた。もう言葉は何もいらない。

 至福の時が二人を包んでいた。

                              (完)



   秘密 「告白」 2


 「青木、そろそろ別れないか?」

 突然の薪の言葉に青木は我が耳を疑った。

 「な、何故ですか?なんでそんなこと言うんですか?」

 「このままズルズル付き合っていたってしょうがないだろう。」

 青木はショックだった。あの感動的な告白をしてからたった1ヵ月

 で別れ話を切り出されるとは思ってもみなかったのだ。

 この1ヵ月間、青木は毎日、薪のマンションに通い、夕飯を食べ、

 テレビを見て、風呂に入り、寝て、翌朝、一緒に出勤するといった

 生活を送っていた。

 何がいけなかったんだろう・・・青木は必死に考えた。

 幸せにしますと告白したのはいいけれど、デートはいつもマンション

 で夕飯を食べて寝るだけで、仕事が忙しくて休みが取れないから

 という理由で映画にも遊園地にも行ってなかった。付き合ってすぐ

 半同棲生活というのもやはりまずかったか・・・でも、薪さんが夜

 眠れなくて俺が添い寝してあげたら眠れたから・・・それから毎晩

 泊まるようになって、今日もいつものようにコンビニで買ってきた

 弁当を二人で食べてテレビを見ていたのに・・・あ、そうだ。

 テレビばっかり観てて会話がなかった・・・薪さんああ見えて

 寂しがりやさんだから、拗ねちゃったのかな。うん。きっとそうだ。

 青木はポジティブな性格だった。

 「薪さん、何怒ってるんですか?」

 青木は機嫌をとるように薪の肩に腕をまわして作り笑いを浮かべて

 聞いた。しかし、薪は青木の質問に答えようとはせず、黙って腕を

 ふりほどいた。そしてしばらくうつむいていたが、やがてこう言った。

 「帰ってくれ。青木。もうここには来ないで欲しい。」

 「薪さん、なんで、なんでなんですか?」

 「見たくないから・・・青木の顔。」

 再び青木はものすごいショックを受けた。


                          
 室長は初恋の人が忘れられなくて恋人をつくらないでいる

 と第九の誰かが言っていたことを青木は思い出した。

 また、薪は恋人はつくらないが、毎夜、ゆきずりの男とベッドを

 ともにしているとか総監や長嶺と寝ているとかあらぬ噂が絶えない

 人でもあった。最初、青木も半信半疑だったのだが、1ヶ月前

 はじめて薪のマンションに行った時、ベッドに押し倒したら、

 拒絶されて、誰とでも寝るという噂が嘘だと分かり、安心した。

 だが、一方で鈴木に対する想いがそれだけ強いのかと思うと

 せつなかった。

 青木はこの1ヶ月間キス以上のことを薪にしていない。

 相手がその気になるまで待つつもりだった。

 大切にしていたのに・・・

 夜眠れないとか怖い夢を見るとか言うから、毎晩、添い寝して

 慰めてあげたのに・・・

 初めて泊まった日も貝沼の夢を見て夜中に悲鳴をあげたから、

 薪さんの震える体を抱きしめて朝までずっと一緒に寝てあげた。

 薪さんはまだ貝沼の呪縛から逃れられないでいる。

 人を殺した罪悪感が自らに無意識のうちに罰を与えているのか。

 それとも好きだった人がそんなに忘れられないのか。

 薪さんはいつも遠い目をしている。

 俺のことをじっと見つめているかと思えば、目が合うと急に目を

 そらして、体裁の悪そうな顔をする。

 きっと鈴木さんに似ているから、俺に鈴木さんの面影を重ねて

 見ているのに違いない。いや、顔が似ているから一緒にいるのが

 つらくなったのかもしれない。 俺は鈴木さんのことが忘れられる

 まで待とうと思った。毎日好きだよってキスするだけで、

 薪さんの嫌がることは何一つしなかったのに・・・

 そういえば、まだ一度も薪さんに好きって言ってもらってない。

 青木の怒りが爆発した。

                         

 「薪さんは俺のことを利用していただけなんだ。そうなんでしょう?」

 「そうだ。」

 薪のそっけない答えに青木はついカッとなって薪の肩をつかんで

 押し倒した。

 「じゃあ、見なければ良い。」

 青木はそう言うと自分のネクタイをほどいて薪の瞳をふさいだ。

 「青木。何するんだ。やめろ。」

 「目隠しですよ。薪さん、こうゆうの好きでしょう?」

 「ばか。」

 薪は手を振り上げたが、青木がそれをつかんで床に押さえつけた。

 青木は荒々しく薪に口づけした。強引に舌を入れ、舌を絡ませて

 薪の唇をむさぼるように味わった。薪は必死に抵抗したが、所詮、

 力でかなうわけもなく、なすがままにされた。

 息苦しいほどの長いキスの後、青木は薪のワイシャツに手をかけ、

 ボタンを外そうとした。

 「何をする。やめろ。青木、頼むから、やめてくれ。」

 薪は泣きそうな顔で懇願した。その時、薪の顔に冷たいものが

 ポタポタと落ちた。それは青木の涙だった。

 「薪さん、俺は鈴木さんの代わりでも良いって思ってました。

 でも、もう限界です・・・」

 「青木、泣いているのか?どうしておまえが泣くんだ?」
 
 「薪さんに拒絶されて、鈴木さんの代わりにもなれない。

 もう、どうしたらいいのか・・・」

 「青木、何を言っている?意味がよくわからないな。」

 薪は青木が手を放したすきに目隠しをはずして、ゆっくりと

 起き上がり、冷静に青木の目を見つめて、こう言った。

 「鈴木に対する好きはおまえに対する好きとは違うんだ。鈴木は

 親友で恋人じゃない。」

 「薪さん。」

 「僕は鈴木を殺したことをずっと後悔していた。だから、悪夢を毎晩

 見るのだと思う。これ以上青木に迷惑かけたくないんだ。僕は最近

 甘えてばかりいたから、このままじゃ青木なしで生きられなくなる

 んじゃないかと思って・・・今までずっと一人で生きてきたから・・・

 生まれて初めて人を好きになって、ちょっと怖くなったんだ。」

 「薪さん、今まで誰かと付き合ったことないんですか?」

 「ない。」

 「一度も?じゃあ、女性とも男性とも経験がないんですか?」

 「あたりまえだ。」

 「え、まさか、ひょっとして、キスも俺が初めてだったりして・・・」

 「はじめてだ。」

 薪は顔を赤らめて言った。青木は嬉しくなって薪を抱き寄せた。

 そして、この年上の可愛らしい上司を一生大切にしようと思った。

 「俺、別れませんから。もう、薪さんに何か言われても絶対に別れ

 ないです。一生そばにいます。」

 「うん。」

 薪は照れたようにうなづいた。青木は薪の手を握りしめて言った。

 「俺、今、すごく幸せです。」

 「僕も・・・」

 言葉少ない恋人は大きな瞳を輝かせて幸せそうに微笑んだ。

 青木は薪のことを天界から舞い降りた天使のようだと思った。

 その純粋無垢な天使は幸せを青木に運んでくれた。

 幸せとは愛する人のそばにいて愛する人が幸せになること。

 青木は天使のような微笑を浮かべる薪の手をいつまでも握りしめて

 いた。夜が更けて、朝が来るまで二人はずっと手をつないでいた。

 その日、薪は怖い夢を見なかった。

 青木が呪縛から解き放ってくれたのだ。

 闇の底に沈んでいた堕天使は温かい光に救われて、翼を広げて

 飛び立ち、陽のあたる場所へとたどり着いたのだった。

                          
                             (完) 




   秘密 「告白」 3


 「まずい。」

 僕は青木の作った手料理を一口食べただけで箸をおいた。

 「薪さん、そんなこと言わずに食べてくださいよ。」

 テーブルの上には青木が作った野菜いためらしきものが置かれて

 いた。どうやったらこんなに真っ黒にこがすんだか・・・

 あきれてものも言えない。しかも、失敗したにもかかわらず、

 青木は平然とそれを食べ、僕にも食べることを強要するのだ。

 「見た目は悪いけど、美味しいですよ。ほら、この辺ならこげて

 ないから、もう一口食べてみてくださいよ。」

 「いらない。」

 僕は青木が箸でつまんで僕の口元に持ってきた肉を手ではらった。

 肉はテーブルの上に落ちてしまったが、僕は肉を拾おうともせずに

 横を向いた。青木は慌てて肉を拾い、ティッシュでテーブルを拭い

 たが、テーブルクロスには油染みが残ってしまった。青木の作る

 料理はいつも油が多すぎる。僕は買ってきたものを食べてれば良い

 と言っているのに、青木は栄養のバランスを考えて自炊したほうが

 良いとか言って、黒コゲのまずい料理を作りだした。青木が僕の

 マンションに毎日やって来るようになって2ヶ月が過ぎた。青木は

 最初は大人しくしていたのだが、だんだんまるで世話女房のように

 あれこれと世話をやきだしてからはうっとうしくてしょうがない。

 やはり1ヶ月前に別れておけば良かった。僕はずるずるとあいつの

 手の中に落ちて行く自分が嫌いだった。

 「薪さん、明日のクリスマスイヴは何が食べたいですか?薪さんの

 ために一生懸命作りますよ。」

 「青木、頼むからもう何も作らないでくれ。」

 「じゃあ、久しぶりに食べに行きますか?フレンチとイタリアン

 どちらが良いですか?」

 「どっちでもいい。お前の手料理以外なら。」

 「はいはい。わかりました。あ、そうそう、約束、覚えてますか?

 クリスマスプレゼントは薪さんの処女を俺に・・・」

 「ばか。」

 僕は耳まで顔が赤くなった。青木が勝手に言ってるだけで僕は

 承諾した覚えはない。こんな奴の側にいると馬鹿がうつりそうだ。

 「風呂に入ってくる。夕食はもういらない。そのまずい料理は

 捨てておけ。」

 僕は青木にそう言うと席を立った。

                         

 風呂に入ると鏡に映る自分の姿が嫌いだった。痩せすぎて鎖骨が

 くっきりと浮き出た身体。そして、昨日の名残の赤い小さな痕が

 花びらを散らしたようにいくつもついている。青木はこの身体が

 自分の所有物である証を毎晩つけたがる。青木に刻み込まれた

 刻印は白い肌に赤く浮かび上がる薔薇の花びらのようだった。

 こんなんじゃうかつに外で着替えられない。仕事柄、泊り込みで

 徹夜することが多かったのだが、青木と付き合うようになってから

 第九に寝泊りしなくなった。いや、できなくなった。キスマークを

 つけるなと言っても、青木はちっとも言うことを聞かない。あんな

 年下の自分の部下になすがままにされている自分が嫌いだった。

 青木は水と同じだ。無味無臭。何の価値もない。人畜無害な顔を

 して僕の身体を支配しようとしている。人間は水なしでは生きられ

 ないとわかっていたから、僕は青木と別れようとしたんだ。それな

 のに青木はそんなことおかまいなしで僕の心に入ってくる。砂漠の

 ように乾いた僕の心に水を浸み込ませて、大地に雨を降らせるが

 ごとく愛情を降り注ぎ、僕の身体に潤いを与える。僕は青木に満た

 されて、青木に侵食される。もう、青木なしでは生きていけない。

 明日の晩、僕は青木に食われるのだろうか・・・

                          

 「薪さん、電話です。」

 その時突然風呂の扉が開いて青木が携帯を持ってやってきた。

 「俺が出るわけにいきませんから、薪さん、早く出てください。」

 僕は青木が差し出した携帯を呆然と受け取り、電話に出た。

 「もしもし・・・」

 岡部だった。

 「薪さん、犯人らしき人物が特定されました。明日の朝一番に

 逮捕状をとってください。」

 「ああ、わかった。」

 「明日は大捕り物になりますよ。」

 岡部はクリスマスイブが仕事でつぶれるのを嬉しく思っているかの

 ような声だった。

 僕は手短に電話を切ると青木に携帯を渡してこう言った。

 「明日の予定はキャンセルだ。」

 風呂から出てすぐ寝室に入った。明日は早いからもう寝ると言って

 ベッドに横になった。明日はまた徹夜になるかもしれない。急な

 仕事が入って先延ばしにしていた青木との関係をもうしばらく延長

 できることに僕はほっとした。だが、クリスマスを二人で祝う楽しみ

 を失って、なんだか寂しい気もした。そういえば、ここ数年、毎年

 クリスマスは仕事だった。岡部はなぜか毎年クリスマスが近づくと

 異様に仕事熱心になり、必ず第九にひきこもる。今までは僕も一人

 だったから、さほど気にせず岡部の仕事に付き合っていたのだが、

 今年は違った。毎日、岡部を一人残して青木の待つマンションへ

 帰宅していた。こんなこと初めてだ。仕事よりも青木を優先させる

 なんて・・・僕はどうかしている。

 「薪さん、もう寝ちゃいましたか?」

 パジャマに着替えた青木が僕のセミダブルのベッドにもぐり込んで

 聞いてきた。 

                           

 僕がわざと答えずに寝たふりをしていると、青木は後ろから僕を

 抱きすくめ、僕のパジャマに手を入れてきた。

 「うん、やめ・・・」

 「反応良いですね。やっぱり起きてました?」

 青木が耳元でささやく、そのまま耳たぶを甘噛みされ、ねっとりと

 舐められた。

 「あ、やめろ・・・」

 僕が首をよじって青木を見ると、青木は僕の唇に口づけした。とろ

 けるようなディープキスに僕はまた抵抗することを忘れてしまった。

 青木の手が僕の身体を狂わせる。舌と舌を絡め合わせ、快感を

 むさぼるように何度も唇を合わせた。

 「口でしてあげましょうか?」

 青木が意地悪く僕に聞いてきた。青木はいつもベッドでは意地悪

 になる。僕は少し照れたようなしぐさで目を閉じて青木が服を脱が

 せるのを待っていた。僕はいつも何もしない。青木が与えてくれる

 快楽を味わうだけ。快楽は甘い蜜のように僕を溶かし、トロトロに

 溶けた僕を青木は美味しそうに舐め上げ味わうのだ。

 「薪さん、もう1本指入れていいですか?2本じゃキツイかもしれ

 ないけど、慣らさないと俺のが入らない。」

 「あ、ダメ、やだ、いっ、痛いっ。」

 「薪さん、ローションって知ってます?これつけると滑りがよくなるん

 ですよ。明日のために買ってきたけど、今日、使っちゃいますね。」

 「あ、やだ、やめろ、青木。」

 「また、痛いのヤダって泣くんじゃないでしょうね?もうこれ以上待

 てませんから。」

 「あああああああああああ~」

 青木が僕の身体に入ってきた。信じられないほどの激痛が僕を

 襲った。僕は身体をのけぞらせ苦痛に耐えた。身体の中で青木が

 動くたびに僕は悲鳴をあげ、青木にしがみついた。

 「薪さん、痛いですか?すみません。」

 「ばか。あやまるなよ。」

 「薪さん、好きです。愛してます。」

 青木は僕にくちづけした。愛してるという言葉は魔法の言葉だ。

 どんな苦しみも愛があれば乗り越えられる。僕に再び快感の波が

 押し寄せた。僕の悲鳴はいつの間にか嬌声へと変わり、愛の高波

 が僕を更なる高みへと押し上げ、僕の思考回路は津波にさらわれ、

 頭が真っ白になった。

 「薪さん、大丈夫ですか?ちょっと切れちゃいましたね。でも、

 薪さんが感じてくれて良かった。」

 青木はティッシュで僕の身体を拭いながらそう言った。

 僕はぐったりとして何も答えなかった。

 とうとう一線を越えてしまったけど、不思議と後悔はなかった。

 「薪さん、メリークリスマス!開けてみてください。」

 青木は可愛いリボンの付いた小さな箱を差し出した。

 「青木、クリスマスイブは明日だぞ。」

 僕がそう言うと青木はくすっと笑って、こう言った。

 「薪さん、時計を見てください。もう夜中の2時ですよ。薪さんが

 ベッドに入った時にはすでに12時まわってたのに気づかなかった

 んですか?」

 僕は時計を見て、今日が24日であることにようやく気づいた。

 「さあ、早く開けてみてください。」

 青木にせかされて僕は包み紙を破って小箱を開けた。指輪だった。

 シルバーリングかと思ったが、プラチナだった。

 「プロミスリングです。ステディに贈る。」

 青木は僕の手をとり、左手の薬指にそっとはめた。

 「結婚してください。」

 「ばか、僕は・・・」

 「籍を入れるのは無理だってわかってます。でも、一緒に暮らしま

 しょう。一生俺のそばにいてください。俺は死ぬまであなたを愛し

 続けます。」

 青木は僕を抱き寄せた。僕は青木の腕の中で、それも悪くないと

 思った。僕はまだ青木に愛してると言ったことがない。今まで誰も

 愛したことがないから、これが愛なのかわからないからだ。青木は

 勝手に僕が照れて何も言わないだけだと勘違いしている。僕は

 青木のそんな傲慢で強気なところが好きだった。愛とはただ単に

 好きの延長上にあり、一緒にいて幸せと感じることであるなら、

 100%僕は青木を愛してる。でも、まだそれは確かな定義では

 ないのだから、確信できるまで黙っておこう。いつか僕は青木に

 愛を告白する時が訪れる気がする。それまで僕の思いは秘密に

 しておこう。僕はまた何も答えずに青木の腕の中で寝りについた。


                               (完)

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秘密「方舟」

秘密部屋



 あの頃の僕は希望に満ち溢れていた。

 奈落の底に沈むノアの方舟に乗っているとも知らずに・・・

 薪は自宅のマンションでワインを片手に写真を見つめていた。

 そこには希望に満ちあふれた二人の笑顔があった。

 「完成したら、また行こう。鈴木。」

 薪はにっこりと微笑んでワインを飲んだ。

 「そうだな。少し早かったな。3年後に俺たちの夢が実現する。

 そうしたら、また見に行こう。薪。」

 第九の全国展開は鈴木の夢だった。貝沼の脳を見た後も

 それは変わりなく、狂気に蝕まれて行く鈴木の唯一の希望

 だった。真実を映し出すMRIは見たものを狂気の世界へ

 導いて行く。それが分かった今でも鈴木は夢や理想を

 捨てなかった。未来だけを信じていた。

 鈴木はゆっくりと近づくと、薪に口づけした。舌を絡めながら

 ワイシャツのボタンを外して行く。薪の滑らかな肌に指を

 這わせると、薪は思わずワインをこぼしそうになった。

 「おっと、こぼしちゃダメだよ。そのまま手に持って、

 ワインを飲んで。床にこぼさず、最後まで飲めたら、

 薪の勝ち。薪の言うことを何でも聞いてあげるよ。でも、

 もし薪がワインをこぼしたら、その時はお仕置きだよ。」

 鈴木の意地悪な提案に薪は逆らわなかった。薪はそっと

 慎重にワイングラスを唇にあてた。しかし、ワインを一口

 飲んだ時、鈴木に胸の突起を吸われて、薪は口の端から

 少しワインをこぼしてしまった。鈴木は首から顎にかけて、

 一滴のこぼれたワインを舐め上げると、

 「ダメじゃないか。今度こぼしたら、お仕置きだよ。」

 と、薪の耳元で囁いた。そして、薪のズボンに手をかけ、

 ジッパーを下して口に含んだ。ねっとりとしつこく舐められて

 身体の芯が熱くなり眩暈を感じた薪はついにワイングラスを

 持っていた手を傾けて、ワインを床にこぼしてしまった。

 「僕の勝ちだね。お仕置きだ。」

 鈴木は意地悪く笑った。薪は四つん這いになるよう命じられ、

 ワインに染まった床に両手をついて、ズボンを膝の位置まで

 半分脱いだ状態で尻を突き出し、四つん這いになった。

 鈴木は4分の1くらいワインが残っているワインのボトルを

 手に取ると、薪のまだ慣らしていない蕾にゆっくりと

 瓶の口先を突っ込んだ。

 「ひっ!あ、ああ。や、やめ。ああ~」

 体内に異物と液体が入ってくる感覚に薪は恐怖を感じ、

 僅かな抵抗を見せた。鈴木はそんなことはおかまいなしに

 ズブズブと瓶を薪の中に沈めて行く。5センチほどワインの

 瓶を突き刺すと、上下に動かし、瓶に入っていたワインを

 全部、薪の尻の中に注ぎ込んだ。

 「こぼすなよ。」

 鈴木は薪の尻をペシッと叩いた。しかし、ワインを

 こぼさないでいるのは至難の業だった。薪の下の口は

 瓶を咥えたままタラタラと涎を垂らすようにワインを

 こぼしてしまっていた。

 「だらしないな。」

 鈴木は嘲笑うと、ワインの瓶を抜き取り、薪の中に入ってきた。

 ワインに酔った薪の身体はいとも簡単に鈴木を受け入れ、

 ピシャピシャと淫猥な音を立てて、鈴木が腰を打ち付けるたび

 薪の尻から、赤い液体が溢れた。ワインは薪の下半身まで

 汚し、まるで真っ赤な血に染まったようだった。

 「あ、ああ、ああ~」

 嬌声を上げる薪は何かに溺れたように床に爪を立て、必死で

 何かを掴もうとしていた。血を流して死んでいった少年達は

 薪への愛を誓う為の生贄だった。貝沼に憐れみをかけた罰を

 薪は受けなければならなかった。薪は惨めに這いつくばり、

 身体を汚すことで、ほんの少しだけ死者に許してもらえる

 気がした。薪は快楽の波に溺れて神にすがりつきたかった

 のだった。痛みは薪に安らぎを与えてくれる。薪は鈴木に

 激しく突かれて、絶頂に達した。そして、鈴木の欲望を

 体内に感じながら、神に導かれて落ちていくのを感じた。


 朝の陽射しが眩しくて、薪が目を開けると、鈴木は窓の

 カーテンを開けて、外を眺めていた。きちんとスーツを

 着て、髭を剃り、身支度を完璧に終えて、出勤までに

 時間が余って窓の景色を眺めている人みたいだった。

 「鈴木。今、何時?」

 薪は裸でベッドに寝たまま眠そうに聞いた。

 「7時5分。」

 「そうか。ところで、鈴木は何時に起きたんだ?」

 「5時。」

 「よくそんなに早く起きられるな。」

 「眠れなくってね。4時間も眠ると自然に目が覚めるんだ。」

 「疲れてるんじゃないのか。貝沼の脳は僕一人でやるよ。」

 「それはダメだ。薪は俺の報告にだけ目を通してろ。

 室長の薪が無理して全部見る必要はないんだ。」

 「でも、それでは鈴木に負担がかかり過ぎてしまう。

 僕は鈴木が心配だ。」

 「俺は大丈夫。心配いらないよ。それより、もう支度しないと

 遅刻するぞ。」

 鈴木は笑って薪に言った。その笑顔はどこか儚げで、とても

 大丈夫とは思えなかったが、薪はそれ以上何も言わず、服を

 着て、身支度を終えると、鈴木の車で第九へと向かった。

 第九に着くと、朝一番で脳が届けられていた。

 母親に虐待されて死んだと思われる1歳の子と7歳の子の

 脳だった。母親は容疑を否認しており、不審な点があるので、

 MRIで調べて欲しいと所轄から送られて来たのだった。

 薪は滝沢に2日で調べて報告をまとめろと命令した。しかし、

 滝沢はその日の夕方、苦虫を噛み潰したような顔をして、

 報告書を書く前に薪にもMRIを見て欲しいと言ってきた。

 「まずは1歳2か月の子の脳から見てくれ。7歳の子は

 その後だ。てっとり早く言うと、母親は白だ。ネグレクトも

 虐待に入るなら、多少の罪にはなるかもしれないが、

 ムショに入るようなことはしていない。1歳の弟を殺したのは

 7歳の兄だったよ。」


 初夏のある日、二度の離婚歴のある母親は1歳と7歳の

 幼い兄弟を自宅のアパートに残して、彼氏と1泊2日の

 旅行に出かけた。母親は

 「何があっても外に出ちゃだめよ。」

 と言って、2人の子供を置き去りにした。

 子供たちは留守番に慣れているのか、午前中は何事もなく

 テレビを観て過ごした。朝と昼は母親の用意した菓子パンを

 食べ、兄の晴彦はコーラを飲み、弟の晃彦は牛乳を哺乳瓶に

 注いでもらって飲んだ。午後からテレビゲームに夢中になった

 晴彦は晃彦が寄ってくるたびに

 「あっちへ行け」

 と追い払い、叩いたり、突き飛ばしたりした。そして、晃彦を

 大きな段ボール箱に閉じ込めた。晃彦が泣き出すと、晴彦は

 牛乳の入った哺乳瓶を晃彦に与え、

 「それを飲んで寝ろ。」

 と言った。晃彦は諦めたように牛乳を飲むと寝てしまった。

 夕方、目を覚ました晃彦は段ボールの中で再び泣き出した。

 晴彦がすぐに飛んできて、晃彦を見て、

 「くっせぇな。」

 と言った。朝から一度も換えていないオムツから糞尿が

 漏れ出して、ズボンを汚していたのだった。晴彦は晃彦を

 段ボール箱ごとひっぱって、風呂場に連れて行くと、晃彦の

 服を脱がせ、汚れた服をバケツに入れ、オムツを外し、

 ゴミ箱に捨てると、シャワーの水で洗い流した。6月とはいえ、

 冷たい水で体を洗われた晃彦は泣き叫んだ。すると、晴彦は

 「うるさい。だまれ!」

 と言って、洗面器を晃彦の顔に被せた。真っ暗な画面が

 数分間続いた後、顔から洗面器が外されると、晃彦は体も

 拭いてもらえず、びしょ濡れのままオムツ1枚の姿で

 段ボール箱の中に再び放り込まれた。晴彦は更に泣き叫ぶ

 晃彦の口をガムテープで塞ぎ、手足を縛り、段ボール箱の

 ふたをガムテープで貼って閉じた。

 翌朝、段ボール箱のふたが開けられ、縛られていた手足と

 口のガムテープをはがされ、風呂場で再びシャワーで水を

 かけられると、晃彦は泣き出した。晴彦は泣く晃彦の頭を

 掴んで水の入った洗面器に顔を押し付けた。もがき苦しみ、

 洗面器の水で溺れた晃彦は気を失った。数時間後、

 晃彦は段ボール箱の中で目を覚ましたが、ぐったりとして

 動けなかった。泣き叫ぶ気力もなく、再び眠りにつくと、

 真夜中、静かに息を引き取った。

 「酷い話だろ。」

 滝沢がMRIを止めて、薪に言った。

 「死因は高熱による肺炎だ。だが、俺がおまえの意見を

 聞きたいのはこれじゃない。7歳の兄のほうだ。」


 次に滝沢は晴彦の脳を薪に見せた。

 母親が旅行に出かけた日の午後、テレビゲームの邪魔を

 された晴彦は怒って、晃彦を段ボール箱に閉じ込めた。

 夕方までテレビゲームで遊んだ後、電気ポットのお湯で

 夕食のカップラーメンを作ろうとした時、晃彦の泣き声がして、

 段ボール箱の中で寝ていた晃彦の様子を見に行くと、

 オムツを換えるのを忘れていたことを思い出した。晴彦は

 段ボール箱を引きずって、風呂場に行くと、糞尿にまみれた

 晃彦の服を脱がせ、シャワーで晃彦の体を洗った。泣き叫ぶ

 晃彦に腹を立て、洗面器を晃彦の顔に被せて押さえつけ、

 泣き声が近所に聞こえないようにして、殴る蹴るの暴力を

 振るった。数分間殴り続けて気が済んだのか、晴彦は

 殴られて大人しくなった晃彦にオムツを穿かせ、段ボール箱に

 放り込むと、口にガムテープを貼り、手足にもガムテープを

 巻いて、段ボール箱のふたをガムテープで封印した。

 晴彦はテレビを観ながら、カップラーメンを食べ、夜中まで

 テレビゲームをして、眠りについた。

 翌朝、電話で目を覚ました晴彦は母親からだと思って、

 喜んで出るが、母親と話しているうちに不機嫌になり、

 電話を切った後、風呂場で晃彦に再び暴行する。晃彦の頭を

 押さえつけて、洗面器の水で溺れさせると、気を失った晃彦を

 段ボール箱に入れ、ふたをガムテープで閉じた。1泊2日の

 旅行のはずなのに母親は夜になっても帰って来なかった。

 翌朝、放置した晃彦の様子を見る為に段ボール箱のふたを

 開けると、晃彦は死んでいた。晴彦は裸で死んでいる晃彦を

 シャワーで洗い、体を拭き、オムツを穿かせ、服を着せ、

 布団に寝かせた。汚物で汚れた段ボール箱は風呂場で破って

 ちぎり、ゴミ箱に捨てた。最後に風呂場を掃除して、証拠を

 隠滅すると、テレビを観ながら、母親の帰宅を待った。

 午後、何も知らずに帰宅した母親は

 「ただいま。もう1泊したいって言われて、2泊3日の旅行に

 なっちゃって、ごめんね。良い子にしてた?」

 と言った。晴彦が寝室を指差して、何か言うと、母親は

 「えっ?!熱があるの?風邪ひいたなら、何で電話した時に

 言わないの?あっ、ごめん。早く帰って来てって言われたのに

 電話切っちゃったのはママだっけ?」

 と、会話しながら寝室まで歩いて来た母親は晃彦を見たとたん

 血相を変えて、駆け寄り、冷たくなった晃彦を抱きしめる。

 「救急車。救急車を呼ばなくちゃ!!」


 滝沢はMRIをいったん止めて、薪に説明した。

 「救急車に電話した後、母親は晴彦を問い詰めたが、晴彦は

 『昨日から高熱が出て、何も食べずに寝ていたけど、死んでる

 とは思わなかった。』と嘘をついた。かけつけた救急隊員が

 警察に通報し、母親は逮捕され、晴彦は児童福祉施設に

 保護された。ところが、1週間後、晴彦は原因不明の死を

 遂げた。晴彦の体にはアザなどがあって、警察は母親の虐待

 だと決めつけた。しかし、実際はそうじゃなかった。苛めだよ。

 晴彦は学校でいじめられていたんだ。半年前に離婚して、

 ボロアパートに引っ越してきた晴彦は友達ができなくて、

 いじめの対象にされた。おまけに、あの美人の母親は男に

 だらしなくて、離婚後に就職した会社の上司とすぐに男女の

 関係になって、しょっちゅう夜遅くまで遊び歩いていた。弟の

 子守を押し付けられた晴彦が同級生に殴られたり蹴られたり

 するたびに弟に八つ当たりしていたとしても不思議じゃない。

 だが、問題はここからだ。俺が相談したいのは施設に入った

 晴彦が死ぬまでの1週間だ。あんたは幽霊を信じるかい?」

 滝沢の質問に薪は顔色を変えた。滝沢は薪の返答を

 待たずに、MRIを再び見せた。

 施設の先生は優しかった。施設にいる子供たちも親切で、

 晴彦はすぐに皆と打ち解けて、仲よく暮らし始めた。でも、

 晴彦は何かに怯えているようだった。時折、晴彦は何度も

 後ろを振り返ったり、不審な行動をとるようになった。

 ある晩、晴彦は晃彦の夢を見る。金縛りにあって、うなされ、

 目を開けると、晃彦の顔が目の前に浮かんでいた。晴彦が

 声も出せずにいると、晃彦は晴彦の口を両手で押さえ、

 ゆっくりと息を止めようとする。晴彦は恐怖のあまり失神

 してしまう。翌日、風呂場で晴彦は転び、足元を見ると、

 晃彦が晴彦の足にしがみついていた。晃彦は晴彦の体を

 這い上がり、晴彦の顔に手を伸ばす。晴彦は恐れおののいて

 後退りしながら立ち上がって逃げようとして浴槽に転落した。

 湯の中に沈んだ晴彦に晃彦が襲い掛かり、晴彦の首を

 絞めた。晴彦はもがき苦しみながら浴槽の中で水死した。

 「風呂場には他にも何人か児童が一緒に入っていたらしい。

 でも、誰も晃彦の幽霊を見ていないんだ。一人で浴槽に

 落ちて、3分間、湯の中に沈んで浮かんでこなかった。

 施設の先生が駆けつけた時にはもう死んでいたそうだ。

 死因は心臓麻痺による溺死。首を絞められた跡は残念

 ながら無かった。室長はどう思う?」

 「幻覚だ。幽霊なんかいるはずがない。報告書には

 科学的に証明できることを書け。」

 「分かった。そうするよ。俺も頭がおかしいって思われたくない

 からな。あんたなら、そう言うと思ったよ。」

 滝沢は意味深な笑みを浮かべて言った。


 「貝沼の幽霊を見たって奴も精神病院行きになったしな。

 世の中に幽霊なんているわけがない。もし、いたとしたら、

 あんたは今頃、殺されているだろうな。第九の連中も室長だけ

 何故幻覚を見ないのか不思議がってるよ。でも、本当は

 見るんだろ。幻覚。」

 滝沢がにっこりと笑った時、貝沼の顔に一瞬、すり替わって

 見えた。薪は真っ青になったが、相手にさとられないように

 声は出さなかった。落ち着いて、もう一度よく見ると、

 滝沢の顔に戻っていた。

 「なんだよ。急に心停止しそうな顔して。」

 と、滝沢は訝しげに薪の顔を覗き込んだ。そして、

 「やっぱり、あんたも幻覚を見るんだな。そりゃ、そうだよな。

 あんたの偽善のせいで、こうなったのに、何ともないほど

 神経図太くないよな。自分にそっくりな少年たちが殺されるって

 どんな気分だ?ほら、あれだろ?自分がもし、あんなふうに

 殺されたらって想像したりもするんだろ?普通の奴だったら、

 とっくに恐怖で頭がおかしくなってるだろうな。でも、あんたは

 違う。あっちの世界に行かないように工夫してるんだろ?

 リストカットしてる精神障害者みたいに、男に抱かれて、

 滅茶苦茶にされる自分に酔ってる。罪の呵責から逃れる為に

 鈴木を利用して、鈴木にいっぱい酷い事をさせて、自分だけ

 罪を償ってる気になっているんだろう?それって、自傷行為

 よりも立ちが悪いと思わないか?」

 「・・・。」

 「鈴木は悩んでるよ。夜も眠れないくらいに。もう、

 解放してやったらどうなんだ?」

 滝沢はそう言って、薪の手に触れた。ゆっくりと手の甲に

 手の平を重ねて、指の付け根に指を滑り込ませ、薪の手を

 摩るように愛撫した。

 「俺が鈴木の代わりになってやってもいいんだぜ。俺に

 見せろよ。貝沼の脳を。俺が貝沼の報告書も書いてやる。

 もちろん、あんたに都合の悪い部分は全て改ざんしてやるぜ。

 その代り、俺にもさせろよ。ワインプレイとか・・・」

 「何故、知ってるんだ?」

 「総監に教えてもらったんだ。室長にはこんな趣味が

 あるってな。録画されてるよ。それから、録音もな。」

 「・・・それは、本当なのか?」

 「本当だ。嘘だと思ったら、自宅を探してみな。監視カメラと

 盗聴器が仕掛けてあるから。」


 薪は帰宅すると、マンションに盗聴器と監視カメラが

 仕掛けられていないか調べた。盗聴器はベッドの下と

 電話線の中に監視カメラはリビングと寝室の天井の

 照明器具の中に隠されていた。天井に穴をあけて、小型

 監視カメラを仕込み、モニターに送られてくる画像を録画

 していたのだった。政府は秘密を守る為なら手段を選ばない。

 総監は薪を監視するように言われて、趣味と実益を兼ねて

 録画していたのだろう。酷い話だと薪は思った。だが、逆らえば

 確実に殺される。どうしたものかと考えていると、ピンポーンと

 玄関のインターホンが鳴った。

 「俺だ。話がある。開けてくれ。」

 滝沢だった。薪は躊躇したが、玄関のドアを開けた。滝沢は

 薪の部屋に入るなり、こう言った。

 「もう、見つけたのか。早いな。せっかく俺が苦労して

 取り付けたのに・・・また付け直さなきゃな。」

 「何だって?!」

 「総監に監視するよう命令されて、監視カメラと盗聴器を

 取り付けたのは俺だよ。あんたの趣味は総監から聞いて

 知っていたからな。この数か月間、楽しませてもらったよ。

 だが、そろそろ見てるだけじゃ、つまらなくなったんでね。

 俺にもやらせろよ。」

 滝沢は薪の顎に手をかけると、口づけした。しかし、口内に

 舌を入れると、薪にガリッと噛まれた。

 「痛っ!」

 滝沢は口の端から一滴の血を流して、フッと笑った。

 「気の強いお姫様だ。でも、俺に逆らっていいのかな。

 あんたは俺の報告次第で消されるぞ。それに、鈴木も

 精神的に相当まいってる様子だし、俺を鈴木の代わりに

 使ったら、何もかもうまくいくぜ。少しは利口になれよ。」

 「・・・分かった。」

 「そうか。よし。良い子だ。」

 滝沢は満足そうに薪の服を脱がせようとした。すると、薪は

 無言で滝沢の手をはらい、自分でネクタイを外し、滝沢に

 ネクタイを手渡した。

 「何?目隠し?いいけど、そういう趣味?」

 「見たくないから。」

 薪はそう言うと、静かに目を閉じた。滝沢はネクタイを

 薪の目に当て、頭の後ろで縛った。

 「ソファーでいいのか?」

 滝沢が薪をリビングのソファーにゆっくりと押し倒した。

 ワイシャツのボタンを外して、ズボンを脱がせ、しなやかな

 身体を眺めながら、滝沢はこう言った。

 「美しい。」

 そして、滝沢は無反応な薪の身体に手を触れると、再び

 口づけした。滝沢の舌が気持ち悪いと薪は思ったが、

 抵抗しなかった。真っ暗な闇が薪を包み、現実から逃避する

 手助けをしてくれていた。滝沢は薪を握りしめ、薪の身体の

 微かな反応が嬉しいのか、執拗に薪の舌を貪った。


 「薪!!!」

 突然鈴木の声がした。薪が慌てて目隠しを外すと、鈴木が
 
 リビングに立っていた。狼狽した滝沢を鈴木は殴った。

 「鈴木!やめろ!」

 薪は鈴木を止めた。鈴木は

 「何故だ?」

 と、薪のほうを見て言った。その隙に滝沢は一目散に

 玄関に駆けて行くと、靴を履いて逃げて行った。しかし、

 鈴木は滝沢を追いかけなかった。

 「どういうことだ?」

 鈴木は怒気をはらんだ声で薪に聞いた。

 「何でもない。落ち着け。」

 薪はワイシャツ1枚だけ羽織った姿で鈴木に言った。

 鈴木は頭を抱えて座り込んだ。

 「何で滝沢なんかと・・・」

 「鈴木。貝沼の担当を降りろ。全ての事件を滝沢に

 任せることにした。」

 「はぁ?!ふざけるな!要するに俺は用済みってことか?」

 「そうだ。明日から休暇をとれ。しばらくここにも来るな。」

 「本気で言っているのか?う、嘘だろ?」

 「嘘じゃない。鈴木。今日はもう帰れ。」

 「嫌だ!!絶対に別れないからな!!」

 鈴木はそう叫ぶと、薪を押し倒した。鈴木は無理やりに

 足を開かせて挿入した。

 「あっ。ああっ。あああ~」

 何の準備もしていない薪のそこは引き裂かれ、メリメリと

 体内に侵入する鈴木は凶器と化した。鈴木はまるで傷口を

 えぐるように激しく腰を動かして、薪を苦しめた。そして、

 床に落ちていたネクタイを薪の首に巻きつけ、殺意にも似た

 力でネクタイの両端をグイッとひっぱって、首を絞めた。

 「ウッ」

 喉を潰されるような音がして薪は呻いたが、抵抗しなかった。

 鈴木は数秒でネクタイを緩めると、今度は自分のネクタイを

 外し、薪のネクタイの端と結び、薪の足首を掴んで、顔の

 傍まで持ってくると、ネクタイの片端をひっぱって、薪の

 右手首と右足首を縛り、もう片方も同様にネクタイで左手首と

 左足首を縛った。薪の首に巻かれたネクタイは右と左の

 両方の手足を縛めたのだった。顔を挟むような形で手足を

 縛られ、薪は凌辱された。無理に折り曲げられた薪の身体に

 激しく腰を打ち付けて、鈴木が己の欲望を薪の体内に放つと、

 薪もビクビクと身体を震わせ、絶頂に達した。鈴木は

 「気持ち良かったか?」

 と薪に聞いた。だが、いつまでも薪の中から退こうとしない

 鈴木に薪は

 「もう退け。」

 と言った。相変わらずの冷たい薪の言葉に鈴木はクスッと

 笑って、

 「もう一回、いや、一晩中しよう。」

 と言って、再び腰を動かし始めた。


 「あっ。鈴木。ネクタイ、解け。さすがに、これはきつい。あっ。」

 言葉とは裏腹に感じている薪に

 「ダメだよ。縛るのに苦労したんだから。」

 と鈴木は言った。そして、体液でぐちゃぐちゃになった

 薪の身体を激しく責めたてた。

 「あっ。あ~。鈴木。お前に言わなくちゃならないことがある。

 あっ。滝沢と寝ることになったから。あっ。でも、心配するな。

 僕は滝沢が嫌いだから。あっ。」

 「何だよ。それ。わけわかんないよ。薪。もう、他の奴と寝る

 のはやめたんじゃなかったのかよ。薪は頭がすごく良いのに、

 時々、頭の悪い売春婦みたいなことするのはやめろよ。

 薪は俺が守ってあげるから。薪。愛してるんだ。愛してる。

 100回愛を囁いたって足りないくらい愛してる。薪の望む

 ことは何でもしてあげてる。それなのに、どうしてなんだ。」

 「・・・鈴木。」

 「そんな憐れむような目で俺を見るな。」

 鈴木は薪の目を手の平で覆うように押さえつけた。そして、

 「一緒に死のう。」

 と言った。

 「薪を殺して俺も死ぬ。夢や理想だけを追い求めて、

 ここまで来たけど、輝かしい未来なんて何処にもなかった。

 人の秘密を覗き見るなんて、してはいけないことだったんだ。

 人には誰にも知られたくない秘密がある。墓場まで

 持っていきたい秘密を暴くことは死者に対する冒?だ。

 そんな俺達を神様が許すはずがなかったんだ。俺は第九が

 できた時、希望の船に乗った気がした。これからは捜査に

 行き詰まることなく、罪を犯した人間総てに罰が与えられる。

 素晴らしいと・・・でも、違っていた。貝沼は薪に直接

 話しかけられなくて、愛の告白をする為に少年達を殺した。

 最初から捕まえて欲しかったんだ。貝沼は快楽殺人を

 繰り返しながら、薪に自分を見て欲しいと願っていた。

 完敗だよ。薪は荊の鞭で自分を鞭打つ敬虔なカトリック教徒

 のように自らを罰することを覚えてしまった。でも、

 そんなのは本当の薪じゃない。俺の知ってる薪は・・・

 昔の薪はこんなんじゃなかった。」

 「鈴木。おまえと死ねたら、僕はどんなにか幸せだろう。

 でも、今はまだ死ねない。僕は自分が見てきたことに

 責任を持たなきゃならない。人の秘密を知るということは、

 それだけ責任が重いんだ。たとえ、僕は地獄に落ちても、

 悪魔に身を売ってでも、真実を守らなくちゃいけないんだ。」

 「薪。」

 「鈴木。手をどけろ。おまえの顔を見たい。」

 鈴木は薪に言われて、目を隠していた手を放した。

 そして、まっすぐに見つめる薪の瞳に吸い寄せられるように

 口づけした。甘く切ない接吻に二人は溶け合い、

 蕩ける蜜のような薪の身体に鈴木は身を沈めたまま

 闇に落ちていった。二人は闇の海を旅するノアの方舟に

 乗せられた小動物のように苦難を乗り越えた先には

 希望の光が見えると信じて、身を寄せ合った。しかし、

 神の領域を侵す魔法の鏡のようなMRIは神への冒涜に

 他ならない。神が導く先は地獄よりも酷い奈落の底

 かもしれなかった。それでも、薪は神を信じたかった。

 甘い抱擁に眩暈を感じながら、薪は鈴木を見つめ、

 愛してると心の中で囁いた。



                          (完)



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二次創作小説

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青の祓魔師「碧い泉」 

雑食部屋



 樹海の中に眠る滔々と流れる川の源に碧い泉があるという。

 その泉のほとりには万病に効く薬草が生えている。

 雪男は燐と共に碧い泉を探して歩いた。蝉がうるさいほどに

 鳴く山里に比べて、樹海の中は静かだった。

 人の通らぬ山道を1時間ほど歩くと、道が左右二つに

 枝分かれしていた。すると、

 「二手に分かれて探そう。兄さんは右の道を行って。

 僕は左の道を行くから。」

 と雪男は言った。左の道は緩やかな山道で右の道は

 険しい獣道だった。雪男は自分が楽な方を選んで、

 困難な道を燐に押し付けたのは明らかだった。

 「一緒に探そうぜ。」

 「時間がないんだ。日が暮れるまでに見つけて、山里に

 帰らなくちゃならない。夜になると魔物が出るからね。

 じゃ、兄さん、頑張って。」

 雪男はそう言うと、さっさと行ってしまった。

 燐はため息をつくと、仕方なく、獣道を登り始めた。

 山登りはきつかったが、峠まで登りきると、あとは楽だった。

 道のない緩やかな坂を下って行って、しばらく歩くと、

 マツタケのような良い香りがしてきた。燐が匂いのするほうに

 視線をやると、大きな木の根元にマツタケのようなキノコが

 赤や黄色の色とりどりのキノコと一緒にたくさん生えていた。

 「うわ~!!美味そうだなぁ~」

 燐が駆け寄って、キノコを食べようとすると、

 「食べちゃダメ!!」

 と、何処からか声がした。

 「それは毒キノコだよ。食べたら死ぬよ。」

 木陰から現れた少年は燐を咎めるように言った。

 「マツタケじゃねぇのかよ!てっきりマツタケかと思った。」

 「マツタケが赤いキノコと一緒に生えてるわけないじゃん。

 兄ちゃん、村の人間と違うね。何処から来たの?」

 「遠い学園から薬草を探しに来たんだ。」

 「へぇ。おいら、万病に効く薬草なら知ってるよ。

 泉の近くに生えてるんだ。」

 「薬草を知ってるのか?!何処にあるんだ?教えてくれ。」

 「あっちにあるよ。おいらと遊んでくれるんなら、

 案内してやろうか?」

 「本当か?!ありがとな。」

 燐は嬉しそうに礼を言うと、少年の後をついて行った。



 「名前、何て言うんだ?」

 燐が少年に聞いた。
 
 「リュウジン。兄ちゃんは?」

 「奥村燐。よろしくな。」

 「うん。」

 少年は大きな目を輝かせて、ニコッと笑ってうなずいた。

 透けるような真っ白な肌に漆黒の髪と瞳を持つ少年は

 浴衣に草履といった山登りには不向きな恰好だった。

 「リュウジンは一人で山に来たのか?家はこの近くなのか?」

 「うん。すぐ近くに住んでるよ。母ちゃんはいないんだ。

 村人に殺されたんだ。」

 「えっ?そうなのか。悪いこと聞いちゃったな。ごめんな。」

 「うん。いいよ。兄ちゃんには親はいるの?」

 「・・・。いない。」

 「へぇ。そっか。じゃ、仲間だね。燐兄ちゃんって呼んでいい?」

 「ああ。いいよ。」

 燐は少し照れたように返事をした。すると、リュウジンは

 「泉はあっちだよ。」

 と、深い森の中を指さした。薄暗い木々の向こうに

 樹海の彼方に泉はあった。

 
 
 緑に覆われた泉は太陽の光を浴びてエメラルドグリーンに

 輝いていた。

 「わぁー!!綺麗な泉だな~。」

 燐は泉を見つけたとたん、走り寄った。近くで見ると、

 泉の水は澄んでいて透明だった。

 「泉の底に生えている水草のせいで緑色に見えるんだ。

 ほら、よく見てごらん。所々に碧い水草が生えているだろ?

 あれが万病に効く薬草だよ。」

 緑色の水草に混じって、疎らに碧い水草が生えていた。

 燐は目を輝かせて、

 「採っていい?」

 と、リュウジンに聞いた。

 「いいよ。でも、5本だけね。この薬草はとても貴重なんだ。

 全部摘み取ってしまうと、100年は生えてこないから。」

 「わかった。じゃ、5本だけな。」

 燐は服を着たまま泉の中に入って、薬草を採った。

 泉は意外と深かった。燐は足を滑らせて、深みに嵌り、

 転んで、肩まで水に浸かってしまった。

 「泉の底は急に深くなっているから、浅瀬の所だけに

 しとかないと、危ないよ。」

 リュウジンが岸部から手を伸ばして、燐に言った。

 「そういうことはもっと早く言えよ。ま、いいさ。

 このままこの辺に生えてるやつを採ってから出るよ。

 それにしても、随分、長い草だな。」

 燐は1メートル以上ある碧い水草を手に持って呟いた。



 「服、濡れちゃったね。脱いであの木に干して乾かしたら?」

 泉から出て、薬草を鞄に詰めている燐にリュウジンは言った。

 「えっ?!いいよ。すぐ乾くから。それに、日が暮れるまでに

 帰らないといけないし・・・」

 「遊んでくれる約束は?」

 リュウジンは拗ねたような大きな瞳で燐をじっと見た。

 「あ、そういえば、遊んでって言ってたな。何して遊ぶ?」

 「泳ごう。」

 リュウジンは自分の帯をほどいて浴衣を脱いだ。

 リュウジンの身体は肋骨がくっきりと見えるほど痩せていて、

 透き通るような肌にスラッと伸びたしなやかな肢体は

 子供なのに艶めかしかった。リュウジンは下着を脱ぐと、

 全裸で泉に入った。

 「燐兄ちゃんも早く脱いで。」

 リュウジンはまるで誘うように燐に言った。燐は一瞬、

 ドキッとしたが、慌てて服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿で

 リュウジンの元に走り寄った。

 「向こう岸まで競争しようぜ。」

 「うん。いいよ。」

 リュウジンと燐は速さを競って泳いだ。数十メートルを

 リュウジンはあっという間に泳いで燐に勝った。

 後から泳ぎついた燐は

 「子供のくせにすげぇ速いな。」

 と言った。燐は5歳くらい年下に見えるリュウジンに負けて、

 少しショックだった。

 「燐兄ちゃんも1分足らずで泳げるなんて、すごいよ。」

 「よし。じゃ、もう1回だ!」

 燐はフライングして泳ぎ出した。

 「あっ、ずるい。燐兄ちゃん、待ってよ~。」

 リュウジンは笑顔で追いかけた。



 何回泳いで競争しても燐はリュウジンに勝てなかった。

 燐はヘトヘトになって、岸辺に寝転んだ。リュウジンは

 息も乱さずケロっとしていたが、一緒に寝転んで、

 燐の胸に寄り添った。水辺には綺麗な花がたくさん

 咲いていて、照りつける夏の太陽が幻想的な泉の風景を

 蜃気楼のように不確かなものにしていた。燐は花に

 囲まれて、お花畑で眠るお姫様のように目を閉じた。

 燐がウトウトと眠っていると、何かが身体中を這いまわり、

 四肢の自由を奪われ、夢の中でこの世のものではない

 生物に抱かれているような気がした。ハッとして、燐が

 目覚めると、傍らに寝そべっていたはずのリュウジンが

 燐の上に乗っていた。

 「目が覚めたの?」

 リュウジンが燐の顔を覗き込むようにして、聞いてきた。

 「なっ!何してやがる!」

 「何って、交尾してるんだよ。」

 リュウジンはうっすらと笑った。燐は暴れようとしたが、

 手足を水草に縛られて、動けなかった。驚いたことに

 燐は泉の上にいた。泉の底から生えている水草が

 生き物のようにグルグルとまとわりつき、燐の身体を

 水面に持ち上げていた。水草たちは燐の身体の自由を

 奪うと共に身体を撫でまわして、交尾に協力していた。

 リュウジンが燐の身体の中で動くたびに胸や腹を

 水草たちにいやらしく撫でまわされ、燐は声をあげた。

 「あ、ああ、あっ、いやだっ、あああ~」

 恐怖と快楽の狭間で啼く燐にリュウジンはこう言った。

 「燐兄ちゃん、おいらのお嫁さんになって。」

 リュウジンは燐を抱きながら、優しくキスをした。しかし、

 「俺は女じゃねぇぞ!」

 と、燐は言った。

 「雄同士でも交尾できるって聞いたことあるよ。現に

 交尾してるし・・・おいら、交尾するの初めてなんだ。

 ずっと待ってたんだ。おいらの嫁さんにふさわしい

 魔物が現れるのを・・・」

 「えっ?!」

 「おいら、知ってたよ。燐兄ちゃんが人間じゃないって。

 匂いで分かるんだ。」

 リュウジンはにっこりと微笑んだ。



 「愛しているよ。燐兄ちゃん。」

 リュウジンは激しく腰を突き動かした。

 「あ、ああ~、あああ~」

 燐は身体の最も感じる部分を水草に扱かれながら、

 リュウジンに激しく突かれて、絶頂に達してしまった。

 するとその時、余韻に浸る間もなく、銃声がしたかと思うと、

 リュウジンが血を吐いて燐の上に倒れこんだ。リュウジンの

 身体から流れ出た血が泉の水を真っ赤に染めると、

 水草たちが一斉に燐から離れて逃げて行った。燐は一瞬、

 バランスを崩して泉に沈んだが、すぐに立ち上がって、

 撃たれたリュウジンを抱きかかえ歩いて岸に上がった。

 「兄さん!!」

 銃を撃ったのは雪男だった。雪男は銃を構えたまま

 泉の近くに立っていた。

 「雪男!なんで撃った?!殺すことないじゃないか!」

 と、燐が言うと、雪男は険しい表情を浮かべて、

 「兄さん、今すぐ離れて!その化け物はまだ生きている。」

 「えっ?」

 死んだと思ったリュウジンの身体が碧く光り、瞬く間に

 巨大な龍に変身した。燐は驚いて、手を放したが、逆に

 龍の大きな足でがっしりと身体を掴まれてしまった。

 「兄さんを放せ!化け物!」

 雪男が服のポケットから聖水を取り出し、巨大な龍に

 投げつけた。しかし、龍は聖水を浴びてもなんともなかった。

 「何故だ?!」

 雪男は驚いた。すると、リュウジンはこう言った。

 「龍神は化け物なんかじゃないからだ!碧い泉の守り神だ!」

 「守り神?」

 「そうだ。おいらは悪い人間どもから泉を何百年も

 守り続けてきた神だ。お前ら人間はみんな殺してやる!」



 リュウジンが雪男に牙を剥いて襲いかかろうとした時、

 「やめろ!雪男は俺の弟だ!」

 と燐が言った。リュウジンはピタッと動きを止めて、

 燐に問いかけた。

 「何で燐兄ちゃんの弟が人間なんだ?燐兄ちゃんは

 魔物じゃないのか?」

 「俺は悪魔の子だ。人間の血が半分混じってる。」

 「そんな・・・」

 リュウジンは燐を掴んでいた前足を放した。

 燐はドサッと地面に落ちた。

 「酷いよ。やっとお嫁さんを見つけたと思ったのに・・・」

 リュウジンは悲しそうな顔をして言った。

 「おいらの母ちゃんは人間に殺されたんだ。母ちゃんが

 生きてた時代はまだ人間が守り神を信仰してた。毎年、

 村祭りの日に供物と引き換えに薬草を母ちゃんは村人に

 与えてた。万病に効く薬草は一本だけでも家が建つくらい

 高価な品だったから、村人は有難がってたよ。でも、

 ある時、村人が欲を出して、泉に生えている薬草を勝手に

 盗んだんだ。母ちゃんは怒って、その村人を殺した。

 そうしたら、村人たちが弓矢を持って、集団で襲ってきて、

 母ちゃんを殺したんだ。守り神のいなくなった泉は人間どもに

 荒らされて、100年もの長い間、薬草は生えてこなかった。

 だから、おいらは人間が嫌いなんだ。」

 龍神は大粒の涙を流して泣いた。燐は手を伸ばして、

 龍の顔を優しくそっと撫でた。

 「ごめんな。人間は欲ばりで残酷で・・・

 たった一人の大事な母ちゃんがいなくなってから、

 ずっと独りぼっちで寂しかったんだな。ホントにごめんよ。」

 燐はリュウジンに謝った。そして、こう言った。

 「薬草を返すよ。俺が持って帰ったら、また他の人間が

 採りに来るだろ?もし、そいつらが泉を荒らしたり、

 リュウジンを殺したりするといけないから。」

 「燐兄ちゃん。やっぱり、燐兄ちゃんは人間と違うね。

 いいよ。薬草は返さなくて。この泉には普段は結界が

 張ってあって、誰にも見えないようになってるんだ。

 燐兄ちゃんを案内する時に結界を解いたけど、また

 結界を張れば大丈夫だよ。おいらの母ちゃんも結界を

 張っておけば良かったんだ。人間なんて信用するから

 いけなかったんだ。」

 リュウジンの言葉に燐は何も言えなかった。燐はけっして

 尋問されても薬草のありかは言わないでいようと思った。

 雪男に撃たれて傷ついた身体が痛々しくて、リュウジンに

 燐は心からもう一度謝ると、雪男と共に山を下りた。



 学園に戻ると、案の定、泉が何処にあったのかと

 メフィストに一日中しつこく尋問された。

 雪男は山の中で遭難しかかった時に偶然見つけて、

 何時間も迷子になった挙句、山を下りることができたので、

 場所を聞かれても答えられないと言い、生えている薬草は

 全部採ってきたから、もう1本も生えていないと嘘をついた。

 そして、万病に効く薬草を手に入れた功労者に対して

 こんな扱いをするのなら、もう二度と学園長の依頼は

 受けないと逆切れすると、ようやく解放された。

 「兄さん、『知らない。覚えてない。』だけを繰り返して

 言ったら、疑われて当然だよ。隠し通すって決めたのなら、

 もう少しマシな嘘をつけよ。」

 夜になって、寮の自室に戻ってから、雪男は燐に言った。

 「だって、俺、嘘つくのが下手だから・・・」

 「兄さんが正直者だったってこと忘れてたよ。特に兄さんの

 身体は正直だよね。触れられれば誰にでも反応する。

 人間以外の生物に撫でまわされて、感じてただろう?

 それとも、リュウジンがそんなに良かった?」

 雪男が恐い顔をして、燐に詰め寄った。燐は思わず

 後退りして躓き、ベッドの上にひっくり返ってしまった。

 雪男はすかさず、馬乗りになり、燐にこう言った。

 「僕の許可なく勝手に交わって、感じてしまうような

 悪い子にはお仕置きが必要だね。」

 燐の尻尾をギュッと掴んで握りしめた。



 「ぎゃんっ!!」

 燐は思わず尻尾を踏まれた猫のような声を上げてしまった。

 しかし、雪男は手を放してはくれなかった。それどころか

 尻尾をグイッとひっぱって、燐の下半身に巻きつけた。

 そして、立ち上がりかけたそこをギュッと縛ると、

 尻尾の先で燐の胸を弄ぶように撫でた。

 「あっ、あんっ、あ~」

 胸の突起に自分の尻尾が当たる度に縛られた部分が

 持ち上げられる。痛みを伴う快楽は燐を狂わせる。

 大きくなった先端から蜜を滴らせ、無意識に腰を揺らす燐に

 「兄さんは縛られるのも好きなんだ。今度は尻尾に

 嫉妬しちゃうな。」

 と、雪男は言って、尻尾を軽く噛んだ。

 「ああああ~」

 燐は叫びながら絶頂に達してしまった。ポタポタと燐の腹や

 胸にかかった白濁色の液体を雪男は燐の尻尾で拭い取ると

 「こんなに汚して悪い子だ。自分で舐めてきれいにしなよ。」

 と言って、濡れてベタベタになった尻尾の先を燐の口の中に

 無理やり押し込んだ。

 「うっ、うう・・・」

 口いっぱいに尻尾を詰め込まれて、燐は呻いた。

 「苦しい?兄さん。ちゃんと舐めないと許してあげないよ。」

 雪男は苦しむ顔を眺めながら、燐の身体の中心を縛っている

 尻尾をペシッと叩いた。

 「う、あぁぁ」

 燐は叩かれた痛みに尻尾を口から吐き出して

 悲鳴を上げてしまったが、

 「もう許して。」

 と、目を潤ませて、懇願した。

 「やっと、謝る気になった?」

 雪男は優しい声で燐に聞いた。

 「ご、ごめんなさい。」

 燐は雪男を見ないで、目をぎゅっと瞑って、自分が

 雪男以外に抱かれたことを詫びた。すると、雪男は

 「謝ったご褒美に入れてあげるね。」

 と言って、燐の片足を持ち上げると、まだ慣らしていない

 蕾を一気に貫いた。

 「あっ、ああ~、ああああ~」

 燐は嬌声をあげて雪男にしがみついた。

 「兄さん、僕を見て。」

 雪男は燐の中で動きながら、燐の尖った耳にキスをした。

 「兄さんは僕だけを感じて、僕だけのものでいて。

 僕が兄さんを守ってあげるから。僕以外の誰にも身体を

 触らせないで。お願いだよ。兄さん。」

 「わかった。約束する。」

 「絶対だよ。もし、約束を破ったら、相手が誰だろうと殺すよ。

 僕から兄さんを奪おうとする者はたとえ神だとしても

 殺してやる!」

 雪男の瞳から涙が溢れ出した。燐は雪男の頬を伝う涙を

 ペロッと舐めて、こう言った。

 「雪男は俺のたった一人の弟だ。俺は他の誰のものでもない。

 雪男だけのものだ。だから、心配するな。」

 「兄さん。」

 雪男は再び激しく腰を動かして、燐の中で果てた。

 「愛してる。愛してるよ。兄さん。」

 まるで手からこぼれ落ちる愛を必死で拾い集めている

 子供のように雪男は燐を抱きしめて、終わった後も

 血のつながった兄に愛を呟き続けた。


                                (完)



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裏切りは僕の名前を知っている「贖い」

雑食部屋




 漆黒の闇に沈む鎖で繋がれた少年

 永遠に逃れられない痛みと苦しみ

 薔薇の棘に彩られた白い身体は絶望の鎮魂歌を奏でる

 破滅へ導くのは神か悪魔か

 少年に悪魔が微笑みかける

 いにしえの昔より愛は裏切りを生む

 少年の瞳から流れる一雫の涙

 救いを求めた代償は後の世までも続く・・・



 「夕月。夕月。・・・」

 深い眠りから夕月は目を覚ました。

 「夕月、大丈夫か?うなされていたぞ。」

 ルカが心配そうに夕月を見つめていた。

 「怖い夢を見た。暗闇の中で鎖に繋がれて身動きがとれ

 ないんだ。でも、ルカの微笑みに僕は救われるような

 気がしたんだ。」

 「もう、いい。もう、何も言わなくていい。」

 ルカは夕月の瞳から溢れる涙をそっと指ですくった。

 「俺はお前のそばにずっといる。約束だ。」

 「うん。」

 夕月は静かに頷いた。ルカは夕月の顎に手をかけ上を

 向かせると、そっと口づけした。唇を重ねるだけの優しい

 口づけだった。

 「愛してる。」

 漆黒の闇に似たルカの瞳が穢れのない夕月の瞳を

 見据える。夕月は何故だか悲しくなって、目を閉じた。

 ルカの唇が再び夕月の唇に重なった。うっすらと開いた

 夕月の唇にルカの舌が入ってきた。舌と舌が絡み合う。

 ベッドに押し倒されて、夕月は少し焦った。

 「朝食の時間に遅れるよ。」

 「そんなもの気にするな。今は夕月が欲しい。」


 「あっ、やめ・・・て・・・あ、ああっ・・・」

 シルクのパジャマを捲し上げられて胸に舌を這わせられた。

 夕月は抵抗する素振りを見せたが、ルカはおかまいなしに

 夕月の身体を弄る。パジャマのズボンまで脱がされて、

 あらわになった下着に手をかけられた。

 「あ、ダメ。」

 夕月は脱がされそうになった下着を手で押さえた。

 「何でダメなんだ?」

 ルカが怪訝そうに聞く。

 「だって朝だよ。黄昏館のみんなに声が聞こえちゃうよ。」

 「かまわない。聞きたい奴には聞かせておけ。」

 ルカはそう言うと、下着を剥ぎ取った。そして、夕月の少し

 立ち上がりかけたものにキスをした。

 「ひゃっ。」

 夕月は自分の出した声に恥ずかしくなって、思わず、手の

 甲で口を押さえた。ルカが丁寧に舐めあげ、口に含むと、

 それはみるみる大きくなって、先端から蜜を洩らすほどに

 なった。ハアハアと肩で息をする夕月にルカは

 「先に1回イクか?」

 と聞いた。

 「あ~、いや、入れて。お願い。」

 夕月が濡れた瞳で懇願した。ルカが夕月の中に入ってきた。

 何の準備もしていないのに男を受け入れるのに慣れたそこは

 なんなくルカを受け入れた。ゆっくりと差し入れられたものに

 夕月の体内はねっとりと絡みつく。傷つけるのを恐れてじっと

 しているルカに夕月はじれったさを感じた。もっと深く繋がり

 たいとせがむように腰を浮かす夕月に応えるようにルカは腰を

 動かした。最初は相手を気遣うように優しく、そして、次第に

 強く突き動かすルカに夕月は淫らな声をあげてしがみつく。

 「あっ、ああ~、い、いい~、イク~」

 「一緒にいこう。」

 ルカが夕月に口づけした。甘く蕩けるような口づけと共に

 二人は絶頂を迎えた。

 朝食の時間はとっくに過ぎていたが、夕月はルカの腕に

 抱かれて先ほどまでの快楽の余韻に浸っていた。どんな

 痛みでもどんな苦しみでもルカがいれば乗り越えられる。

 運命を呪う前に二人で生きていこう。人々を救う使命は

 愛ゆえの贖いだとしても・・・ 

 夕月は裏切りの印にそっと口づけをした。

                          (完)




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裏切りは僕の名前を知っている「星空」

雑食部屋


 


  夜空に輝く星のすべてを君にあげるよ。

 君の中の孤独を美しい星で埋めてあげる。

 親に拒絶された君は絶望と不安に押し潰されていた。

 君は誰かに抱きしめてもらいたくて泣いていたね。

 僕が君の苦しみをすべて受けとめてあげるよ。

 君の痛みを僕の体に封じ込めてあげる。

 だから、もう泣かないで。

 僕に笑顔を見せて。

 無邪気に笑う君は星空よりも綺麗だから。



 黄昏館の屋上で愁生と焔椎真は夜空の星を眺めていた。

 「愁生、何ボ~としてるんだよ。」

 「昔のことを思い出してた。昔の焔椎真は可愛かったなって。」

 「今は可愛くないみたいじゃねぇか。」

 「そんなことない。可愛いよ。」

 愁生は焔椎真の顔を両手で包み込むように頬に手をあてた。

 「ずっとそばにいるよ。」

 愁生はそう言って、キスをした。焔椎真は一瞬、照れたような

 顔をしたが、愁生の舌の動きに合わせて舌を絡め合わせた。

 長いキスの後、愁生は

 「何があっても離れないって、約束だよ。」

 と言って、焔椎真の小指に口づけをした。そして、焔椎真の

 人差し指と中指を口に含んだ。ねっとりと舐めまわす舌に

 焔椎真は少し感じたのか、眉間にしわをよせて、こう言った。

 「部屋に戻ろう。」

 「ううん。ここでいい。星が綺麗だから。」

 愁生は焔椎真の背中に腕をまわした。焔椎真は愁生にキス

 をしながら、ズボンの中に手を滑り込ませた。愁生の唾液で

 濡れた指を体内に入れて、ゆっくりと動かす。良い所を探り

 当てて、指先を小刻みに動かして刺激する。愁生の呻きを

 吸い取るように焔椎真は愁生の舌を吸い上げた。

 蕩けるような長いキスに愁生は腰が抜けたように崩れ落ち

 そうになったが、焔椎真は愁生を抱え、更にズボンを下着ごと

 脱がせて、片脚を抱え上げて、挿入した。立ったままの姿勢

 で抱き合いながらの行為に愁生は喘いだ。焔椎真の動きが

 激しくなるにつれて、地についている足までもが宙に浮きそう

 になる。バランスを崩して倒れそうになる愁生に焔椎真は

 「愁生、俺にしがみつけ。」

 と言った。愁生は思い切って脚を焔椎真の腰に絡め、無我

 夢中でしがみついた。焔椎真は両手で愁生の腰と太もも

 を支え、身体の中心で貫きながら、激しく腰を動かした。

 全体重が焔椎真にかかり、愁生はより深く身体を貫かれ、

 悲鳴をあげた。

 「あ、あああ~、焔椎真~、ああ~」

 「愁生。あっ。」

 「ああ~、あ、ああああ~」

 愁生は焔椎真がトクトクと体内に放つのを感じながら達した。

 二人同時に果てた後、焔椎真はゆっくりと愁生を下ろし、

 こう言った。

 「おまえが部屋以外でやろうって言うなんて珍しいな。」

 「そうだっけ?たまにはいいんじゃない?」

 「星なんか眺めてなかったじゃねぇかよ。」

 「見てたよ。ずっとね。キラキラ輝く星みたいに綺麗な

 焔椎真の顔。」

 「うそつけ。からかうなよ。」

 焔椎真は顔を真っ赤にして横を向いた。

 「やっぱり焔椎真は可愛いよ。」

 愁生はクスクスと笑った。

                              (完)




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べるぜバブ「花見」

雑食部屋




 「綺麗だ。男鹿。」

 闇に舞い散る桜の花びらを見ながら、古市が言った。

 「そぉかぁ?それより、もう食べようぜぇ。」

 桜の木の下で弁当を並べながら、男鹿は言った。

 「夜桜を楽しむ風雅な心がお前には無いのか?」

 古市は呆れたように言うと、レジャーシートに腰を下ろした。

 「そんな事言ったってよぅ、もう10時だぜぇ。腹減ったぁ。

 お前の母ちゃんが作ってくれた弁当うまそうだな。」

 男鹿は玉子焼きに箸を突き刺して、パクッと食べた。

 「ダァー!!」

 ベル坊も玉子焼きが欲しいのか弁当に手を伸ばしたが、

 「コラコラ、おめぇはダメだ。こっちで我慢しろ。」

 と言って、男鹿はミルクを放り投げた。ベル坊は哺乳瓶を

 自分で持って美味しそうに飲み始めた。

 春休みの思い出作りに河川敷で夜桜を見ようと古市に

 誘われて、ベル坊を連れて男鹿は花見にやって来たのだが、

 夕食をカップラーメン一つで軽く済ませただけの男鹿は花より

 団子といった感じで、おにぎり片手にご馳走を頬張っていた。

 辺りには誰もいない二人だけの否、ベル坊を入れて3人

 だけの花見だった。春の風は心地よく、夜風に舞う桜は

 サラサラと川の水面に浮かんで流されていく。遠くに見える

 街の明かりと疎らに立っている街灯だけが桜を照らしていた。

 「古市、食べないのか?」

 黙って桜を眺めていた古市に男鹿が聞いた。

 「ああ。俺の分も食べていいよ。」

 「本当か?サンキュー。」

 男鹿は嬉しそうに二人分の弁当を一人で平らげた。



 「美味かったか?」

 満腹になって、食った食ったとお腹をさすっている男鹿に

 古市が聞いた。

 「ああ。美味かったよ。でも、俺一人で食ってホントに

 よかったのか?古市は腹減らないのか?」

 「うん。デザート喰うから。男鹿、喰っていい?」

 古市は持って来た紙袋から生クリームのスプレー缶を取り出した。

 「男鹿、あ~んって口開けて、舌出して。」

 「えっ?こうか?」

 男鹿は言われるままに口を開けて、長い舌を伸ばした。

 古市はスプレー缶をプシューっと押して男鹿の舌先に

 生クリームを乗せると、舌ですくって食べた。

 「甘い。」

 古市はニコッと笑って、唇を重ね、舌を絡ませた。男鹿の

 口の中で溶ける生クリームを味わいながら、古市は男鹿の服を

 脱がせていく。桜の木の下で、男鹿を押し倒し、古市は再び

 スプレー缶を手に取り、男鹿の身体に生クリームを飾りつけた。

 「ひゃっ。冷たい。アハハハ・・・」

 男鹿が笑うのを古市は咎めた。

 「デザートは喋っちゃダメだ。じっとして。黙ってて。」

 まるでケーキのように胸や下腹に生クリームをデコレーション

 された男鹿にベル坊が真っ先に飛びついた。ぺロぺロと甘い

 生クリームを舐めるベル坊に男鹿はくすぐったいと笑っていたが、

 やがて、胸に吸い付かれると、甘い吐息を洩らし始めた。

 「おっぱい吸われて感じてんの?」

 古市は嘲るように男鹿に言った。

 「ちっ、違う。」

 「違わないね。ホラ、見て。ここはもうこんなになってる。」

 生クリームに埋もれた草むらに大きくそそり立つものを

 ピンッと指で弾いて、古市は言った。

 「男鹿は淫乱だな。」

 古市はためらいもなく男鹿を口に含み、アイスキャンディーを

 頬張る子供のように味わいながら、美味しそうに舐めた。



 「あ、ああ。」

 男鹿は胸と下腹を同時に吸われて、とうとう耐え切れず、

 声を出した。古市は男鹿を舐めながら、指2本で生クリームを

 すくって尻になすりつけた。指を入れ、くちゅくちゅと音をたてて

 動かすと、男鹿は自ら腰を浮かして、悦んだ。前と後ろの

 同時攻撃に男鹿は弱かった。しかも、ベル坊に胸を吸われて、

 トリプル攻撃を受けている。男鹿の理性は吹っ飛んだ。

 「あ、いい。もっと・・・あ、もう、イキそう。早く古市のくれよ。」

 「もう欲しくなったのか?でも、今日は俺のよりもっと

 いいものをやるよ。」

 古市はそう言うと、ベル坊のおしゃぶりを手に取り、生クリームを

 たっぷりとつけて、尻の中に押し込んだ。指を使って、かなり

 奥のほうまで押し込めると、古市は

 「どうだぁ?男鹿。おしゃぶりは気持ちいいか?」

 と言って、ニヤッと笑った。

 「あ、ヘンなモン入れんなよぉ。あ、古市、早く取れ。あ、ああ~」

 男鹿は腰をモゾモゾさせながら、潤んだ瞳で訴えた。

 おしゃぶりを入れられて、感じている男鹿に古市は

 「自分で出してごらん。もちろん、手を使わずに。」

 と言った。そして、両手で足を掴んで大きく開かせた。

 「やだよ。そんなの。今りきんだら、何か他のまで出てきそうだ。」

 「じゃぁ、ベル坊に取ってもらえよ。」

 「えっ?!」

 さっきまで一心不乱に胸を吸っていたベル坊がおしゃぶりを

 盗られたと思って、不機嫌そうにじっーと見ていた。

 「ダアーッ!!」

 ベル坊がおしゃぶりを取り返そうと、男鹿に手を伸ばした。

 「やっ、やめろっ!」

 男鹿は嫌がったが、ベル坊は拳を男鹿の中に挿入した。

 「あっ、あぁ~ああっ!!」

 身体の中に拳を沈められて、男鹿は絶叫した。しかし、

 ベル坊はそんな男鹿にはおかまいなしで手首まで拳を沈めて、

 おしゃぶりを取り戻そうとしていた。だが、狭い穴の中で

 おしゃぶりを掴むのは赤ん坊には難しいのか、どんどん奥へと

 おしゃぶりが入っていってしまう。いつしか腕の中ほどまで

 拳を沈められて、そのうち、肘まで入れられたらどうしようと

 男鹿は恐怖した。古市は男鹿の両足を掴んだまま、

 押さえつけて、興奮したようにその光景を見つめていた。



 痛みに耐えている時の男鹿の苦悶を浮かべた表情は

 笑顔よりも素敵だった。ベル坊はなかなかおしゃぶりが

 つかめなくて、癇癪を起こしそうになったが、古市に

 「手をパーにして、指を開いて、おしゃぶりを掴んでごらん。」

 と言われて、ハッと気がついたように、直腸の中で手を開き、

 おしゃぶりを掴んで引きずり出した。

 「ダァー!」

 ベル坊はおしゃぶりを握りしめた手を掲げて、勝利のポーズを
 
 とった。

 「よくやった。ベル坊。」

 古市がベル坊を褒めると、男鹿は

 「よくやったじゃねぇぞ。俺は脱腸するかと思ったぜ。」

 と、気だるそうに言った。ボタボタとこぼれる生クリームに

 血が少しだけ混じっていた。古市は赤くなった程度でさほど

 切れてもいない男鹿の状態を確かめると、こう言った。

 「赤いローズが咲くかと思ったのに~残念。」

 「何だと!コラァ!!」

 「ごめん。ごめん。でも、赤ん坊の腕ってコーラの瓶よりも

 小さいから大丈夫かと思って・・・実際、大丈夫だったろ?

 そんなに怒んなって。」

 古市はクスッと笑って、男鹿にキスをした。甘いキスで

 誤魔化そうとした古市に男鹿は

 「俺のこと何だと思ってるんだよ。」

 と、ふてくされたように言った。すると、古市は一瞬困ったような

 顔をしてから、ニコッと笑い、

 「愛しているよ。今度は優しくするから、機嫌直せよ。」

 と言った。そして、もう一度、男鹿にキスをした。



 ベル坊は男鹿の体内から奪い返したおしゃぶりを満足そうに

 しゃぶっていた。

 「ゲッ!あいつ汚いとか思わないのかよ。」

 男鹿がベル坊を見て、呆れたように言うと、古市は

 「何で?好きなものに汚いとかないと思うよ。」

 と言って、生クリームの味がする男鹿の蕾に顔を埋めた。

 ピチャピチャと音を立てて、内壁まで念入りに舐めると、

 男鹿は再び古市が欲しくなった。

 「あ、あっ、もう、入れ・・・あっ、また、イキそう。」

 喘ぐ男鹿に応えるように古市は男鹿の中に挿入した。

 「あ、あ、ああ~」

 古市は男鹿の両手を掴んで押さえ込むようにキスをした。

 そして、腰を動かしながら、

 「好きだよ。男鹿。」

 と言った。男鹿はぎゅっと古市を締め付け、ほんのりと頬を

 桜色に染めていた。古市が激しく腰を動かすと、男鹿は歓喜の

 声をあげ、絶頂に達した。古市も男鹿が達すると同時に

 中で果て、優しくキスをした。男鹿と離れるのが惜しいのか

 いつまでも身体を繋いだままでいる古市に男鹿は

 「どけよ。もう終わっただろ。」

 と言った。古市が仕方なく身体を離すと、男鹿はティッシュで

 身体を拭きながら、こう言った。

 「古市はほっとくと、もう一回とか言い出すからな。まったく、

 油断も隙もねぇからな。」

 まるでつれない男鹿の態度に古市は苦笑した。

 「何で2回やらせてくれないんだよ。」

 「ベル坊がいるだろ。」

 「ベル坊なら寝ちゃってるよ。」

 いつの間にかベル坊はスヤスヤと寝息をたてて眠っていた。

 桜の花びらが風に舞い、ヒラヒラとベル坊の顔に飛んできた。

 男鹿はそっと指で拭うように桜の花びらをとってあげた。

 自愛に満ちた目でベル坊を見つめる男鹿に古市は

 「ベル坊と俺とどっちが好き?」

 と、少し嫉妬したように聞いた。

 「ハア?!バッカじゃねぇの?そんなの比べられねぇよ。

 ベル坊はただの拾った赤ん坊で古市は俺の親友だ。」

 「親友ねぇ。」

 『恋人じゃないのかよ』と、古市は心の中で毒づいたが、

 言葉には出さなかった。

 闇夜に浮かぶ月は雲に隠れて、闇の中で風に舞い散る桜は

 死に逝くようで美しい。古市は自分が桜の花びらのようだと

 思った。太くて大きな桜の木に年に一度咲く花。綺麗だけれど

 命は短い。無力で儚く、散った後は人に踏みつけられて

 消えていく。高校を卒業しても男鹿は会ってくれるだろうか?

 親友ほど不確かなものはない。強い男鹿にくっついている

 だけの自分の存在に時々腹が立つ。親子の関係のほうが

 絆が深い気がして、古市はベル坊に嫉妬したのだった。

 「もう帰ろうぜ。花見なんかしなくても明日またやらしてやる

 からさ。」

 「えっ?!」

 「俺達、親友だろ?ずっと一緒だ。新学期にクラスが別々に

 なったとしても、俺は古市の他に親友は作らねぇ。約束する。

 だから、そんな顔するなよ。」

 男鹿はニコッと笑って言った。

 「男鹿ぁ。」

 古市は感動して男鹿に抱きついた。

 「コラコラ、ベル坊が起きるだろ。しょうがねぇなぁ。そんなに

 もう一回やりたいのか?」

 男鹿の少しズレた優しい言葉に古市はプッとふきだして笑った。

 古市はもう一回したいわけではなかったが、嬉しそうに

 「うん。」

 と、返事をして、男鹿を抱いた。

 闇に隠れていた月が雲の合間から姿を現して、優しく

 二人を照らし始めた。


                            (完)



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べるぜバブ「嫉妬」

雑食部屋



 
 「幸せそうな奴って、なんかムカつく。」

 夏目は3階の教室の窓から幸せそうに笑う古市を見ていた。

 古市は校庭のベンチに座っていた。隣には当然のように

 男鹿がいた。男鹿に頭を撫でられて、古市は照れたように

 笑っていた。

 「あいつら、またイチャついてやがる。」

 神崎が夏目の横の窓から顔を出すと、外を見て言った。

 「リア充、死ね。俺はリアルに充実してる奴が大嫌いだ。」

 もてない男ほど他人を羨んで呪詛を吐く。夏目はニヤリと笑って、

 こう言った。

 「そうだ。いいこと思いついた。前に男鹿の弱点はないかって

 神崎、言ってたよね?古市、あいつを痛めつけたら、男鹿に

 復讐できるんじゃないかな?」

 「おっ、それ、いいねぇ。夏目、ナイスアイディア。じゃ、早速、

 城山に命令出しとくか。お~い。城山、いるか?」

 神崎が教室を見渡して、城山を呼ぶと、城山が飛んで来た。

 「はい。何ですか?神崎さん。」

 「おまえ男鹿に見つからないように、古市、拉致ってこいや~」

 「えっ?!あっ、はい。了解しました。」

 城山は驚いた顔をしたが、神崎の言う事には逆らわなかった。

 「なんか面白くなりそうだね。」

 夏目は神崎の顔を見て、ニヤッと笑った。

 この男は心底腐っているから面白い。他人の幸せを羨んで

 破壊する行為は卑劣だと思う。でも、自分の不幸を嘆くより

 他人をいたぶるほうが数倍楽しい。総ての者をひれ伏させる

 実力がありながら、石矢魔の頂点に立つことを考えず、

 己の道を生きる男鹿もムカつくけど、顔が良いだけで、

 実力もないくせに男鹿にくっついて、誰の配下にも加わらない

 古市はもっとムカつく。天真爛漫に笑う綺麗な顔を滅茶苦茶に

 引き裂いて泣かせてやりたいと夏目は思った。何の悩みもなく

 幸せそうにしてる奴を地獄の底に突き落とすのは実に楽しい。

 卑怯者と悔しそうに罵る顔が見えたら、最高だ。

 くだらない人生のくだらない日常の中で、ちょうどいい

 暇つぶしを見つけたと夏目は思った。

 何も知らない古市は恋人との楽しい時間に幸せを感じて

 笑っている。キラキラと輝く初夏の陽ざしは眩しくて、

 青空には飛行機雲が浮かんでいた。



 真夜中の教室に響く卑劣な笑い声。両手両足を縛られて、

 猿轡を咬まされた古市は生贄の儀式に使われる子羊のように

 震えていた。夜、一人でこっそりと家から抜け出して、男鹿に

 会いに行く途中、古市は城山に殴られて気を失い、拉致されて

 しまったのだった。目が覚めると、古市はナースのコスプレに

 着替えさせられていた。右手首と右足首、左手首と左足首を

 それぞれ包帯で縛られて、床に座らされ、目の前に並べられた

 おぞましい道具に恐怖して怯えて震えていたのである。

 「ナースの格好が良く似合うよ。男鹿だけじゃなくて、たまには

 俺達とも遊んでよ。お医者さんごっこは好きか?」

 夏目は古市のスカートの裾をまくり上げると、ナイフで

 パンティストッキングを引き裂いた。そして、あらわになった

 古市の下半身を摘み上げるようにして、包帯をきつく巻いて

 袋まで縛ると、媚薬入りローションをスポイドで瓶から吸い上げ、

 スポイドの先を古市に差し込み、注入した。本来吐き出す

 場所から媚薬を体内に注入され、古市は呻いた。だが、

 夏目は嘲笑うかのように親指と人差し指で尿道を広げ、

 導尿カテーテルをゆっくりと差し込んだ。声をあげることも

 許されず、猿轡を噛みしめて苦痛に耐える古市に神崎たちは

 欲情した。夏目は冷静にカテーテルを膀胱まで入れると、

 携帯を取り出して、写真を撮った。

 「放尿したら、それも撮って男鹿に送りつけてやる。」

 その言葉に古市は目を見開いて、一瞬、逃げようと動いたが、

 縛られているので、逃げられるはずもなく、逆に腰を浮かせた

 拍子にカテーテルがズレて尿道に激痛が走ったのか、

 呻き声をあげたかと思うと、放尿した。

 「ハハハ・・・おしっこ漏らしてやがる。」

 神崎が腹を抱えて笑った。古市は動揺して泣き出したが、

 排尿を止める事はできなかった。



 全部、尿を出し切った後、泣きじゃくる古市に夏目はこう言った。

 「よく撮れたよ。古市は素質があるのかな。今すぐ男鹿の携帯に

 送りたいところだけど、まだ診察が終わってないからね。

 3人でまわした後に送信してやるよ。」

 夏目は古市から導尿カテーテルを抜き取ると、後ろを向かせた。

 そして、夏目は

 「注射は好きかな?」

 と言って、媚薬入りローションの入った注射器を古市の尻に

 差し込んだ。元々浣腸用の注射器なので、否応なく古市の

 身体にはローションが入っていく。たっぷりと媚薬を注入した後、

 夏目は玩具の聴診器で古市の下半身を診察した。古市は

 媚薬のせいで包帯の上から刺激されただけで感じてしまった。

 しかし、大きくなると同時に再び屈辱的な痛みが古市を襲った。

 まだ大きくなっていない内に縛られたせいで、包帯がめり込んで

 くい込むのだった。

 「痛いかい?こんなに大きくして、悪い子だ。」

 夏目はピシッとお尻を叩くと、古市の蕾に聴診器を当てた。

 ひんやりとする金属の感触が媚薬で火照った身体に心地良い。

 古市が無意識に尻を突き出すと、夏目はこともあろうに聴診器を

 蕾に沈めようとした。玩具とはいえ、500円玉くらいの大きさの

 聴診器を入れられて、古市は顔を真っ赤にして困惑した。

 不思議と痛みはなかったが、聴診器の金属の部分を全部

 入れられて、体内の音を聞かれていると思うと、恥ずかしさに

 震えてしまった。

 「感じるのか?」

 夏目はそう言うと、聴診器を指で更に奥へと押し込み、管の

 部分を掴んでグルグルっと掻き回した。内壁に聴診器の管が

 当たる度に卑猥な音を立てて蕾からローションが零れ落ちる。

 「コラコラ。こぼすなよ。」

 と言って、聴診器の管が垂れ下がった尻を夏目は叩いた。

 「聴診器でよがる奴って初めて見たぜ。」

 見物していた神崎達はゲラゲラと笑っていた。



 古市は拘束された痛みと羞恥プレイによる快感とに苛まれ、

 何度もイキそうになった。だが、そのたびに根元からきつく

 縛られた包帯が古市を苦しめる。古市は呻きながら無意識に

 腰を揺らしていた。

 「もう、入れて欲しくなったのか?」

 夏目が聴診器をズルズルっと引き抜いて言った。

 「欲しくてたまらないなら、入れてやるよ。」

 夏目は古市の尻を両手で押し広げて挿入した。

 「ウーッウーッウーッ」

 と、古市が呻くと、夏目は

 「なんだか猿轡してると、色気のない声で呻くな。猿轡外して

 やるから、いい声で啼けよ。」

 と言って、挿入したまま古市の両肩を掴んで身体を起こし、

 後座位の格好で深く貫きながら猿轡を外した。すると、

 古市は苦しそうに息をして、こう言った。

 「あっ。包帯も外してくれよ。あ~」

 「注文が多いな。逃げないって約束するなら包帯を外してやる。」

 「分かった。約束するから。あ~。早く外して。」

 夏目は床に転がっているナイフを片手で拾って、両手両足を

 縛っていた包帯を切って外した。だが、古市の身体の中心を

 縛っている包帯は外してはくれなかった。

 「あっ、全部とってくれよ。」

 「もう少し待ちな。男鹿が来たら解いてやるから。あ、そうそう。

 写メまだ送ってなかったっけ?神崎、代わりに送っといてくれ。」

 「了解。」

 神崎は男鹿の携帯に送信した。

 「男鹿のやつ、絶対、怒って飛んでくるぜ。でも、あいつ

 バカだからな。場所が学校の教室だって分かるかな。

 意外と翌朝まで来ねぇかもな。」

 古市は絶望の中で夏目に犯された。



「あ~、ああっ、イク。ほどいて。あっ、もうダメ。ああ~」

 腰を振り乱して喘ぐ古市に夏目は

 「そんなにイキたい?じゃあ、解いてやるよ。」

 と言った。夏目が包帯を解くと、

 「あっ。ああっ。あああ~」

 古市は声を上げてあっけなく果てた。夏目は呆れたように

 笑うと、古市にキスをした。ねっとりと舌を絡ませて、

 イッたばかりの敏感な身体の中に欲望を放出した。

 古市の身体は果ててもまだ快楽を求めているかのように

 萎えることなく、酔いしれたように濡れていた。古市は長い

 ディープキスの後、ガラガラッと音がした方向に視線をやった。

 教室の入口に息を切らして駆けつけた男鹿が立っていた。

 「意外と早かったね。ひょっとして、送信する前から探してた?」

 夏目が顔面蒼白になった古市を膝の上から退かして、

 男鹿に聞いた。

 「当たり前だ。古市を返せ。」

 鋭い目つきで睨む男鹿に夏目は

 「そう簡単に返すわけにはいかないな。」

 と言って、ナイフを古市の顔に押し当てた。

 「この可愛い顔に傷をつけたくないなら、言う事を聞きな。」

 すると、ナイフに怯えた古市は泣き出して、

 「男鹿、助けてくれ。」

 と、懇願した。自分のいやらしい姿を男鹿に見られて、古市は

 軽いパニックを起こしたのだろう。男の膝の上で腰を振る淫らな

 自分はなかったことにしたいと思ったのか突然殺されかけた

 被害者のように助けを求めて泣き出したのだった。

 「分かった。言う事をきくから、古市を放せ。」

 「随分と物分りが良いようだな。男鹿。」

 夏目はニヤッと笑って、こう言った。

 「お前が古市の代わりになるなら、古市を放してやる。

 お前は愛する者の為に自分を犠牲にすることができるか?

 もちろん、たった一回だけで許してやるよ。お前が大人しく

 抱かれたら、二度と古市には手を出さないって約束する。

 どうだ?この条件が呑めるか?できないなら、かかって来いよ。

 その代わり、お前が俺を殴る前に古市の顔はナイフで

 切らせてもらう。どちらにするかはお前が今、決めろ。」



 決めかねて俯いてしまった男鹿を見て、夏目は満足そうに笑った。

 「アハハ・・・やっぱり、その程度か。おまえらなんて、所詮、

 恋愛ごっこなんだよ。自分を犠牲にしてまでこいつを守る

 価値はないって知ってるんだな。おまえ、もう帰れ。古市は

 俺がもらう。一生、俺のペットにして可愛がってやるよ。」

 夏目は古市の頭を掴んで顔をペロッと舐めた。古市は

 怯えたままじっとして、すがるような目で男鹿を見上げていた。

 「こいつは中坊の頃から男を知っている淫乱だ。中一の時に

 先輩達にまわされたショックでグレたって噂だぜ。そんな奴、

 助けたって今更だろ?お前がバカじゃなかったって分かって

 安心したよ。お前はとっとと家に帰って赤ん坊の子守でもしてな。」

 「クソッ!俺のことはいい。でも、古市のことはバカにするな!」

 男鹿は拳を握りしめて、夏目に殴りかかった。

 「おっと!これ以上近づいたら、顔を切るぞ!」

 と、夏目は古市の頬にナイフを押し付けた。男鹿は慌てて、

 拳をピタッと止めた。

 「よし。それでいい。あとはこのまま教室から立ち去るか服を

 脱ぐかのどちらかにしろ。それとも脱がせて欲しいのか?」

 夏目は男鹿をからかうようにニヤニヤと笑いながら言った。

 「わかった。脱げばいいんだろ。」

 男鹿は覚悟を決めて、服を脱ぎ捨てた。男鹿の鍛え抜かれた

 身体に神崎がヒューっと口笛を吹いた。

 「パンツも脱げよ。」

 夏目は容赦なく目を輝かせて命令した。だが、男鹿は躊躇い

 があるのか下着を脱ごうとしなかった。すると、

 「なんだぁ?脱がせてほしいのかぁ?」

 神崎が寄って来て男鹿の腰に手をまわした。



 神崎は下着の中に手を入れて、いきなりぎゅっと握りしめた。

 「うっ、うう・・・や、やめろ!」

 男鹿は思わず手を振り払った。

 「おいっ。古市を助けたくないのか?大人しく言う事を聞けよ。」

 神崎が男鹿を押し倒し、抗う男鹿の下着を無理やり引き剥がす

 ように脱がせた。まだ幼さの残るほんのりピンク色のそれを

 神崎は掴んで皮を引っ張り頭を出すと、口に含んで舐め始めた。

 「あっ。」

 思わず声を出してしまった男鹿に神崎は

 「感じるのか?」

 と聞いた。男鹿は

 「ち、違う。」

 と否定はしたものの、男鹿のそれは立ち上がりかけていた。

 「もっと気持ちよくしてやる。」

 と言うと、神崎はローションの小瓶の先を男鹿に突っ込んだ。

 「うっ。ううっ。あっ。」

 冷たいローションが尻に入ってくると、何故か身体が熱くなった。

 「随分と美味そうに飲み込むな。媚薬入りのローションは

 美味しいか?男鹿も古市と同じビッチだな。ハハハ・・・」

 神崎は笑いながら、男鹿の尻を掴んで左右に押し広げると、

 まだ慣らしていない蕾を一気に貫いた。

 「うぁあああああ~」

 男鹿が物凄い悲鳴を上げた。痛がる男鹿に神崎は

 「なんだ。処女だったのか?ゴメン。ゴメン。血が出ちゃったなぁ。

 へっへ・・・痛いか?」

 と嬉しそうに聞いた。固く閉ざしたままの男鹿の蕾は無惨にも

 引き裂かれ、鮮血が溢れ出ている。神崎が動く度に鋭い痛みが

 男鹿を襲う。激痛に苦しむ男鹿に夏目はこう言った。

 「大袈裟に騒ぐなぁ。ローション使ってやってんだから、内臓の

 ほうは大丈夫なはずだ。入口が少し切れただけだろ?フッ。

 意外と男鹿って痛みには弱いんだ。喧嘩強い奴ほど痛みにも

 強いから、調教次第では立派な犬になると思ったのにな。

 残念だよ。それに比べて、古市はいい犬っぷりだったよ。

 快楽に弱いせいか腰振って喜んでた。男鹿も見ただろう。

 気持ち良さそうに俺に抱かれてキスしている古市を!

 アハハ・・・誰にでも犯らせる奴の為に処女を差し出すなんて、

 とてつもない馬鹿だな。」



 嘲笑う夏目の横で古市は泣いていた。男鹿は教室の床に

 両手をついて、後ろを犯されている自分を惨めだと思ったが、

 後悔はしなかった。子供の頃から頭が悪いとからかわれて

 喧嘩ばかりしていた自分に初めて出来た親友が古市だった。

 古市は怖がらずに初めて優しく接してくれた友達だった。

 キスをして、身体を重ねたのも古市が望んだからで、自分から

 童貞を捨てたいとか思ったわけではなかった。男でも女でも

 関係ない。ただ自分の傍にいてくれる人が欲しかった。

 喜びも悲しみも分かち合える大切な人を自分を犠牲にしてでも

 助けなくてはならないと男鹿は考えた。暴力で解決できるなら

 とっくにそうしている。だが、こういう奴らはやられたらやり返すで

 キリが無い。自分の身体を差し出す事でもう古市に手を出さない

 というのなら、それでもいいと男鹿は思った。血を流しながら

 男鹿は神崎が果てるのをじっと待った。神崎は男鹿を征服した

 喜びに夢中になって腰を激しく打ち付けて、10分で果てた。

 ドクドクと男鹿の体内に欲望を吐き出した神崎に

 「なんだ。もう終わりか?早いな。」

 と、夏目が呆れたように言った。

 「うるせぇ。こいつすっげぇいいからよぉ。こいつの中、狭くて

 食い千切られそうだったんだぜ。夏目、お前もやるか?」

 「遠慮しとくよ。男鹿は趣味じゃない。俺より城山にやらせろよ。」
 
 「そっか。じゃあ、俺、今度は古市とやるから、古市貸せよ。」

 神崎はそう言うと、古市に近寄り、腕を掴んで引っ張り、

 古市を引き寄せた。

 「おいっ!何やってんだぁ?!古市には二度と手を出さない

 って約束だろ?古市を放せ!」

 男鹿は尻から血を流しながら、ゆらりと立ち上がって言った。

 「何だよ!約束したのは夏目で俺じゃねぇぞ。俺は一言も約束

 してねぇからな。へっ!さっきまでひいひい啼いてたくせに!

 いきがるなよ!おいっ!城山さっさとやれよ!」

 城山は男鹿を取り押さえようとしたが、男鹿は一撃の裏拳で

 城山の顔面を叩き潰した。鼻をへし折られた城山はそのまま

 気を失って倒れてしまった。男鹿は城山なんか眼中にないと

 いったかのように神崎のほうへ歩いて行った。

 「く、来るな!これ以上近づいたら、古市の顔を切るぞ!

 な、夏目!ナイフ貸せ!」

 神崎は焦って、夏目が持っているナイフをひったくるように

 奪い取ると、古市の顔にナイフをあてようとした。しかし、

 どういうわけかナイフを持った手が上に上がらない。神崎は

 自分の手元を見て、ぎょっとした。男鹿がナイフの刃を掴んで

 握りしめていたのだった。男鹿の手から溢れる血がナイフを

 伝って床に滴り落ちていた。男鹿は力任せに血だらけの手で

 神崎からナイフを奪い取った。

 「ひいっ。」

 恐怖に慄いた声をあげた神崎に男鹿は

 「ひいひい言ってんのはてめぇのほうじゃねぇのか?」

 と、凄みのある低い声で睨みつけて言った。そして、古市を

 神崎から引き離し、自分の後ろにやると、思いっきり力を込めて

 神崎を殴った。男鹿に殴られた神埼は窓ガラスをぶち破って

 校舎の外に飛んでいった。



 夏目はしばらく何もしないで黙って見ていたが、やがて

 こう言った。

 「俺のことは殴んないの?」

 「ああ。」

 男鹿は少し考えてから返事をして、血のついたナイフを

 夏目に手渡した。

 「返すよ。顔を切るなら俺の顔を切れ。その代わり、

 古市には手を出すな。」

 「ハッ!バッカじゃねぇの?!」

 男鹿の予想外な言動に夏目は眉をつり上げた。だが、男鹿は

 「ああ。馬鹿だよ。俺は。でも、そんな俺でも古市だけは

 守りたいんだ。」

 と言った。すると、夏目は呆れたようにこう言った。

 「お前ってホント、バカだな。神崎にそんなこと言ったら、顔

 切り刻まれるぜ。」

 「だろうな。でも、俺はあんたに言ってるんだ。」

 「もし、俺が古市をまた襲ったら、どうする?襲わないって

 保証はどこにもないぜ。」

 「その時は夏目を殺す。」

 男鹿は真剣な眼差しで言った。

 「本気なんだな。もう、いい。消えろ。お前ら見てると、

 イライラする。もう二度と二人とも俺の前に顔出すな。」

 「分かった。」

 男鹿は古市を連れて教室を出た。

 二人を黙って見送った夏目は独り取り残された気分になった。

 夏目はけっして男鹿に臆したわけではなかった。退屈な人生に

 ピリオドを打つのも悪くはないが、そこまでする必要がないと

 思ったのだ。何があっても二人の仲は引き裂けないという事が

 痛いほど身に沁みて分かったから、古市を諦める事にしたの

 だった。完敗だと夏目は思った。自分には到底真似できない。

 男鹿の古市に対する無償の愛に成す術も無く打ちのめされた。

 夏目は今まで生きてきて、欲しいと思うものが特になかった。

 でも、古市だけは欲しかった。毎日、教室の窓から古市を見て

 いたのを男鹿は知っていたのかもしれない。古市を抱いたら、

 手に入ると思ったのに、結局、何も変わらなかった。永遠に

 手に入らない相手を愛し続けるほど馬鹿じゃない。諦めて

 正解だと夏目は思った。初夏の夜風は涼しくて、夜空には

 綺麗な星が浮かんでいる。もし、流れ星を見つけたら、

 二人が別れるようにお願いでもしてみるかと夏目は思った。

 これは恋なんかじゃない。ただの醜い嫉妬だ。いつまでも

 気が晴れない心を持て余しながら、夏目は何度も自分に

 言い聞かせた。片想いにも至らない夏目の淡い失恋を

 夜空に輝く星たちは静かに笑っていた。


                                (完)



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黒執事二次創作小説

黒執事部屋




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黒執事「猫耳」

黒執事部屋



 「なんでこんなことになってしまったんだろう・・・」

 シエルはため息をついた。

 「坊ちゃん、とっても良くお似合いですよ。」

 セバスチャンが耳元でそっとささやいた。

 あれは昨日の夜の出来事だった。

 シエルがいつものように一人でチェスをしていると、

 「坊ちゃん、お相手いたしましょうか?」

 と、セバスチャンが珍しく言ってきた。シエルはどういう風の

 吹き回しだろうと思ったが、セバスチャンの申し出を受け入れ

 てチェスをした。シエルは一回目のゲームに勝った。しかし

 二回目のゲームは負けてしまった。もう一回とセバスチャン

 に挑んだが、

 「もう寝る時間です。やめておきましょう。」

 と、言われた。でも、シエルは勝つまで止めたくなかった。

 「もう一勝負しろ。子供はゲームに貪欲なんだ。」

 「坊ちゃん、では賭けをしましょう。私が勝ったら、坊ちゃんは

 私の思いのままに。私が負けたら、坊ちゃんのどんな我侭でも

 なんなりとお申し付けください。」

 「よし、いいだろう。」

 「私は貪欲な坊ちゃんが好きです。プレイは一回のみ。

 真剣勝負でお願いします。」

 「望むところだ。」

 ・・・だが、結果は惨敗だった。

 がっくりしているシエルにセバスチャンはこう言った。

 「ドルイット子爵からの招待状が届いております。新年会の

 仮装パーティーに出席していただきます。ただし、普通の仮装

 では面白くありませんから、私好みのコスプレを坊ちゃんには

 していただきます。これをつけてください。」

 シエルはセバスチャンの差し出した衣装と小道具に顔が

 真っ青になった。


 新年会のパーティーは華やかだった。ド派手な仮面をつけた

 男女が花のように色鮮やかな衣装を身にまとい踊っていた。

 皆、シャンパンに酔い、上機嫌だった。そんな中で一人だけ

 仮面をつけていない人物がいた。それはシエルだった。

 シエルは仮面の代わりに猫耳をつけていた。ふわふわの

 白い猫耳はカチューシャでありながら、まるで本物の猫の耳

 のように可愛らしかった。純白のドレスからは白いフサフサ

 の尻尾が生えていた。いや、正確にいうと尻尾はドレスに

 ついているのではなく、直径3センチほどの穴がスカートに

 あけられていて、その穴の中から生えていた。外からでは

 分からないが、下着にも直径3センチの穴があけられている。

 「坊ちゃん、素敵ですよ。」

 セバスチャンが甘い囁きと共に耳に息を吹きかけ、尻尾を

 優しく撫でた。軽く触れられただけで呻きそうになるのを

 シエルは堪えた。

 その時だった。ドルイット子爵がシエルに近付いて来た。

 「ようこそ。可憐な駒鳥。僕の主催するパーティーに君が来て

 くれるなんて嬉しいよ。君にもう一度会えるなんて奇跡だ。

 僕は奇跡に感謝するよ。」

 ドルイット子爵は跪いてシエルの手の甲にキスをした。

 シエルはキスされてビクッとした。そして、恥じ入るように

 目を伏せて俯いた。

 「どうしたんだい?顔色が悪いよ。」

 ドルイット子爵は様子がおかしい事に気付き心配した。

 「お嬢様は少しシャンパンに酔ってしまわれたようです。

 外の空気を吸えばじきに治るでしょう。失礼いたします。」

 セバスチャンはそそくさとシエルをバルコニーへ連れ出した。


 「あぶないところでしたね。もう少しでばれてしまうかと

 ひやひやしましたよ。坊ちゃんが感じやすいから。」

 セバスチャンはバルコニーでシエルを後ろから抱きしめた。

 「誰のせいだと思って・・・あっ。」

 シエルは首筋にキスをされてビクッと感じた。

 「ドルイット子爵とどちらが気持ち良いですか?あんな

 手の甲にキスされたくらいで感じるなんて、はしたない。

 坊ちゃんは誰にでも反応する体をお持ちなんですね。

 そんな悪い子にはお仕置きが必要ですね。」

 セバスチャンはそういうと一気に尻尾を引き抜いた。尻尾の

 先には直径2センチの真珠玉が5個連なってついていた。

 「あ、あ。」

 シエルは急に体内に入っていたものを抜かれて、声を出

 してしまった。直径3センチの穴からは外気にさらされて

 ひくついている蕾が見える。

 「坊ちゃん、たった1、2時間入れていただけなのに真珠が

 濡れていますよ。本当にいやらしい体ですね。」

 セバスチャンはふさふさのしっぽでシエルの頬を撫でた。

 そして、スカートの穴から指を差し入れた。すでに緩んで

 いるそこは指2本をなんなく受け入れた。

 「あ、あ~」

 「シー。坊ちゃん、声が大きいです。会場の皆様に聞こえて

 しまいますよ。」

 セバスチャンがシエルの口をふさいだ。そして、

 「声を出さないように、これでもくわえていなさい。」

 しっぽをシエルの口にくわえさせた。さっきまで体の中に

 入っていた真珠を猿轡のように口にあてがわれて、シエルは

 混乱したように呻いた。指は更に激しく加速する。シエルは

 バルコニーに両手をついて必死に耐えた。やがてシエルが

 絶頂に達すると、今度は代わりにセバスチャンがスカートの

 穴の中に入ってきた。

 「この衣装だと脱がさなくてもできるから便利ですね。」

 セバスチャンはそう言うと、腰を動かし始めた。指とは違い穴

 いっぱいに挿入されたものは布を破りそうな勢いだった。

 シエルが再び絶頂に達するとセバスチャンもシエルの中に

 放った。

 「坊ちゃん、よく声を我慢できましたね。」

 と言うとセバスチャンはシエルの口から真珠を外して、

 スカートの穴の中に差し込んだ。

 「しっぽをつけていないと可愛いお尻が見えてしまいます

 からね。」

 「あっ、もう、いやだ。あ。」

 セバスチャンはふさふさのしっぽをつけ終わると、跪いて

 シエルの手をとり、手の甲にキスをした。

 「坊ちゃん、私とダンスを踊っていただけますか?」

 「こんな状態で踊れるわけがないだろ。」

 「踊れますよ。こんなに星空が綺麗なのですから、夜空で

 ダンスをしながら帰りましょう。」

 セバスチャンはシエルをお姫様抱っこすると、ひょいっと

 バルコニーから3階の屋根へと飛び移った。そして、まるで

 ダンスを踊るように軽やかに屋根から屋根へと飛び移り、

 夜空の空中散歩を楽しんだ。屋根の上でのデートにシエル

 は笑ってこう言った。

 「まるで猫になった気分だ。」

 「坊ちゃんは誰よりも美しい猫でございます。」

 セバスチャンは笑顔で戯言を囁いた。

                          (完)


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黒執事「滔滔」

黒執事部屋



 滔滔と流れる河の水面に一輪の花が浮かんでいる。何処からか

 流れてきた小さな花を見て、シエルは自分のようだと思った。

 これから何処へ行くのかも分からない。どうなるのかも分から

 ない。ただ流されるままにゆらゆらと漂っているだけの小さな花。

 執事の漕ぐ渡し舟に乗っている自分と同じだ。ゆらゆらと身を

 任せて最後の時を迎えるのだ。シネマティックレコードの見える

 河はいくつもの思い出を映し出す。シエルを思う人達の心の光が

 眩いほどにキラキラと美しく輝いてシエルの周りを囲んでいた。

 「坊ちゃん、花を・・・」

 セバスチャンは小さな花を河からすくってシエルの左手の薬指に

 はめた。シエルは手を蒼い空にかざして婚約指輪さながらの青い

 花を見つめた。人の心の光達は二人を祝福しているかの如く

 輝いていた。光の群れを通り過ぎると見知らぬ島が見えてきた。

 セバスチャンはシエルを抱え、船を降りて、森の中を歩いた。

 やがて廃墟にたどり着くとセバスチャンは石の椅子にシエルを

 座らせた。

 「坊ちゃん、本当によろしいのですか?」

 「・・・痛いか?」

 「そうですね。なるべく優しくはしますが・・・」

 「いや、思い切り痛くしてくれ。生きていたという、痛みを魂に

 しっかりと刻みつけてくれ。」

 「イエス、マイロード。」

 セバスチャンがシエルの頬を優しく撫で、顔を近づけて来た。

 赤く光る瞳は恐ろしくはなかったがシエルはぎゅっと目を閉じた。

 セバスチャンの唇がシエルの柔らかい唇に重なる。二人にとって

 初めてのキスだった。微かに開いた唇の隙間から舌が滑り込ん

 できた。シエルは絡まるセバスチャンの舌に息苦しさを覚えた。

 舌に吸い付く舌は生き物のように蠢き、シエルを翻弄した。

 口腔を犯されたシエルは瞳に生理的な涙を浮かべた。

 「坊ちゃん、苦しいですか?それとも気持ち良過ぎますか?」

 シエルは頬を染めてプイッと顔を背けた。セバスチャンはその

 可愛らしいしぐさを嘲るように微笑み、シエルの服のボタンに

 手をかけ、ゆっくりと脱がしていった。

 
 生まれたままの姿にされたシエルは恥ずかしそうに目を閉じた。

 「美しい。」

 セバスチャンは感嘆の吐息をもらした。

 「坊ちゃん、脚を開いて。もっと見せてください。」

 「嫌だ。セバスチャン。どこ見て・・・」

 セバスチャンはしなやかな肢体を開かせてシエルの最も感じる

 部分に口づけをした。

 「あ、ああ~」

 シエルは思わず声を出してしまった。シエルは恥ずかしくなり、

 自分の手で口を塞ぎ、手を軽く咬み、声を殺した。

 「坊ちゃん、声を出すのが恥ずかしいのなら、いっそのこと

 猿轡でも致しますか?」

 「な、何?!」

 「恥ずかしがる必要はありません。他に誰もおりませんから。

 存分に声をお出しください。」

 セバスチャンはそう言うとシエルの肋骨の上にある刻印に

 口づけした。不浄の証であるその刻印に口づけされてシエルは

 困惑した。男共に弄ばれた日々が一瞬シエルの脳裏をよぎった。

 シエルは家畜のように扱われ、人としての尊厳を奪われた

 あの日々を忘れることができなかった。それ故、シエルは人と

 肌を触れ合わせることを拒んでいた。セバスチャンにも今日まで

 許さなかった。悪魔に魂を捧げる今日という日まで・・・どうせ

 喰われるなら最後に一回だけ身体を許してやっても良いと思った。

 セバスチャンがそれを望むのなら・・・

 「もういい。さっさとやれ。痛くしろと言っただろ?僕に前戯は

 無用だ。」

 「坊ちゃん。」

 セバスチャンの赤い瞳が光った。セバスチャンは何か言おうと

 したが、呆れたという顔をした。そして、微笑んでこう言った。

 「では、遠慮なく、いただきます。」

                            
  セバスチャンがシエルの中に入ってきた。大きな異物感に

 シエルは顔をしかめた。

 「痛いですか?」

 「あたりまえだ。」

 「でも、ここは嬉しそうですよ。」

 セバスチャンはシエルを握りしめた。

 「あっ」

 シエルの身体がビクッと震えた。後ろを貫かれながら前を弄られて

 シエルは今まで感じたこともない快感に襲われた。

 「気持ち良いですか?坊ちゃん。もっと良くしてさしあげますよ。」

 「あああ~」

 シエルは嬌声をあげながら、無意識のうちに身体が宙に浮くような

 錯覚にみまわれた。シエルが必死でセバスチャンにしがみつくと

 「そろそろ行きますか?」

 と聞かれた。シエルは魂を持って行かれるのだと思った。不思議と

 不安はなかった。死を恐れないと言えば嘘になるが、セバスチャン

 と一つになることで己の身が浄化されていく気がした。ただ食さ

 れるのではなく、浄化されるのだ。全身全霊を尽くして愛する人に

 食されるのは魂の浄化に他ならない。シエルは薄れ逝く意識の

 中で天使よりも美しい悪魔に接吻した。セバスチャンはシエルを

 抱きしめ、深い口づけの中でエナジーを吸い取った。

 そして、セバスチャンは瞳を閉じて安らかな眠りについたシエル

 の髪を撫で、優しく瞼にキスをした。

 「んっ?」

 シエルが再び瞳を開けると、そこは天国でも地獄でもなかった。

 セバスチャンに連れて来られた最後の場所、廃墟だった。

 「坊ちゃん、お目覚めですか?ぐっすり眠っておられましたね。」

 セバスチャンがいつものように微笑んでいる。

 「魂はまだ喰ってなかったのか?」

 シエルがいぶかしげに聞くと、セバスチャンはこう答えた。

 「いいえ、美味しくいただきました。私は坊ちゃんのエナジーを

 食べさせていただきましたので。人間がイク時に発するエナジー

 は大変おいしゅうございます。魂は一度に食べてしまわなくとも

 睦みあう度に何度でもエナジーを食することができるので

 ございます。」

 「妖怪みたいだな。」

 「失敬な。私は悪魔で執事ですから。」

 悪魔に魂を売り渡すということは甘美な世界を知るという事だった。

 シエルは契約の意味を誤解していた。悪魔との契約がある限り、

 二人が死を別つまで主従関係は続く。シエルはこれから先も食を

 与える義務があった。シエルは満腹そうにしているセバスチャンを

 見ていると、毎晩、与えるのも悪くないと心の中で密かに思った。

                              (完)


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黒執事「鳥籠」

黒執事部屋


               
 「あ~、もうダメ~。がまんできない。欲しい。」

 鳥籠の中で少年は瞳を潤ませて悶えていた。

 部屋の中央に金と銀で作られた大きな鳥籠が置いてある。

 その美しい鳥籠に閉じ込められた金髪碧眼の美少年は格子の

 隙間から手を伸ばして欲しがった。

 「早く~。薬~、薬ちょうだい。」

 少年は目の前で楽しそうに眺めていた男に薬をせがんだ。

 「もう、欲しくなったのかい?まだ、お薬の時間じゃないよ。

 もうしばらくおもちゃで遊んでいなさい。」

 男はわざとじらすためにそう言った。

 「いや、もう耐えられない。叔父様、なんでもするからお願いです。

 薬をください。」

 「ほう、なんでもするって言ったね。いい子だ。薬をあげよう。」

 男はチョコレートを袋から取り出して、少年に見せた。そして、口を

 開けてヨダレをたらしている少年の口にチョコレートを放り込んだ。

 「チョコレートに薬が入っていることを知っても、まだ欲しがるとは

 馬鹿な子だ。これだけ美しい小鳥なら餌を与えながら鳥籠で飼うの

 もまた一興・・・」

 男はご満悦の表情を浮かべて、笑った。

 
 「坊ちゃん、女王陛下から手紙が届いております。」

 セバスチャンが銀のトレイに手紙を載せて仰々しく持ってきた。

 シエルがそれを受け取り、読むと、手紙にはこう書かれていた。

 伯爵家を継いだばかりのリチャード・ガートランド13歳が行方不明

 になって3ヶ月経つ。後見人である叔父のワーウィックが正式に

 ガートランド家のチョコレート工場を相続したいと申し出たので、

 調べて欲しいという内容だった。

 「ガートランドはチョコレートに関しては一流だ。ただ、あの会社は

 他と違ってチョコレートしか作らない。行ってみるか。」

 シエルはセバスチャンと共にガートランド伯爵家を訪れた。


 ガートランドチョコレート工場はロンドンから馬車で半日以上離れた

 田舎にあった。村の名前もガートランドで、ガートランド家の領地と

 なっていた。そして、村外れの古城がガートランド家の屋敷だった。

 シエルたちが屋敷に着くと、眼鏡をかけた長い髪の背の低いメイド

 が出迎えた。

 「これはこれは、お待ち申し上げておりました。」

 彼女は深々と頭を下げて、シエルたちを屋敷に迎え入れた。

 「お付きの方はこちらでお待ちください。」

 メイドはセバスチャンを残して、シエルだけワーウィックの所へ案内

 した。客間には30代の紳士が椅子に座って待っていた。

 「ようこそ、シエル・ファントムハイヴ伯爵。」

 「はじめまして。ワーウィック・ガートランド卿。行方不明のリチャード

 伯爵の調査に参りました。」

 「甥のリチャードは神隠しに会いましてね。無事に帰って来ると

 良いのですが・・・そうそう、チョコレートはいかがですかな。

 我が社自慢の逸品をご用意しました。さあ、召し上がれ。」

 銀のトレイに美しいトリュフが並んでいた。シエルが一粒つまんで

 食べてみると、甘くてとっても美味しかった。

 「遠慮なさらずに全部どうぞ。」

 シエルはもう一つ口に運ぶとまたもう一つと食べたくなった。お腹

 が空いている訳でもないのにおかしいと思いながらも、余りの美味

 しさに食べることを止められなかった。不思議なチョコレートだった。

 一口食べただけで口の中が蕩けるような幸せを感じ、高揚感まで

 味わうチョコレート。まるで媚薬のような・・・あ、しまった・・・

 気づいた時にはもう遅かった。シエルは視界がぼやけて、身体が

 動かなくなり、気を失った。


 目が覚めるとシエルは手枷足枷で鎖に繋がれて寝かされていた。

 部屋のカーテンは閉め切られていて、薄暗い部屋には何本もの

 蝋燭が灯されていた。衣服を剥ぎ取られて、生まれたままの姿の

 シエルを蝋燭は妖しく照らしていた。

 「おや、もう、目が覚めたのかい?まだ、身体にチョコレートを塗り

 終わっていないのに・・・」

 「な、何をするんだ!?や、やめろ!!」

 ワーウィックはチョコレートをシエルの下腹部に塗りながら、ニヤリ

 と笑ってこう言った。

 「君の執事なら死んだよ。メイドが斧で首をはねたからね。」

 「う、嘘だ。セバスチャンが死ぬはずがない。」

 「君がチョコレートを食べている時に後ろからそっと、油断していた

 彼の首をはねたんだよ。信じないならそれでも良いけど・・・そうだ。

 君に良い物を見せてあげよう。」

 と言うと、ワーウィックはまるで本物そっくりの人間のように作られ

 たチョコレートが乗った台車を運んで来た。

 「私の兄だよ。石膏で型をとってチョコレートで等身大の像を作った

 んだ。素晴らしいだろ?兄の妻のも、その子供のもある。」


 「みんなお前が殺したのか?」

 「人聞きの悪いことを言わないでくれたまえ。兄は病死だよ。石膏

 で型を取るだけで殺すわけないだろう?私は誰も殺してないよ。」

 「じゃあ、リチャードは何処にいる?」

 「それは言えないな。それよりも美味しそうだ。君が食べたい。」

 ワーウィックはそう言うと、シエルの身体を舐め始めた。ゆっくりと

 シエルに塗られたチョコレートを舌で味わうように舐めとり、丹念に

 肌を舐めまわした。シエルはねっとりとした舌の感触に抗おうとし

 たが、鎖に繋がれた手枷足枷がシエルを拘束していた。

 「や、やめろ!いやだ~!!セバスチャン!!」

 シエルが叫ぶとセバスチャンが現れた。ワーウィックは驚いて

 「き、きさま、死んだんじゃなかったのか!?」

 と言った。するとセバスチャンは澄ました顔でこう言った。

 「ファントムハイヴ家の執事たる者、あれしきのことで死んでどうし

 ます?坊ちゃん、このお礼は如何なさいますか?」

 「セバスチャン、何故、最初に呼んだ時にすぐ来ない?まず、この

 状態をなんとかしろ。ベトベトして気持ち悪い。」

 「イエス、マイロード。坊ちゃん、手品はお好きですか?」

 セバスチャンは何処からかシーツを取り出し、パサッとシエルに

 かけたかと思うとすぐに取り払った。すると、身体に塗られていた

 チョコレートはすべて消え去り、手枷足枷も外されて、シエルは服

 まで着ていた。ワーウィックは腰を抜かして驚いた。それを見た

 セバスチャンはニッコリと微笑んでこう言った。

 「ファントムハイヴ家の執事たる者、これくらい出来なくてどうし

 ます?あくまで執事ですから。」


 「ば、化け物!!」

 ワーウィックは腰を抜かしたまま後ずさって逃げ出そうとしたが、

 セバスチャンに捕まった。

 「化け物とは心外ですね。事の経緯を話してもらいましょうか?」

 「あの女がいけないんだ。浮気していた男と再婚するとか言い出

 して・・・だから、あんなことに・・・」

 「もっと詳しく話してもらえませんか?」

 「実は、あの女を殺したのは・・・う、ぐはっ!!」

 ワーウィックが突然血を吐いて倒れた。苦しむ彼の背中には斧が

 刺さっていた。シエルがハッとしてあたりを見まわすと、部屋の扉

 の近くにメイドが立っていた。

 「僕を裏切る者は許さない。」

 メイドはそう言うと、眼鏡とかつらを外した。美しい大きな碧い瞳と

 透き通るような金髪の少年が姿を現した。

 「リチャード?!」

 シエルは我が目を疑った。驚いたことに、メイドはリチャードが変装

 していたのだった。

 「ようやく本性を現しましたね。」

 セバスチャンは不敵な笑みを浮かべた。

 「ガートランド伯爵夫人を殺したのはあなたですね?」

 「ああ、そうだよ。お母様は僕を裏切った。若い男に入れあげて、

 お父様の喪が明けないうちから屋敷に男を連れ込むようになった。

 人目もはばからずに若い男と遊ぶお母様が許せなかった。しかも、

 再婚するから僕が邪魔だって言ったんだ。邪魔な僕を寄宿学校に

 入れるって男と話してたのを聞いたよ。だから、殺した。寝室で

 男と交わるお母様を斧で殺したんだ。この斧で男ともども頭を叩き

 割ってやったよ。お母様の死体はこの屋敷の塔の窓から投げて、

 自殺したということにしたんだ。お父様の死を嘆いての後追い自殺

 だよ。男の死体は庭の森に埋めた。警察も誰も気づかなかった。」

  
 「やはり、そうでしたか。そして、あなたは死体の処理を叔父さんに

 頼んだのですね。」

 「そうだよ。僕が頼めば、なんとかなると思って・・・」

 「それで色仕掛けでたらしこんだわけですね。ブラコンでロリコンの

 叔父さんなら自分の味方になってくれると?でも、実際はそんなに

 甘くなかった。ワーウィックはあなたに薬を飲ませて、何もかも手に

 入れようとした。毎日、薬をチョコレートに混ぜてこっそり飲ませた。

 あなたは見事に騙されて、チョコレートなしではいられない身体に

 なってしまった。そうでしょう?」

 「ああ、そうだよ。叔父様は僕を薬漬けにして、鳥籠に閉じ込めて、

 僕からすべてを奪ったんだ。」

 「だから、殺したのか?君はワーウィックを憎んでいたのか?」

 シエルがリチャードに聞いた。

 「憎む?僕が叔父様を憎める訳がない。お父様はいつも仕事優先

 でチョコレート工場が一番大事な人だった。チョコレートで自分の像

 まで作るくらいのチョコレート好きだったから。家族よりも何よりも

 チョコレート工場が大切だったんだ。お母様は社交界の付き合いも

 大切だからと言って嘘をついて出かけ、男と遊んでたんだ。だから

 いつも僕は屋敷に置き去りにされていた。唯一僕に優しかったのは

 叔父様だけだった。叔父様だけが僕と遊んでくれた。僕は叔父様

 を愛していたんだ。なのに、浮気するなんて・・・」

 「浮気とは坊ちゃんの事ですか?あれは襲われていたのですよ。」

 「しかし、檻に閉じ込めるような卑劣な男を好いていたなんて、

 哀れな奴だな。君はこれから、どうする?一緒に警察に行くか?」

 「警察はいやだ。それに僕の身体はもう、薬なしでは生きられない

 んだ。こうなったら、死んだほうがましだ。」

 リチャードはそう言うと、部屋に灯されていたろうそくを倒して、

 カーテンに火をつけた。火は見る見るうちに燃え上がり、リチャード

 はあっという間に炎に包まれてしまった。


 「リチャード!!」

 助けようとするシエルをセバスチャンは遮り、シエルだけかついで

 屋敷から脱出した。安全な所までたどり着くと、セバスチャンは肩

 に担いでいたシエルをおろした。炎は瞬く間に燃え広がり、屋敷を

 焼き尽くした。シエルは何故リチャードが死を選んだのか、また、

 叔父を愛したのか理解できなかった。セバスチャンはシエルの肩を

 そっと抱き寄せてこう言った。

 「人にはそれぞれの考え方や幸せがあるのですよ。リチャード様は

 鳥籠の中の居心地が良かったのでしょう。愛に飢えた子供が陥り

 やすい甘い罠から、抜け出すことを恐れるあまり、リチャード様は

 死を選んだのです。」

 燃え盛る炎が夜の闇を照らしていた。リチャードは叔父といて幸せ

 だったのだろうか。本当の愛も知らないまま火を放ち死んでいった

 リチャード。哀れという言葉では片付けられないとシエルは思った。

 屋敷を燃やす炎が夜空に立ち昇り、まるでリチャードの魂をあの世

 に導いているようだった。

 「帰りましょう坊ちゃん。ここにいてもする事がもうありませんから。」

 「随分と冷たいんだな。リチャードも助けようと思えば助けられた

 のに・・・」

 「私は檻に閉じ込められて、そこから出たいと思わない人間に興味

 ありません。生きる気力のない人間を助けるのは無意味というもの

 です。」

 「僕がもし、あの日、死にたいと思っていたのなら、お前は現れな

 かったのか?」

 「はい、さようでございます。しかし、坊ちゃんはあの日、生きたい

 と願った。ですから、私が今ここにいるのです。私はいつまでもどこ

 までも坊ちゃんのおそばにおります。あくまで執事ですから。」

 セバスチャンの甘い誘惑にも似た微笑にシエルは思わず目をそら

 した。そして、リチャードと自分を重ね合わせて感情的になっていた

 のだと気づいた。

 「帰るぞ。」

 シエルは目を伏せたまま、歩きだした。夜の闇は暗く、ガートランド

 だけが赤々と燃えていた。深い闇の中へシエルは帰っていった。

                              (完)


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黒執事「鳥籠アナザーストーリー」

黒執事部屋



 「リチャード!!」

 炎は瞬く間に燃え広がり、屋敷を焼き尽くした。

 「セバスチャン。命令だ。リチャードを助けろ。」

 シエルは叫んだ。

 「イエス・マイロード。」

 セバスチャンは燃え盛る炎の中からリチャードを救い出した。

 シエルは自ら死を選んだリチャードを哀れに思って、

 ファントムハイヴの屋敷に住まわせることにした。

 その夜、リチャードはベッドの中で目を覚ました。

 「お目覚めですか?リチャード様。」

 セバスチャンが微笑む。

 「ここは・・・」

 心配そうにリチャードは聞いた。

 「ファントムハイヴ邸です。坊ちゃんのご意向により今日から

 あなた様のお世話をする事になりました。警察には知らせ

 ない事に致しましたので、ご心配には及びません。どうぞ

 ごゆっくりなさってくださいませ。」

 「そうだ。心配無用。女王の命を遂行するのが僕の仕事だ。

 警察とは何の関係もない。女王の命とは行方不明の

 リチャード・ガートランドを救出し、家督を奪おうとした

 ワーウィック・ガートランドの悪事を暴く事。全ては君を鳥籠

 に閉じ込めたワーウィックの陰謀として女王には報告して

 おくから、安心しろ。」

 「でも、僕は・・・」

 シエルの言葉にもリチャードはまだうかない顔をしていた。

 「チョコレートですか?」

 セバスチャンがリチャードに呆れたといった顔で聞いた。

 リチャードはこくりと黙って頷いた。

 「チョコレートの成分を調べてみましたところ、阿片は入って

 いませんでした。よく考えてみたら、たばことして吸う阿片を

 チョコレートに混ぜたら食べられるものではありません。

 チョコレートの中に入っていたものは医師により処方される

 精神安定剤と媚薬でした。パブロフの犬をご存知ですか?

 毎日決まった時間にベルを鳴らしてから餌を与えるとベルを

 鳴らしただけで涎をたらすという話です。リチャード様は

 パブロフの犬だったのです。チョコレートを食べた後セックス

 をしていたから、時間になると薬が欲しくてたまらなくなる

 という状態に陥っていたのです。リチャード様はお母様を

 殺した罪悪感から逃れる為に何もかも忘れられるほどの

 気持ちの良いセックスに溺れていただけなのです。」

 「知らなかった。叔父様はドラッグが入っていると言って

 いたから・・・」

 「ドラッグ=麻薬ではなくて、ただの薬だったのですよ。」

 セバスチャンは微笑んだ。

 「チョコレートをお持ちしました。ただし、媚薬は入って

 いませんが、これを食べてぐっすりとお休みなさいませ。」

 セバスチャンは銀のトレイからチョコレートをつまんで、

 リチャードに一つ食べさせた。唇にチョコレートが触れた時、

 リチャードの恍惚と開いた口が美味しそうにチョコレートを

 飲み込んだのをシエルは見逃さなかった。

 安心したように眠ったリチャードを見て、セバスチャンは

 シエルにこう言った。

 「リチャード様をお預かりするのはガートランドのお屋敷を

 建て直すまでですよ。」

 「分かっている。事件の報告をして、爵位をリチャードに

 継がせる手はずが済んだら、ガートランドへ帰ってもらう。」

 「では、そのように。」

 セバスチャンはシエルにお辞儀をした。

 
 翌朝、メイリンの悲鳴が聞こえてシエルは目を覚ました。

 「何事だ。」

 シエルが質問するとメイリンは

 「おらのメイド服が盗まれましただ。」

 と答えた。シエルは嫌な予感がして、セバスチャンに

 「リチャードはどこにいる?」

 と聞くと、

 「リチャード様でしたら、まだお休みになられているはず

 ですが・・・おや、庭に誰かいますね。」

 と、セバスチャンは目を細めて言った。庭にはメイド服を着た

 リチャードがいた。リチャードはまるで長年この屋敷に住んで

 いるメイドのように竹ぼうきで庭を掃いていた。

 セバスチャンはリチャードの傍に駆け寄って

 「リチャード様、なんという格好をなさっているのですか。」

 と聞くと、リチャードは悪びれもせずにこう言った。

 「僕はこの格好が一番落ち着くんだ。それに今日から

 ファントムハイヴ家にやっかいになるのだから掃除くらいは

 させてもらうよ。」

 「だからと言って、メイドの真似など・・・」

 セバスチャンが呆れて、ため息をついていると、

 「おい。おい。新入りかい?」

 何も知らないバルドがやって来た。

 「ねえ君、女の子みたいに見えるけど本当に男の子なの?」

 フィニも興味津々で寄って来た。

 「その服おらよりも似合ってるだでリチャード様にあげるだよ。」

 メイリンが言った。3人に取り囲まれてリチャードは少し

 嬉しそうだった。

 「まあ、働きたいと言うのなら、仕方ないですね。そのほうが

 気も紛れるでしょうし・・・いかがなさいますか?坊ちゃん。」

 「好きにさせてやれ。」

 シエルはフッと笑って屋敷の中に入って行った。

 
 リチャードがファントムハイヴの屋敷に来て幾日か過ぎた頃

 「リチャード様、一緒にチョコレートを作りませんか?」

 セバスチャンがリチャードを誘った。

 「わーい。チョコレート大好き。」

 リチャードは今日もご機嫌だった。リチャードは屋敷に来た

 翌日からすぐ使用人たちと打ち解けて仲良くなった。特に

 セバスチャンとは仲が良過ぎるくらいだ。リチャードは朝から

 晩までセバスチャンにはりついている。また、セバスチャンの

 ほうもまんざらでもないような顔をして、あれこれと手伝わせ

 ている。他の使用人には絶対に手伝わせないお菓子作りも

 最近では二人で仲良く作るようになった。シエルはセバス

 チャンの作るお菓子が大好きだったが、リチャードと一緒に

 作ったものはあまり食べる気がしなかった。もちろん不味い

 というわけではない。不味ければ即、厨房に入る事を禁じる

 のだが、あいにくとリチャードの作るお菓子は美味しかった。

 お菓子だけではない。料理もとても13歳とは思えないほど

 上手だった。趣味はお菓子作りと料理と言っていただけは

 ある。リチャードはセバスチャンの教え方が上手だからすぐに

 レシピを覚えられたと言うが、厨房という密室で二人でいつも

 何をしているのかと思うとシエルは気が気ではなかった。

 せめてバルドでもいてくれたら良いのだが、バルドは何故か

 二人が厨房に入ると必ず、庭でフィニと話していたり、屋敷

 の中をフラフラと歩いているのだった。

 セバスチャンがさりげなくリチャードの腰に手をまわした。

 ただエスコートするために軽く腰に手を当てただけだったが、

 シエルは凝視した。厨房に入るのに何故エスコートする

 必要があるんだ。もっと離れて歩け。シエルは心の中で

 悪態をついた。だが、やきもちを焼いていると思われるのが

 嫌で口に出して言わなかった。シエルはリチャードの無邪気

 に笑う姿を黙って見ていた。


 太陽が沈み空を赤く染める頃、シエルは信じられない光景

 を見た。庭の噴水にリチャードとセバスチャンが戯れている

 姿が映っていた。水面に映る影は楽しそうに寄り添い、昼間

 作ったチョコレートを二人っきりでいちゃいちゃと食べていた

 のだった。あ~んと大きな口を開けてリチャードがチョコレート

 をせがむ度にセバスチャンはまるで雛鳥に餌を与えるかの

 ようにチョコレートを一粒ずつ指で摘まんで食べさせていた。

 満足げにチョコレートを食べた後、リチャードはセバスチャン

 に抱きついた。

 「好きだ。セバスチャン。」

 潤んだ瞳でリチャードが告白した。

 「出会った日からずっとセバスチャンのことが好きだった。」

 「斧で首を切り落とした日からですか?」

 「意地悪。僕を炎の中から救ってくれた日からだよ。」

 「あれは坊ちゃんの命令でしたので・・・」

 「そんなの、関係ないよ。」

 「私はあくまで坊ちゃんの執事ですから。」

 「僕と契約して。」

 「正気ですか?」

 「お願い。」

 「困りましたね。」

 セバスチャンはリチャードを自分から引き剥がした。その拍子

 にチョコレートの入っていた籠が地面に落ちて、様々な形の

 チョコレートが地面に転がり出た。セバスチャンはクスっと

 笑って、その中からきのこの形をしたチョコレートを手に取る

 と、こう言った。

 「あなたが私に魅かれているのは知っていました。こんな

 ふしだらな形のチョコレートまで作って、厨房でペロペロと

 舐めて見せたりして、いけない子だ。リチャード様はセックス

 をしたいという欲望と恋とをはき違えているのです。そんな

 悪い子にはお仕置きが必要ですね。お尻を出しなさい。」

 リチャードはセバスチャンの変貌ぶりに少し驚いたようだった

 が、おずおずとメイド服のスカートをまくってお尻を差し出した。

 ズロースを下げると、リチャードの桃のような可愛らしい

 お尻が現れた。セバスチャンはそのお尻にきのこの形の

 チョコレートを一つ押し込んだ。

 「あん。」

 リチャードは噴水の脇に手を着きよがり声をあげて喜んだ。

 「セバスチャン!何をしている!」

 物陰から見ていたシエルが怒って飛び出した。しかし、

 セバスチャンは

 「やっと出てきましたね。坊ちゃんがいつ出てくるかと待って

 いたのですよ。」

 と言った。セバスチャンはシエルが見ている事を知っていた

 のだ。シエルはカァッとなって逃げ出した。だが、セバスチャン

 は追いかけて来なかった。シエルは独りで部屋に閉じこもり

 涙を流した。傲慢で何もかも見透かしたようなセバスチャン

 が許せなかった。泣き続けているうちにシエルは泣きながら

 寝てしまった。


 「坊ちゃん。坊ちゃん。」

 甘く囁く声がしてシエルは目を覚ました。真っ暗な中で1本だけ

 灯した蝋燭を片手にセバスチャンがベッドの横に立っていた。

 「可哀相に泣き疲れて寝てしまったのですね。」

 「誰のせいだと思っている?」

 シエルがセバスチャンを睨んだ。

 「リチャード様のせいですか?」

 セバスチャンはわざと蝋燭をサイドテーブルに置きながら

 そう言った。

 「おまえのせいだ。」

 シエルがセバスチャンを叩こうとしたが、セバスチャンは

 その手を掴み、シエルをベッドに押し倒して口づけをした。

 舌と舌が絡みつく。両手を頭の上で重ね合わせた手首を

 片手で押さえつけられて、シエルは口の中を犯された。蠢く

 舌にシエルは身体の力が抜けていった。セバスチャンは

 口づけを交わしながら、シエルの服を脱がしていった。耳

 たぶを軽く噛まれてシエルは呻いた。形の良い耳をなぞる

 ように舌を這わせて耳の穴に舌を差し入れる。中まで

 舐められてシエルは声をあげてしまった。

 「あ、ああ~」

 「坊ちゃんは耳が好きですね。」

 シエルは急に考えたようにセバスチャンを見た。

 「リチャードは?リチャードにも僕と同じ事をしたのか?」

 「気になるのですか?答えはノーです。」

 「どうだかな。」

 シエルはふてくされたように空中を見つめた。時が一瞬、

 二人の間で張りつめたように沈黙が漂った。すると、

 セバスチャンはシエルの瞳を手で覆い、こう言った。

 「坊ちゃん、目を閉じて、私を身体で感じて。」

 悪魔の囁きは呪文のようにシエルの脳を犯した。シエルは

 目を閉じて、セバスチャンの愛撫を全身で感じた。身体を

 這い回る舌はシエルを快楽の渦に陥れ、欲望がシエルを

 襲う。セバスチャンを体内に受け入れてもシエルはまだ目を

 開けなかった。悪魔に身を捧げる儀式のようにセバスチャン

 に抱かれて歓喜の声をあげていた。やがて絶頂に達しても

 シエルはまだ目を開けなかった。セバスチャンが自分の中

 にいる喜びを感じていた。セバスチャンは体内に留まった

 まま、シエルの眼帯の紐をほどいた。

 「坊ちゃん、この身体は坊ちゃんだけのもの。坊ちゃんに

 尽くす為に存在するのです。さあ、目を開けて、私を見て。」

 セバスチャンの赤い瞳が暗闇で光っていた。シエルは

 美しいと思った。妖しく美しい悪魔の瞳に見つめられて、

 シエルは至福の時を感じた。悪魔との契りは淫靡で甘い

 麻薬のようだった。見つめ合ったまま互いに快楽の絶頂を

 迎えた。果てた後、セバスチャンはシエルの瞳の契約の印

 に接吻した。


 セックス依存症は僕のほうかもしれない。そんな事をシエル

 はベッドに裸で横たわったまま考えた。

 「またリチャード様の事を考えているのですか?」

 当たらずともはずれとも言えない事を聞かれて、シエルは

 ドキッとした。

 「リチャード様はパブロフの犬なのです。私が炎の中から

 助け出した夜に餌を与えてしまったので、恋してしまわれた

 のです。しかし、リチャード様が最も欲するのは私ではなく

 チョコレートです。チョコレートを与えてくれる人なら誰でも

 良いんです。あの時、坊ちゃんをすぐに追いかけなかった

 のは、リチャード様に明日、ガートランドに帰るよう説得して

 いたからです。」

 セバスチャンはシエルの髪を優しく撫でた。そして、

 「私は坊ちゃん以外の人間には興味がありません。この

 数日間、嫉妬に狂う坊ちゃんの目はとても素敵でした。」

 「わざとか。」

 シエルはセバスチャンがやきもちを焼かせて楽しんでいた

 事を知って呆れて怒ってしまった。

 「怒った顔も素敵ですよ。坊ちゃん。」

 セバスチャンがシエルに口づけした。セバスチャンの瞳が

 笑っている。すべては意地悪な悪魔の悪戯だったのだ。

 セバスチャンの指がシエルの身体を弄る。唇が舌がシエル

 を快楽へと誘う。セバスチャンがシエルを満たしていく。

 悪魔との夜は長い、シエルは再び幾度となく絶頂を迎えた。


                         (完)


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黒執事「仔犬」

黒執事部屋



 「さあ、朝摘みの葉をお食べなさい。」

 ダイニングテーブルに一枚の皿が置かれた。皿には雑草や

 低木の葉っぱなどが無造作に盛られていた。

 「朝一番に起きて庭で摘んできた新鮮な葉っぱと草だよ。

 一応洗ってあるから安心してお食べなさい。」

 少年は皿の中の葉っぱをフォークを使って恐る恐る口に運んだ。

 しかし、本来食することのない葉っぱをどうしても飲み込めない

 でいた。

 「好き嫌いはいけないよ。出されたものは残さず食べなさい。」

 少年は泣きながら葉っぱを飲み込んだ。そして、思わず吐き気

 を催したが、食べたものを吐き出すとますます起こられるのが

 分かっているので、自分の手で口を押さえて耐えた。

 「アルベルトどうした?まだ沢山あるよ。早くもっと食べなさい。」

 「お父様、もう許して。」

 「ダメだ。これは儀式なのだよ。お前が従順な良い子になったか

 試しているんだ。昨夜は飲めと命じたものが飲めなかったね。

 好き嫌いはいけないと前々から何度も言っているのに、どうして

 言うことが聞けないのかね?私はお前の背中にこれ以上、鞭の

 痕を増やしたくないのだよ。良い子だから、おあがりなさい。」

 少年はポロポロ涙をこぼしながら葉っぱを食べた。

 屈辱を感じながらも更なる罰を恐れてひたすら食べた。

 「良い子だ。アルベルト。全部食べたらご褒美をあげようね。」

 父は満足そうに微笑んだ。


 緑豊かなロンドン郊外にその孤児院はあった。古い2階建ての

 粗末なレンガ造りの建物だが、そこで暮らしている孤児達は

 貧しいながらも生き生きとしていた。笑いながら5、6歳くらい

 の男の子達が庭で鬼ごっこをしている。初夏の陽ざしは眩しくて

 キラキラと木洩れ日が輝いていた。太陽は木陰にいても容赦なく

 人々を照りつける。

 「暑いぞ。セバスチャン。」

 シエルは不快そうに言った。

 「見たところ、さしたる虐待も行われていなさそうだが・・・

 本当にここの孤児院なのか?」

 「はい。ここに間違いはございません。情報によりますと、

 毎月第二土曜日に慈善事業家であるホーエンハイム男爵が

 子供達の慰問に参ります。そして、見目形の良い男の子を

 毎月1人もらって行くのです。怪しいとは思いませんか?」

 「確かに。怪しいな。」

 「あ、坊ちゃん。ホーエンハイム男爵がお見えになりました。」

 およそ孤児院には似つかわしくない立派な貴族の馬車が

 粗末な孤児院の前のあぜ道に停まった。そして馬車から美しい

 20代の男性が降りてきた。ホーエンハイム男爵だった。

 男爵は手に大きな紙袋を持って、にこやかに笑いながら

 子供達のいるほうへと真っ直ぐに歩いて行った。

 「キャンディーが欲しい子、この指とまれ。」

 男爵は戯言を言いながら、ペロペロキャンディーを紙袋から

 取り出して子供達に見せた。子供達がわーっと集まって来た。

 男爵は万遍の笑みを浮かべて子供達にキャンディーを配った。

 建物の奥から子供達と一緒に施設の責任者がやって来た。

 田舎臭い小太りの中年の男だった。


 「これはこれはホーエンハイム男爵。ようこそおいでください

 ました。皆、貴方様をお待ち申し上げております。ささ、奥へ

 どうぞ。8歳から10歳までの男の子を全員部屋へ集めて

 おきました。今日はどの子になさいますか?」

 小太りの男は卑下た笑いを浮かべて言った。

 「そうせかすな。まずは子供達にキャンディーを配ってからだ。

 ほら、チョコレートもあるぞ。」

 ホーエンハイム男爵はチョコレートをばらまいた。孤児達は

 一つ一つ銀紙に包まれたチョコレートを押し合いへし合いで

 地面に這いつくばり、我先にと拾い集めた。男爵はせせら笑う

 ように奪い合う子供達を眺めた後、満足そうに孤児院の建物の

 中へと入って行った。

 「嫌な奴だな。」

 遠くからその光景を見ていたシエルはセバスチャンに言った。

 「そうですか?でも、みなさん、喜んでいますよ。」

 セバスチャンは嬉しそうにチョコレートやキャンディーを頬張る

 子供達を指差して言った。

 「孤児院の子供達にとってお菓子は月に一度しか食べる事が

 できない贅沢品なのでしょう。貧しい者への施しはいかにも

 慈善家らしいやり方ですね。坊ちゃん、貧しい子供達は男爵に

 もらわれていくのを待ち焦がれているのではないでしょうか。

 多分、もらわれた後の運命を知らされていないのだと思います。

 きっと、ここよりも良い暮らしが待っていると信じて、皆、男爵に

 媚へつらうのでしょう。本当の地獄が待っているとも知らずに・・・

 あ、もう、出てきましたよ。意外と早いですね。」

 セバスチャンとシエルは木陰に隠れた。男爵が8歳くらいの

 金髪の男の子を連れて孤児院から出て来た。小太りの男は

 こめつきバッタみたいにペコペコと何度もお辞儀をして男爵を

 見送った。手荷物一つ持たない子供を馬車に乗せて、男爵は

 去って行った。後に残された子供達は美味しそうに施しを食べ

 ている。太陽は燦燦と輝き子供達の未来を照らしていた。


 数日後

 「坊ちゃん、ホーエンハイム男爵の主催するパーティーの招待

 状を手に入れました。」

 「秘密結社『仔犬の会』?随分と悪趣味な名前だな。」

 「はい。いかにも・・・という名前ですね。ホーエンハイム男爵の

 先代が結成した秘密結社なのですが、数年前、先代が不幸な

 事故で亡くなり、二十歳で後を継がれたアルベルト・ホーエン

 ハイム様は慈善事業に力を入れる傍ら商才がおありで毎月

 第三金曜日に会員制パーティーを主催されるようになりました。

 パーティーでは仔犬のオークションが行われているとの事です。

 招待状を入手するのに苦労いたしましたが、これでオークション

 に私共も参加する事ができます。」

 「オークションか・・・人身売買は今英国で問題になっている。

 ましてや孤児院の子供をもらってきては変態どもに売りつける

 なんて真似は許されるはずがない。女王はホーエンハイム

 男爵が人身売買に関与している噂が本当か確かめるよう御

 命じあそばされたが、彼が犯人なのはもう明白だな。あとは

 潜入して証拠をつかんでやる。セバスチャン、支度をしろ。

 パーティー会場へ乗り込むぞ。」

 「イエス・マイ・ロード。」

 セバスチャンは恭しく跪いてドレスを差し出し、こう言った。

 「坊ちゃん、潜入捜査に欠かせないものが一つございます。

 駒鳥のように美しいドレスでございます。さあ、お着替えを・・・」

 「何?!そんなことは聞いてないぞ。」

 「何をおっしゃいます。会員制といえども英国貴族が集まる

 パーティーに変装もせず堂々とファントムハイヴの名で出席

 するおつもりなのですか?女王の番犬と名高い坊ちゃんが

 現れたらオークションは中止になってしまいます。ここはなんと

 してでもお着替えを・・・」

 セバスチャンは無理やりシエルを脱がし始めた。


 「うわっ!よせっ!」

 シエルはセバスチャンに服を脱がされてしまった。下着まで

 剥ぎ取られた後、コルセットを装着する為に生まれたままの姿で

 壁際に立たされ、後ろからセバスチャンに抱き寄せられた。

 「さあ、壁に手をついて。」

 耳元でそっと囁かれて、シエルは逆らえなかった。

 「セバス・・・セバスチャン・・・」

 シエルは苦悶の表情を浮かべてセバスチャンの名を呼んだ。

 「もっと力を抜いてください。」

 「これ以上・・・無理・・・あっ・・・」

 セバスチャンが意地悪くコルセットの紐を思いっきり引っ張った。

 「ふふふ・・・よく締まりますね。」
 
 「あ・・・苦しい。あ・・・もう・・・我慢できない・・・」

 「やはり坊ちゃんはこういうのが好きでしょう?」

 「ち、違う。」

 「違うものですか。身体はこんなに喜んでる。」

 セバスチャンが前に手をまわした。

 「あっ・・・」

 シエルの身体がビクッと震えた。

 「相変わらず感じやすいですね。」

 セバスチャンが容赦なく腰を打ちつける。

 「あ、で、出る。あああああ~」

 シエルは絶頂に達した。コルセットを着けながらのプレイに

 シエルはあっけなくイってしまった。悪魔の考えていることは

 よく分からない。全裸にコルセットを着けた格好でシエルは

 絨毯の上に寝そべっていた。セバスチャンは壁に放たれた

 白い液体を何食わぬ顔で拭いている。

 「おい、セバスチャン。何をしている。早く服を着せろ。」

 「これは失礼いたしました。」

 セバスチャンが胸に大きなリボンのついたドレスをシエルに

 着せて、真っ赤なハイヒールを履かせた。シエルが

 「もう、勝手なマネはするなよ。」

 と不機嫌そうに言うと、セバスチャンは跪き、シエルの赤い靴に

 忠誠の証のキスをした。太陽は空を赤く染めて沈んで行く。

 シエルはしばらく黙って赤い空を見つめていた。空が闇に

 覆われるのは時間の問題だった。闇が訪れた頃、シエルは

 セバスチャンと共にパーティー会場へと向かった。


 ホーエンハイム男爵の屋敷に着くとセバスチャンが鎖を手に

 してこう言った。

 「坊ちゃん、とてもお似合いですよ。まるで可憐な駒鳥の

 ようでございます。今夜は私がエスコートいたします。」

 「セバスチャン。これはいったい何のまねだ。」

 赤い首輪をつけられたシエルが不満そうに訪ねた。

 「ですから、エスコートですよ。」

 セバスチャンは万遍の笑みを浮かべてシエルの首輪の鎖を

 クイッと引っ張った。シエルは一瞬、首が締めつけられて

 むせそうになったが、セバスチャンはそんなことお構いなしに

 首輪を引っ張ってパーティー会場の中へと入って行った。

 シエルは驚いた。会場内には首輪をつけた女装した男の子が

 数人いたのだ。いずれも貴族らしき紳士にエスコートされて

 大人しく連れられて歩いていた。そして、さらに奥へと進むと、

 裸で四つん這いになってお尻を振っている男の子がいた。

 頭に犬耳をつけて尻尾型のディルドをお尻にさしている。

 飼い主はもっと尻尾を振るように命令していた。

 「仔犬の会とは名前そのものですね。秘密結社のメンバーは

 毎月オークションの日に自分のワンちゃんを見せに連れて来る

 のですよ。きらびやかなドレスを着せて可愛がっている紳士から

 裸で地面を這わせていたぶっている紳士まで千差万別ですね。

 しかも私の調べたところ全員あの孤児院出身のワンちゃん

 たちです。」

 「ヘドが出るな。」

 悪趣味なパーティーにシエルは吐き気がした。


 「レディース&ジェントルマン。我が秘密結社へようこそ。

 ただ今からオークションを開催いたします。」

 会場のステージにスポットライトが当たると、金髪の美しい

 顔立ちの青年が立っていた。アルベルト・ホーエンハイム

 男爵だった。男爵は檻に被せてあった布をとりはらった。

 檻の中には少年が裸で口と手首を縛られて泣いていた。

 先週、もらわれて行った孤児院の少年だった。

 「歳は8歳。金髪碧眼の少年です。我が秘密結社の売りに

 出す規定年齢に至るまで数年間孤児院で飼育しておりま

 した。今月誕生日が来たばかりです。まずは1000から。」

 「2000」「2500」「3000」・・・

 次々と値が上がっていく。

 「久しぶりの上物ですよ。どなたか他にいらっしゃい

 ませんか?」

 「5000」

 「5000が出ました。では5000で落札いたします。」

 少年はかなりの高額で初老の紳士に売られていった。

 「では、次に皆様お待ちかねの逃げ出した犬のお仕置き

 ショーを行います。」

 ステージに大きな水槽が運ばれて来た。水槽の中には

 10匹のピラニアが泳いでいた。そこへ縄でグルグル

 巻きにされ口を塞がれた全裸の少年が連れて来られ、

 天井から吊るし上げられた。

 「イッツ・ア・ショータイム。」

 ホーエンハイム男爵がパチンと指を鳴らすと、少年は

 ピラニアの泳ぐ水槽へと沈められた。少年は声なき

 悲鳴をあげた。獰猛なピラニアが一斉に少年の身体を

 ついばみ始める。少年の身体から流れる血が水槽の水を

 赤く染めていった。


 「セバスチャン。命令だ。早く少年を助けろ。」

 シエルが言った。

 「イエス・マイ・ロード。」

 セバスチャンはピラニアの水槽に向かってナイフを投げた。

 水槽のガラスが割れて水とピラニアがどっと溢れ出した。

 観客は悲鳴をあげて逃げ惑った。セバスチャンは少年の

 元へ素早く飛び寄りロープを切って少年を助け出した。

 「貴様、何者だ。」

 アルベルト・ホーエンハイムがセバスチャンに銃を向けた。

 「そんなことをしても無駄でございますよ。」

 セバスチャンは不敵な笑みを浮かべてアルベルトに

 近づいた。

 「来るな!それ以上近づくな!撃つぞ!!」

 アルベルトは銃の引き金を引いた。銃声が轟き、会場に

 いた人々は我先にと逃げ出した。だが、撃たれたはずの

 セバスチャンは無事だった。目に見えぬ速さで銃弾を

 キャッチしていたのだった。セバスチャンが指に挟んで

 受け止めた銃弾を見せると、アルベルトは恐れ慄いて

 「化け物!!」

 と叫んで、ステージ裏の扉から逃げ出した。

 「失礼な。悪魔で執事ですから。」

 セバスチャンは逃げ足の速さに呆れたように呟いた。

 「何をしている。早く捕まえないか。」

 シエルが言った。
 
 「御意。」

 セバスチャンはかしこまって返事をするとステージ裏の

 地下へと続く階段を下りて追いかけた。地下にはいくつか

 の牢屋が並んでいた。おそらく逃げ出した少年を閉じ込め

 ておく為の地下牢だろう。狭い通路の先には鉄製の扉が

 あった。中から鍵がかけられているが、セバスチャンは

 ものともせずに蹴破った。

 「うわっ!!化け物!!」

 アルベルトが再び恐れ慄いた。

 「随分と失礼な方ですね。おや、そちらの車椅子に座って

 いる化け物のようなお方は誰ですか?」

 セバスチャンは部屋の中央の車椅子に座っている全身

 包帯でグルグル巻きのだるまのような人を指さした。

 そのだるまには手足がなかった。正確にいうと腕と脚が

 切断されていた。


 「お父様のことかい?」

 アルベルト・ホーエンハイム男爵がニヤリと笑って言った。

 「お父様は不幸な事故に遭われて手足を失ったんだよ。」

 アルベルトは車椅子に座っている包帯グルグル巻きの

 父親の肩にそっと手を置いた。

 「車が崖から落ちて炎上してね。お父様は全身大やけど

 を負い、こんな醜い姿になったんだ。病院で両手両足を

 切断された後、お父様は生きることを悲観されて自殺なさ

 ろうとした。まだ傷が治っていないのに自ら退院を申し出

 て、この屋敷に戻られたのだ。お父様は手がなくて自分

 で飲めないものだから僕に毒を飲ませるよう命令した。

 もちろん、僕は毒なんか飲ませなかったよ。代わりに

 お父様の飼っていた犬を殺して全身包帯でグルグル巻き

 にして葬式を出してやった。お父様の死亡届は簡単に

 受理され、僕は男爵の爵位を継いだってわけさ。そして、

 お父様は僕だけのものになった。」

 アルベルトはゆっくりと手を滑らせて父親を後ろから

 抱きしめた。

 「でもね、お父様は犬を殺したことに腹を立てて僕を

 罵ったのさ。だから僕はお父様の舌を切り取った。喋れ

 なくなってお父様は少し大人しくなったけど、今度は

 僕を睨むのさ。それで僕はお父様の瞳を抉り取った。

 耳と鼻をそぎ落とした頃にはすっかり大人しくなって、

 今では僕だけを愛してくれるようになったのさ。」

 アルベルトは包帯で覆われた父親の顔にキスをした。

 だが、父親は身動き一つしなかった。

 「バカじゃないのか?」

 シエルが言った。

 「愛?そんなことをして本当に愛を得ることができたと

 思っているのか?父親の自由を奪って独占欲を満たした

 だけだろ?」

 シエルの言葉にアルベルトは顔色を変えた。

 「君は何も分かっていない。僕はお父様を愛している。

 お父様だって昔は僕を愛してくれていた。あの犬を飼う

 までは・・・『仔犬の会』なんてなければ、ずっと僕を愛し

 てくれていたはずさ。お父様が初めて僕を愛してくれた

 のは8歳の誕生日だった。僕が生まれてすぐにお母様は

 亡くなったから僕にはお父様しかいなかった。それなのに

 僕が16歳になると、お父様は孤児院から8歳の子を連れ

 てきた。お父様は子供しか愛せない人だった。犬を調教

 するのは楽しいとお父様は言いながら、僕と愛を交わす

 時と同じ行為を8歳の子にした。お父様は泣き叫ぶ犬を

 可愛がり、僕には手を出さなくなった。僕は僕を愛する

 ことをやめたお父様が許せなかった。」

 
 セバスチャンは肩をすくめてこう言った。

 「人間とはやっかいな生き物ですね。血が繋がっている

 というだけですぐ愛だとかに結びつけたがる。鞭で打ち、

 暴行し、躾と称して数々の変態プレイを強要する父親が果

 たして自分の息子を本当に愛せるものなのでしょうか?

 世の中には腹を痛めて生んだ我が子を殴り殺すような

 母親もいるというのに精子を提供しただけの父親が血が

 繋がっているだけの理由で我が子を愛しむことができると

 お思いですか?もし本当に自分の息子を愛せる人間なら

 性的虐待はしないでしょうね。貴方はずっと愛という言葉

 に騙されていたのですよ。」

 「う、嘘だ!嘘をつくな!」

 「嘘ではありません。貴方も本当は気付いていた事で

 しょう?だから父親の自由を奪った。自分を罵る舌を切り

 取り、自分を蔑む瞳を抉り取り、更には耳と鼻をも削ぎ落と

 した。貴方は自分を愛さない父親に復讐をしたのです。」

 「違う!復讐なんかじゃない!僕はお父様を愛している。

 愛しているんだ・・・」

 アルベルトは泣き崩れた。

 「もう、いいだろう。」

 シエルはセバスチャンに言った。

 「よろしいので?捕まえないのですか?」

 「ああ。奴はもう逃げないだろうからな。行くぞ。」

 「随分と甘いですね。」

 シエルが部屋を出る時、銃声が2発鳴り響いた。

 アルベルトが父親を撃ち、自らの頭も撃ちぬいて自殺した

 のだった。シエルが振り返ると、アルベルトは父親の膝に

 顔を埋めて死んでいた。アルベルトの血が父親の包帯を

 赤く染めていた。父親の心臓から流れ出る血とアルベルト

 の血が混じりあい、二人は混じりあった血の海の中で

 死んでいた。地の底で二人は結ばれるだろうか。そんな

 想いが一瞬シエルの脳裏を横切った。

 「坊ちゃんはこうなることを予期されていたのですか?」

 「あの父親を連れて逃げる事はできないからな。本当に

 愛しているのなら父親を残して逃げたりはしないだろう。」

 「人間とは不思議な生き物ですね。」

 愛を渇望している人間ほど愛する人に残酷になる。

 憎しみは愛に比例するからだ。アルベルトは本当に父親

 を愛していたのだ。愛されていたかは定かではないが・・・

 血と肉体と親子を結ぶ絆に翻弄されてアルベルトは

 生きていた。死に逝くまで父親だけを見つめて。

                            (完)
 

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黒執事「月の魔女」

黒執事部屋



 その古城はいくつかの森を越えた湖のほとりにひっそりと

 建っていた。月が満ちて森を明るく照らす夜、湖の水面に

 浮かぶ満月は血塗られた。

 「美しい。」

 古城の主は窓からその光景を眺めてこう言った。

 「我が妻は自ら贄となり、湖に住む魔女となる。湖の底に

 沈んだ肉体は朽ち果てようともその魂は永遠に生き続け

 るであろう。」

 「お父様、何故、お母様を殺したのですか?」

 「禁忌を犯したからだ。」

 古城の主は鎖で繋がれている我が子の元へゆっくりと近づき

 そっと足に触れた。足枷がきついのか血が滲んでいる。

 「私はおまえを失いたくないのだよ。罪を犯した者はその罪

 を償わなければならない。分かるね。さあ手を出しなさい。」

 恐る恐る差し出した白く細い手首に手枷をはめて、古城の

 主はこう言った。

 「我が愛しき天使よ。きっと『月の魔女』がおまえを守って

 くれる。だから今は父を信じて大人しくしていなさい。」

 そして、まだ幼い我が子を抱きしめ、その唇に口づけした。

 黄金色の髪を愛撫しながら別れを惜しむように唇を重ね

 合わせた。一時が永遠になるかも知れない。そんな思い

 が募った。長いキスの後、彼は拘束具を手にして足枷を

 はめ直した。

 「いや、お父様、やめて!」

 泣き叫ぶ息子の口を拘束具で塞ぎ、無理やり魔法陣が

 書かれた棺に閉じ込めた。彼は部屋の床に書かれた

 魔法陣を消し、棺を抱えて部屋を出た。

 月は美しく輝き、湖に浮かぶ死体を照らしていた。

 満月の夜にふさわしい生贄だった。


 森をぬけると美しい湖が広がっていた。

 「綺麗ですね。」

 セバスチャンは何時間も馬車に揺られてうんざりしていた

 シエルに話しかけた。シエルが馬車の窓から外を眺めると

 湖は太陽の光が反射してキラキラと宝石のように輝いていた。

 そして、中世を想わせる小さな城が姿を現した。

 「あの古城です。ようやく着きましたね。」

 セバスチャンがにっこりと微笑んだ。スチュアート家の別荘

 は緑豊かな森に囲まれた湖の隣にひっそりと建っている古城

 だった。会社の合併話をもちかけられ、契約はぜひ接待も

 兼ねてスチュアート男爵自慢の別荘でとの誘いだった。

 ロンドンですれば良いものを何故とも思ったが、まるで

 おとぎ話に出てくるような美しい光景を見ていると7時間も

 馬車に揺られて来たことすら忘れてしまいそうだった。

 古城の外門をくぐると、丸く切りそろえられた低木が連なって

 城まで続いている。季節はずれのバラ園や青々とした芝生

 が広がる良く手入れの行き届いた庭だった。古城の前には

 赤いカーペットが敷かれていて、執事が一人立っていた。

 「ようこそ。おいでくださいました。」

 馬車を降りるとすぐに執事が出迎えの挨拶をした。

 「長旅でお疲れになりましたでしょう。ファントムハイヴ伯爵

 様。主人が客間にてお待ち申し上げております。」

 黒髪に眼鏡をかけた気の弱そうな執事だった。

 城の中は意外と装飾品も少なくガランとしていた。床一面

 赤い絨毯で窓には深緑色のカーテンが全室つけられていた。

 天井は高くシャンデリアはゴシック調だった。アンティーク

 で統一された家具も趣味は悪くないのだが、部屋が広すぎて

 殺風景に感じられた。エントラスルーム、リビングルーム、

 長い廊下を通って、客間にたどり着いた。客間も赤い絨毯の

 殺風景な部屋だった。

 「ようこそ。ファントムハイヴ伯爵。遠路はるばる良く来て

 くださいました。」

 「お招きいただきありがとうございます。スチュアート男爵。」

 「お噂はかねがね聞いておりましたが、実に可愛らしい。」

 スチュアート男爵はニコニコと笑顔を浮かべており、悪気は

 ない様子だったが、シエルは舐めるような視線を感じて不快

 に思った。こいつも変態なのか?来るんじゃなかった。

 後悔が顔に表れたのか、セバスチャンが気遣うように

 「坊ちゃんは長旅で疲れております。夕食まで休ませて

 いただいてもよろしいですか?」

 と申し出た。スチュアート男爵は

 「これは申し訳ない。さぞかしお疲れでしょう。今、執事に

 部屋を案内させます。」

 と言った。

 「ノルマン。お客様を部屋に案内しなさい。」

 コホンと咳払いするようにして執事に言いつけると、彼はまた

 ニコニコと笑顔を作った。


 案内された部屋は眺めの良い2階の部屋だった。窓から湖

 が一望できた。シエルがバルコニーへ出て景色を眺めると、

 湖の向うには山々が連なり、青い空にはぼんやりとした

 白い月が浮かんでいた。今日は満月だった。森から小鳥の

 声が聞こえる静かな湖だった。シエルはふと、湖の向こう側

 から歩いてくる白い服の女性に気付いた。遠くてよく分から

 ないが、その女性はどんどん歩いてこちらに近づいてくる。

 まるで湖の中へと入って行く勢いだった。しかし、女性の

 背丈はいくら歩いても同じで、白い服は濡れることなく湖の

 水面から上にあった。シエルが目を凝らして見ると、白い服

 の女性はシエルに気付き、にっこりと笑いかけた。

 「あの女性は誰だ?」

 シエルが指差してノルマンに聞いた。だが、ノルマンは

 「何のことです?私には何も見えませんが・・・」

 と言った。

 「見えない?」

 シエルがもう一度、湖を見ると女性の姿は消えていた。

 その時、背後からギギーッと重い扉を開ける音がした。

 シエルが振り返って見ると、ドアノブに青白い手が・・・

 「エドワード坊ちゃん。立ち聞きはいけませんよ。」

 ノルマンが言った。

 「ごめんなさい。」

 部屋の中へ入って来たのは10歳くらいの男の子だった。

 金髪碧眼透き通るような白い肌の美少年は頬をほんの少し

 上気させ、もじもじとノルマンの後ろに隠れた。

 「坊ちゃん、お客様にちゃんとご挨拶なさいませ。」

 執事に言われて、エドワードはひょっこり顔を出し

 「エドワード・スチュアートです。ごきげんよう。」

 そう言うとまた執事の後ろに隠れてしまった。

 「申し訳ございません。坊ちゃんは人見知りが激しくて・・・

 しかも、お体が弱くて学校にも行ってないものですから

 お友達がおりません。歳の近いファントムハイヴ伯爵様

 に仲良くして欲しいのでしょう。」

 「そうですか。うちの坊ちゃんもお友達がいませんので、

 ぜひ仲良くしてください。」

 セバスチャンがすかさず万遍の笑みを浮かべて答えた。

 子守なんかできるか!そう言いたいのをシエルは我慢した。

 セバスチャンの奴、完全に面白がっているなと思った。

 「エドワード坊ちゃんは喘息の持病をお持ちなので、3年前、

 ロンドンからこの古城へ引っ越して来ました。森に囲まれて

 空気がきれいな所で静養すれば、きっと良くなると奥様は

 考えたのですが、まさかあんなことになるなんて・・・」

 ノルマンは暗い顔をしてエドワードを見つめた。

 「あんなことってなんですか?」

 「奥様は1年前、湖で事故に遭われて水死なさったのです。」


 「お食事のご用意ができました。」

 メイドが部屋に知らせに来た。

 「もう5時ですか。時が経つのは早いですね。今夜はシェフ

 自慢の料理を取り揃えております。晩餐をお楽しみください。

 ささ、どうぞ。ご案内いたします。」

 ノルマンはシエル達を1階へ連れて行き、長いダイニング

 テーブルのある広い部屋に案内した。20人は座れるほどの

 ダイニングテーブルには4人分の豪華な食事が用意されて

 いた。薄暗い部屋に灯された蝋燭の明かりが綺麗だった。

 「キジはお好きですか?私が昨日、森で仕留めたやつです。」

 スチュアート男爵がニコニコとキジの丸焼きを指差して言った。

 「他にもフォアグラや子羊などこの古城で飼っている新鮮な

 食材で作らせました。」

 シエルは席に着いたとたん、食欲が失せた。

 「子羊ってメイじゃないよね?」

 エドワードが心配そうに聞いた。

 「羊の名前なんか覚えてないが、おまえが可愛がっている

 羊ではないと思うよ。」

 「メイでございます。」

 ノルマンが言った。

 「旦那様が一番太っている美味しそうな子羊をと申されま

 したので、私がシェフに伝えました。シェフは旦那様の言い

 つけ通り料理したまででございます。」

 エドワードの顔が見る見る蒼ざめ、エドワードはゲーっと

 吐いた。汚物がテーブルの上に広がった。

 「うわっ!また吐きよった。ノルマン、早く片付けろ!」

 メイドが数人慌しく寄ってきて吐いたものを掃除し始めた。

 「坊ちゃん、大丈夫ですか?」

 ノルマンはエドワードの汚れた服や顔をハンカチで拭いた。

 「もう、いい。エドワードを部屋に連れて行け。」

 スチュアートが怒ったようにノルマンに言った。

 「晩餐が台無しですね。」

 その惨状を見ていたセバスチャンは冷ややかに言った。


 エドワードと一人分の食事が速やかに片付けられた後、

 晩餐は何事もなかったかのように続けられたが、ダイニング

 テーブルにはわずかなシミが残っていた。シエルは子羊の

 肉に口をつけなかった。キジの丸焼きは何度も勧められた

 ので、仕方なく少しだけ食べたものの美味しく感じなかった。

 シェフの腕が悪いとかの問題ではなくて、食事を取り替えても

 おかしくないはずなのに、平然と息子が可愛がっていた羊の

 肉を食べる父親を見て気分が悪くなったのだった。デザート

 の後の紅茶を飲み終わるとスチュアート男爵はこう言った。
 
 「お見苦しいところをお見せしたお詫びといっては何ですが、

 我が家の家宝をプレゼントします。私は古美術や骨董を

 集めるのが趣味でして、今からコレクションルームにご案内

 しましょう。」

 「それは楽しみです。」

 黙り込んでいるシエルに代わってセバスチャンが受け答えした。
 
 食事の後、1階の奥にあるコレクションルームと呼ばれて

 いる部屋へ案内された。赤い絨毯の廊下を歩いている時、

 ひぃ~、ひぃえぇ~と気味の悪い悲鳴がかすかに聞こえた。

 何の音だろうとシエルが立ち止まると、スチュアート男爵は

 こう言った。

 「風の音です。地下に湖に通じる抜け道があって、そこの

 通気口から聞こえてくるのです。」

 「随分と気味の悪い風の音ですね。」

 セバスチャンが眉を吊り上げて言った。だが、男爵は黙って

 部屋の扉を開けた。コレクションルームとは名ばかりの

 物置部屋には雑然と近世の鎧や武器が置かれていた。

 そして、壁には数々の絵画が飾られていた。

 「歴代の城の主とその家族の肖像画です。みな16世紀

 から18世紀にかけて描かれた絵です。」

 スチュアート男爵は自慢げに言った。無名の画家が描いた

 にしても近世に描かれたものなら値打ちがあるということか。

 それにしても、よくもまあこんなにたくさん集めたものだ。

 シエルはあたりを見回した。すると、部屋の奥にもう一つ扉

 があって、その横の壁にエドワードの肖像画が飾ってあった。

 エドワードは何故か古めかしい貴族の格好をしていた。

 「ジェームス2世の肖像画です。」

 スチュアート男爵は言った。

 「息子と同じ顔で驚かれたでしょう。100年前、この城に

 住んでいた領主のご子息です。3年前、ここに引っ越して

 来た時には私も驚きました。」


 「私の祖父は代々この城を所有するスチュアート家の分家

 の身でした。本家の血筋が絶えたので、この300年前に

 建てられた古城を受け継いだのですが、住むには至りません

 でした。私はロンドン育ちで田舎に住むのは初めてですが、

 空気の良い所で育てたら息子の喘息が治るのではないかと

 妻が言うので、3年前に引っ越してきました。だが、それは

 間違いでした。会社を使用人に任せて私は狩りなどを楽しみ、

 田舎暮らしを満喫しましたが、会社は傾き合併へと追い込ま

 れました。私はファントムハイヴ社との合併がうまくいったら

 会社経営から退くつもりです。私はもう45歳です。エドワード

 は遅くに出来た子で、息子のことは心配ですが、ここには

 私の大好きな骨董品があります。森と湖に囲まれて余生を

 過ごしたいと思っています。ですから、ぜひ我が社の提示

 した条件で契約をしてもらいたいのです。あ、そうそう、

 先ほどの失態のお詫びに我が家の家宝をプレゼントする

 お約束でしたな。」

 スチュアート男爵はそう言うと、大きな木箱から小さな宝石

 箱を取り出して、その中の指輪をシエルに手渡した。

 「スチュアート家に代々伝わる家宝『月の魔女』です。どうか

 お受け取りください。」

 黄金色に輝く指輪は美しかった。

 「1カラットのイエローダイヤです。リングも純金でできていま

 す。ここまで球形に近くカットされたダイヤは珍しいでしょう?

 満月をモチーフに造られた指輪です。満月の夜には不思議な

 力がこの指輪に宿ると言われています。また、持ち主に栄光

 か破滅のどちらかを与えるとも言われています。私の場合

 は後者でしたが、あなたには栄光が訪れることを祈ります。」

 スチュアート男爵はシエルの右手の中指に指輪をはめた。

 そして、ニコッと微笑むと次の部屋の扉を開けた。

 「素晴らしいコレクションですね。」

 セバスチャンが感嘆した。
 
 「これは一体・・・」

 シエルは驚いて目を丸くした。

 「魔女狩りの拷問道具ですよ。」

 スチュアート男爵は不敵な笑みを浮かべて言った。


 部屋の中央に鉄の処女が3体置かれていた。一体は聖母

 マリアを模した顔の木製の人形型だった。もう一体は同じく

 木製だが、高さ2メートルの樽のような形をしていた。

 そして最後の一体は扉が開いていた。扉の内側には鉄製

 の太くて長い針がびっしりとついており、中からも無数の

 針が突き出ている。これに人を入れて扉を閉めるのかと

 思ったらゾッとするとシエルは思った。鉄の処女の針には

 血がこびりついていた。

 「どうです?素晴らしいでしょう?」

 スチュアート男爵はシエルの顔色が変わったのを見て、

 ニヤッと笑って言った。

 「他にも多数の拷問道具がこの部屋にはあります。審問椅子、

 さらし台、鉄製の吊り籠、何でもあります。特にこの魔女の

 椅子はレア物ですが、どのようにして使うかご存知ですか?

 この椅子は尻を乗せる部分が周囲の枠のみで真ん中が

 何も無いでしょう。下から蝋燭の火であぶるんです。尻が

 こげ、排泄困難になるまであぶり続けたと言われています。」

 シエルは話を聞いていて気分が悪くなった。スチュアート

 男爵は魔女狩りマニアの変態だったのだ。シエルは指輪を

 返して家に帰りたくなった。だが、スチュアート男爵はそんな

 ことおかまいなしに喋り続けた。

 「17世紀になってもこの城の主は魔女狩りをやめません

 でした。むしろそれまで教会に委ねていた魔女狩りを領主

 自ら行うようになり、領内の村から美しい若者を捕らえては

 地下牢に閉じ込めて、拷問を繰り返していたのです。そして、

 18世紀に怒った領民がこの城に押し寄せてスチュアート家

 は滅亡しました。滅亡したといっても、絶対王政の時代です

 から、一揆は1日で治まり、本家の代わりに分家の祖父が

 家督を継ぎました。でも、祖父は血塗られた歴史に恐怖し、

 この城には一度も住まなかったのです。」


 「キャア~~!!」

 絹を引き裂くような女性の悲鳴が聞こえた。先程とは違い、

 明らかに人の叫ぶ声だった。シエルたちは悲鳴の聞こえる

 2階の部屋に慌てて駆けつけた。悲鳴の主はメイドだった。

 メイドは床にへたりこんで、ワナワナと恐怖に震えていた。

 部屋の中には首の無い猫の死体が置いてあった。そして、

 壁には猫の血で魔法陣が描かれていた。

 「一体誰がこんなことを・・・」

 「きっと奥様に違いないわ!月の魔女の呪いだわ!」

 メイドは泣き叫んでそう言った。

 「バカなことを言うものじゃない。妻は1年前に死んだんだ。

 また幽霊の仕業だというのか?バカバカしい。きっとこれは

 誰かの悪戯だ。お前は泣いている暇があるならさっさとこの

 部屋を片付けろ!」

 スチュアート男爵は怒ったようにメイドを怒鳴りつけると

 立ち去って行った。

 「大丈夫ですか?何か事情がおありのようですね。」

 セバスチャンがメイドに聞いた。

 「ええ。奥様がお亡くなりになってから気味の悪い事ばかり

 起こるんです。まず、最初に魔法陣を見たのは奥様が亡く

 なられた翌朝でした。湖の岸辺に大きな魔法陣が木の棒

 か何かで地面に書かれていました。それからというもの

 満月の日には頭のないネズミの死骸や鳥の死骸が古城の

 どこかに捨ててあるんです。ダイニングテーブルに血文字で

 魔法陣が書かれていたこともありました。奥様が満月の夜に

 湖で入水自殺なさったから、こんなことに・・・」

 「自殺?事故ではなかったのですか?」

 「はい。旦那様は事故だと言い張っていますが、本当は自殺

 なんです。あれは1年前の月の明るい夜でした。私は奥様

 が白い寝間着のまま一人で湖へ歩いて行くのを見ました。

 湖の中へどんどん歩いて入って行って、そのまま帰らぬ

 人に・・・私は窓から見ていて、慌てて旦那様に知らせたの

 ですが、皆が駆けつけた時にはもう手遅れでした。」

 「男爵夫人は何故自殺したのですか?」

 「それはきっとノルマンさんと旦那様が・・・」

 「私がなんだって?」
 
 部屋の外にノルマンが立っていた。


 ノルマンは手に大きなバケツとゴミ袋を持っていた。

 「無駄話はやめて早く片付けなさい。」

 ノルマンはそう言うと、部屋に入って、猫の死骸をゴミ袋に

 入れてメイドに手渡し、捨ててくるように命じた。メイドは

 黙って受け取り、軽くお辞儀をすると部屋を出て行った。

 「さっきの話はでたらめです。」

 ノルマンはメイドがいなくなったのを見計らってから言った。

 「奥様は夜の散歩の途中、足を滑らせて湖に落ちたのです。

 彼女が見た時にはもう溺れていました。幽霊話も想像に

 過ぎません。これは旦那様の言う通り悪質な悪戯です。」

 「悪戯なら何故警察に届けない?」

 シエルがノルマンに聞いた。

 「それは・・・」

 ノルマンは何か言いかけて黙り込んでしまった。

 「失礼ですが、坊ちゃんの言う通り警察に届けたほうが良い

 と思います。警察沙汰にできない事情があれば別ですが・・・」

 セバスチャンに見透かされたと思ったのかノルマンの顔色

 が変わった。

 「では、質問を変えましょう。あなたは大変お若いように見え

 ますが、何年くらい執事をなさっていらっしゃいますか?」

 「3年です。16歳の時に父の経営する会社が倒産しまして、

 縁あって旦那様が父の借金を肩代わりしてくださいました。

 それ以来、こちらで執事兼家庭教師を勤めさせていただい

 ております。」

 「ほう、坊ちゃんの教育係も兼任なさっておいでですか?

 私と同じですね。」

 セバスチャンがにっこりと笑った。だが、ノルマンは暗い顔を

 してこう言った。

 「部屋を掃除いたしますから、出て行ってもらえませんか?」

 ノルマンはバケツの雑巾で壁を拭きだした。その失礼な

 態度にシエルは何か言おうとしたが、セバスチャンはシエル

 を制して、大人しく部屋を出た。二人が部屋を出た後も

 ノルマンは一人でゴシゴシと壁の血を落としていた。

 一度描かれた魔法陣は消したくても完全には消えない。

 血塗られた歴史を象徴する魔法陣は濡れて血の涙を流して

 いた。やがてメイドが戻ってきて、ノルマンと代わった。

 ノルマンは静かに部屋を出て、スチュアート男爵の元へと

 向かった。


 その夜、シエルは真夜中近くになっても寝付けなかった。

 あの魔法陣は幽霊の仕業ではなく、誰か人の手によって

 描かれたのだろう。ノルマンは何か隠しているとシエルは

 思った。ノルマンに聞けば何か手がかりがつかめるかもしれ

 ない。シエルは白い寝間着のまま部屋を出た。一人で古城

 の廊下を歩いているとエドワードの部屋から物音がした。

 部屋の扉の隙間からかすかに明かりが洩れている。まだ

 起きていたのか。エドワードも今夜は寝付けないのかなと

 思い、シエルはエドワードの部屋のドアを開けた。部屋の中

 は薄暗かった。入口の横の壁の蝋燭が扉を灯していただけ

 だった。エドワードは部屋の奥のベッドに横になっていた。

 「なんだ、寝ていたのか。」

 と、つぶやいてシエルが帰ろうとした時、

 「眠れないのかい?僕もだよ。」

 とエドワードは言って、体を起こした。

 「体の具合、大丈夫か?」

 「気分はいいよ。君と少し話がしたいけど、いいかな?」

 「いいよ。」

 シエルはベッドの傍らに腰掛けた。

 「月の魔女は我が家の家宝なんだ。返してくれるかな?」

 「えっ?でも・・・」

 「本来は僕が受け継ぐはずだったんだ。返してくれ。」

 いつになく真剣な眼差しでエドワードに言われてシエルは

 戸惑ったが、言われるままに指輪を返した。

 「ありがとう。この指輪には魔力が秘められているんだ。

 栄光と破滅のどちらかをもたらすというのは作り話だよ。

 月の魔女は満月の夜に願いを一つ叶えてくれる不思議な

 指輪なんだ。僕はお母様に会いたくて、何度も満月の夜に

 願いを叶えてもらったよ。でも、本当の望みはまだ叶えて

 もらえていない。贄が小さいとダメなんだ。もっと大きな贄を

 捧げないと月の魔女は僕の願いを叶えてくれない。今日

 この日をどんなに待ち望んでいたことか。君に会えて良かっ

 た。御礼に良いものをあげるよ。」

 エドワードは枕の下に隠していた猫の首を取り出した。

 エドワードは血の滴る猫の首にそっとキスをして、悪魔にも

 似た微笑を浮かべながら、シエルに差し出した。


 シエルは驚きのあまり声も出なかった。とっさにその場から

 逃げようとしたが、エドワードに手首をしっかりと捕まえられ

 てしまった。

 「待って。今のは冗談だよ。」

 「手を放せ!」

 「君に見せたいものがあるんだ。僕の部屋の隠し扉から湖に

 通じる地下道への階段がある。一緒に行こう。面白いものを

 見せてあげるよ。」

 「い、いやだ。」

 「遠慮するなよ。君はノルマンに会いたいんだろ?彼は今、

 地下牢にいるよ。」

 「えっ?」

 何故と聞く暇もなくシエルはエドワードに腕を引っ張られて

 地下道へと続く階段を下りていた。階段を下りた先に小さな

 レンガ一個分の窓があった。そこから中を覗くとノルマンが

 裸で縛られていた。ノルマンは地下牢の天井から後ろ手に

 縛られて吊るされていた。シエルが思わず息を呑むと、

 エドワードはシーっと人差し指を唇にあてた。

 「黙って見ててごらん。面白いから。」

 エドワードはクスクスと声を殺して笑っている。シエルは

 異常な光景に眩暈を感じたが、壁の小窓から中をもう一度

 よく見てみた。ノルマンは蝋燭を体中に垂らされていた。

 そして、その蝋燭を垂らしているのはスチュアート男爵

 だった。彼は欲望に捕らわれた目をして、赤い蝋燭の蝋を

 ノルマンの胸や腹に垂らしていた。熱くそりかえった下腹部

 に蝋を垂らすとノルマンは悲鳴をあげた。ノルマンの尻には

 太い蝋燭がすでに埋め込まれており、体を揺らす度に炎が

 揺れていた。尻から滴り落ちる蝋が太ももを伝い赤く染めて

 いた。背中にはムチの痕がノルマンの白い肌を彩っていた。

 「気持ち良いかい?舌を出しなさい。」

 スチュアート男爵の命令にノルマンは従順だった。おずおず

 と舌を出すと、スチュアート男爵は蝋燭の蝋を垂らした。ポタ

 ポタと垂らされる蝋を舌で受けとめるノルマンは苦しそうだっ

 た。スチュアート男爵は更に蝋燭を顔に近づけて、炎が顔を

 かすめそうになる度に恐怖に怯えるノルマンにこう言った。

 「蝋燭の炎で舌をあぶってやろうか?何秒耐えられるかな?」

 「お許しください。そればかりはご勘弁を・・・」

 ノルマンは恐怖のあまり失禁してしまった。

 「仕方のない奴だな。」

 スチュアート男爵はノルマンのロープをほどき床に転がした。

 そして木桶に汲んであった水をザバーッとノルマンにかけた。

 「旦那様、どうかお許しください。」

 震えるノルマンの足を開かせて、尻にささっている蝋燭を抜き

 取ると、スチュアート男爵はノルマンに自らを挿入した。

 「ああああ~」

 ノルマンは歓喜の声をあげた。先ほどまでと違ってノルマンは

 恍惚とした表情を浮かべて自ら腰を動かしている。支配される

 喜びを感じているかのようだった。


 「あいつら、いつもここであんなことをして遊んでいるんだ。」

 エドワードが地下道の小窓から覗き見ているシエルに言った。

 「湖で君に会わせたい人がいるんだ。行こう。」

 エドワードはシエルの手首を掴んで、グイグイと引っ張った。

 地下道を走るとすぐに湖に出た。真夜中の湖は静かだった。

 満月が美しく夜空に浮かんでいた。エドワードはシエルから

 もらった指輪を満月に掲げて、こう言った。

 「月の魔女よ。我が願いを叶えたまえ。」

 すると湖がさざめき湖の中から白いドレスの女が姿を現した。

 「お母様!」

 エドワードは湖から現れた女性の傍へ駆け寄った。

 「我が愛しき天使よ。そこにいる人間は何者です?」

 「贄でございます。今宵の為に連れて参りました。」

 エドワードはシエルを指差した。だが、彼女は

 「その者は汚れておる。贄にはならない。不浄の者は贄に

 はできないのです。」

 と言った。

 「君が不浄だったなんて残念だよ。」

 エドワードはがっかりしたようにシエルに言った。シエルは

 言いがかりのような侮辱に唖然とした。

 「代わりの贄が必要です。この体を湖に捧げましょう。」

 「では、そうしましょう。」

 母親はにっこりと微笑んだ。エドワードが湖に入ろうとした時

 「お待ちなさい!」

 セバスチャンが突然現れて、エドワードの腕を掴んで引き

 止めた。

 「人を殺した者は天国へは行けませんよ。」

 「手を放しなさい。悪魔め。」

 「ほう、私の正体が見えるんですか?でも、自縛霊にそんな

 言い方されたくありませんね。」

 「お母様は自縛霊なんかじゃない。この湖の守り神なんだよ。」

 「守り神?笑わせないでください。誰が決めたんですか?」

 「月の魔女にお父様がお願いしたんだ。」

 「お願いね。あなたはその指輪が何でも願いを叶えてくれる

 と本気で思っているのですか?答えはノーです。月の魔女

 は単なる呪術の道具に過ぎません。あなたも本当はうすうす

 気付いていたはずです。ジェームス様。」


 「何故、知っている?」

 「悪魔で執事ですから。血塗られた古城の歴史を調べて参り

 ました。そして、棺のありかも・・・」

 「何だって?僕の棺が何処に隠されているか知っているのか?」

 「やはり、ご自分の帰るべき体を見失っていたのですね。」

 セバスチャンはため息をついた。ジェームスの母親は静かに

 語り出した。

 「あれは1年前の満月の夜でした。湖に月の魔女の指輪を

 した女性が身を投げたのです。私は月の魔女の力を借りて

 ジェームスの魂を呼び起こしました。湖の岸辺に魔法陣を

 書いたのですが、翌朝、城の者に見つかり、消されてしまい

 ました。それで、ジェームスは眠っていた場所が分からなく

 なってしまったのです。ジェームスが母親を亡くして悲しみ

 に暮れているエドワードにとり憑くのは容易でしたが、霊力

 が弱いため完全に体を乗っ取れるのは満月の夜だけでした。

 しかも、肝心の指輪は何処かへ隠されてしまい、月の魔女

 の力を借りる事もできず、ただ、毎月、魔法陣を描き、湖

 から出る事のできない私と二人で祈りを奉げていました。

 いつの日か天国へ行ける日が来るのをずっと祈っていたの

 です。あの時、私が禁忌を犯さなければこのような目に遭わ

 されなかったであろうに・・・。」

 「お母様、100年前に僕が死んだのがいけなかったのです。

 病弱な僕をお許しください。」

 「ジェームス。全ては母が悪いのです。浅はかな母を許して

 おくれ。」

 二人は泣き出した。セバスチャンは二人に言った。

 「城へ戻りましょう。」

 「あなた方だけでお行きなさい。私は湖から出られないのです。」

 「死体が湖の底に沈んでいるからですか?100年前、貴女は

 月の魔女の指輪を用いて禁断の黒魔術を行った咎で、この

 湖で処刑された。満月の夜、指輪と魔法陣と生贄と復活の

 呪文さえあれば、死体を一時的に蘇らせることができます。

 ですが、その死体は魔法陣の中でしか生きられない。一歩

 でも外に出ると灰になってしまいます。貴女は100年前、

 城の床に大きな魔法陣を描いて病死した我が子を生き返ら

 せた。最初は一目会ったら魔法陣を消して灰にするつもり

 だった。でも、愛する我が子をどうしても灰にできなかった。

 何日も魔法陣から出ないように鎖で繋いで生かせておいた。

 領民は貴女を魔女と思い込み、暴動を起こした。城の主は

 禁忌を犯した罪で貴女を処刑し、貴女の死体を湖に投げ込み

 贄として捧げた。そして、貴女の血で魔法陣を描いた棺に

 息子を閉じ込め、暴徒から我が子を守ったのです。城の主は

 棺を隠した後、城に押し寄せた領民たちによって殺されて

 しまいました。領民たちは何の罪もない領主を殺すことで

 17世紀に魔女狩りにあった復讐を遂げたのです。」


 「もう一度言います。貴女は自縛霊なのです。死んだ場所

 から離れられないと思い込んでいるだけで、貴女は何処に

 でも行けます。そもそも呪術の力で人間は魔女や守り神に

 はなれないんです。さあ、私の言葉を信じて、湖から一歩

 踏み出してみてください。」

 セバスチャンは手を差し伸べた。彼女は決意したように

 セバスチャンの手を取り、歩みだした。湖から岸辺へと容易

 に移動できた。セバスチャンはにっこり微笑んでこう言った。

 「ジェームス様の棺にご案内いたします。」

 セバスチャンが案内したのは魔女狩りの拷問道具が置いて

 ある部屋だった。3体の鉄の処女のうち聖母マリアを模した

 顔のふたを開けた。その人形型の鉄の処女は頭部に長い針

 がびっしりとついているが、胴体部分には針がなかった。

 子供用の小さな棺は胴体部分にすっぽりと収まっていた。

 セバスチャンは鉄の処女の中から棺を取り出すとこう言った。

 「月の魔女の指輪をこの棺の鍵穴に差し込んでください。」

 ジェームスが指輪を棺に差し込み、180度回すとカチッと

 音がして棺が開いた。棺の中には手枷足枷をした少年が

 100年前の姿のまま眠っていた。100年経っていたら白骨化

 しているはずなのに、少年は生きたまま眠っているかのよう

 だった。少年は御伽噺のお姫様のように雪のような白い肌

 と薔薇の花びらのような赤い唇をしていた。

 「やっと見つけた。僕の体。」

 ジェームスはそうつぶやくように言うと幽体離脱をするように

 エドワードの体から離れて自分の体へと入っていった。すると

 棺の中のジェームスが目を開けた。

 「お母様、僕は100年もの長い間、この棺に閉じ込められて

 いても、お父様を恨んだことなど一度もありません。全ては

 僕を助ける為にしたことですから。お母様もそれは同じはず、

 一緒にお父様の所へ参りましょう。」

 「おお、ジェームス。」

 二人は抱き合った。ジェームスの母が体を抱き上げ、棺から

 出すと、ジェームスの体はサラサラと舞い散る灰になった。

 半透明の幽体となったジェームスは母に抱きかかえられた

 まま幼子のように笑った。やがて、美しい光が二人を包み

 天国へと導いていった。

 「ありがとう。シエル。」

 「ありがとう。望みを叶えてくれて。礼を言います。」

 二人は口々に御礼を言って光の中へ消えて行った。

 「坊ちゃん、この指輪はどうなさいますか?」

 セバスチャンが棺の鍵穴から月の魔女を取り出して

 聞いてきた。

 「湖に返そう。」

 シエルは指輪を受け取ると、窓を開けて、湖に投げ捨てた。

 月の魔女は湖に沈んでいった。

 「棺も後で湖に沈めてくれ。」

 シエルは母親の血で描かれた魔法陣の棺を指差して言った。

 「イエス・マイ・ロード。では、エドワード様をベッドへお連れ

 してから、そう致します。」

 セバスチャンは気を失って倒れているエドワードを抱き

 かかえて微笑んだ。


 翌朝、シエルたちは古城の住人たちに別れを告げて旅立っ

 た。エドワードは相変わらず、モジモジとノルマンの後ろに

 隠れていたが、馬車が出発する前に

 「さようなら。」

 と、笑顔で手を振った。その天使のような穢れのない笑顔

 は無垢そのもので、憑依されていた時の記憶もなければ、

 兄のように慕っているノルマンと父親の関係も知らないのだ

 とシエルは思った。スチュアート男爵が魔法陣を悪戯だと

 決めつけているにもかかわらず、警察に届けなかったのは

 我が子が描いている姿を見たのかもしれない。おそらく、

 ノルマンも母親が死んだショックでエドワードがおかしくなっ

 たと思っていたのだろう。事実は誰も知らないままに次の

 満月の夜を迎えるだろう。皆の安堵する顔が目に浮かぶ。

 シエルは馬車の中からエドワードとジェームスに心の中で

 さよならを言った。

 「坊ちゃん、せっかくお友達ができたのに残念でしたね。」

 セバスチャンがニヤッと笑って言った。

 「何の話だ?」

 シエルが睨んだ。

 「エドワード様とジェームス様は同じ顔をしていても性格は

 正反対でしたね。純粋で内気なエドワード様と聡明で勝気な

 ジェームス様。まるで私と出会う前の坊ちゃんと現在の

 坊ちゃんみたいです。」

 「過去の話はするな。」

 「照れてらっしゃるんですか?」

 「なんでそうなるんだ?」

 「坊ちゃん。」

 向かい側に座っていたセバスチャンが隣に移動してきた。

 「そういえば、昨晩は忙しくて、してなかったですね。

 坊ちゃんは寂しがり屋さんですから毎日しないとお寂しい

 んじゃありませんか?」

 「なっ、なわけない、あっ。」

 セバスチャンがシエルの服の中に手を滑り込ませた。

 「よ、よせ。」

 「馬車は今、森の中です。誰にも見られませんよ。」

 セバスチャンはシエルのボタンを外していった。椅子に押し

 倒して覆いかぶさるように手足を押さえつけた。シエルは

 身動きが取れなくて

 「放せ。」

 と言ったが、セバスチャンの唇に遮られて、何も言えなく

 なった。やがて、全ての衣服を脱がされたシエルは体中を

 弄るセバスチャンの手に翻弄された。

 「あっ。」

 敏感な先端を指で弄られてシエルは声をあげてしまった。

 セバスチャンは更に舌先でチロチロと舐め始めた。

 「あっ、ああ~」

 指が2本シエルの中に入って来る。

 「坊ちゃん、指と舌とどちらが気持ち良いですか?」

 先端を舐められたまま、体の奥の最も感じる部分を指で

 弄られてシエルは大きく仰け反った。

 「もっと気持ち良くしてさしあげますよ。」

 セバスチャンがシエルに入ってきた。

 「ああああ~」

 足を肩に抱え上げられて、深く繋がると、シエルは嬌声を

 あげてセバスチャンにしがみついた。セバスチャンはシエル

 を抱きしめるとグイッと持ち上げて座位の格好をさせた。

 「坊ちゃん、自分で動いてみてください。」

 「嫌だ。」

 「嫌なら、抜きますよ。」

 セバスチャンはそう言って、本当に抜いてしまった。

 「やぁ~。」

 シエルは急に抜かれて泣きそうになった。

 「坊ちゃんのご命令とあれば、また抱いて差し上げても

 よろしいですよ。」

 「意地悪するな。僕を抱け。命令だ。」

 「御意。」

 セバスチャンはシエルをひょいっと膝の上に乗せて後ろから

 抱きしめた。激しく何度も突かれてシエルは絶頂を迎えた。

 セバスチャンはぐったりしたシエルの耳元で囁いた。

 「お屋敷に着くまでまだまだ時間があります。たっぷりと

 可愛がって差し上げますよ。坊ちゃん。」

 屋敷に着くまでの道のりはおよそ7時間。

 幾度となく果てても続く行為に命令するんじゃなかったと

 シエルは後悔した。

                         (完)


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黒執事「貧救院」

黒執事部屋



 幸せってなんだろう?

 求めても永遠に手に入れられないものなのかな。

 雨が地面に浸み込むように僕の流す涙も地面に

 吸い込まれていく。

 悲しみも憎しみも今ではもう無意味でしかない。

 僕は幸せになりたかっただけなんだ。

 すべてを手に入れることができたなら、

 僕でも幸せになれるのだろうか・・・

 神父様の祈りと共に僕を愛してくれた人の棺が土に

 埋葬される。

 雨がしとしと降る中で伯爵家にふさわしい盛大な葬儀が

 とり行われた。

 カラーンカラーンカラーンカラーン----------

 肉親との別れを祝福するかのように教会の鐘は鳴り続けた。


 「あれがロセッティ伯爵のご子息ガブリエル様でございます。」

 セバスチャンがシエルに耳打ちした。

 「父親が死んだというのに涙一つ流さないとは気丈だな。」

 「さようでございますね。」

 「表向きは病死という事になっているが、本当のところは

 どうなんだ?」

 「腹上死です。警察にはメイドとの情交中に心筋梗塞の発作

 が起こり、死に至ったと内密に届出が出されております。」

 「心臓が弱かったのか?」

 「さあ。それは分かりませんが、警察に届け出た翌日、

 メイドが後追い自殺しております。」

 「怪しいな。」

 「しかも、ロセッティ伯爵はその道ではかなり有名な男色家

 だったとの噂です。」

 「ますます怪しいな。」


 「ガブリエル様は11歳だとか。爵位は継げますが、

 後見人が必要なお歳です。コンスタブル卿が後見人に

 名乗り出ておられます。お会いになりますか?」

 「女王の憂いを晴らすのが僕の仕事だ。この事件を

 解決するのに協力者は一人でも多いほうがいいだろう。」

 「では、お会いになられるのですね。」

 「当然だ。」

 「葬儀の後、教会の一室に席を設けてあります。コンスタブル

 卿から坊ちゃんにお知らせしたい事があるそうです。」

 「ロセッティ伯爵は叩けば埃が出る男だと聞いている。

 告げ口したいほどロセッティ伯爵を恨んでいたということか?」

 「コンスタブル卿の姉のロセッティ伯爵夫人はご子息を産んで

 すぐに亡くなったと聞きます。死人の多い家系は必ず裏で

 何かあると考えたほうがいいでしょう。ロセッティ伯爵が

 本当に腹上死だったのか、それとも殺害されたのか、調べて

 いけば、いずれ分かることです。女王の番犬と呼ばれる

 坊ちゃんに接触したがる人物は犯人ではないでしょう。

 どのみち爵位継承者はガブリエル様お一人しか今のところは

 いらっしゃいませんので、遺産目当てによる暗殺はないと

 考えられます。隠し子でもいれば別ですが・・・」

 「男色家の変態に隠し子なんているはずないだろう。

 それよりも問題は貧救院だ。ロセッティ伯爵は先代から

 引き継いだ貧救院で悪行の限りをつくしていたそうだ。本来、

 貧しい者を救うべき場所で貧しい者を虐待し、骨の髄まで

 搾り取るような卑劣な行為をしていたらしい。慈善事業家の

 ふりをして、ロセッティ伯爵は相当儲けていたそうじゃないか。

 貧救院を調べるのが女王陛下からの今回の依頼だ。貧救院

 の経営は伯爵の死後、誰が引き継ぐ?ガブリエルか?」

 「いえ、執事のジョゼフです。ガブリエル様はまだ子供です

 から経営能力には欠けていますので。」

 「ジョゼフとは誰だ?」

 「あのガブリエル様の後ろで涙を流している使用人です。

 参列者のほとんどが嘘泣きだというのに、よほど主人に

 思い入れがあるのでしょうか。それとも演技で涙が流せる

 タイプなのでしょうか。ジョゼフは勤勉で頭も良く、執事として

 仕えるだけでなく伯爵の秘書の仕事もしていたとか。

 貧救院とは深く関わっている人物です。」


 「はじめまして。シエル・ファントムハイヴ伯爵。

 お目にかかれて光栄です。」

 「こちらこそ。コンスタブル卿。ロセッティ伯爵の突然の死、

 お悔やみ申し上げます。」

 「実は後見人の事でご相談がありまして。伯爵の死後、

 ガブリエルは後見人に遠いスコットランドに隠居している

 大叔父を指名しました。実質上は顧問弁護士と執事の

 ジョゼフが後見人代理としてガブリエルが成人するまで

 ロセッティ伯爵家を取り仕切る事になったのです。弁護士は

 遺産の管理をするだけなので何の問題もありませんが、

 問題は執事のジョゼフです。あいつが貧救院の出だという

 ことはご存知ですか?あのような下賎な者に伯爵家は

 任せられません。」

 「身分が低いという理由で変えろとおっしゃるのですか?」

 「それだけではありません。ジョゼフは15年前、10歳の時に

 貧救院から小姓としてもらわれてきたのです。小姓の意味が

 わかりますか?私の姉は12年前にロセッティ家に嫁いで

 まもなく発狂しました。妊娠中も何度も流産しかかってようやく

 男の子を出産しましたが、難産の末、姉は他界しました。」

 「それはお気の毒に。」

 「姉はロセッティ伯爵に殺されたんです。ロセッティ伯爵は

 新婚初夜からジョゼフを寝室に引き入れて姉に耐え難い

 屈辱を味あわせたのです。姉は心の病を理由に屋敷に

 幽閉され、失意の中で憎い男の子供を出産したのです。

 ガブリエルは天使のような風貌とは似ても似つかない

 悪魔のような呪われた子なのです。」


 貧救院はロンドン郊外にひっそりと建っていた。白い石造りの

 古びた建物で老朽化が進んでいた。畑もある広大な敷地は

 すべて高い塀で取り囲まれていて、出入り口は正門一つだけ

 だった。まるで刑務所を想わせるような貧救院にシエルと

 セバスチャンは閉口した。

 馬車を降りると、二人の門番がニヤニヤとシエルを品定めする

 ように見ていた。やがて、そのうちの一人が近づいて来て、

 「シエル・ファントムハイヴ伯爵様ですか?ご案内します。」

 と言って、ペコペコしながら、貧救院の応接間に案内した。

 応接間にはジョゼフがいた。

 「ようこそ。おいでくださいました。コンスタブル卿から

 伺っております。貧救院を見学なさりたいとか・・・」

 「はい。坊ちゃんは慈善事業に興味をお持ちでして、貧救院

 を設立いたしたく考えておりまして、参考までに是非とも

 見学させていただきたいとコンスタブル卿にお願いした次第

 でございます。」

 「コンスタブル卿は我が主ロセッティ伯爵の縁戚に当たります

 から、その方のご紹介とあれば、むげにもできません。どうぞ、

 ごゆっくり見学なさっていってくださいませ。早速、施設を

 ご案内いたします。どうぞ、こちらへ。」

 ジョゼフは軽く会釈をして、シエルを食堂へ案内した。

 食堂には細長いテーブルが2つ並んでいて、子供たちが

 木の椅子に座っていた。ちょうど食事の時間だったのだ。

 「貧救院には6歳~16歳までの子供が50人ほどいます。

 昔は女の子もいましたが、今はすべて男の子です。

 亡くなった旦那様の趣味で15年前からそうなりました。」

 子供たちは皆、死んだような目をしていた。生気がなく、

 一言も口をきかずに黙々と豆のスープをすすっていた。

 「食事は豆だけなのか?」

 シエルがジョゼフに聞いた。

 「はい。昼食は豆のスープだけです。朝食はパン屋から

 二日前のパンを安く買って来たものを食べさせています。

 夕食は庭の畑で採れた野菜とじゃがいもをスープにしたもの

 などを食べさせています。子供たちの好きなマッシュポテト

 も食べさせていますし、貧救院のわりには比較的恵まれた

 食生活です。」

 「刑務所並みの食生活で恵まれていると言えるのか?」

 「貧救院が刑務所よりも暮らしやすかったら、誰も働きません

 から。浮浪者を捕まえて収容している施設は1日2食でパンは

 食べさせないのですよ。それに、服もうちの貧救院は清潔な

 白い寝間着を制服変わりに使用していますので、毎週洗濯

 していますが、何ヶ月も同じ服を着せたまま放置している

 ような不衛生な所も多いのですよ。」

 確かに子供たちは皆、清潔そうだった。だが、全員同じ

 真っ白な寝間着を着て、首に番号と名前の札をつけている

 姿は一種異様な気がした。しかも、子供たちは皆、凍りついた

 顔のように表情が無かった。刑務所よりも恐ろしい貧救院で

 何がそうさせているのか考えただけでシエルはゾッとした。


 「今度は部屋を案内します。」

 ジョゼフが作り笑顔を浮かべてそう言った。

 子供達の部屋は貧救院の2階に8部屋あった。8人部屋で

 各部屋に2段ベッドが4つあった。机もタンスもなくて、ベッド

 の下にある50センチ四方高さ20センチのふたのない木箱が

 唯一の収納だった。子供達の所持品は箱一つに収まる程度

 しかなかった。殺風景な部屋を見た後、シエルたちは再び、

 1階の応接間に戻った。

 「いかがでしたか?お役に立てましたでしょうか?」

 「はい。参考になりました。」

 セバスチャンがニッコリと笑みを作って言った。

 「しかしながら、私共は政府の視察の役人ではありません。

 肝心の地下室を見せていただけない事には帰れません。」

 「ほう。慈善事業に興味があるとおっしゃっておきながら、

 地下に興味がおありだったのですか?残念ですが、地下室は

 地下クラブに入会していただけないと、ご案内できない決まり

 になっております。」

 「では、入会いたします。」

 「失礼ですが、ファントムハイヴ伯爵にそのようなご趣味がある

 とは思えませんが・・・」

 「ガブリエル・ロセッティ伯爵様と同じ趣味ですよ。」

 「では、証拠を見せていただけませんか?」

 ジョゼフの小馬鹿にしたような笑顔にシエルはムッとしたが、

 セバスチャンはおかまいなしにシエルに口づけした。文句を

 言おうとして口を開けたシエルに舌をねっとりと絡ませ、腰を

 抱き寄せて、ジョゼフに見せ付けるようにディープキスをした。

 長いキスの後、セバスチャンはこう言った。

 「坊ちゃんも同じ穴のムジナです。趣味と実益を兼ねた事業

 をと考えておりまして、そのノウハウをこちらで学びたくて

 見学させていただきに参ったのです。」

 「分かりました。それでは地下を案内いたしましょう。

 僕について来て下さい。」


 地下室への階段は応接間の隣の部屋にあった。薄暗い階段

 を下りて、扉を開けると、そこは赤い絨毯にシャンデリア、

 派手な花柄のソファが置いてある客間だった。ミニカウンター

 のバーには酒瓶が並んでいて、バーテンダーの格好をした

 使用人が一人立っていた。

 「意外という顔ですね。ここは会員のお客様がプレイに入る前

 にどの子と遊ぶか選んでもらう部屋です。50人の写真を料金

 別にAランクBランクCランクの3冊の本に分類してあります。

 どの子も均一料金だと顔の良い子ばかりが毎晩客をとる事に

 なって不公平ですから。我が地下クラブでは入会金と年会費

 が高い分、1回のプレイ料金が安く設定してありますので、

 気軽に毎週通っていただけるシステムになっております。

 プレイルームもご覧になりますか?」

 ジョゼフは一通り説明すると、返事も待たずに地下通路への

 扉を開けた。薄暗い通路に大きな地下牢が3つ並んでいた。

 牢の中には三角木馬とベッドがあった。鞭や拘束具などが

 壁に飾られていて何のプレイをするのか一目瞭然だった。

 通路の向うにはまた扉があり、先ほどとは違う粗末な部屋が

 あった。机と掃除道具入れとおぞましい拷問道具が収納され

 ている棚がある部屋だった。ジョゼフは無言で部屋を横切り、

 次への扉を開けた。今度は中央に通路があり、左右に小さな

 牢が5個ずつ計10個の藁を敷き詰めた独房があった。

 「左側は空っぽです。右側の牢に3人の逃げ出して捕まった

 子供達を収容しています。ご覧になりますか?」

 ジョゼフはどん引きしているシエルに笑顔で尋ね、また返事を

 待たずに牢の鍵をポケットから取り出し、鉄格子の扉を開けた。

 「おいで。13番。」

 ジョゼフが優しく呼ぶと10歳くらいの裸の少年が四つん這いに

 這って出てきた。

 「この子は牢に閉じ込めてある子の中でも一番従順な子です。

 さあ、13番、お客様にご挨拶なさい。」

 ジョゼフの命令に少年は頷き、這いつくばったままシエルの

 靴にキスをした。

 「フフ・・・可愛い子でしょう。この子はお手やチンチンも

 できるんですよ。13番、チンチンしなさい。」

 ジョゼフが命令すると、少年は体を起こして犬のように両手を

 胸元で曲げて腹を見せた。少年の白い腹にはやきごての痕

 があった。

 「逃げたお仕置きに旦那様がつけたのです。貧救院に住む

 50人の子達にはロウソク以外は使いませんが、地下の子

 は別です。どのお客様でも金貨3枚でやきごてプレイが

 楽しめます。」

 痛々しい少年の腹を見ていてシエルは気分が悪くなった。

 「次の子も紹介しましょうか?」

 ジョゼフがニヤリと笑ってシエルに聞いた。そして、少年を

 牢に戻すと、隣の牢を開けた。

 「49番。出ておいで。」

 しかし、49番と呼ばれた12、3歳の少年は動かなかった。

 「この子は頭がおかしくなってしまったのです。」

 少年の背中には無数の鞭の傷痕あり、体中にやきごての痕

 があった。

 「次の子もちょっと問題はありますが・・・おいで。33番。」

 おむつをした7、8歳の少年が牢から出てきた。

 「この子はフィストのし過ぎで緩くなってしまったので、おむつを

 着用しています。赤ちゃんプレイって知ってますか?」

 ジョゼフは吐き気を我慢しているシエルを面白がっているかの

 ように楽しそうに説明した。


 その時、一番奥の牢から何やら人の声が聞こえた。3人と
 
 言っていたのに、もう一人いるのかと思って5番目の牢を

 覗いてみると、40歳くらいの女性がベッドに腰掛けていた。

 他の牢は全員裸だったが、その女性は服を着ていた。

 かなりやつれていたものの金髪碧眼の目鼻立ちがはっきり

 とした美人だった。

 「この女性は・・・」

 「母です。」

 とジョゼフは答えた。

 「母は分けあって、20年もの長い間、この地下牢に閉じ込め

 られているのです。僕も15年前までちょうど向かい側の牢に

 閉じ込められていました。僕は商品ではありませんでしたが、

 旦那様は僕に目をかけて可愛がってくれました。僕は5歳から

 10歳までの5年間、日に日に精神を病んでいく母を見つめて

 牢の中で暮らしていました。泣き叫ぶ母を見るのは辛かった

 です。だから、旦那様が僕を牢から出してくださった時はすごく

 嬉しかったです。旦那様は家庭教師を雇って僕に教養を身に

 つけさせてくださいました。旦那様には感謝しています。」

 「それで、この貧救院を受け継ぐ事にしたのですか?」

 セバスチャンが冷ややかな目でジョゼフに聞いた。

 「ガブリエル様のご命令で、貧救院は近々、売り払う予定

 です。ただ、子供たちの身の安全を保障できる買い手が

 なかなか見つかりそうにありません。ガブリエル様は

 人買いに子供達を売り払い、土地には工場を建てると

 良いと仰せです。売春宿に売られた子供達は数年で体を

 壊して死んでしまいます。そこで、提案なのですが・・・

 貧救院を買っていただけないでしょうか?」

 「それは願ったり叶ったりでございます。」

 「喜んでくださるとこちらも助かります。格安でお売りします

 ので、どうか子供たちをよろしくお願いします。早速ですが、

 今日の夜、ロセッティ家にご招待してもよろしいですか?

 ガブリエル様もシエル・ファントムハイヴ伯爵様にぜひ

 お会いしたいと申しております。」


 「君がシエル?やっぱり葬儀の日に叔父様とこそこそ

 会ってた子だね。」

 ガブリエルはソファに座ったまま立ち上がろうともしないで、

 見下したように言った。

 「叔父様が何を言ったか知らないけれど、ジョゼフは

 殺してないよ。」

 想定外の11歳の伯爵の言葉にシエルは言葉が出なかった。

 「お父様は腹上死だったんだ。」

 「存じ上げております。メイドとの情交中に心筋梗塞で

 お亡くなりになられたとか・・・」

 セバスチャンがチラッとジョゼフを見ながら言った。すると、

 ガブリエルはこう言った。

 「メイドじゃない。僕だよ。僕の腹の上でお父様は死んだんだ。」

 「ああ。そういうことですか。謎が解けました。執事ならともかく

 ご子息との情交中にとなると大スキャンダルですね。それで、

 メイドに嘘の証言をさせて殺したのですか?」

 「殺してないよ。メイドが警察に事情聴取で連行されそうに

 なったから、後追い自殺のふりをするよう睡眠薬を渡したんだ。

 メイドは病院に運ばれたけど、致死量飲んでないから翌日、

 退院してすぐに里に帰った。警察も自殺未遂までする人間を

 取り調べたりしないからね。メイドはジョゼフから大金を貰って

 田舎で暮らしてるよ。」

 「手の込んだ事をしますね。」

 「まあね。ジョゼフが僕の為にした事だからさ。僕はまわり

 くどいのは嫌なんだけどね。」

 「確かに。直球勝負過ぎる性格のようですね。」

 「貧救院の契約書にサインして。」

 テーブルに差し出された契約書を見て、桁外れの安さに

 シエルは驚いた。

 「本当にこの金額で良いのか?」

 「0を1個付け忘れてると思った?ポケットマネーで買える

 金額にしろってジョゼフがうるさいから安くしといたんだ。

 さっさとサインしてよ。」

 シエルは少し考えるようにセバスチャンと顔を見合わせたが、

 契約書にサインした。

 「ハハ・・・これで奴らの面倒を見なくて済む。せいせいした。」

 不思議そうにしているシエルにジョゼフが説明した。

 「貧救院の子供達は全員、娼館で生まれた娼婦の子です。

 娼館で生まれた女の子は年頃まで大事に育てられ、店の

 商品になりますが、男の子は6歳になると人買いに売られて

 しまうのです。通常は二束三文で年季奉公に出されますが、

 旦那様は人買いから金貨1枚で6歳の男の子を買い集め

 ました。ロンドン中の娼館から毎年数名の男の子が貧救院に

 やってきます。そして、旦那様は全員を自らお味見なさって

 Aランク~Cランクに分類し、調教し、客をとらせていました

 ので、ガブリエル様はそれを面白く思ってなかったのです。」

 「嫉妬ですか。」

 セバスチャンが呆れたように言った。


 「バカ。違うよ。僕はお父様が嫌いだったんだ。」

 「性的虐待を受けていたからですか?」

 「それもあるけど、お父様はジョゼフに対して酷かったからさ。

 僕には鞭を使った事なんて一度もないけどね。」

 「旦那様はガブリエル様を愛してらっしゃいましたから。」

 「愛?愛って何なの?ジョゼフは人が良過ぎるんだよ。

 ジョゼフはいつもお父様に愛してるって言われて喜んでた

 けど、あの人は誰にでも言うんだよ。」

 「貧救院の子達には一度も言った事はありませんよ。僕と

 ガブリエル様以外に言っているのを見た事はありません。」

 「亡くなったロセッティ伯爵夫人にもですか?」

 セバスチャンが唐突に聞いた。一瞬、二人は嫌そうな顔をして

 黙ってしまった。数秒間の沈黙の後、ジョゼフが慌てて話題を

 すり替えるように口を開いた。

 「契約を祝して乾杯しましょう。」

 ジョゼフは使用人にシャンパンを持って来させて、グラスに

 シャンパンを注いで、シエルとセバスチャンに手渡した。

 「乾杯!」

 ガブリエルがグラスをかかげた。シエルは一気にシャンパンを

 飲み干した。すると、急に眩暈がして、クラクラしてきた。

 シエルは落としたシャンパングラスの割れる音を聞きながら、

 意識を失った。

 目が覚めると、シエルは椅子に縛りつけられていた。

 手は後ろ手にきつく縛られ、足首までグルグル巻きに縄で

 縛られていた。シエルはセバスチャンの名を叫ぼうとしたが、

 猿轡のせいで声が出なかった。


 呻くシエルに気付いたセバスチャンが

 「坊ちゃん、お目覚めですか?」

 と聞いた。シエルは怒鳴りたかったが、猿轡のせいで

 声が出ない。

 「坊ちゃん、どうやら私達は罠にはめられたようです。」

 セバスチャンも両手首を縄でベッドに縛りつけられていた。

 だが、セバスチャンは冷静だった。

 「シャンパンに薬が入っていたようですね。でも、ご安心

 ください。坊ちゃんだけは脱がさないでくださいと頼んで

 おきましたから。」

 セバスチャンは半裸状態だった。服はボタンが全て外され、

 ズボンも太腿まで下ろされていた。シエルは怒りで我を忘れて

 『殺してやる』と思った。実際、縛られていなかったら、殺して

 いただろう。ジタバタと暴れるシエルにジョゼフが言った。

 「静かにしてください。椅子が倒れたら大変だ。」

 「そうだよ。大人しくしてろよ。今、いいとこなのに・・・」

 セバスチャンに夢中でしゃぶりついていたガブリエルが

 ようやく口を離して、シエルのほうを向いた。セバスチャンの

 大きく立ち上がったものが天を仰いでいた。シエルは信じられ

 ない光景を見たと言わんばかりにセバスチャンを睨んだ。

 しかし、セバスチャンは無言だった。代わりにガブリエルが

 勝ち誇ったように言った。

 「君の執事だって男だもの。愛なんて所詮、無意味なのさ。」

 「そう。愛は一人だけに捧げても、体は別です。男は欲情する

 生き物なのです。」

 ジョゼフはシエルに諭すように言った。シエルは全裸の二人に

 喚き散らしたが、猿轡のせいで呻き声にしかならなかった。

 ガブリエルはニヤッと笑って再びセバスチャンにかぶりついた。

 しばらくすると、ジョゼフが蜂蜜を取り出して塗りだした。

 「美味しそうだね。もう、入れてもいい?」

 ガブリエルが蜂蜜を塗られたセバスチャンの上にまたがって

 聞いた。そして、ガブリエルはセバスチャンを自分の中に入れ

 「ああ~。大きいよ~。お父様のよりもずっと大きい。」

 と言って、腰を動かした。

 「気持ち良いですか?ガブリエル様。お父様しか知らない

 ガブリエル様にはちょっと大きすぎるかも知れませんが、

 一つしか歳の違わないシエル様が味わっているものです。

 慣れれば大丈夫です。いつものようにもっと気持ち良くして

 あげましょうか?」

 ジョゼフはガブリエルにそう言うと、背後から接合部を舐めた。

 「あっ、ああ~」

 ガブリエルは歓喜の声をあげた。甘く蕩ける蜂蜜を美味しそう

 に舐めるジョゼフを見て、セバスチャンはこう言った。

 「変態ですね。」

 「そう。ジョゼフは変態だよ。お父様に10歳の頃からいろいろと

 仕込まれてるからね。僕がお父様に初めて抱かれたのは8歳

 の時だった。ジョゼフが僕を心配して泣いていたのを今でも

 覚えている。」

 「仲がよろしいのですね。」

 「ああ。僕はジョゼフを愛している。」

 「それなら、こんなことなさらなくても、お二人ですれば

 よろしいのでは?」

 「ジョゼフがダメって言うんだ。一線は越えられないって。

 あっ、ああ~、ああああ~」

 ジョゼフが接合部から口を離したとたんにセバスチャンが

 動いた。下から突き動かされて、ガブリエルはあっけなく

 果てた。ガブリエルが退くと、今度はジョゼフがセバスチャン

 の上に乗った。


 「僕もガブリエル様と同じで、旦那様以外を受け入れるのは

 初めてです。」

 「通りで。25歳にしては緩んでないはずですね。」

 セバスチャンはグルッと腰を動かした。

 「あっ、あん、ああ~」

 ジョゼフの良い所に当たったのか、ジョゼフは恍惚とした

 表情を浮かべた。

 「ジョゼフ、気持ち良い?お父様が死んでからずっと何日もして

 なかったものね。僕も欲求不満だったから、さっきイったけど、

 もう1回、イきたいな。」

 ガブリエルはそう言うと、セバスチャンの首にまたがってきた。

 「舐めて。」

 セバスチャンの口に押し当てて、ガブリエルは女王様のような

 微笑を浮かべた。

 「仕方のないお子さんですね。」

 セバスチャンはガブリエルの貪欲さに呆れたが、口に含んで

 舐め始めた。

 「あ、ああ~気持ち良い。お父様より上手いね。」

 「こちらのほうも最高ですよ。ああ~。僕ももう、イきそうです。」

 ジョゼフは激しく腰を動かすセバスチャンに合わせて、

 腰を振り乱した。

 「あああ~、イ、イクっ!あああ~」

 「あ、僕も!あああ~」

 ジョゼフとガブリエルは二人同時に果てた。セバスチャンは

 口に含んだ白い液体をペッと吐き出した。白いもので汚された

 セバスチャンは貪りたくなるほど艶めかしかった。満足げに

 セバスチャンの身体を見ていたガブリエルの顔色が変わった。

 「あれ?まだイってないの?」

 セバスチャンは達していなかった。ジョゼフは少し気にして、

 「よくなかったですか?」

 と聞いた。

 「そんなことはありません。」

 セバスチャンはにこやかに答えた。

 「もう1回する?」

 ガブリエルが甘えた声で聞いてきた。

 「遠慮しときます。早く縄を解いてください。もう気が済んだ

 でしょう。」

 セバスチャンの言葉にガブリエルはムッとした。

 「イクまで離さないよ。3回でも4回でも何回でもやってやる。」

 ガブリエルがセバスチャンの上に乗ってきた。

 「私を腹上死させる気ですか?!」

 「ガブリエル様を怒らせると、朝まで離してもらえませんよ。

 旦那様も5回目であんなことに・・・4回でやめておけば

 よかったのですけど・・・」

 「今夜は眠らせないよ。」

 ガブリエルがニヤリと笑った。


 夜が明ける頃、ガブリエルとジョゼフは眠ってしまった。

 セバスチャンの傍らで眠っている二人はまるで餌を

 お腹いっぱい食べて満腹になって寝ている猫のようだった。

 無邪気に裸のままで寄り添って寝ている二人は幸せそう

 だった。セバスチャンはベッドに縛り付けられている両手を

 無造作に引っ張って縄を引き千切った。そして、怒り狂った

 ように目を真っ赤にして見据えているシエルの所にゆっくりと

 歩いて行き、シエルの縄を解いた。猿轡を外されたシエルは

 「どういうつもりだ?」

 とかすれた声で聞いた。

 「情報を聞き出すには情を通じるのが一番早いですから。」

 バシッとシエルはセバスチャンの頬を平手打ちした。

 フッと笑うセバスチャンにシエルは

 「最低だな。」

 と言った。

 「でも、これでロセッティ伯爵の死因が断定できました。

 食欲旺盛なお二人に一晩中せがまれてし続けていたら、

 死んでも不思議じゃありませんね。」

 「お前は6回しても生きているじゃないか。」

 「ガブリエル様3回ジョゼフさん3回の計6回は私でも

 疲れました。ガブリエル様は4回もイって疲れたのか、

 とうとう諦めて眠ってしまったようですね。」

 セバスチャンはクスッと笑った。

 「笑い事じゃないだろう。」

 シエルは怒っていた。一晩中、縛られたまま情交を見せ付け

 られていたのだ。怒るのも無理はない。セバスチャンは

 シエルの顎に手をかけ、こう言った。

 「坊ちゃんの怒った顔、素敵ですよ。」

 セバスチャンがシエルに口づけし、舌を入れてきた。だが、

 シエルはガリッとセバスチャンの舌を噛んだ。セバスチャン

 の唇から一雫の血が流れた。セバスチャンは目を細めて、

 シエルを床に押し倒した。

 「やめろ。バカ。」

 シエルは抵抗したが、ズボンの上から掴まれただけで、

 感じてしまった。

 「坊ちゃんの身体は正直ですね。一晩中見ていただけで、

 ほら、こんなに・・・」

 セバスチャンはシエルのズボンを脱がすと、ニヤニヤ笑って

 握りしめた。

 「あ、よせ、あっ」

 セバスチャンの愛撫にシエルは声をあげた。口に含まれて

 舐められると、抵抗するのを忘れてしまう。指が蕾をなぞり、

 ゆっくりと入ってきた。

 「よっぽど我慢していたのですね。指に吸い付いてきますよ。」

 セバスチャンは意地悪く眺めながら言うと、指を動かした。

 「あ、ああ~」

 セバスチャンが指を入れたまま顔を近づけて来てキスをした。

 やがて、セバスチャンは指を引き抜くと、シエルの足を大きく

 広げて欲望を突き刺した。

 「坊ちゃんの中は熱くて蕩けそうですよ。」

 セバスチャンが囁くとシエルは歓喜の声を上げ絶頂を迎えた。

 「入れたばかりなのに、いつになく早いですね。」

 シエルが赤くなるのを見てセバスチャンはニヤニヤして言った。

 「大丈夫。もう1回イかせてあげますよ。でも、今度はあの二人

 にもよく見えるように体勢を変えましょうか。」

 「え?!」

 シエルがベッドの上を見上げると、ジョゼフとガブリエルが

 じっと見ていた。

 「坊ちゃんの声が大きいからお二人が起きてしまいましたよ。」

 そして、焦るシエルとは逆にセバスチャンは座位の姿勢で

 後ろから突き上げた。セバスチャンに座らされたシエルは

 両手で足を掴むように言われ、全てが丸見えの姿勢をとら

 された。突き上げる腰にシエルは悲鳴を上げた。

 「見られて興奮するなんて、坊ちゃんはいやらしいですね。」

 意地悪なセバスチャンの言葉にシエルは身体を震わせた。

 セバスチャンが激しく腰を突き動かす。

 「私が真の快楽を得られるのは坊ちゃんだけです。」

 セバスチャンの甘い囁きにシエルは再び絶頂を迎えた。

 セバスチャンが自分の体内に放つのを感じながら、シエルは

 意識を手放して眠りについた。


 朝、シエルが目覚めると、セバスチャンは

 「おはようございます。坊ちゃん。朝食のご用意が出来て

 おります。」

 と、何事もなかったように言った。シエルはセバスチャンに

 身支度を整えさせると、ダイニングルームへ向かった。

 ガブリエルとジョゼフは先に朝食を食べていた。4人分

 ナイフとフォークがセッティングされていたが、セバスチャンは

 椅子をひいてシエルを座らせ、シエルの後ろに立った。

 それを見て、ガブリエルがこう言った。

 「一緒に食べないの?」

 「私は結構でございます。」

 「ジョゼフはいつも僕と一緒に食事しているよ。セバスチャンも

 遠慮せずに食べたらいい。」

 「私はジョゼフさんとは違いますから。」

 「そう。」

 ガブリエルはつまらなさそうに朝食を再び食べ始めた。

 「貧救院の地下牢にいる私の母はロセッティ家に

 住まわせてくれる事になりました。」

 ジョゼフが笑顔で言った。

 「それは良かったな。貧救院の件だが、やはり取り壊して工場を

 建てるつもりだ。貧救院の子供達はファントムハイヴ社で雇って

 やる。工場の横に寮も作って住み込みで働かせる事にした。

 10歳以下の子供は役に立たないから給料は払えないが、

 見習いとして3食寝床付で雇ってやる。」

 「本当ですか?!それは嬉しいな。感謝します。」

 「さすが、女王の番犬!これで一件落着だね。」

 ジョゼフとガブリエルは口々に喜んだ。だが、シエルは

 「知っていたのか。」

 と、チッと舌打ちした。

 「坊ちゃんが女王の番犬と言われている事をいつ頃から

 ご存知だったのですか?」

 セバスチャンが聞いた。

 「葬儀の日にコンスタブル卿と接触しているのをお見かけし

 まして、失礼ですが、いろいろと調べさせていただきました。」

 「ジョゼフは頭が良いんだ。」

 ガブリエルがニコッと笑って言った。

 「今回の事で分からない事があるのだが、何故、地下牢に

 閉じ込められていたのだ?」

 シエルがジョゼフに聞いた。

 「私の母は旦那様のお父上の妾だったのです。身寄りのない

 母は13歳で奉公に上がり、15歳で僕を産みました。

 別宅に住まわせていただいて、幸せに暮らしておりましたが、

 お父上が病で亡くなられて、旦那様の母君に母子ともども

 貧救院の地下牢に閉じ込められてしまったのです。5年後、

 母君が亡くなられてから旦那様が僕を地下牢から出して

 くださいました。」

 「亡くなったロセッティ伯爵とは異母兄弟という事か・・・」

 「はい。兄である旦那様は僕を可愛がってくださいました。

 僕が13歳の時にご結婚された時も旦那様は女性に興味

 がなく、初夜の晩に僕をお二人の寝室に呼び、3人で情交に

 及びました。女性に触れた事のない僕に花嫁を抱くように

 命じられまして、旦那様は後ろから僕を・・・サンドウィッチの

 ようにお二人に挟まれて、前からと後ろからの刺激で僕は

 何度も最高の喜びを味わいました。旦那様もすっかり気に

 入ったようで、ガブリエル様が生まれるまでその行為は

 続きました。」


 「ちょっと待て。なんだか頭が痛くなってきた。」

 シエルは頭を抱えた。代わりにセバスチャンが質問した。

 「と、いうことは、ガブリエル様はジョゼフさんの息子さん

 ということですね。」

 「はい。そうです。この事が世間に知れたら、代々続いた

 ロセッティ家がお取り潰しになるかと、正式にガブリエル様

 が継承なされるまでは気が気ではありませんでした。」

 「血統から考えれば、ガブリエル様は甥ですか・・・他に

 お子さんがいらっしゃらなければ、爵位継承には何の問題も

 ないですね。しかし、妾腹とはいえ、ジョゼフさんにも爵位を

 継がれる権利がおありだというのに、使用人の身分のままで

 よろしいのですか?」

 「はい。僕はガブリエル様さえ幸せになってくれたら、それで

 良いのです。」

 「親バカですね。」

 「はい。亡くなった旦那様にもよく言われました。」

 「親ならもっと子供をしつけたほうが良いんじゃないか?

 我儘放題に夜が明けるまでやらせるなんて・・・」

 シエルが薄ら笑いを浮かべながら、ジョゼフに文句を言った。

 「意外と根に持つタイプだったんだね。妬いてるの?」

 ガブリエルがシエルをからかうように言うと、シエルは食事を

 喉に詰まらせ、ゴホッとむせた。

 「バカ言え。妬くわけがないだろ。」

 「坊ちゃんがヤキモチを妬くのは愛があるからです。

 ジョゼフさんが亡くなったロセッティ伯爵が自分以外と交わる

 のを見ても腹が立たないのは恋愛感情よりも肉親に対する

 愛情が強かったからです。兄としてのロセッティ伯爵に深い

 愛情を持っていたからではありませんか?私は葬儀の日に

 涙を流しているジョゼフさんを見て、そう思いました。」

 「お気付きでしたか・・・確かに僕は肉体関係以上の愛情を

 兄である旦那様に求めていました。でも、旦那様は僕を愛人

 としてしか見ていなかった。僕は彼を恨んだ事もありましたが、

 ガブリエル様が生まれてからは我が子が立派な跡継ぎになる

 事を夢見て暮らしておりました。伯爵家を継いだガブリエル様

 と二人で暮らしている今はとても幸せです。」

 「あなたはずっと幸せになりたかっただけだったのですね。」

 「はい。」

 と、ジョゼフは笑顔で答えた。

 その後は和やかに朝食を済ませ、シエルとセバスチャンは

 ファントムハイヴ邸へ戻った。

 「幸せってなんだろうな。」

 シエルが呟いた。

 「坊ちゃんはあのお二人が幸せになれると思いますか?」

 「さぁな。」

 シエルはぼんやりと窓の外を眺めた。

 「坊ちゃん。」

 セバスチャンが後ろから抱きついてきた。

 「あっ、放せ。一体何回やったら気が済むんだ?

 昨日だって・・・」

 「私は1回しかイってませんよ。私は坊ちゃん以外では

 いかないのです。」

 セバスチャンが耳元で囁いた。

 「私が愛するのは坊ちゃんだけです。」

 「嘘つけ。」

 シエルはフッと笑った。セバスチャンがシエルを押し倒した。

 悪魔は嘘をつかない。シエルは刹那的な快楽と人の幸せは

 隣り合わせだと思った。どちらが欠けていてもつまらない。

 シエルは至福を感じながら、悪魔の抱擁に身を溶かした。


                          (完)


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咎狗の血二次創作小説

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咎狗の血「罪人」

咎狗の血部屋




 「アキラ。どこに行ってたんだよ。心配したよ。」

 「ケイスケ。」

 アキラは自分のアパートの前で座り込んで待っていたケイスケ

 を見た瞬間、逃げ出したくなった。だが、黒い服の男達は

 アキラの腕を掴んで、

 「こいつは誰だ?」

 と、聞いた。

 「友達だ。10分だけ話をさせてくれ。」

 「わかった。10分だけだぞ。」

 黒い服の男が時計を見ながら返事をした。アキラは頷くと、

 ケイスケの腕を掴んで自分の部屋に入った。

 「あいつら誰だよ。どういうことなのか説明してくれよ。アキラ。」

 「説明はあとだ。時間がない。」

 アキラはそう言うと、ケイスケの唇に自分の唇を重ねた。

 口を開けて舌を出し、誘うようにケイスケの舌を口内に導いた。

 ねっとりと絡め合う舌が糸を引いて離れた時、ケイスケが

 ベッドにアキラを押し倒した。ケイスケはキスをしながら

 アキラの服を脱がせていく。首筋から胸元にかけて

 赤い薔薇の花弁を散らしたような痕が数え切れないほど

 あるのを見て、ケイスケの表情が歪んだ。

 「アキラ。」

 咎めるように名を呼んだケイスケにアキラは

 「レイプされたんだ。」

 と言った。



 昨日の事だった。

 突然アキラの家に警官たちが押し入ってきて、アキラは

 殺人容疑で逮捕された。取調べ室で無実だと主張するアキラ

 の服を警官が二人がかりで脱がせた。全裸にされたアキラは

 匍匐検査だと言われ、四つん這いにさせられた。警官に指を

 2本入れられて、アキラは中を掻き回された。警官は人差し指

 と中指を左右に広げて、執拗に中を覗きこむ。アキラは声を

 殺して恥辱に耐えたが、舌を入れられて内壁を舐められると、

 思わず、甘い吐息を洩らしてしまった。警官はそんなアキラを

 見て、こう言った。

 「匍匐検査で感じてるのか。淫乱な奴だな。よし。もっと

 奥を調べてやる。」

 警官はアキラの双丘を掴んで左右に広げ、滑りをよくする為に

 ペッと唾を吐きかけた。熱くて固いものがゆっくりと入ってきて、

 アキラは声を上げた。

 「おいおい。そんなに締め付けるなよ。気持ち良いのか?」

 アキラに挿入した警官は馬鹿にしたように言い腰を動かした。

 もう一人の警官はニヤニヤと笑ってアキラを見ている。警官が

 パンパンッと激しく腰を突き動かし、アキラの中で果てると、

 すぐにもう一人の笑って見ていた警官がアキラを犯した。

 「うわっ。こいつ吸い付いてくるぜ。すげぇ、いい。」

 「だろ。あとで俺もう一回するから終わったらまた代われよ。

 2順しようぜ。」

 「了解。」

 取調べ室という密室でアキラは逮捕されてすぐ警官二人に

 まわされたのだった。



 パイプイスに後ろ手に縛られ、アキラは全裸のまま1時間ほど

 放置された。ロープでグルグル巻きにされ、足をイスの脚に

 縛り付けられた状態のアキラの元に警部らしき新たな警官が

 3人の部下を引き連れて訪れた。

 「そろそろ白状する気になったか?」

 警部はアキラの裸体を値踏みするように眺めながら言った。

 しかし、アキラはキッと睨んでこう言った。

 「俺は殺ってない。」

 「強情だな。だが、どこまで持つかな。」

 警部は部下の警官に電流を流すよう指示した。警官は

 アキラの足の親指に電極を繋げ、機械のスイッチを押した。

 電流が足先から身体全体に伝わり、アキラは呻いた。

 「レベル1じゃ足りないようだな。レベル2にしろ。」

 警部の命令で警官が機械のメモリを2に合わせた。すると、

 先ほどとは比べ物にならないくらいの強い電流がアキラの

 身体を駆け巡った。

 「うわぁああああ・・・」

 アキラは大声を出して呻いた。警部は満足そうにアキラが

 苦しむ様を見ていた。1分間隔で電流を何十回も流した後、

 意識を失いかけたアキラに警部はこう言った。

 「レベル2でもう降参か?レベル5まであるんだぞ。まぁ、

 もっともレベル5は黒焦げになるから、火傷しない程度に

 止めといてやるよ。お前らみたいな街のゴミはレベル2か3で

 大抵三日と持たない。さっさと白状するんだな。犯行時刻に

 アリバイはないんだろ?弁護士雇う金のない奴は自分で

 無実を証明するアリバイがない限り裁判で有罪になる。

 裁判が楽しみだな。刑務所に入るまで俺達がじっくりと

 遊んでやるよ。」

 警官がナイフを取り出し、足を縛り付けていたロープを切ると、

 アキラの両足を高く持ち上げた。警部は男の体液で濡れた

 アキラの蕾を見て、ニヤリと笑った。

 「お前を最初に取り調べた警官2人がお前のことを

 淫乱だって言ってたぞ。本当かどうか調べてやる。」



 「あ、ああ・・・」

 意識が遠のく中でアキラは身体を貫かれる度に声を上げた。

 「おい。淫乱。またイキそうか?」

 警官達が笑いながら見ている中で、アキラは代わる代わる

 犯された。いつしかロープは解かれ、イスから床に移されて

 いたが、アキラは抵抗する力もなく何人もの警官を受け入れ

 させられた。警部はアキラを犯した後、すぐに取り調べ室を

 出て行った。部下の警官が仲間を呼び、アキラを玩具にした。

 7人に2回まわされて、アキラは何度も気を失いかけたが、

 叩かれたり水をかけられたりして、意識を失くす事を許して

 もらえなかった。

 「あ、ああ、ああ・・・」

 激しく腰を突き動かされて、アキラは警官と同時に達した。

 まるで快楽の波に呑まれた負け犬のような虚ろな目をしている

 アキラを警官達は嘲笑い、

 「7人に2順された感想はどうだ?なんならもう1回やって

 やってもいいぜ。」

 と言った。だが、アキラは黙って目を閉じた。

 「寝るな!!」

 警官がアキラの頬を叩いた。

 「一晩中寝かせるなって警部に言われてんだよ。悪いが

 これも拷問の一つだ。朝まで眠らせるわけにはいかない。

 3順目開始だな。」

 警官がアキラに覆い被さり、再び貫いた。

 「あ、いや・・・やめ・・・」

 アキラが弱々しく抵抗するのも虚しく、警官は腰を動かした。

 やり殺されるかもしれない。頭の中でアキラがそう思った時、

 取調べ室のドアが開いた。

 「面会だ。服を着ろ。」

 警部がアキラの服を投げつけて不機嫌そうに言った。



 面会室には気の強そうな見知らぬ女がいた。

 「お前は終身刑確実だよ。それにしても、随分、気に入られた
 
 みたいだな。たった1日で10人に合計20回犯されるとは・・・

 トシマに行ってイグラに参加しろ。そうすれば、ここから

 出してやる。死なない程度の拷問が繰り返される終身刑と

 イルレを倒すのとどちらを選ぶかはお前の自由だ。」

 「・・・」

 「ここにタグが5枚ある。受け取れ。」

 女が差し出したタグをアキラは受け取った。

 「明日、トシマに行く前に一度だけ自宅のアパートに帰る事を

 許可する。もちろん監視付きだがな。逃げたら射殺する。

 何か質問は?」

 「俺は殺していない。」

 「まだそんな事を言っているのか。警察は犯人なんて誰でも

 いいのだよ。お前が人を殺していようとなかろうと、お前は

 私の仕事を受けない限り、終身刑になるんだ。とりあえず、

 出発の時刻まで拘置所で眠っておけ。私と契約した以上、

 誰にも手出しはさせない。」

 「選択の余地はないのか。」

 「ヤリ殺されるか自分の手で自由を掴み取るかはお前次第だ。

 私は後者を望むだけだ。」



 「アキラ。アキラ。」

 白昼夢を見ているように昨日の出来事を思い出していた

 アキラはケイスケに名を呼ばれて、我に返った。ケイスケは

 心配そうにアキラを見つめていた。

 「ケイスケ。俺はトシマに行く。」

 「何で?」

 「イグラに参加するよう命令された。拒めば、殺人犯として

 終身刑にされる。」

 「嘘だ。そんな、酷い。」

 「ケイスケ、最後にもう一度抱いてくれ。」

 アキラは自らズボンを脱いだ。足を広げてケイスケを誘うように

 受け入れる姿勢をとった。

 「時間がない。早く入れろよ。」

 グズグズしているケイスケにアキラは言った。だが、ケイスケは

 「できないよ。真っ赤に腫れてるじゃないか。レイプされたって

 言ったけど、まわされたのか?ちょっと待って。今、薬を塗って

 あげるから。」

 と言って、ベッドの横のサイドボードの引き出しに手を伸ばし、

 軟膏をアキラに塗った。ケイスケはアキラの尻の入り口の辺り

 を塗った後、中指にたっぷりと軟膏をつけて、第二関節まで

 指を入れてグルグルっと掻き回した。

 「うっ。」

 思わず顔をしかめたアキラにケイスケは

 「痛い?」

 と聞いた。傷ついたアキラのそこはさほど酷く切れていない

 ものの赤く腫れ上がっている。最低でも3日間は安静にして

 男を受け入れないほうがいい状態だった。ケイスケは軟膏を

 塗り終わると、アキラの下着とズボンをはかせた。

 「もう二度と会えないかもしれないのに・・・」

 アキラは不満そうにつぶやいた。だが、ケイスケは

 「軟膏を持って行くといいよ。」

 と言って、アキラに手渡した。アキラは無言で受け取ると、

 ポケットに入れた。

 「時間だ。10分経ったぞ。早くしろ。」

 黒い服の男がアキラを呼びに来た。

 アキラはケイスケに最後のキスをした。悲しい別れのキス

 だった。アキラは死を覚悟したように真っ直ぐに前を向いて

 無言で部屋を出て行った。

 「アキラ!」

 ケイスケが呼ぶ声にも振り向かず、アキラはトシマへと

 旅立って行った。



 トシマへ着いたのは夕暮れだった。アキラは荒廃したトシマを

 一人さ迷い歩き、誰にも会わない事を祈りながら、今にも

 全壊しそうな半壊したビルの中で一晩を過ごした。アキラは

 このままビルが崩れ落ちて死んでもかまわないと思った。

 アキラの体は衰弱しておりイグラができる状態ではなかった。

 せめて1日安静にしていれば、なんとか戦えると考えた。

 ケイスケに抱いて慰めてもらえなかったのは心残りだったが、

 ケイスケの判断は正しかった。もしケイスケに抱いて貰って

 いたら、治りかけた傷口が開き、再び出血していただろう。

 こんなもの渡しやがってとアキラは軟膏を見つめた。思えば、

 ケイスケは子供の頃からアキラの心配ばかりしていた。

 アキラはその美貌ゆえに幼い頃から大人達の性的欲望の

 対象にされていた。孤児院でも先生達にしょっちゅう酷い目に

 遭わされていた。孤児院にいる他の子供達からは嫌われ、

 アキラは完全に孤立していた。アキラは自分をからかう子を

 全て叩きのめす事にしていた。アキラは喧嘩して相手に怪我を

 させても先生に怒られなかった。逆にアキラに怪我をさせた

 子は先生達に折檻された。先生達はアキラを夜、玩具にする

 代わりに昼間えこひいきして可愛がっていたのだった。当然

 アキラには友達は一人もできず、いつも独りぼっちだった。

 だから、なんとなく、虐められっ子のケイスケを助けた時に

 「ありがとう」と御礼を言われて嬉しかった。ケイスケがいつも

 アキラの後をついてくるようになって、やっと友達が自分にも

 できたと感じて、ケイスケを大切にした。ケイスケはアキラが

 夜、先生に何をされているのか聞かなかった。見知らぬ大人

 と養子縁組して里子に出された後も、親切な養父に夜、何を

 されているか聞かなかった。アキラが養父から逃げ出して、

 一人暮らしするようになってから、ケイスケは初めてアキラと

 キスをした。ケイスケはアキラが初めてだった。もっと早く

 アキラを抱きたかったとケイスケは初めての夜に言った。

 それ以来、アキラはケイスケだけのものだった。ケイスケ

 との蜜月を想いながら、アキラは眠りについた。



 翌朝、アキラは建物があまり壊れていない人が住んでいる

 地域に移動した。アキラはできるだけイグラを避けるように

 人と目を合わせなかった。中立地帯のバーまでなんとか

 無事に辿り着いたアキラは通信機と一緒に渡された金で

 水を買って飲んだ。トシマではブタタグが金の代わりで、

 イグラに負けた者から奪い取ったタグで人々が生活している。

 イグラに参加した者に渡されるタグの数は全部で5枚。

 トシマの水や食料の値は恐ろしく高く、タグだけで生活しようと

 考えると、3日でブタタグを全部使いきってしまう計算になる。

 貰った金もあっという間になくなってしまうだろう。イグラに

 勝たなければ、飢え死にする。アキラが途方に暮れていると、

 一人の男が声をかけてきた。

 「見慣れない顔だな。一人か?」

 無精ひげを生やした中年男は源泉と名乗った。情報屋を

 している彼はイグラには参加していないのだという。穏やかな

 話し方をする源泉はトシマについて色々と説明してくれた。

 北のホテルに行くと良いと言い残し、アキラを誘うでもなく

 源泉は店を出て行った。トシマにも世話好きなおっさんって

 いるんだなとアキラは思った。アキラがのんびり水を飲んで

 いる間にもラインを買い求める客が何人もいた。濃度によって

 値段は違うが、水数本の値段でドラッグが1本買えるのだ。

 薬で強くなって、イグラに勝ちたいと考える気持ちも分からない

 でもない。アキラは中立地帯であるということに油断して、

 ラインを買って飲んだばかりの男と目が合ってしまった。

 「さっきから何見てやがる!」

 男がアキラに絡んできた。

 「喧嘩なら店の外でやれよ。」

 バーの店員が叫んだ。男がアキラの腕を掴もうとした時、

 突然男は苦しみ出した。ラインの不適合だった。男は口から

 泡を吹いて倒れ、死んでしまった。

 「濃度40%なんてこいつには無理だったんだ。だから、

 30%にしとけって言ったのに・・・処刑人が来る前に

 お兄さんも店から逃げたほうがいい。」

 バーの店員はアキラに言った。



 アキラが店を出ると、外はもう日が沈んでいた。明日の朝まで

 バーに居ようと考えたのは間違いだったとアキラは思った。

 夜道は狩られる危険性が高い。アキラは北のホテルまでの

 道のりを急いだ。

 「よう、兄ちゃん。そんなに急いでどこ行くんだよ。」

 ガラの悪い3人組が声をかけてきた。アキラが無視して

 走り去ろうとした時、3人組の1人にいきなりナイフで腕を

 切りつけられた。そして、アキラが一瞬ひるんだ隙に男2人に

 背後から襲い掛かられ、羽交い絞めにされた。

 「放せ!」

 「へへへ・・・威勢がいいな。兄ちゃん、タグを出しな。

 俺は昨日飲んだラインが調子良いんだ。大人しくしてたら、

 殺さないでやるよ。よく見たら可愛い顔してるじゃないか。」

 男はアキラの頬にナイフをつきつけて、ニヤリと笑った。

 「美人はみんなアルビトロが持ってっちまうから久しぶりだな。

 今夜はたっぷりと3人で可愛がってやるぜ。」

 そう言って、男はアキラの血のついたナイフをペロリと舐めた。

 すると、何故か男は急に悶え苦しみ、倒れて死んでしまった。

 アキラはすかさず男の首にかかっているタグを奪い盗って、

 一目散に走って逃げた。どのくらいどこを走ったのかアキラ

 には分からなかった。気がついたら、アキラはすっかり道に

 迷ってしまっていた。北のホテルへの行き方が分からない。

 バーへ戻ろうにも道が分からない。迷子になってしまった

 アキラがとぼとぼと夜道を歩いていると、雨が降ってきた。

 アキラは手に握りしめたタグを見つめて、呆然と立ち尽くした。

 「アキラ。」

 ふいに声をかけられて、振り返ると、源泉が立っていた。

 「濡れるぞ。」

 源泉はアキラに自分の差していた傘を渡した。

 「おっさんが濡れるじゃないか。」

 アキラは傘を受け取らなかった。

 「俺はいいんだ。近くにねぐらがあるから。それか、

 一緒に来るか?」

 源泉はアキラに傘に入るように言った。アキラは傘に入り、

 源泉について行った。



 廃屋と化した教会に着くと、源泉は

 「痛むか?」
 
 と腕の傷を心配して、手当してくれた。包帯を巻きながら、

 「傷はかすり傷だ。心配しなくても、すぐに治るさ。」

 と源泉は言った。アキラは死んだ男から奪ったタグを手に

 握りしめたままこう言った。

 「ラインの不適合ってよくあるのか?」

 「ああ。そうだな。よくあることだな。」

 包帯を巻き終えた源泉は思いつめた顔のアキラに水を渡して

 「飲めよ。」

 と言った。アキラは水を受け取った後、ペットボトルに口を

 つけようとしなかった。じっと水を見つめながら、ボソッと

 つぶやいた。

 「源泉も俺を抱きたいのか。」

 それを聞いた源泉は慌てて否定した。

 「えっ?!違うって。馬鹿だな。そんなこと心配してたのか。

 襲ったりしないから、安心して飲めよ。」

 アキラはほっとしたような顔をして水を飲んだ。

 「おまえ何で北のホテルに行かなかったんだ?あの辺りは

 ビルをねぐらにしてる連中が住んでて危ないんだ。うっかり

 建物の中に入ろうものなら殺されるぞ。」

 源泉がアキラに忠告した。すると、アキラはまた暗い顔に

 なってしまった。

 「道に迷ったんだ。」

 「プッ。ハハハ・・・なんだ。迷子になったのか?」

 源泉は笑いながらアキラの肩をポンポンッと軽くたたいた。

 そして、アキラの肩を優しく抱き寄せて、こう言った。

 「明日、北のホテルまで案内してやるよ。今夜はここで

 休め。大丈夫。指一本触れないから安心して眠れよ。」

 「抱いていいよ。」

 アキラは源泉を見つめて言った。

 「俺に親切にして手を出さないって言った大人はあんたが

 初めてだ。俺に優しくする奴はみんな下心がある奴ばかり

 だった。俺は水に変な薬が入ってないかと疑うくらい人を

 信用しない奴だけど、あんただけは信用できる気がする。」



 源泉は目を閉じたアキラに口づけした。長い口づけの後、

 「本当にいいのか?」

 と源泉はアキラに聞いた。アキラはコクリと頷いた。源泉は

 アキラの上着を脱がせて、長椅子に押し倒した。うっすらと

 開いたアキラの唇に舌を入れ、舌と舌を絡め合わせながら、

 ズボンのベルトを外し、下着の上から触った。最初まだ柔ら

 かかったそれは源泉の手によってみるみる大きく膨らんで

 いった。源泉がアキラの胸に舌を這わせるとアキラは甘い

 吐息を洩らした。舌で転がすように舐めながら、源泉は下着

 ごとズボンを脱がせた。そして、アキラの固くなったものを

 口に含んだ。まるでご馳走を味わうように丹念に舐め上げ、

 先端に舌を差し入れる。源泉がチロチロと舐めると

 「あっ。ああ~」

 アキラがついに声を上げた。けっして不感症などではなく、

 むしろ感じ易い体質なのに、アキラは声を我慢してしまう癖が

 ある。幼い頃から、声を出すなと口を縛られていたりしたせい

 もあるのかもしれないが、アキラはギリギリまで声を殺して

 しまうほうだった。アキラは思わず手の甲で口を押さえた。

 それを見て、源泉は

 「どうした?恥ずかしがらずに声を出せよ。この教会の敷地は

 広いんだ。他の誰にも聞こえねぇから遠慮すんな。」

 「・・・」

 「まさか声を出せって言われたのも初めてじゃないだろうな。」

 「・・・」

 「まいったな。最近不幸な境遇の十代のガキが多過ぎる。」

 源泉は何を言われているのか分からないといった顔のアキラ

 の足を開かせて、唇を押し当てた。いきなり蕾にキスをされて

 アキラは戸惑った。舌が身体の中に入ってくると、アキラは

 よがり声をあげた。

 「あっ。そこ、やっ。いやっ。あっ。ああ~」

 素直に声を出したアキラに嬉しくなったのか源泉はしつこく

 舐めまわした。すると、アキラはイってしまった。後ろを舐めた

 だけでイってしまう淫乱さに源泉は少し驚いたが、潤んだ瞳の

 アキラの髪を優しく撫でて

 「アキラは可愛いな。」

 と言った。



 「あ、ああ~」

 源泉に挿入されてアキラは喘いだ。アキラは長椅子に両手を

 ついて腰を突き出す姿勢で源泉に抱かれた。源泉は後ろから

 貫き、尻を左右に押し広げて、抜き差しする様を見ていた。

 まるで蠢くように吸い付いてくるアキラの中は心地よく締め

 付けてくる。源泉はパンパンっと腰を打ちつけながら、左手で

 アキラの胸を摘み、右手を前にまわしてぎゅっと掴んだ。

 「あっ、や、やぁああ~」

 「気持ち良いか?」

 源泉がアキラの耳元で聞いた。そして、アキラのうなじを

 軽く噛んだ。

 「あっ、ああ~、イ、イク、イキそう。」

 「いけよ。」

 源泉が激しく腰を動かすとアキラは絶頂を迎えた。源泉は

 アキラが達すると同時にアキラの中に欲望を吐き出した。

 終わった後も源泉は優しかった。ティッシュで後始末をして

 くれ、服を着たアキラに毛布を渡してくれた。源泉はすぐに

 眠ってしまったが、アキラは源泉の寝顔をしばらく見ていた。

 すると、ガタンッと外で物音がした。アキラは心配になって

 恐る恐る窓から外を覗いてみた。

 「アキラ。」

 ケイスケが教会の窓の外に立っていた。アキラはびっくりして、

 ケイスケに言った。

 「おまえ、どうして?!何で来たんだ?」

 「何でって・・・アキラが心配だったから。俺もイグラに参加する

 事にしたんだ。昨日、登録して、タグを5枚貰ってきたよ。ほら、

 アキラに全部あげる。」

 ケイスケはタグを5枚アキラに渡そうとした。だが、アキラは

 「いらない。タグはケイスケが自分で持ってろ。それより、

 おまえ、イグラがどんなものか分かってんのか?」

 「分かってるよ。俺はアキラの役に立ちたいんだ。アキラの

 為にできる事をしたいんだ。アキラの為なら死んでもいいって

 思って、トシマに来たんだ。アキラの為に・・・お願いだから

 受け取ってくれよ。」

 ケイスケは泣きそうな顔でタグをアキラに差し出した。だが、

 その時、源泉が起きて来て

 「誰だ?アキラの知り合いか?」

 と聞いた。アキラは一瞬考えて、

 「友達だ。」

 と答えた。すると、ケイスケは泣きべそをかいたような顔で

 作り笑顔を浮かべて、こう言った。

 「アキラは守ってくれる人を見つけたんだね。もう俺は

 いらないんだ。」

 「ケイスケ。」

 「でも、タグだけは受け取って。俺は何の為にトシマに来た

 のか分からないから。」

 ケイスケはそう言うと、窓にタグを投げ入れた。

 「おいっ、待てよ。ケイスケ。」

 アキラが止めるのも聞かずにケイスケは泣きながら

 走り去って行った。



 翌朝、源泉は中立地帯のバーで無差別殺人が起きたから

 調べに行くと言って出て行った。アキラはケイスケが心配

 だったので、源泉と別れて、ケイスケを探しに行く事にした。

 あてもなく街を歩き、ケイスケを探していると、血に染まった

 ケイスケを発見した。アキラは最初ケイスケが怪我をしている

 のかと思って、駆け寄ったが、違っていた。ケイスケの服を

 染めていた血は返り血だった。

 「ケイスケ?おまえ、本当にケイスケなのか?」

 アキラは目の前にいるケイスケが信じられなくて、つい聞いて

 しまった。しかし、その言葉にケイスケはキレて怒り出した。

 「アキラ。恋人の顔を忘れちまったのかよ。あ、そうそう、

 もう恋人じゃないんだっけ?ふざけんなよ!あんな中年男に

 抱かれやがって!俺は許さねぇからな!ア~キ~ラ~」

 アキラはケイスケに腹を殴られて、気を失ってしまった。

 目が覚めると、見知らぬ廃墟の一室にいた。

 「お目覚めかい?お姫様。」

 ケイスケがニヤッと笑って言った。

 「アキラはいいよな~。大人をたらしこむのが上手くて。

 孤児院でアキラが何で嫌われてたのか知ってるか?アキラが

 淫乱だったからだよ。昨日も俺、窓から見てたんだ。随分と

 盛大に喜んでたよな。恥ずかしくないのかよ。この淫乱!」

 ケイスケはアキラの腹を蹴った。

 「昔からアキラは働きもせずに遊び暮らして、俺はちっぽけな

 工場で毎日働いて、ドライバーを触らせてもらえるようになる

 までに1ヶ月もかかったよ。」

 ケイスケはアキラを踏みつけて言った。

 「昨日、この廃屋でラインと一緒に工具箱を見つけた時、

 俺の人生なんだったのかと思ったよ。そしたらさ~

 急にアキラの泣き顔が見たくなったんだ。」

 ケイスケは工具箱からドライバーを取り出した。



 「ケイスケ!やめっ、やめろ!」

 ケイスケは嫌がるアキラの手を押さえつけ、ドライバーで

 床に串刺しにした。アキラの手の平から血が溢れ、アキラは

 絶叫した。ケイスケは笑いながら、アキラの服を引き裂いて

 破り、あらわになった胸に手を伸ばした。胸の突起を摘んで

 「どれがいいかな。」

 とケイスケは馬乗りになったまま片手で工具箱の中を探した。

 ケイスケが選んだのはアイスピック並みに細いドライバー

 だった。

 「ピアスプレイって知ってるか?」

 ケイスケはそう言うと、アキラの乳首をドライバーで貫いた。

 「うっ、うわぁああああ~」

 アキラが再び絶叫した。

 「大袈裟に騒ぐな~。こんな細いの刺したってピアスと

 代わんないって。太いのはこっちに挿してやるよ。」

 ケイスケがアキラのズボンを下着ごと脱がせ、アキラの

 尻の窪みに先の尖っていないドライバーを挿し込んだ。

 「やっ、やぁあああ~、やめっ。やめてくれ。ああああ~」

 「おい、アキラ、暴れるなよ。動くと中が切れるぜ。」

 ケイスケはゆっくりとドライバーを挿入すると、

 「もう1本だ。」

 と言って、同じタイプの極太のドライバーを挿し込んだ。

 「アキラ。どうだ?ドライバー2本銜え込んだ感想は?」

 「ああ~、い、痛い。ああああ~」

 「チッ。ドライバーで感じてやがる。」

 ケイスケは2本のドライバーを挿した穴の中を覗きこんだ。

 アキラの中はヒクヒクと猥らに蠢いて、ケイスケを欲しがって

 いた。だが、ケイスケは

 「淫乱にはもっとお仕置きが必要だな。」

 と言って、アキラの大きくなったものを手で掴むと、今度は

 一番細くて小さい先の尖っていないドライバーを蜜の溢れる

 先端に挿した。

 「あ、あ、ああ、あああ~」

 アキラが生理的な涙を浮かべて嬌声をあげた。

 「アキラは尿道を刺激されるのが大好きだからな。本当は

 もうイキたいんじゃないのか?イかせてくれって頼んだら、

 俺のをぶち込んでやるよ。欲しいんだろ?言えよ。」

 「ほ、欲しい。」

 アキラは思わず自分の発した言葉に顔を赤らめた。

 「何を今更、恥ずかしがってやがる。」

 ケイスケは嘲笑いながら、ドライバーを全部引き抜き、

 アキラの中に身を沈めた。

 「あ、ああ、あああ~」

 「気持ち良いか?アキラはこれが大好きだもんな。」

 「す、好き。あっ、ケイスケ・・・あ、ああ~、ああ~」

 アキラは快楽の波に溺れて痛みも忘れてしまっていた。

 手と胸から血が流れ、引き抜かれたドライバーは真っ赤に

 染まっていた。床に転がる5本のドライバーはケイスケの

 アキラに対する愛の妄執だった。アキラは愛するケイスケに

 キスをした。唇を重ね合わせると、アキラは絶頂を迎え、

 二人同時に果てた。ケイスケは満足げに微笑み、こう言った。

 「これからは俺がずっとアキラを守ってやるよ。俺はラインを

 飲んで強くなったんだ。」

 ラインに手を出したら、二度と元へは戻れない。アキラの

 大好きだったケイスケはもうこの世にいないのと同じだった。

 アキラは悲しそうに微笑んだ後、床に転がっているドライバー

 をケイスケの首に刺した。

 「な、何で・・・」

 ケイスケは信じられないといった顔をして崩れ落ちた。

 アキラはケイスケの頚動脈に更にもう1本ドライバーを深く

 突き刺した。ケイスケは首に2本のドライバーを刺した状態で

 息絶えた。アキラはケイスケの返り血を浴びて、闇の中で

 薔薇色に染まった。床に広がる血の海は二人の愛を包み込む

 魔法のように侵食した。アキラはケイスケの死体に接吻した。

 闇の空に浮かぶ月だけが二人を優しく照らしていた。

                                 (完)



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咎狗の血「絶望」

咎狗の血部屋




 闇に浮かぶ月が俺を嘲笑うように見下ろしていた。

 救いようのない喪失感と倦怠感が俺を堕落させる。

 死体の腐臭が染み付くのが嫌で街をさまよい歩き、

 希望の欠片もないトシマで朽ち果てるのを待っていた。

 俺の人生はなんだったのか・・・もう、どうでもいい。

 アキラが総てに疲れた負け犬のように座り込んでいると、

 畏怖の象徴とも言うべき闇の色に染まった男が現れて、

 アキラを連れ去った。

 「シキ、やめてくれ。あっ、ああ・・・」

 男はバスルームでアキラを犯した。前戯もなく、いきなり

 背後から犯されて、アキラは苦痛と快楽の狭間で啼いた。

 髪を?まれ、顔を壁に押し付けられ、両手を後ろに捩じ上げ

 られた。立ったままの姿勢で男を受け入れるのは辛かった。

 肉が裂けて血が流れるのを感じて、アキラは恐怖した。

 「いっ、痛い。あ、ああ~。シキ、乱暴にしないでくれ。」

 「負け犬が俺に指図するのか?犬は犬らしく哀願しろ。お前は

 犯されるのを承知でついてきたはずだ。何も言わなくても、

 お前の利用価値などそれ以外に存在しない。お前は犯される

 為に存在する犬だ。犯されるのが初めてでもないくせに、

 少し切れたくらいで、痛がるのか?」

 シキはアキラの耳元で罵ると、激しく腰を突き動かした。

 「あっ、ああ、ああああ~」

 アキラは痛み以上の快楽に支配されて、達してしまった。

 シキはアキラの中に出した後、こう言った。

 「吠える犬ほど弱いというが、お前はまさにその通りだ。

 初めて会った時のお前は目が生きていた。死んだ目つきの

 者どもが集う街で、お前の目は死んでいなかった。それが

 数日見ないうちに、すっかり死んだ目になっていた。俺は

 それが腹立たしくて、連れて来たのだ。これからは、犬は

 犬らしく飼い主に従え。俺がたっぷりと調教してやる。」

 シキはアキラの左手に手錠をかけ、片方の手錠をバスルーム

 の手すりに繋いだ。そして、裸のままのアキラを置いて、

 去っていった。


 アキラは後悔した。シキの犬として暮らす事になるとは思って

 いなかったからだ。これじゃあ、まるで性奴隷じゃないか・・・

 アキラはシキに何かを期待した自分が馬鹿だったと思った。

 シキの放った白い液体が尻から流れ出るのを不快に感じて、

 アキラは便器の横のトイレットペーパーを右手でとった。

 片手で身体を拭いた後、途方に暮れて左手を見つめた。

 アキラはバスルームのバスタブとトイレの間の手すりに手錠を

 かけられて左手を拘束されてしまった。全裸でバスルームに

 監禁されて、アキラはこれから何をされるのか不安になった。

 無性に逃げ出したくなって、アキラは手錠の鎖を引っ張ったが、

 びくともしなかった。手錠の鍵はシキが持っている。

 「手錠はずせ!部屋にいるんだろ?シキ!!」

 アキラが叫んでも、バスルームの扉は開かず、

 「うるさい!静かにしていろ!」

 と怒鳴り声だけが聞こえた。アキラは少し考えて、こう言った。

 「トイレに行きたいんだ。手錠をはずしてくれ。」

 すると、しばらくの沈黙の後、バスルームの扉が開いた。

 「漏らしたのか?」

 シキはアキラの足元に転がっているトイレットペーパーを見て

 嫌そうに聞いた。

 「ち、違う。」

 アキラは焦って否定した。シキはフッと笑って近づいてきた。

 「本当にトイレに行きたいのか?ならば、俺がさせてやる。」

 シキはアキラの右手を掴んで床に座り込んだままのアキラを

 持ち上げようとした。

 「確かにちょっと距離が足りないな。」

 シキは上着のポケットから手錠の鍵を取り出した。そして、

 右手を掴んだまま手錠を外し、アキラをトイレに座らせた。

 「大じゃなくて小のほうだよ。」

 と、アキラは文句を言って立ち上がろうとした。しかし、シキは

 「座ってしろ。見ててやるから。ついでに大のほうもしておけ。」

 「見られてたら出るものも出ない。向うに行っててくれ。」

 「断る。逃げられたらかなわないからな。」

 ニヤッと笑ったシキにアキラはチッと舌打ちした。

 「やはり、逃げる気だったのか?馬鹿な奴め。手錠を外した

 だけで逃げられると思ったか?ここは4階だぞ。」

 アキラは曇りガラスで外の見えないバスルームの窓を

 振り返って見上げた。

 「お前の考えている事くらい手に取るように分かるぞ。」

 シキは嘲笑い、満足そうに見下ろした。そして、

 「もし、お前が逃げ出したなら、地の底までも追いかけて、

 殺してやる。」

 と言った。


 アキラはシキの前で困惑した。見られるのが恥ずかしくて、

 出なかったのだ。

 「立て。」

 と、シキに言われて、アキラはトイレから立ち上がった。

 「手伝ってやるから後ろを向け。」

 と言われて、アキラは後ろを向かされた。シキはアキラの腰を

 つかむと自らのものを挿入した。さっき切れたばかりの傷口が

 開いたのか入れただけで、アキラの身体に激痛が走った。

 「うっ、ううっ、あ、ああ~」

 アキラは呻いた。無意識のうちに男を受け入れ易くする為、

 トイレに手をついて、腰を突き出した。

 「淫乱め。いいものをくれてやる。」

 シキはそう言うと、アキラの腰を?んでグッと突き上げたまま

 の姿勢で放尿した。生温かいものがアキラの体内に溢れ、

 アキラの腸はシキによって汚された。

 「ひっ、ひぁ、あ、ああ~」

 アキラは少しパニックを起こしたように声をあげた。

 シキは満足げに引き抜くと、

 「こぼすなよ。」

 と言って、アキラの尻を叩いた。

 「あっ、畜生、俺は便所じゃねぇぞ。」

 アキラはキッとシキを睨みつけた。

 「まだそんな目ができるのか?」

 シキがフンっと鼻で笑い、再び挿入してきた。

 「あ、ああ~」

 入れたとたん、アキラは失禁してしまった。便器に尿が放たれる

 音がアキラの羞恥心を煽り、快感の波が身体を震わせた。

 アキラはシキに貫かれながら、自分の中で何かが壊れた

 ような気がした。シキが動くたびに体内からピシャピシャと

 水の音が聞こえる。アキラは溢さないように必死で堪えた。

 アキラの腹が揺れる度にぎゅるる~っとお腹が鳴って、鈍い

 痛みを感じた。どうしようもない排泄感と共にアキラの腸は

 うねるように動き、シキを締め付けた。

 「あ、ああ~、もう、ダメだ。で、出る。」

 アキラが排泄を訴えるとシキは自らを引き抜き、アキラを

 トイレに座らせた。ビシャーッという酷い音と共にアキラは

 排泄した。


 シキはトイレの水を流した後、シャワーでアキラを洗い、

 自らも洗った。バスルームの床や便器にも水をかけて掃除し、

 アキラを部屋に連れて行った。シキは自分が着替えた後、

 いつまでも濡れたままのアキラの身体をバスタオルで拭き、

 壊れたように大人しくなったアキラをベッドに寝かしつけた。

 眠りについたアキラは夢を見た。ケイスケとオムライス味の

 ソリドを食べている夢だった。仲良く幸せな時間を過ごして

 いたのも束の間、ケイスケが豹変し、ドライバーでアキラの

 首を刺した。アキラは絶叫し、夢から目が覚めた。

 「悪夢でも見たのか?」

 隣で寝ていたシキが聞いてきた。アキラは黙って頷き、

 もう一度眠ろうとしたが、悪夢を見た後ですぐに簡単に眠れる

 わけがない。ぼんやりと壁を見つめているアキラにシキは

 「眠れないなら、食事でもするか?」

 と言って、アキラの寝ているベッドに水とソリドを放り投げた。

 ソリドはオムライス味だった。アキラが躊躇っていると、シキは

 水を口移しでアキラに飲ませた。ソリドも一口サイズにちぎって

 アキラの口に押し込んだ。まるで赤子の世話をするように

 シキはアキラの食事の世話をした。食事が終わった後、

 アキラはシキに抱かれた。バスルームの時と違って優しく

 愛撫され、ベッドの上でアキラはシキを受け入れた。

 「あ、ああ、あああ~」

 声を上げながら、アキラはシキにしがみついた。腰を使い、

 頭の中から悪夢を追い出そうとした。しかし、快楽で麻痺する

 脳裏には何故かケイスケの笑顔が浮かんでくる。激しく

 シキに抱かれれば抱かれるほど、ケイスケの不器用な愛撫や

 下手くそなキスを思い出してしまう。アキラはこれまでにも

 数え切れないほどの男に抱かれてきたが、ケイスケはアキラ

 一人しか男を知らなかった。アキラはケイスケが好きだった。

 見知らぬ男に抱かれながら、ケイスケの事を想うのは今まで

 何度もあった。相手に対して失礼だとかそういう倫理観が

 アキラには欠けていた。激しく突かれて、アキラの快楽の波が

 絶頂に達した。

 「あ、ああ、ああああ~ケイスケ、ああああ~」

 一瞬、頭の中が真っ白になった後、アキラはしまったと思った。

 恐ろしい形相でアキラを見つめるシキの顔がアキラのすぐ

 目の前にあった。


 「俺に抱かれながら、ケイスケのことを考えていたのか?」

 シキはアキラに問いかけたが、アキラは黙って答えなかった。

 シキは怒って、アキラをベッドから突き落とした。裸でベッド

 から転げ落ちたアキラはシキに日本刀を向けられた。

 「死ぬのが怖いか?」

 緊迫した空気の中、嘲るように言うシキにアキラは

 「殺せ。」

 と低い声で言った。

 「あんたのペットになるくらいなら死んだほうがマシだ。

 殺せよ!」

 アキラはシキを睨みつけて言った。

 「その目だ。俺が望んでいたのは今のお前だ。お前には

 死ぬよりも辛い屈辱を与えてやる。俺を愚弄した罰だ。」

 シキは複数の鎖がついた気味の悪い首輪をアキラの首に

 つけた。そして、両の手首に手枷を嵌めて、首輪の左右の

 鎖に繋いだ。シキは右の胸の突起を指で摘むとクリップを

 つけた。鈍い痛みにアキラは反応し、

 「あっ。」

 と声をあげた。シキはクリップと鎖を繋ぎ、左も同じようにし、

 2本の鎖の先に綿棒の大きさの先の丸いガラスの棒を取り

 付け、大きくなりかけたアキラの先端にゆっくりと挿し込んだ。

 「あ、ああ、あああ~」
 
 アキラが声をあげると、

 「こんなところまで感じるのか?淫乱。」

 とシキが言った。アキラは顔を真っ赤にして、咄嗟にシキを

 蹴ろうとしたが、シキに足首を?まれて、足枷を嵌められて

 しまった。シキは左足と右足の間の鎖をアキラの首の後ろに

 かけた。足を大きく上げさせられたアキラは全てを曝け出される

 形となった。シキは満足げに見下ろすと、足の親指でアキラの

 蕾をいたぶった。シキが軽く蹴るように足を動かすたびに

 ズブズブと親指が突き刺さる。アキラはその屈辱に啼いた。

 「あっ、あ、あ~」

 「気持ち良いか?」

 アキラはイヤイヤするように首を振った。

 「もっと、良くしてやる。」

 シキがバイブをアキラに突き挿した。

 「あ、ああ、あああ~」

 アキラは姿勢を崩して仰向けに倒れてしまった。寝転がった

 まま足を開く形でアキラはバイブに責め立てられた。シキが

 アキラを踏みつける。ガラスの棒が入ったまま踏みつけられ、

 アキラは悲鳴を上げた。シキはフンっと鼻で笑い、根元から

 袋にかけて軽く何度も踏みつけた。

 「や、やめっ、あ、ああ~」

 アキラが嬌声を上げながら、懇願すると、シキはバイブの

 スイッチを強にして、部屋を出て行ってしまった。


 数時間後、部屋に戻ってきたシキはアキラが部屋を出る前と

 同じ格好で床に寝転がっているのを見て呆れたように言った。

 「逃げなかったのか?」

 アキラは黙って喘ぎながら、虚ろな瞳でシキを見つめた。

 「部屋の鍵はかけていなかったのだ。逃げようと思えば、

 逃げられたはずだ。何故だ。何故お前は逃げなかった。

 それとも、よほどバイブが気に入ったのか?」

 シキはアキラの腹に飛び散る白い液体を見て、蔑むように

 言った。シキはバイブに喘ぐアキラにこう言った。

 「俺の犬になるって決めたのか?良い心がけだ。逃げたら、

 殺すと言った言葉を覚えていたのだろ。お前にも少しは

 学習能力があったのだな。もっとも手枷足枷をつけられた

 人間が裸で逃げ出したところで無事ケイスケの待つ家に

 帰れる保証はないがな。」

 「ケイスケは死んだよ。」

 「・・・そうだったのか。」

 「俺を待っている人間はもういないんだ。」

 アキラは苦しそうに喋った。

 「だから、俺は・・・帰る場所がないんだ。あっ、ああ・・・」

 「そういうことか。」

 シキはフッと笑うと、バイブのスイッチを切って、アキラから

 抜き取った。アキラを苛む道具、手枷足枷、首輪を外すと、

 真剣な顔でこう言った。

 「俺はケイスケの代わりにはなれない。だが、お前が俺の

 所有物になるのなら、お前が望むものをくれてやる。お前は

 何が望みだ。」

 アキラは一瞬、考えたように俯いたが、やがて語りだした。

 「子供の頃はずっと、自由が欲しかった。でも、自由を手に

 入れると、自分が何をしたいのか分からなくなって、何もかもが

 どうでもよくなった。自由の先にあるものが見えなくて、俺は

 不安になった。すると、今度は大人に抑圧されていた子供の

 頃のように縛られたくなった。誰でも良かったんだ。俺を愛して

 くれる奴だったら、誰でも・・・酷いことをされてもいいから、

 不安を忘れさせて欲しかったんだ。世の中に絶望した頃に

 俺はケイスケに抱かれた。ケイスケは俺を愛してくれたし、

 四六時中まとわりついて束縛してくれた。でも、ケイスケが

 死んで、分かったんだ。やっぱり俺はケイスケのことが好き

 でも愛してはいなかった。あんたが望みを叶えてくれるって

 言うなら、俺を愛してくれ。あんたは他の奴らと違って、

 ケイスケの名を呼んだ俺に怒っただろ?身体だけが目当てで

 やらしてくれるならなんだっていいって男は星の数ほどいる

 けど、本気で怒った男はあんたが初めてだ。だから、俺は

 逃げなかったんだ。」


 「わかった。お前の望みを叶えてやろう。俺がお前の所有者

 となり、骨の髄まで愛してやる。」

 シキはアキラに口づけをした。舌を吸い上げるように絡め

 合わせ、アキラを抱きしめた。そして、アキラを横向きに

 抱え上げ、ベッドに連れて行った。

 「何も考えられなくなるくらいの痛みと快楽を与えてやる。

 だから、もうお前は何も考えるな。」

 とシキは言った。アキラは美しいシキの瞳を見つめて、コクリと

 頷いた。アキラは首筋から胸へ下腹へと這い回るシキの舌に

 くすぐったさを覚えながら、歓喜の声をあげた。シキはアキラの

 立ち上がりかけたものを口に含むと、先端に舌を挿し入れる

 ようにして、幹全体を吸い上げた。

 「あ、ああ~、あ、シキ、いやぁ、やめっ、もうイク。」

 アキラが達する瞬間、シキは顔を離して、アキラが放つのを

 眺めた。そして、下腹部に飛んだ白い液体を指で拭うと、

 アキラの口元に持って行き、

 「舐めろ。」

 と命令した。アキラは自分の放ったもので汚れたシキの指を

 舐めた。シキは嗤うと、アキラの蕾に指を2本入れた。

 「あ、ああ、ああ~」

 アキラは喘ぎ、無意識に腰を浮かせて悦んだ。いつの間にか

 指を3本、4本と増やされて、5本目をねじ込もうとするシキに

 「いっ、痛いっ、ああ~、5本は無理。入らないって。あ~」

 と、アキラは顔を歪めて苦痛を訴えた。

 「フィストはした事ないのか?」

 「あ、あるわけないだろ。」

 「では、やめておこう。」

 シキは指を全部抜き取ると、代わりに己の欲望をアキラの

 身体にねじ込んだ。

 「あっ、ああ~、あああ~」

 アキラは嬌声をあげてシキにしがみついた。身体の奥底から

 湧き上がる快感がアキラの思考能力を止めた。淫らに腰を振り、

 貪るようにシキを締め付けた。激しく突かれて、アキラはまた

 イキそうになった。愛する人に抱かれる事が総てを奪い去り、

 頭の中が真っ白になるほどの快楽をもたらすものだとアキラは

 知らなかった。シキに愛を求めて、初めて自分がシキに何を

 望んでいるのかをアキラは知った。アキラは愛する人が

 欲しかったのだ。シキは魅力的で出会った時から死に対する

 恐怖とは裏腹に魅かれるものがあった。闇の色に染まった

 シキに真紅の薔薇に染めて欲しいという願望がアキラの中に

 蠢いた。呪われた血をたった一つ浄化する方法は自らを

 薔薇色に染め上げて地獄に落ちることであるとアキラは

 最初から知っていたのだ。シキを愛することで地獄への扉が

 開かれるとアキラは予感していた。逃げ出したくなるほどの

 恐怖と絶望の中で愛は燃え上がる。シキへの愛はまるで麻薬

 のようにアキラを侵し、絶望で満たされる欲情を開花させた。

 アキラは愛するシキを感じながら、絶頂に達した。シキは

 アキラの中に放つと、アキラに口づけした。甘く優しい口づけは

 アキラを狂わせた。夜が終わりを告げて、静寂な朝を迎える前に

 アキラはシキにもう一度抱かれた。身体が動かなくなるまで

 シキに愛して欲しいとアキラは願った。欲望の果てにアキラが

 見た世界は今までとは違う穏やかな世界だった。窓から見える

 トシマの空には太陽が昇り、闇は消え、空の総てが薔薇色に

 染まっていた。


                               (完)





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進撃の巨人二次創作小説

進撃の巨人部屋


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進撃の巨人「しつけ」

進撃の巨人部屋


 「兵長。こんな所に呼び出して・・・何の用ですか?」

 薄暗い倉庫に呼び出されたエレンはリヴァイが手に

 持っている縄から目を逸らすように俯きながら言った。

 「何って?分かってんだろ?躾だよ。」

 「俺が一体、何したって言うんです。また因縁つけて、

 兵長は俺を縛る気ですか?」

 「なんだと!掃除が下手だから、注意してんじゃねぇか!

 見ろ。この窓枠。ホコリがいっぱいだ。」

 リヴァイは倉庫の窓枠を指でなぞると、埃が付着した

 人差し指をエレンの鼻先に突き付けた。

 「ちっ。汚ねぇな。掃除もろくにできない半人前のくせに。

 偉そうに口応えしてんじゃねぇぞ。今から、たっぷりと

 躾けてやる。エレン。跪け。」

 エレンは床に跪いた。

 「手を出せ。縛ってやる。」

 エレンはおずおずと両腕を差し出した。だが、リヴァイは

 フッと笑って、

 「だいぶ縛られるのには慣れてきたみたいだな。それとも、

 この前みたいに嫌がって、俺に折檻されるのが怖いのか?」

 「はい。怖いです。もう、蹴られたくありません。」

 「そうか。じゃ、今日は酷い事はしないでいてやるよ。

 立て。そして、自分で服を脱ぐんだ。」

 エレンは大人しく立ち上がると、服のボタンを外し始めた。

 しかし、エレンは服を脱ぎ捨てた後、

 「兵長は脱がないんですか?」

 と、質問した。その言葉にリヴァイは気を悪くしたのか、

 目つきの悪い目を更に睨みつけるように細めて、こう言った。

 「俺が脱げって言ったら、さっさと脱げ。下も脱げよ。

 そんで、全裸で正座しろ。」

                      


 エレンは逆らう術を知らない子供のようにリヴァイの

 言う通りにズボンとパンツを脱ぎ捨てると、倉庫の床に

 手をついて、しゃがみこみ、何もかも諦めたような顔をして

 正座した。リヴァイは黙って近づくと、エレンの手首を掴んで

 後ろ手に捩じ上げ、両手首を縛った。そして、胸と腕を縄で

 締め上げ、後ろからグルッと縄を首にまわして胸の縄に通し、

 更に胸を縛った。

 「きついか?」

 「はい。きついです。」

 「きついくらいが丁度いい。」

 リヴァイはエレンの身体を指でピンと弾いて言った。

 「次はどうして欲しい?」

 「兵長のが欲しいです。兵長のを舐めさせて下さい。」

 「良い子だ。口を使って俺のズボンのファスナーを下せ。

 犬は犬らしくするんだ。そうしたら、しゃぶらせてやる。」

 リヴァイはエレンの顔の前に立った。エレンは一瞬、

 躊躇ったもののファスナーを口に咥え、ゆっくりと

 引き下ろし、下着の上からパクッと口に含んだ。

 「おいおい。待てよ。それじゃあ、舐められないだろ。

 エレンはバカなのか?今、脱いでやるから、待ってろ。」

 リヴァイはそう言うと、ズボンと下着とブーツを脱いだ。

 下半身だけ生まれたままの姿になったリヴァイはエレンの

 髪をクシャッと片手で掴んで、エレンの顔を上げさせた。

 「咥えろ。」

 冷たく見下ろすリヴァイの顔にエレンはゴクリと喉を

 鳴らした。そして、立ち上がりかけたリヴァイのものを

 口に含んだエレンは口の中でみるみるうちに大きくなる

 リヴァイに欲情した。エレンはリヴァイを愛おしそうに

 頬張りながら舐め続けた。

 「ふぅ。はぁ。もっと舌使えよ。」

 リヴァイに言われて、エレンは子犬のように一生懸命ペロペロ

 舐め上げた。リヴァイの息が荒くなるにつれて、エレンも

 興奮するのかエレンの下半身は大きく立ち上がっていた。

 「ふっ。エレン。しゃぶってるだけで感じるのか?」

 リヴァイはそう言うと、そっと足でエレンを踏んづけた。

 「あっ。いっ、痛い。やめっ。」

 「感じてるくせに。足でされるのは気持ち良いんだろ?」

 「そ、そんなことない・・・です・・・あっ。」

 「フッ。咥えたまま話すなよ。ホントいやらしい奴だな。

 ほんのちょっと足でしてやっただけで、蜜が溢れてきたぞ。

 ひょっとして、もう欲しいんじゃないのか?」

 「はい。欲しいです。もう入れたいです。兵長、お願いです。

 早く下さい。」

 エレンはリヴァイに懇願した。

                          


 「よし。良い子だ。ちゃんとおねだりできたな。」

 リヴァイはそう言うと、ローションの小瓶を胸ポケットから

 取り出し、エレンの下半身に垂らした。そして、自ら尻に

 ローションを塗り、エレンに跨った。リヴァイはエレンを

 掴みながら、ゆっくりと身を沈めていった。

 「あぁ。兵長の中、とても熱いです。」

 慣らしてもいない肉の塊が自分を締めつけるように

 包み込む感覚にエレンは眩暈を感じた。エレンはリヴァイを

 抱きしめたくても手を拘束されていて、抱きしめられない

 もどかしさに狂おしいほどの焦燥を覚え、愛しい人に

 支配される喜びを覚えた。なすがままにされる安堵感は

 犬に成り下がる絶望を希望へと変えていた。エレンは

 無言で腰を振るリヴァイに合わせて、腰を動かした。

 「あっ。うっ。腰、動かすな。」

 リヴァイが顔を少し歪めて、言った。

 「どうしてですか?兵長。」

 「あっ。慣らしてから入れた時と違って・・・あっ。もっと

 ゆっくり動かさないと・・・切れる。あっ。下手くそ。あっ。」

 「でも、初めての時よりは上達したでしょ。今日で5回目だから。

 俺も兵長を気持ち良くさせてあげたいんですよ。下手でも

 我慢してください。」

 「あっ。エレン。やっ、やめ。・・・あっ。んっ。あぁ。」

 乱雑に激しく腰を動かすエレンにリヴァイは喘いだ。

 やめろと言ってもやめない子犬の飼い主のような

 困った顔をして、リヴァイはエレンに身を任せた。

 「兵長。好きです。結婚してください。」

 子犬が激しく腰を振りながら、リヴァイの耳に甘噛みした。

 「あっ。あっ。ああ~」

 突然の告白にリヴァイは絶頂に達してしまった。そして、

 身体を震わせ、激しく締めつけるリヴァイの中でエレンも

 至福の時を感じながら、欲望を解き放った。


                          

 行為の後、リヴァイに縄を解いてもらったエレンは

 リヴァイが体内に入ったエレンの体液をティッシュで

 拭い取っている姿を見つめながら、ボソっと言った。

 「男同士って妊娠しないのかな。」

 「・・・はあ?」

 「俺が兵長を孕ませたら、できちゃった婚とか早く結婚

 できると思って・・・」

 無邪気な笑顔で言うエレンにリヴァイは呆れて閉口した。

 「俺、兵長に童貞を捧げた瞬間から、絶対に兵長と

 結婚しようと思ってたんです。」

 「ま、待て。それは無理だ。」

 「兵長が待てと言うなら、俺は何年でも待ちます。

 俺はまだ子供だから、俺が大人になったら、兵長は

 俺と結婚してくれますか?」

 「本気で言ってるのか?」

 「はい。本気です。」

 「分かった。10年待て。もし、10年間後、俺が誰からも

 相手にされないジジイになって、今、付き合ってる奴ら

 全員と別れることができたら、結婚を考えてやってもいい。」

 「本当ですか?嬉しいです。俺、10年間、兵長の調教に

 耐えながら、待ちます。」

 屈託のない笑顔でニコッと笑うエレンをリヴァイはバカだと

 思った。そして、バカな犬ほど飼い主は可愛いと思う心理が

 ようやく分かった気がした。誰の手垢もついていない子犬を

 人の手垢にまみれた自分が所有して良いものかという

 罪悪感もあったが、可愛い無垢な子犬を自分のものにできる

 喜びは倫理的な価値観を超えていた。

 「もう一回してもいいですか?」

 エレンがリヴァイに抱きついてきた。エレンはリヴァイを

 押し倒して、キスをし、首をペロペロと舐めた。リヴァイは

 首と耳が弱かった。どうしてそうなったのか、遠い昔に

 調教を受けた記憶も思い出したくなかったし、女王様の

 真似事をして楽しいと思うようになった経緯も思い出したく

 なかった。エレンと火遊びのつもりで寝てからまだ2週間

 しか経っていないのに、腐れ縁でずっと続いている男達との

 関係を断ってもいいと考えるようになったのは、自分でも

 不思議で仕方なかった。でも、それは眩しいまでに純情な

 少年の愛情を独占できた喜びに、年甲斐もなく溺れて

 しまったからなのかもしれない。若く美しい少年の身体に

 溺れながら、子犬の調教は難しいとリヴァイは思った。


                          (完)



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進撃の巨人「過去」

進撃の巨人部屋


 あれは雨音の煩い夜だった。窓を締め切った部屋でリヴァイは

 男に抱かれながら、叩きつけるように降り続ける雨を見つめていた。

 軋むベッドの上で男が果てるのをただひたすらにリヴァイは待っていた。

 王侯貴族や軍の上層部や商会の豚どもと寝るようになって、

 十年の歳月が流れていた。最初は調査兵団の軍資金が足りないから

 投資してくれる商会の豚に金を出させる為の接待をするよう

 エルヴィンに頼まれたのが始まりだった。噂はすぐに広まり、

 一晩だけでも良いから接待してくれと頼む金持ちが山ほど現れた。

 子供の頃から客を取る事に慣れていたリヴァイがそれを受け入れると、

 エルヴィンは毎週のように性接待をリヴァイに強要した。

 大地に降り注ぐ雨水のようにお金を落としていく男たちはリヴァイにとって

 雨風と同じだった。どんなに風が強くてもどんなに激しく雨が降っても

 誰も守ってくれない路地裏に咲く花のごとくリヴァイは耐えた。

 不幸な環境で育つと恋愛なんてものとは無縁になる。エルヴィンとは

 幾度となく身体を重ねても愛を感じた事は一度もなかった。

 他の男たちも同様で、欲望に忠実にリヴァイの身体を貫くだけで、

 誰もリヴァイと恋愛をしようとはしなかった。ただ一人を除いては・・・

 真っ直ぐに見つめる少年の瞳をリヴァイはふと思い出した。

 エレン・イェーガー。リヴァイは子犬のように懐くエレンが好きだった。

 最初はエレンを苛めたりもしたが、告白されてからは純粋な気持ちで

 エレンと付き合っていた。男に抱かれても何の愛情も感じなかった

 リヴァイがエレンにだけは抱かれる度に愛情が湧いてくる。

 子犬の飼い主に似た感情も無きにしもあらずだったが、

 陽のあたる場所で咲く花が幸せそうなようにリヴァイも

 エレンといる時だけ幸せだった。ずっと陽のあたらない場所で、

 雨風に曝され、人に踏みつけられて、孤独に咲いていた花だった

 リヴァイはエルヴィンに拾われ、エルヴィンの所有物となった。

 だが、エルヴィンは人が地面に咲く花を摘んで、花瓶に生け、

 水を与えて、部屋に飾り、枯れ果てるまで愛で続けるように

 愛玩物としてリヴァイを扱った。強欲な男たちは美しい花を絶賛し、

 奪い合い、花は花で人ではない事に気付くと、共有しあった。

 リヴァイは賤しい身分ゆえに人と認めてもらえなかったのである。


                               

 豚のように心が醜く肥った男にリヴァイは両手を鎖で縛られて、

 組み敷かれ、激しく腰を突き動かされていた。

 恍惚とした顔の豚を見るには耐えがたく、リヴァイはエレンの事を想った。

 リヴァイしか知らないリヴァイだけの無垢な少年。

 耳元で愛を囁く少年をほんの少し思い出しただけで、

 リヴァイの身体は熱く火照り、絶頂に達してしまった。

 「あっ、イク・・・ああ・・・エ、エレン・・・」

 リヴァイの嬌声に恍惚とした顔で果てた豚は顔色を変え、

 リヴァイを殴った。

 「わしの寝所で他の男の名を呼ぶな!エレンと言ったな。

 あの巨人化する少年とも寝ているのか?本当にお前は誰とでも

 寝るのだな。あんな化け物のどこが良いのだ?」

 「・・・」

 「王族であるわしを愚弄した罪は重いぞ。値打ちのない男娼なら、

 その舌を引っこ抜いてやるところだ。謝れ。返答によっては

 両手両足切り落として花瓶に詰めて、部屋に飾ってやっても良いのだぞ。

 こんなに愛しているのに・・・何故、わしの気持ちが分からぬのか?」

 豚が泣き出した。愛というのは厄介なものだ。妻子ある身で、

 花を貪り喰う卑しい豚に成り下がり、たらふく喰った後で、

 愛まで欲しいと言うのだから、貪欲にもほどがある。

 身分の高い人間ほど己を蔑にする者を嫌う。

 リヴァイはうんざりした顔で、こう言った。

 「別れてくれ。もう今日で最後にしてくれ。」

 男は泣き崩れた後、怒りの形相で鞭を振るい、リヴァイを打ち据えた。

 そして、恐ろしい責め具の入った箱をベッドの下から取り出し、

 リヴァイを責め立てた。

 「わしがお前を殺せぬのを知っていて、反抗的な態度をとるのは卑怯だぞ。

 その腐った性根を叩き直してやる。わしに跪き許しを請うまで

 今夜は帰さぬからな。覚悟しろ。」

 身分の高い人間はいつでも暴力で支配しようとする。

 リヴァイは踏まれた花のように朝までじっと耐えた。

 朝陽が上る頃、雨は止み、風も心地よく吹き始め、鳥が飛び立ち、

 穏やかな朝を迎え、人々が神に祈りを捧げる時間になって、

 リヴァイはようやく拘束を解かれた。

 踏み散らかされてボロボロになった花を嗤う豚が家来を呼んで、

 リヴァイを馬車で送るように指示した。泥にまみれた汚い花に

 家来たちは恐怖し、無言でリヴァイの身体を洗い、服を着せ、

 まるで荷物を運ぶように馬車に乗せ、送り届けた。

 エルヴィンに引き渡す時も彼らには侮蔑しかなかった。



 翌日、エレンは夕食のパンとシチューを持ってリヴァイの部屋を訪れた。

 体調不良で2日間も寝込んでいるリヴァイに食事を届けるよう

 エルヴィンに命令されたのだった。エレンは静かにドアをノックした後、

 部屋に入り、ベッドの横の机に夕食のトレイを置いた。

 「兵長お体は大丈夫ですか?お城の階段から落ちたって聞いたけど・・・」

 壁のほうを向いて寝ていたリヴァイの顔を覗き込んだエレンに

 「・・・あとで食べるから、置いたら、さっさと出て行け。」

 とリヴァイは言った。

 「兵長、食欲ないなら、俺が食べさせてあげましょうか?」

 エレンは子犬のような笑顔でベッドの端に腰かけて、肩を揺すり、

 自分のほうを向かせた。死んだ魚のような目をしたリヴァイに

 キスをしようとした時、エレンは首に鬱血した痕を見つけた。

 リヴァイの服を脱がせて、身体をよく見ると、首には痛々しい

 縄の痕が残り、背中には無数の鞭の痕が残っていた。

 「一体、何、されたんですか?」

 笑顔の消え去ったエレンをリヴァイはじっと見つめて、

 「見た通りだ。ロープで首を絞められて、気を失ったらしい。

 傷の手当は昨日の朝、エルヴィンがしてくれた。背中の傷も

 ・・・こんなのは・・・軟膏を塗っとけば、そのうち治る。」

 と言った。

 「まさか下も酷い事になってるんじゃないでしょうね?

 見せてください。」

 ズボンを脱がそうとしたエレンをリヴァイは制止して、

 「今は無理だ。まだ使えない。明日はベッドから出られそうだから、

 明後日また部屋に来い。可愛がってやる。」

 と言った。

 「あんたって人は・・・そんなこと俺は考えてない。・・・

 誰にやられたんですか?・・・こんな酷い。こんな惨いこと・・・」

 悔しそうに歯を食いしばるエレンにリヴァイはそっとキスをして、

 「心配するな。」

 と言った。エレンはリヴァイの優しい顔とは裏腹の絶望的な瞳に

 言葉を失った。



 エレンが部屋から出た数分後、エルヴィンが部屋に入って来た。

 「ノックくらいしろよ。」

 リヴァイは物憂げな表情でそう言った。

 「また食べないのか?少しは食べないと体に悪いぞ。

 エレンに食べさせてもらわなかったのか。」

 「・・・」

 「公爵が調査兵団への投資を止めたいと言ってきた。しかも、王族の機嫌を

 損ねるのが恐いのか、他の貴族たちも投資を中止したいと言い出したよ。

 どうするんだ?月1回の接待で馬5頭を毎月投資してくれていた公爵様に

 嫌われたせいで、馬1頭から3頭を毎月投資していた貴族たち7人からも

 投資を辞退されたよ。俺はお前の身体の事も考えて、週に1回程度の

 接待で済むように、投資額の多い者は月1回、投資額の少ない者は

 数ヶ月に1回の接待というようにシフトを組んでやっていたというのに・・・

 あとは商会の金持ち二人が残っているだけだ。もう、こうなったら、

 その二人になんとか頼んで、投資額を増やしてもらうしかない。昔、お前が

 まだ公爵と知り合う前、1回の接待で馬1頭と決めて接待していた奴らに

 もう一度投資してくれと持ちかけるよりはずっと楽だと思うがな。

 調査兵団には馬が必要なんだ。分かるだろ?」

 「・・・」

 「あと、もう一つ考えられる手は、公爵に土下座して謝る事だ。だが、

 公爵はこう言っている。『どんな責苦にも屈せず、謝らなかったのは

 見上げた根性だ。その強い精神力に免じて、望み通り縁を切ってやる』とな。

 あの公爵はサディストで有名だが、これまで酷い事はしなかっただろう?

 きっとそれは本当に惚れていたからだと思う。もちろん、あの公爵に

 引き合わせたのが、お前を女王様に仕立て上げたマゾヒストで有名な子爵で、

 公爵はお前の事を勘違いして、別格に扱っていたのも事実だ。だから、

 あの公爵に詫びを入れるのは、この先ずっと家畜のように扱われるのを

 覚悟しなければならない。俺はお前の美しい肌に傷ができるのは忍びない。

 公爵のお気に入りだからと、お前を有難がって抱いていた貴族たちも

 一斉に手の平を返したように酷い仕打ちをするかもしれないぞ。

 何しろ貴族の大半は変態だからな。」

 「・・・」

 「おいっ。さっきから黙ってないで何とか言えよ。」

 「チッ。・・・ベラベラとうるせぇなぁ・・・要するに、商会の豚2人と

 寝ればいいんだろ?その代り、他はもう勘弁してくれ。」

 「分かった。俺も今となっては、それがベストな選択だと思う。

 だがな。リヴァイ。忘れるな。お前は俺が拾ってきたという事を・・・

 お前が誰を好きになっても構わないが、所有権は常に俺にあるという事を

 忘れるな。」



 エルヴィンはリヴァイの顎に手をかけ顔をあげさせると唇にキスをした。

 そして、ゆっくりとベッドに押し倒し、服を脱がせ始めた。

 「やるのか?まだ傷が痛むんだが・・・」

 リヴァイが物憂げな瞳でエルヴィンをじっと見た。

 「薬を塗ってやろうと思っただけだ。鞭の傷は背中だから

 一人じゃ塗りにくいだろ?」

 エルヴィンはそう言うと、リヴァイの衣服を脱がせ、軟膏を手に取り、

 縦横無尽に背中に残る赤い線に沿って指を走らせ、軟膏を塗りつけた。

 「もう傷が治ってきたな。これなら、明日から通常任務に就けそうだな。

 だが、心配なのは下の傷だな。塗ってやるから、全部脱いで

 四つん這いになれ。」

 冷ややかな笑みを浮かべてエルヴィンは言った。

 いつも彼がそういう顔をする時は逆らうと後が恐い。

 リヴァイは気が進まなかったが、エルヴィンの命令に従った。

 「ふむ。まだ赤く腫れているが、切れていた部分は治ってきたようだな。」

 エルヴィンはそう言うと、軟膏をベッタリつけた中指をリヴァイの尻に入れ、

 内壁に塗りつけた。

 「うっ。・・・あっ。」

 グリグリと指を動かされて、リヴァイは思わず声を漏らした。

 「薬を塗っているだけなのに気持ち良いのか?何にでも反応してしまうなんて

 相変わらず淫乱だな。そういえば、一昨日、公爵に入れられたディルドの

 大きさはどのくらいだったんだ?通常の1、5倍くらいか?こんな小さな身体で

 そんなものを入れられたら、漏らしても仕方がないよな。」

 「・・・言うな!」

 「おっと。すまない。潔癖症のお前には辛過ぎるよな。

 でも、これだけは聞かせてくれ。ディルドに粗相したのと、

 首を絞められて失禁したのと、どっちが恥ずかしかったか?」

 「や、やめろ!」

 「フッ。どっちも恥ずかしくて、答えられないか。可哀相に・・・

 俺だったら公爵に謝ってるがな。何故、謝らなかったんだ?

 エレンの為か?それにしてもエレンのどこが良いんだ?ひょっとして、

 人間扱いされなかったお前の少年時代と似てると思ったからか?

 化け物と男娼じゃ全然似てないぞ。お前の父親は飲んだくれの博打打ちだ。

 借金の返済の為に自分の子供の身体を売る無職の親の子じゃ身分も違う。

 人間としてはエレン以下だ。お前は俺の所有物じゃないと

 入団もできないような底辺で生きる人間だったんだぞ。」

 エルヴィンは動かしていた指を止めて、こう言った。

 「お前の過去をバラしたら、エレンはどうするかな。きっと

 逃げ出すと思うよ。」




 週末、調査兵団の宿舎に2台の馬車が来た。

 商会の中でも有名な金持ち二人が資金調達の為に招待されたのだった。

 エルヴィンは食堂のコックに豪華な料理を作らせ、応接室で晩餐会を開き、

 ゲストルームに二人を宿泊させる計画を立てた。

 無論、ゲストルームでの接待はリヴァイに任せるので、誰も近づくなと

 言われていたが、飲み物などを客に運ぶ給仕係はエレンに任命された。

 エレンは夕食後にワインを部屋に届けるよう言われて、ゲストルームの

 ドアをノックした。

 「入れ。」

 と、エルヴィンの声がして、いささか不安だった性接待というものは

 まだ始まっていないのかとエレンは安堵して、扉を開けると、

 ホッとしたのも束の間、声を押し殺したような低い喘ぎ声が聞こえた。

 リヴァイは全裸でベッドに腰掛けるような体位で後ろから男に抱かれ、

 ベッドの前で跪いているもう一人の男の肩に両足をかけて、身体の中心を

 口に含まれていた。思わず息を呑む光景にエレンは困惑し、

 立ち尽くしていると、エルヴィンが

 「早く中に入れ。ワインはそこのテーブルに置け。」

 と言った。エレンは黙って指示通りにすると、いつの間にかリヴァイの

 身体を舐めていたはずの商人がエレンの目の前にやってきて、

 「へぇー。この子も可愛いな。」

 と言って、ニヤニヤ笑いながらエレンの手を握った。

 「まだ15歳です。童貞ではありませんが、処女ですので、

 よろしかったら、どうぞ。」

 とエルヴィンは笑顔で答え、

 「エレン。お前も接待しろ。」

 とエレンに命令した。エレンは驚いて、

 「い、嫌です。」

 と言ったが、商人は手を掴んだまま恐い顔で

 「許可が出たんだ。大人しくしろ。」

 と言った。

 「や、やめてください。」

 嫌がるエレンの唇を奪おうと商人が抱き寄せたその時、

 「おいっ!その汚い手を放しやがれ!」

 とリヴァイが怒鳴った。



 後ろから貫かれていたリヴァイは抱いていた商会の豚を突き離して

 ベッドから降りた。

 「エレンに指一本触れるな!俺はどうなってもいい。だが、

 そいつにだけは手を出すな!」

 いきり立つリヴァイにエルヴィンは

 「化け物を調教してみたいって貴族は多いのでな。おまえの代わりに使える

 と思って、おまえが接待を怠けても大丈夫なように俺は考えたのだが・・・

 エレンに手を出すなというのであれば、接待が嫌だなんて言わずに、

 おまえが励まなければな。」

 と言った。それを聞いたエレンは驚いて、

 「えっ?!接待が嫌ってどういうことなんですか?リヴァイさんは

 無理やり強要されてたんですか?今まで俺はリヴァイさんが

 好き好んで男と寝てると思って、我慢してたのに・・・」

 と言った。すると、リヴァイは失礼な誤解をされていた事に腹を立て、

 「誰が好き好んで、こんな豚ども相手にするか!嫌々エルヴィンの

 命令に従ってるに決まってるだろ?」

 と吐き捨てるように言った。

 「リヴァイさん、何故あなたは嫌だって断らないんですか?

 調査兵団の為に自分を犠牲にする必要はないと思います。」

 「・・・」

 エレンの質問に言葉を詰まらせたリヴァイの代わりにエルヴィンが答えた。

 「リヴァイは俺の所有物だ。俺の命令には絶対服従だ。俺が

 寝ろと命じた相手とは寝なければならない。リヴァイはたまに

 遊び相手のペットを欲しがるが、そんなものは勝手に作っても

 俺はどうでもいい。しかし、俺の命令に背く勝手な真似はもう

 二度としないと誓わせたんだ。」

 「そんな・・・本当ですか?」

 「ああ。本当だ。」

 俯いたまま動かないリヴァイにエルヴィンはこう言った。

 「リヴァイ。ベッドに戻って接待の続きをしろ。さもないと、

 おまえの過去をエレンに話すぞ。」

 「・・・」

 「過去って何です?リヴァイさんは脅されてたんですか?

 卑怯ですよ。エルヴィン団長。」

 「卑怯とは何だ!ペットの分際で出しゃばるな!」

 声を荒らげて怒ったエルヴィンにエレンも声を張り上げて言い返した。

 「俺はペットじゃない。リヴァイさんの恋人だ!」

 「恋人だと?何を言ってるんだ?リヴァイは俺のものだ!」

 「恋人を他人に売るような奴は人間じゃない。エルヴィン団長は

 リヴァイさんのことを本当に愛してるんですか?愛してるなら、

 こんな酷い仕打ちはできないと思います。」

 だが、エルヴィンはエレンを鼻で笑った。

 「愛なんてないからな。リヴァイは俺が拾ってきた所有物だから、

 抱きたい時に抱き、利用できる限り利用してただけだ。恋人なんて

 代物じゃない。奴隷さ。金で買ってきたわけではないが、リヴァイは

 性奴隷のようなものなんだ。」

 「酷い。あんたって人は・・・見損ないましたよ。エルヴィン団長。

 リヴァイさん、こんな奴の言いなりになんかなってちゃダメだ。」

 依然俯いたままのリヴァイを見て、エルヴィンはこう言った。

 「どうとでも言え。そうだな。リヴァイに選ばせよう。

 エレンに従うか俺に従うか。だがな。エレンを選んだら、

 おまえの未来はないと思え。さあ、どっちにする?」



「エルヴィンに従う。」

 と、リヴァイは俯いたまま答えた。

 「そうか。リヴァイは良い子だな。聞いたか。エレン。

 もうお前に用はない。さっさと出て行け。」

 と、エルヴィンは勝ち誇ったように言った。エレンは

 「リヴァイさん!本当にいいんですか?あんたはエルヴィン団長に

 従うべきじゃない。自分の心に従うべきだ!もし、脅されて、

 逆らえないのだとしたら、俺がエルヴィン団長を脅してやる!

 リヴァイさんに接待を強要するのはやめろ!さもなければ、

 巨人化して駆逐してやる!」

 と、必死に訴えた。しかし、エルヴィンはエレンの脅しを嘲笑った。

 「ハハハ・・・血迷ったか。何を言ってるんだ?エレンが巨人化して人を

 襲ったら、リヴァイが殺すことになっている。殺されるのは、おまえだぞ。」

 すると、リヴァイは押し隠していた感情を初めて出した子供のように

 「殺せない。たとえ、エレンが街中の人を襲っても・・・エルヴィンを

 殺したとしても・・・俺は愛してしまったんだ。愛してしまったから、

 たとえ、何が起きても、エレンを殺せない。」

 と言った。

 「何だと?!おまえの過去をばらすぞ!それでもいいのか?」

 エルヴィンは顔色を変えて怒った。だが、リヴァイはこう言った。

 「構わない。話せ。それに、法律上、俺の犯した罪は既に時効になっている。

 俺は脅しに屈したわけじゃない。拾ってもらった恩があるから従っていただけだ。

 エルヴィンが俺の事を愛していないのは知ってたさ。でも、俺は愛されたいと

 思ってた。ずっと・・・エルヴィンの役に立つことだけを考えて生きてきた。

 エレンに出会うまでは・・・でも、エレンと出会って、俺は変わった。

 エレンは多分、俺の過去を知っても俺のことを嫌いにならないと思う。」

 「たいした自信だな。」

 「裏を返せば、エルヴィンは俺の過去が嫌いなんだろ?それとも身分が

 違うから、愛するに値しないと言うのか?俺は調査兵団をやめるよ。

 俺は人間で、奴隷じゃないから、職業は自分で選べるだろ?辞職する。」

 「小学校も出ていないおまえに再就職先なんてあるものか!

 また身体を売って暮らす気か?こうなったら、ばらしてやる!

 エレン、こいつはガキの頃に父親に売られて、客と父親をナイフで刺して

 逃げたんだ!逃亡先では街のゴロツキのボスの愛人におさまって、

 しばらくは暮らしていたが、ボスが捕まると、仲間にまわされて、

 捨てられたんだ。ゴミ捨て場に倒れているのを俺が拾ってきた。

 俺が綺麗な服を着せて、字も教えて、立派な軍人になるように育てたんだ。

 だから、俺のものなんだ。エレン、おまえも上官に逆らって、調査兵団に

 いられると思うな。」

 エルヴィンは最後の切札を出したが、エレンは屈しなかった。

 「俺もやめます!俺は子供の頃、人を殺した。でも、罪にはならなかった。

 正しい事をしたからだ。リヴァイさんもきっと親をナイフで刺す行為が

 リヴァイさんにとっては正しかったんだと思う。俺はここを出て、

 リヴァイさんと二人で暮らします。行きましょう。リヴァイさん!」

 エレンはリヴァイの手を取り、部屋を出た。



 エレンはリヴァイの手を引っ張って廊下を走った。

 階段を駆け下り、玄関ではなく、勝手口のほうから中庭に出て、

 敷地内の倉庫に身を隠した。

 「追って来るかな。」

 エレンは心配そうに言った。

 「多分、部屋のほうに行ったと思って、まず俺の部屋を探すだろう。」

 リヴァイは落ち着いた声で言った。

 「エルヴィン団長、面食らったような顔をして、唖然としてましたね。」

 エレンがクスッと笑った。

 「笑いごとじゃない。俺は服を着てないんだ。12月に全裸で

 走らされるとは思ってなかった。」

 リヴァイは真顔で言った。

 「あ、すみません。寒いですか?」

 「当たり前だろ。」

 「確か倉庫に支給される前の軍服がしまってある箱があったと思います。

 今、服を出しますね。Sサイズあるかな。あった。あった。どうぞ。」

 エレンはSサイズの服を手渡した。リヴァイは受け取ると、服を着ながら、

 「これからどうする?エレンは以前、家に行きたいと言っていたな。

 壁の外にでも行くか?」

 と言った。エレンは

 「え?いいんですか?じゃ、ここにある武器弾薬も持って行きましょうか?」

 と言って、武器を物色し始めた。

 「そうだな。そうしよう。でも、その前に・・・最後になるかもしれないから、

 1回だけやっとくか。」

 リヴァイは微笑んで、誘うようなキスをした。舌を入れてくるリヴァイに

 エレンは戸惑いながら、

 「リヴァイさん・・・服せっかく着たのに・・・また脱がせなきゃ・・・」

 と言った。

 「どうせ。外の世界に出たら、生きては帰れない。明日、

 死ぬかもしれないんだぞ。」

 リヴァイは本気だった。だが、エレンは死を恐れて話を逸らす小心者のように

 「そういえば、明日はクリスマス・イブですね。巨人を駆逐しながら

 クリスマスを過ごす事になりそうですね。」

 と言って、笑った。

 「聖なる夜に死ぬのも悪くない。」

 リヴァイはもう一度エレンに接吻した。長い接吻の後、エレンは

 リヴァイの服を脱がして、リヴァイの首筋を甘噛みし、喉仏の辺りを

 舐め、胸の突起を摘まんだ。

 「あっ。」

 よろめいたリヴァイは倉庫の棚に背をもたれた。

                         


 エレンは首から胸へとゆっくりと舌を這わせて、リヴァイの胸を

 舐めまわした。

 「あっ。そこばっかり・・・じれったいな。早く入れろよ。」

 「リヴァイさん。もう欲しいの?」

 エレンは蜜を垂らしているリヴァイのものをじっと見た。

 「ああ。そうだ。早くしろ。」

 「じゃあ、後ろ向いてください。」

 リヴァイは棚に両手をついて、エレンに後ろを向けた。

 エレンがリヴァイの尻を掴んで左右に押し広げると、先ほどの接待で

 仕込まれたローションが零れ出てきた。リヴァイは両足を広げて立ち、

 更に尻を突き出して、受け入れやすい体勢をとったが、リヴァイの

 待ち望んだものではなく、エレンは舌をリヴァイに入れた。突然

 内壁を舐められたリヴァイは狼狽えて、

 「あっ。やめろ。そこ・・・汚い・・・」

 と言ったが、エレンは止めなかった。

 「何で?俺はリヴァイさんを気持ち良くさせてあげたいんだ。」

 「あ、ああ・・・エレン・・・さっきまで他の男のものが入ってたんだぞ。

 汚いと思わないのか?」

 「汚くなんかない。少し変なローションの味はするけど・・・

 そんな事どうだっていい。・・・汚いとは思わないけど・・・もし、

 リヴァイさんがそう思うなら・・・舐めてきれいにしてあげますね。

 俺の舌でリヴァイさんを清めてあげる。」

 エレンは舌でグルグルっと内壁を舐め回した。

 「あっ、ああ・・・バ、バカ・・・もう、や、やめ・・・

 あっ、イ、イク・・・ああ・・・」

 リヴァイは前を触れられていないのに、後ろだけで達してしまった。

 「リヴァイさん。いっぱい出ましたね。接待ではまだイってなかったんだ。」

 「当たり前だろ。誰があんな豚野郎なんか・・・エレン。

 もしかして、妬いてたのか?」

 「そうですよ。気持ち良さそうに抱かれてるリヴァイさんを見て、

 妬かないほうがどうかしてますよ。でも俺はリヴァイさんがイっても

 イってなくても気にしないです。リヴァイさんは何をしてもきれいですよ。

 汚くなんかない。」

 エレンはそう言うと、リヴァイの右足を抱えあげ、挿入した。

 「あっ。あっ。あっ。」

 棚の柱を右手で掴み、背を棚に頭を棚の段ボール箱の上に乗せ、

 床から自然と離れる左足のつま先を床につけようともがきながら

 嬌声をあげるリヴァイに

 「俺にしがみついて下さい。リヴァイさん小さいから足の長さが違うんで、

 動きにくいです。」

 とエレンは言った。チッ。とリヴァイにまた舌打ちされるかと

 エレンは思ったが、意外と素直にリヴァイは左腕をエレンの首にまわし、

 両足を腰に絡めてきた。

 「あっ。深い。ああ~」

 身体を繋いでる部分でリヴァイを支え、奥まで入った状態のまま

 エレンは腰を激しく動かした。

 「あっ。クソ。あっ。また・・・イ、イキそうだ・・・ああっ。」

 棚の柱を掴んでいる右手にグッと力が入り、リヴァイは我慢している

 ように見えた。

 「リヴァイさん。イって良いですよ。俺もイキそう。」

 「あっ。ああ~」

 「リヴァイさん。好きです。」

 「あっ。お、俺も・・・好きだ。エレン。あっ。ああ。ああ~」

 リヴァイの身体が仰け反り、ビクビクっと身震いしたのと同時に

 エレンはリヴァイの中にドクッと欲望を解き放った。

 リヴァイは体内にエレンを感じながら、安心したように目を閉じた。

 「リヴァイさん。寝ちゃダメですよ。」

 意識が遠くなりかけたリヴァイが目を開けると、エレンの笑顔があった。

 「チッ。寝てなんかいないぞ。」

 リヴァイはわざと嫌そうな顔をして、エレンから身体を離した。

 「今、タオルで拭いてあげますね。この倉庫は何でもあって便利だな。」

 エレンはそう言うと、新品のタオルで身体の白い液体を拭い取った。




 「馬が必要だな。だが、盗んだ馬を壁の外に持ち出すのは不可能に近い。

 壁の外の村で調達するか。」

 リヴァイが服を着た後、言った。

 「俺が巨人になってリヴァイさんを肩に乗せて運んであげますよ。」

 とエレンは言った。

 「俺の事を喰うなよ。まあ、おまえになら喰われても本望だがな。」

 リヴァイは自分で言って少し照れたように俯いた。

 「嬉しい事を言ってくれますね。」

 エレンはリヴァイの顔を覗き込んで、キスをした。でも、次の瞬間、

 エレンは唇を離し、

 「あっ、すみません。リヴァイさんは潔癖症だから、

 舐めて舌が汚れた後はキスはしちゃいけないんでしたよね。」

 と謝った。

 「かまわないさ。」

 リヴァイはエレンの両頬を手で掴んで引き寄せ、唇を重ねた。

 すると、その時、倉庫の扉が開いた。

 「ここにいたのか。探したぞ。」

 エルヴィンだった。リヴァイはエルヴィンを見るとすぐに無言で

 手榴弾を手に取り、投げつけようとした。

 「お、おい。待ってくれ。話を聞け。公爵から使いが来たんだ。」

 エルヴィンは慌ててリヴァイを落ち着かせようとした。

 「公爵が馬を20頭プレゼントしてくれるそうだ。寄付も今まで通り

 続けると言ってきた。」

 「チッ。俺はもう誰とも寝ないぞ。」

 「寝なくて良いんだ。もう接待は必要ないそうだ。リヴァイの勇気と信念に

 心を打たれたから、今後は何の見返りもなく寄付をするとの仰せだ。

 馬20頭はクリスマスプレゼントだそうだ。俺も忘れていたが、

 明日はクリスマス・イブだろ?俺が悪かった。もう誰にも接待させないから

 戻ってきてくれ。」

 エルヴィンが頭を下げた。

 「エルヴィンとも寝ない。それでもいいか?」

 リヴァイが真剣な顔で聞いた。

 「残念だが、仕方ない。これからは友人として、おまえと接する事にするよ。

 性奴隷なんて言って本当にすまなかった。」

 「反省してるなら、それでいい。戻ってやるよ。」

 リヴァイはそう言って、手榴弾を棚に置いた。

 「良かったです。リヴァイさん。きっと神様が味方してくれたんですよ。」

 エレンは喜んで、最高のハッピーエンドなクリスマスプレゼントを

 神に感謝した。

 「さあ、こっちにおいで。」

 エルヴィンが手を広げて、倉庫の外に出るよう促した。

 人を疑う事を知らないエレンは無邪気にエルヴィンのいる

 扉のほうに歩いて行った。リヴァイもエレンの後に続いて歩き、

 神の祝福を受けるようにエルヴィンの目の前に立った。

 「聖なる夜に乾杯!」

 突然エルヴィンはそう言うと、身体をひるがえし、二人を倉庫の扉の外に

 突き飛ばした。エレンとリヴァイは一瞬何が起こったのか分からなかった。

 外に出た瞬間、何発もの銃声が聞こえて、自分の身体が銃弾に打ち抜かれた。

 ドサッと地面に倒れた時にはエレンは死んでいた。リヴァイは手を伸ばして、

 エレンを抱きしめようとしたが、エルヴィンに阻止された。

 「この世界は残酷なんだ。騙されるほうが悪い。二人そろって、

 あの世に旅立て。俺からのクリスマスプレゼントだ。リヴァイ。喜べよ。」

 いつも冷静なエルヴィンの顔が醜く歪んで見えた。

 エルヴィンの頬に涙が伝った時、リヴァイは息を引き取った。

 リヴァイの身体から流れる血が冬の大地に真っ赤な花を咲かせていくのを

 エルヴィンはいつまでも見つめていた。


                                     (完)



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黒執事「夢幻の森」

黒執事部屋



 真夜中、人里離れた森の中の屋敷に恐怖が訪れた。

 「助けて。神様。どうか、お母様から僕を守って。」

 胸元で十字を切って祈る10歳の少年は神に祈っていた。

 突然、食事中に倒れた母親が夜中に目を覚ますと、

 壁に飾ってあった銀の斧を持ち、父親の首を刎ねたのだった。

 母親は屋敷の中を徘徊し、次々と使用人を惨殺した。

 少年は兄に渡された小銃を持って、自室に隠れ、

 屋敷中に響き渡る悲鳴を聞きながら、恐怖と闘っていた。

 鍵をかけた部屋の扉を斧でバキバキッと叩き割る音が聞こえたかと思うと、

 扉に開けられた穴からスゥッと手が入ってきて、ドアノブの鍵を開けた。

 ゆっくりとギィッと開いた扉には血に染まった少年の母親が

 物凄い形相で立っていた。少年は震えながら、銃を身構えて、

 「お母様。こっちに来ないで。僕を殺さないで。」

 と言った。だが、母親は笑いながら少年に近付き、銀の斧を振り上げ、

 少年を殺そうとした。少年は泣きながら母親を撃った。

 バキュンという銃声と共に母親の顔は吹き飛び、

 母親の振り翳した斧は手から離れ、少年の頭の上に落ちた。

 少年は一瞬、頭に斧が刺さった事を理解できなかった。母親が倒れると、

 絨毯に黒い穴が開いて、デスサイズを抱えた黒い死神が現れた。

 死神は母親の骸を黒い穴の中に引き摺り込み、消えて行った。

 そして、次にまた部屋の絨毯に黒い穴が開いた時、兄が廊下から

 駆け寄って来て、扉の前に立ち、

 「逃げろ!窓から飛んで逃げろ!」

 と叫んだ。少年は兄の言う通りに窓に向かって走った。

 死神が現れ、少年の身体を掴もうとした瞬間、少年は窓から空に飛び立った。

 少年が空から窓の方を振り返って見ると、死神は少年の骸を抱えて、

 口惜しそうに少年を見ていた。少年は屋敷を離れて、森を抜け、

 夜空を飛んで逃げた。幾日も果てしなく飛び続けた挙句、

 復讐を誓った少年の住む屋敷を見つけて、窓から侵入した。

 ベッドで眠る美しい黒髪の少年に興味を持った斧で殺された少年は

 静かに黒髪の少年の上に乗り、寝顔を見つめていると、

 微かに聞こえる呻き声と共に黒髪の少年の瞳が開いた。



 「うわああ!!!」

 シエルが寝苦しさを感じて目覚めると、頭上に斧が刺さった血まみれの少年が

 胸の上に跨っていた。

 「坊ちゃん?!」

 悲鳴を聞いて1秒で駆けつけてきたセバスチャンが思わず息を呑んで身構えた。

 すると、少年は

 「うわぁ。悪魔来た。逃げよ。」

 と言って、フワッと舞い上がり、窓をすり抜けて外に飛んで行った。

 セバスチャンは窓を開けて、少年が近くにいないか確認してから、

 シエルの傍に来て、

 「坊ちゃん。大丈夫でしたか?」

 と聞いた。

 「い、今のは何だ?」

 「悪霊でございます。おおかた、どこからか飛んで来たのでしょう。

 悪霊は人の負の心につけ込み、人に憑りつきます。おそらく、

 坊ちゃんに憑りつこうとしていたのでしょう。危なかったですね。

 では、おやすみなさいませ。」

 セバスチャンはニッコリ笑って部屋を出ようとした時、

 「ま、待て。そこにいろ。」

 と、シエルは引き止めた。

 「仰せのままに。お傍にいて差し上げます。」

 セバスチャンがシエルの手の甲に口づけした。そして、ベッドに横たわる

 シエルの髪をそっと撫でた。

 「坊ちゃん。怖かったですか?」

 「こ、怖くなんか・・・」

 「強がらなくても良いのですよ。怯えた瞳の坊ちゃんも美しい。」

 セバスチャンはシエルの唇に唇を重ねた。



 舌と舌を絡めながら、セバスチャンはシエルに指を這わせ、

 寝巻のボタンを一つ一つゆっくりと外していった。

 生まれたままの姿になったシエルにキスをして、口に含み、

 果実の蜜を味わうように舌を動かし、指の先で蕾を愛で焦らして、

 シエルを快楽の波に漂わせた。

 「あっ。あっ。は、早く・・・」

 「坊ちゃん。どうして欲しいですか?おねだりしないと、

 ずっとこのままですよ。」

 「く、くれ。焦らすな。早く入れろ。」

 「よくできました。入れて差し上げますね。」

 セバスチャンはシエルを俯せにして、後ろから抱きしめるように貫いた。

 「あっ。ああ~」

 シエルは枕に顔を埋めて、枕の両端を掴んで耐えながら腰を僅かに浮かし、

 嬌声をあげて、セバスチャンを受け入れた。

 セバスチャンは肉を掻き分ける感触を楽しんだ後、

 貪欲な肉が我が身を締めつけるのを味わいながら、熱く蠢く肉の中で

 じっとして動かなかった。セバスチャンがシエルのうなじを甘噛みすると、

 シエルはビクッと身体を震わせ、こう言った。

 「あっ。もう、いつまで焦らすんだ。さっさと動け。あっ。」

 セバスチャンは無言で肩を噛んだ。そして、首筋を舐め上げて、耳朶を噛み、

 「坊ちゃん。イって良いですよ。このままでおイキなさい。」

 と言った。シエルは困惑して、躊躇いながらも自ら腰を動かし、

 シーツに擦り付け、イこうとしたが、

 「はしたない真似はおよしなさい。」

 と、セバスチャンに咎められた。

 「坊ちゃんは貞節な淑女のように何もしてはいけません。

 身体を貫いているものを体内に感じて、イクのです。」

 「そ、そんな・・・無理・・・」

 シエルは首を横に振った。しかし、執事に命じられて、

 身体の芯が疼いてしまった。

 「あっ。あっ。ああ~」

 シエルはセバスチャンをキュゥキュゥと締めつけて、絶頂に達した。

 「浅ましいほどに締めつけて、イってしまいましたね。

 貪欲な坊ちゃんにご褒美を与える時間が来たようです。

 気を失うまで激しく突いて差し上げますよ。」

 セバスチャンはそう言うと、激しく腰を突き動かした。

 シエルは何度も絶頂を迎え、夜が明ける前に眠りに落ちた。


 「坊ちゃん。お目覚めの時間です。」

 翌朝、セバスチャンは何事もなかったかのようにシエルを起こし、

 シエルに服を着せ、紅茶を用意した。そして、

 「昨日はお知らせするのをうっかり忘れてまして、申し訳ありません。」

 と言って、セバスチャンは女王からの手紙をシエルに手渡した。

 「坊ちゃんには女王の番犬として、先月、悲惨な惨殺事件が起きた
 
 クロウ家を調べて欲しいとの事でございます。詳しくは、こちらの

 新聞をお読み下さいませ。」

 突如発狂したクロウ男爵夫人が夫であるクロウ家当主を始め使用人までも

 次々と斧で惨殺し、嫡子である10歳の息子を斧で殺害する際、息子に

 射殺され、死亡。生き残った妾の子のクロウ男爵の長男ジャスティスが

 爵位を継承し、クロウ家当主となった。

 キノコの産地で有名な森を所有するクロウ家には血塗られた過去があり、

 現在、クロウ一族の血を引く者はジャスティス・クロウ男爵のみである。

 しかし、彼の母親は森に住み呪いを行うウィッチ家の末裔でもある。

 ウィッチ家もまた血塗られた歴史により領民の襲撃に遭い、滅ぼされている。

 今回の継爵には異議を唱える者も・・・と新聞には書かれていた。

 「こ、これは・・・」

 シエルは新聞の写真を見て、驚いた。クロウ家の嫡子である少年の顔が

 昨日現れた幽霊と同じだったのだ。

 「私も最初に幽霊の少年を見た時には驚きました。女王様の使者が昨夜

 お見えになりまして、坊ちゃんに手紙を渡す前に調査資料をご用意しなければと、

 新聞等を集めておりました矢先の事でしたので、偶然とは思えません。

 クロウ男爵に会いに行きましょう。馬車で6時間のところでございますから、

 今から出発すれば、いにしえに魔女の森と称されていたキノコの森の中にある

 クロウ家の屋敷に日が沈む前には着けると思います。」



 小鳥の囀りさえ聞こえない静かな森だった。森は木々の葉が生い茂り、

 陽当たりが悪く、木々の根元には色とりどりの見た事もないような

 キノコが見渡す限り無数に生えていた。シエルは馬車の窓から

 森中に生えている赤や黄色の妖しいキノコを見て、こう言った。

 「この森は気味が悪いな。本当にマッシュルームの名産地なのか?」

 「はい。左様でございます。クロウ男爵家の荘園は森の入口にある

 村一つにございますが、この広大な森を私有地として持っておりますので、

 マッシュルームを始めとするキノコの栽培だけで暮らせるらしいのです。」

 「森中に生えている見た事もないキノコの群れ。まさか、あれは

 売り物じゃないだろうな。」

 「さあ。キノコの名前は私も存じませんが、おそらく幻覚作用を

 引き起こすような類の毒キノコかと思われます。毒を作って売ったら、

 きっと高く売れるでしょうね。色鮮やかで美味しそうですけれど、

 坊ちゃんはくれぐれも食されませぬように・・・」

 「あたりまえだ。誰が食べるものか。」

 シエルはフンっと鼻で笑い、再び森を見つめた。曇天のせいか森は

 昼間だというのに薄暗かった。陽の光を嫌う森なのだとシエルは思った。

 キノコを太陽から守るように生い茂る木々は何百年も森を守り、

 中世までは道すらなかったのであろう。近世に作られたと思われる

 屋敷に続く1本道は獣道に等しく、馬車1台通るのがやっとだったに

 違いない。半径徒歩1時間と言われる樹海に似た森は18世紀に

 なってから道の整備が行われ、クロウ男爵家の所領となったのだ。

 それまでは森も村もウィッチ家の領地だった。

 シエルがいつまでも続く同じ景色を眺めていた時、突然

 シエルの目の前に陰惨な光景が現れた。木々が途切れた隙間から

 焼け焦げた家屋が見えたのだった。

 「こ、これは・・・」

 「ウィッチ家の屋敷跡でございます。薬を作り、呪いを家業とする

 ウィッチ家は近世に流行った魔女狩りのせいで没落し、後から来た

 クロウ家に全てを奪われました。それでも150年くらいは細々と

 森の中で薬を作って暮らしていましたが、20年前、村で疫病が

 流行った年に村人に襲撃され、皆殺しになったのです。

 その襲撃の際に当時15歳だったウィッチ家の一人娘は略奪され、

 クロウ家の地下牢に幽閉されました。長年の凌辱の末、クロウ家長男

 ジャスティス・クロウが生まれたのでございます。」

 「悲惨な話だな。」

 シエルは溜息をついた。



 それから、しばらく馬車に揺られ、屋敷に着くと、暗い顔をした老人が

 出迎えてくれた。クロウ家の執事だった。メイドの数も少なく、皆

 陰気な顔をしていた。不思議と人の話し声が一つもしない屋敷だった。

 村から離れた森の中の屋敷は幽霊でも出そうな雰囲気だった。

 「ようこそ。おいで下さいました。ファントムハイヴ伯爵。

 なにぶん田舎なもので、突然の来客に十分なおもてなしもできませんが、

 キノコ料理でも召し上がって行って下さいませ。」

 エントランスホールに待たされる事10分。吹き抜けの階段をゆっくりと

 下りて来たクロウ男爵は漆黒の髪に深緑色の瞳の美しい少年だった。

 シエルたちはディナーをご馳走になる事になった。

 「はじめまして。シエル・ファントムハイヴです。ここから馬車で

 半日ほど行った先の町に所用がありまして、ドルイット子爵にその事を

 話しましたら、爵位を継承されたお祝いを渡してくれと頼まれまして、

 ちょっと立ち寄るだけのつもりだったのですが、この辺りは宿屋も

 レストランもなく、困っていたので、クロウ男爵の御好意に感謝します。」

 席に着くなり、シエルは嘘をついた。クロウ男爵が爵位継承を

 とりなしてもらう為にドルイット子爵に賄賂を送ったという噂を

 耳にしたセバスチャンが祝いの品のティーカップを用意して、

 シエルに一芝居打つように指示していたのだった。しかし、

 クロウは訝しげな表情をして、こう言った。

 「ドルイット子爵からは手紙とお祝いの花束を頂いておりますが、

 一言もそのような事は聞いておりません。ドルイット子爵と

 ファントムハイヴ伯爵はどのような御関係ですか?」

 シエルは失敗したと思った。ドルイット子爵が手を出しそうな容姿の

 クロウ男爵を見た瞬間に計画を変えるべきだったと後悔した。

 だが、一度ついた嘘は付き通すしかない。シエルは背後に立っている

 セバスチャンのほうをチラッと見たが、セバスチャンは何も言わなかった。

 シエルは冷や汗を掻きながら、

 「ただの知り合いです。」

 と言った。すると、クロウは疑いの目を向けたような表情のまま

 「ふ~ん。それなら、良いのですが・・・」

 と言った。完全に疑われているとシエルは思った。再びセバスチャンを

 チラ見したが、セバスチャンは無言でじっとクロウを見つめていた。

 気まずい空気が漂っている中、ディナーが運ばれてきた。



 「マッシュルームのスープでございます。」

 老執事がスープを3皿テーブルに並べた。

 「さあ、召し上がってくださいませ。ファントムハイヴ伯爵の

 後ろに立っているお付きの方も是非どうぞ。」

 クロウが満面の笑顔を浮かべて言った。

 「いえ。私は執事でございますので、主と同じテーブルにつくなど、

 めっそうもございません。」

 セバスチャンは断ったが、クロウは
 
 「まあ、そう言わずに。席にお座りなさい。」

 と言った。すると、セバスチャンはシエルの許可なく席に着いた。そして、

 「スープを召し上がれ。」

 とクロウが言うと、セバスチャンはスープを飲んだ。

 シエルはセバスチャンの様子がおかしいと思ったが、これ以上何かして、

 怪しまれてもいけないと思って、セバスチャンに聞く事ができなかった。

 「ファントムハイヴ伯爵もどうぞ。早く召し上がって下さいませ。」

 とクロウがスープを勧めた。シエルは急に何か威圧感を覚えたが、

 逆らう事ができず、恐る恐るスプーンでスープをすくって口に運んだ。

 一口飲んだだけで、口の中にマッシュルームの味と香りが広がり、

 その中に隠された得体の知れない旨味がシエルの舌に至福の時を味あわせた。

 「美味しい。」

 とシエルが言った瞬間、セバスチャンが倒れた。

 「セバスチャン!!」

 とシエルが叫んでも、セバスチャンはスープ皿に顔を突っ込んだ状態で

 動かない。

 「何をした?毒を盛ったのか?」

 「このスープは森で採れたキノコを聖水でじっくり煮込んだスープです。

 悪魔の口には合わないかもしれませんね。」

 とクロウは言った。

 「何?!何故セバスチャンが悪魔だと分かった!貴様、何者だ!」

 「僕はジャスティス・クロウ。クロウ家ただ一人の生き残りであると共に

 ウィッチ家の末裔でもある。僕は魔女なんだ。」

 クロウはそう言うと、空中に指で魔方陣を描き出した。すると、

 驚いたことに、セバスチャンの頭上に白い魔方陣が浮かび上がった。



 「もう、これで、この悪魔は最低でも12時間は動けない。

 シエル。キミは・・・自分の執事がこの屋敷に入った瞬間から

 様子がおかしくなった事に気付かなかったのかい?

 ドルイット子爵の話といい、浅はかだね。この屋敷の至る所には

 悪魔封じの呪文が書いてあるのさ。普段は結界も張ってある。

 キミ達が来る事は予知していたから、今日だけ結界を解いておいたんだよ。

 この悪魔は全ての魔女が悪魔より弱く、悪魔に媚びへつらう生き物だと

 思っていて、魔女を軽んじるばかりに僕の力を見誤ったんだ。

 聖水も効かないほどの強い悪魔が毒キノコと聖水をグツグツ煮込んだ

 スープを飲んだだけで倒れる訳がないと己の力を過信していたんだろうね。

 だけど、僕の呪文はどの魔女よりも強い。今までずっと僕はこの力を

 隠していたからね。調査不足のまま屋敷にやって来て、キミ達は罠に

 嵌ったんだよ。愚かだよね。」

 クロウは笑いながら、シエルの眼帯に人差し指を向けた。

 「動くなよ。」

 シエルは不思議と足が竦んで動けなかった。クロウはシエルの傍に

 寄って来て、シエルの眼帯の紐を解いた。

 「綺麗だね。」

 悪魔と契約を交わした証が刻まれたシエルの瞳を見て、クロウは言った。

 「キミは魔女の肉を食べた事があるかい?魔女の肉を食べると願いが叶う

 という伝説がこの森にはあってね。20年前、村で疫病が流行った時に

 村人達がウィッチ家の人々を殺して食べたのさ。欲深いクロウ家の人間は

 魔女を一人残して繁殖させれば、願い事を叶える道具ができると思って、

 娘を一人監禁して、犯して、孕ませた。生まれてきた子はクロウ家の

 人々に食べられてしまったのさ。酷い話だろ?でも、魔女の子を食べても

 何も願いは叶わなかった。それで、次に生まれてきた子供は食べずに

 育てられた。第一子は食べてしまったから、第二子でもクロウ家の

 第一子として認知された。それが僕。僕の母は地下に幽閉されて、

 毎日泣いてたよ。泣かされてたって言ったほうが正しいかな。僕が

 幼い頃から母はよく全裸で三角木馬に跨らせられたり、鉄製の椅子に

 拘束されたりしていたからね。身体に鋲が刺さって痛いって泣いてたよ。

 でも、本当の地獄が始まったのは父が結婚してからだった。

 僕が5歳の時に父は結婚したんだ。母は妻じゃなかったからね。

 クロウ男爵家に相応しい正妻を迎えたと言っていたけど、あの女は

 まるで悪魔だったね。父は欲に駆られて自分の子を食べた事を悔いて、

 僕には手を挙げなかったけど、継母は僕の事を鞭で打つんだ。僕が

 7歳の時に弟が生まれたけど、あの女は赤ん坊の弟まで叩いていたよ。

 クロウ家の屋敷の地下からは僕の母の泣き声が、地上からは僕と弟の

 泣き声が毎晩、響いてね。そんな時かな。父が僕に手を出したのは・・・

 それまで僕には優しかった父が突然ベッドに僕を押し倒したんだ。

 僕は7歳で父に犯されたんだよ。」



 クロウは悲しい表情を浮かべた。

 「父は僕を溺愛し、継母は僕を寄宿学校に放り込んだ。

 僕は17歳になって学校を卒業するまで週末は父に抱かれ、

 月曜から金曜までは学校で勉強する生活が続いた。でも、クロウ家の

 跡取りだった弟は学校に行く歳になっても家庭教師で、ずっと

 この屋敷から出る事はなかった。僕はまだ恵まれていたほうなのかな。

 母は魔女狩りさながらの拷問を父から受け続けて気が狂っていたし、

 僕が17歳の誕生日に鉄の処女に閉じ込められて死んだんだ。

 継母は母の肉が腐らないように工夫して保存して、僕の卒業祝いに

 食べさせてくれた。僕は2ヶ月前、魔女の肉を食べたんだ。そう、

 母親の肉をね。最初は何の肉か分からなくて、継母がニヤニヤしながら

 僕を見ているものだから、僕は気味が悪かったのを覚えてるよ。

 ほんの2ヶ月前の出来事が随分昔のような気がする。何故だか分かるかい?

 その時、僕は覚醒したんだ。魔女の肉を食べると願いが叶うって伝説は

 説明したよね?本当はそれは間違いで、魔女が魔女の肉を食べると、

 願いが叶うんだ。つまり、僕は常日頃から自分の無力さを嘆き、強く

 なりたいと思っていた。だから、魔女の肉を食べる事で強くなったんだ。

 世界最強の魔女になったんだよ。悪魔と対等に戦える強さを手に入れたんだ。

 ウィッチ家は薬を作る白魔術。黒魔術を司る悪魔の下僕とは違うんだ。

 誇り高き一族なのさ。僕が昔話をキミにした理由が分かるかい?

 キミは女王の番犬なんだろう?全部知ってるよ。キミが昔、連れ去られて

 玩具にされた事も。今は悪魔と交わっている事も。キミは人外の者と

 交わるのが好きなのかなぁ。僕は人であって人でないんだ。もし良かったら、

 僕と交わってみる?シエル。キミの瞳を抉り取ったら、悪魔との契約は

 破棄しても大丈夫なのかな?フフフ・・・」

 クロウは笑いながら、シエルの瞳にキスしようとした。

 「や、やめろ!」

 シエルはクロウを突き飛ばした。だが、逆にシエルのほうが反動で倒れて

 尻もちをついてしまった。

 「キミ、スープを飲んだだろ?この森で採れる毒キノコには幻覚作用と

 麻薬みたいな効果があるんだ。キノコを食べたら最後、もう僕には

 逆らえないんだよ。キミはもっとキノコを食べたほうが良いな。

 さあ、スープを飲んで。」

 クロウはテーブルのスープの皿を手に取り、スープを口に含むと、

 シエルに口移しで飲ませた。シエルは嫌がったが、唇を塞がれて

 吐き出す事もできず、仕方なくゴクリと呑み込んだ。

 「いい子だ。」

 クロウはそう言うと、シエルに何度も口移しでスープを飲ませた。

 スープを全て飲み干した頃、シエルの意識は混沌とし、瞼が重くなった。

 「眠くなったんだね。良い夢を見なさい。おやすみ。シエル。」

 クロウがシエルを抱きしめて、瞳にキスをすると、シエルは眠りについた。



 夢は最悪だった。

 真っ暗な部屋に大きなキノコが何人もいて、

 「淫乱」

 と罵るのだ。キノコは小人くらいの大きさで喋るのだった。

 シエルは全裸で部屋の中央の手術台みたいなベッドに

 縛り付けられていた。赤い水玉模様の大きな傘を持つキノコが

 シエルの尻に頭を突っ込んだ。

 「あっ。ああっ。」

 あまりの大きさにシエルは思わず声をあげた。

 「淫乱。気持ち良いのか?」

 とキノコ達が聞いてきた。

 「もっと気持ち良くしてやる。」

 と言って、黄色と青色のキノコがシエルに乗り、傘の裏のひだを

 シエルに擦り付けて上下に擦った。

 「あっ。やっ。ああっ。」

 悦がるシエルにキノコ達は

 「もう1本追加だ。」

 と言って、今度は紫色のキノコが飛び蹴りするみたいにジャンプして、

 柄の部分を尻に突っ込んできた。

 「ああっ。やっ。やめろっ。」

 見る見るうちにキノコは2本ともシエルの中にすっぽりと入ってしまった。

 「2本入ったな。淫乱。今度は2本同時に入れるぞ。

 合計4本のキノコを味わえ。」

 キノコ達はそう言うと、緑色と茶色のキノコが二人並んで、

 傘の部分で穴を押し広げるようにして、先に入っていた2本のキノコを

 奥深くに押しやりながら、2本同時にシエルの中に侵入してきた。

 「ああっ。やっ。いっ。痛い。ああっ。あ~」

 シエルは4本のキノコに犯されて、イってしまった。

 「こいつ痛いのに感じるんだなぁ。淫乱だ。」

 キノコ達は口々にシエルを罵った。

 「こんな淫乱は身体の中に胞子を撒いてやれ。キノコの子を腹に宿して、

 キノコを産むんだ。」

 とキノコ達は言い出した。シエルの尻の中の4本のキノコ達が次々と

 胞子をシエルの腸に撒いた。

 「やっ。やめろっ。い、いやああ~!!」

 シエルは絶叫した。



 ハッと目が覚めると、シエルは檻の中にいた。

 そこは見覚えのある檻だった。

 何人もの子供たちが諦めた虚ろな目で震えている。

 シエルは自分に手枷足枷がついている事に気付いた。

 奴隷のようなみすぼらしい服を一枚だけ着ていて、

 下着すら身に着けていなかった。

 「来い!出番だ!」

 男が檻の扉を開けて、シエルを外に引き摺り出した。

 円形のステージを取り囲むように観客席がある丸い大きな部屋の

 出入り口から鎖に繋がれた虎が現れた。シエルはステージ中央の台に

 上半身だけ括り付けられ、足は床の金具に足枷の鎖を固定され、

 両足を開いて尻を突き出す体勢を強いられた。

 そして、尻が丸見えになるように衣服を捲し上げられ、

 鞭でバシッと1回叩かれた。

 「ヒッ。」

 と、思わず漏れた声に観客は笑い、虎は興奮したようだった。

 男が虎をシエルの背後に連れてきて、虎はシエルに覆いかぶさった。

 尻に虎の下半身の感触がして、スリスリと数回擦り付けられた後、

 シエルの尻に熱いものが挿入された。

 「あっ。やっ。ああっ。ああ~」

 シエルは虎に犯されて喘いだ。観客達はゲラゲラ笑ってシエルを

 淫乱と罵った。虎はカクカクと腰を振り、シエルの肩を甘噛みした。

 「痛いっ!や、やめっ。あああああ~」

 虎がシエルの中に放つと同時にシエルは絶頂に達してしまった。

 「虎に犯されてイクなんて!前代未聞の淫乱だ!おまえは人外の者と

 交わるのが好きなんだな。それとも、おまえは人と交わるのが

 嫌いなのか?虎が好きな淫乱には罰を与えなければいけないな。

 今から会場にいる観客50人全員の相手をしろ。そして、後で

 虎と人どっちが良かったか感想を言えよ!」

 と、男は言うと、観客を1列に整列させた。

 一番目は背の高い筋肉質な逞しい身体の男だった。

 男はシエルの手枷足枷を外すと、シエルを仰向けにして台に乗せた。

 そして、シエルの足を大きく開かせ、一気に貫いた。

 「あっ。ああっ。」

 不思議と痛くなかった。いつもは痛くて泣いてしまうのに、

 何故か今日は気持ち良かった。男がシエルの中で果てると、

 次に金髪碧眼の端正な顔立ちの若い男がシエルに挿入し、

 「気持ち良いのか?淫乱。もっと腰を振れ。」

 と、蔑んだような目で言った。シエルは命じられるままに

 腰を振って、男を喜ばせた。男がシエルの中で果てると、

 次に太った男がシエルに挿入し、シエルの首をペロペロと舐めた。

 まるでアイスクリームでも味わうように舐めまわす男にシエルは

 嫌悪感を覚えた。そして、虎に噛まれて血がにじんでいる肩を

 舐められた時、シエルは絶頂に達してしまった。

 その後も年老いた男、痩せた男、口の臭い男、背の低い男、

 顔の醜い男など様々な男達に犯され続け、夜が明ける頃に

 50人目の男の順番が回って来た。



 50人目は漆黒の黒髪に深緑色の瞳の若く美しい男だった。

 「僕が挿入する前に49人分を掻き出さないとね。」

 と男は言い、指を突っ込んで、シエルの身体から白い体液を掻き出し、

 スープ皿に入れると、今度はロートをシエルの口に突っ込んで、

 スープ皿いっぱいのドロドロとした白い体液をロートに注ぎ込んだ。

 シエルはあまりの不味さに吐きそうになったが、口を塞がれているので、

 吐き出せない。仕方なく自分の腸で薄汚れた白い液を呑み込んでいった。

 口の中いっぱいにネバネバしたものが広がって、喉から食道を通って

 胃まで汚されていく感覚にシエルは吐き気を催した。喉にこびりつく

 体液に耐えきれず、シエルは泣いてしまった。

 「可哀相に・・・水が欲しいんだね?キミにぴったりな水があるよ。

 聖水を飲みなさい。」

 男はそう言うと、ロートに放尿した。シエルは咽そうになったが、

 聖水を飲んだ。飲み終わると、男はロートを口から外し、

 「下の口も聖水で清めないとね。」

 と言って、ロートをシエルの尻に挿し、再び放尿した。

 そして、シエルの体内を聖水で満たした後、

 「こぼれないように栓をしないとね。」

 と言って、握り拳を尻に挿さったロートに突き立て、そのまま

 メリメリと尻にロートを押し込んだ。ロートが完全に体内に入り、

 手首までズッポリと納まると、観客達が

 「その瞳の悪魔との契約の印は淫乱の印だ!そんな奴は

 責め殺してしまえ!肘まで入れろ!」

 と囃し立てた。ロートの先の部分は既に直腸を超えているというのに、

 腕を肘まで入れたら、腸は破れて、死んでしまうかもしれない。

 シエルは痛みと恐怖に耐えかねて、泣き叫んだ。

 観客達はゲラゲラ笑いながら、シエルの泣き叫ぶ姿を見ている。

 「助けて!誰か・・・助けて!」

 シエルが血を吐くように叫んだ。すると、男は

 「悪魔と契約を交わした印の右目を抉り取るなら、

 許してあげてもいいよ。」

 と言った。男は腕を引き抜き、ロートも取り出した。

 そして、スプーンをシエルに渡し、

 「このスプーンで瞳を抉り取るんだ。キミが苛められているのは

 悪魔のせいなんだよ。さあ、早くスプーンを眼に突き立てるんだ!」

 と言った。シエルは手に握ったスプーンを恐る恐る

 目に突き刺そうとした。すると、その時、

 「坊ちゃん!坊ちゃん!」

 と、懐かしい悪魔の声がして、シエルは夢から目が覚めた。



 夢から覚めたシエルは大きなベッドに寝ていた。

 枕元でセバスチャンがシエルの顔を覗き込むように言った。

 「坊ちゃん。目が覚めて良かった。」

 シエルはまた夢の続きを見ているのだと思った。

 夢なら泣いても構わないだろうと思うと、涙が溢れてきた。

 シエルはセバスチャンに泣きながらしがみついて、

 「怖かった。皆が淫乱って苛めるんだ。」

 と言った。

 「それは・・・怖かったですね。・・・坊ちゃんはどんな夢を見たのですか?」

 とセバスチャンに聞かれて、シエルは答えに詰まって黙ってしまった。

 すると、その時、背後からクロウの声が聞こえた。

 「きっと、監禁調教される夢でも見たのだろう。僕がスープにした

 キノコは睡眠作用と潜在意識を夢に見せる作用があるからね。」

 シエルはビクッとして、セバスチャンから身体を離して振り返ると、

 そこにはクロウと幽霊の少年が立っていた。

 「やっぱり夢だ。」

 とシエルは言った。しかし、セバスチャンはクスッと笑って、

 「坊ちゃんは寝ぼけて夢の続きを見ていると思っていたのですか?

 夢じゃありませんよ。通りで・・・甘えん坊ですね。」

 と言った。シエルは急に恥ずかしくなって、顔を赤らめた。

 「おやおや。顔が赤いですね。風邪でも引いたんじゃないですか?」

 とセバスチャンがシエルをからかうように言うと、

 「風邪を引かないようにベッドに運んだのだが・・・」

 とクロウは言った。

 「そうでしたね。私までもベッドに運んでいただいて・・・

 ご親切に。どうも。」

 とセバスチャンはニッコリ笑って言ったが、

 明らかに怒っているように見えた。

 「どういう事だ?」

 シエルがようやくいつもの口調になって、事情を聞いた。

 「そちらの悪魔がスープに顔を突っ込んで眠ってしまったので、

 そのままにしておくのも悪いかと思って、ゲストルームに運んだのだよ。

 頭上に魔方陣を描いておいたから、悪魔でも簡単に魔法で運べたんだ。

 キミは僕が抱えて、お姫様抱っこで運んだ。キミ達は12時間も

 よく寝ていたね。途中で起きるかと思って、見張っていたけど・・・

 水晶玉に映ったキミ達の夢は滑稽だったな。」

 クロウはクスクスと馬鹿にしたように笑った。すると、セバスチャンは

 「失礼ですね。私は途中で何度か目が覚めましたが、なにしろ夢が・・・

 坊ちゃんの顔をしたキノコがいっぱい生えている森の中で

 何百匹もの猫と戯れるというあまりにも素敵な夢でしたし、

 坊ちゃんが隣で艶めかしい顔でスヤスヤ寝ているものですから、

 煩悩に負けて、頭上の空中に浮かんだ魔方陣を取り除くのが

 面倒になっただけです。どうせ12時間経ったら自然と消えると

 思っていましたからね。スープに顔を突っ込んでる間も身体が

 動かないだけで声は聞こえてましたよ。可哀相な身の上話を聞くのも

 調査の手間が省けて良いかと思ったものですから。もしも、あなたが

 危害を加えようとしたら、すぐさま戦闘態勢に入ってました。」

 と言った。



 「だと思ったよ。だから、殺そうとしなかったのさ。悪魔と

 まともに戦って勝てる魔女なんかいないからね。それに、もし

 仮に僕がキミ達を殺す事ができたとしても、今度は女王が

 黙っていないだろう。僕は人として生きていきたいからね。

 爵位も屋敷も欲しい。でも、キミ達は最初から僕が真犯人だと

 決めつけている。そこで僕が魔女である事を証明する必要があったのさ。

 よく考えてごらん。この森に生えているキノコは見るからに妖しい

 色形のものばかりだろ?幻覚作用があるとは考えなかったのかい?」

 とクロウは言った。すると、シエルはフッと笑って、こう言った。

 「そんな事とっくに考えている。おまえが男爵夫人に毒キノコを

 食べさせて、幻覚による無差別殺人を引き起こさせた。そうだろう?

 父である男爵を夫人に殺させ、弟に銃を渡し、弟に夫人を殺させた。

 まあ、弟は幽霊になってもおまえに懐いているようだから、

 弟を夫人に殺されたのは想定外か。あるいは斧で殺されても構わない

 くらいに思っていたから、出来た犯行だろうな。で、魔女である事を

 証明する必要がどこにある?あんな・・・悪趣味な夢まで見せて・・・

 キノコに詳しい奴なら魔女でなくとも誰でも出来る犯行だろう!」

 シエルは夢の事を根に持っているのか苛立っているようだった。

 「そう。その通り。毒キノコの知識に詳しい人間なら誰でも出来る

 犯行なんだ。怪しまれずに森からキノコを採ってきて、キノコ料理を

 作って、母に食べさせる事ができる人間なら、誰でも出来る。しかし、

 シェフには毒キノコの知識はない。使用人全員に知識はなく、殺害する

 動機もない。そして、父と母には毒キノコの知識はない。シエル。

 もう分かるだろ?この屋敷で、父と母を恨んでいる者は・・・

 僕と弟の二人だけ。僕が犯人じゃないなら、弟が真犯人だってこと。

 弟は母に虐待されていた。僕は血が繋がっていない分だけまだ我慢が

 できたけど、弟はそうじゃなかった。僕は魔女の力を得た事で自分が

 魔女狩りの対象になる事を恐れ、復讐は先延ばしにしていたんだ。

 僕は母親の肉を食べさせられた後も大人しく父に抱かれ、キノコの

 勉強をしながら、キノコから麻薬が出来ないか研究していた。

 弟にも食べられるキノコと幻覚作用が強いキノコの見分け方を教えた。

 弟は学校に行かせてもらえない分だけ知識欲が旺盛でね。

 10歳なのにキノコの見分け方を覚えたんだ。弟は美味しいキノコを

 森で採って来たと嘘をつき、母に食べてもらいたいと言い、

 キノコ料理をシェフに作ってもらった。実際に食べられるキノコの

 見分け方が弟には既に出来ていて、何度も食べていたからね。

 誰も疑わなかった。母が倒れた時も僕以外誰も気付かなかったよ。

 僕はいざという時の為に呪文書を読み、弟に銃を渡して、自分自身に

 結界を張って待機していた。弟の頭に斧が落ちたのは予想外だったよ。

 最初から皆殺しの計画を立てたのだったら、ドアが開いた時点で

 迷わず母を撃ち殺すからね。そこで、質問。何故だと思う?」

 クロウはクイズの正解をシエルに求めた。

 「殺す気がなかったから?」

 シエルは自信なさそうに答えた。



 「正解。当たりだよ。弟は虐待する母親にキノコのお化けの

 幻覚でも見せて、怖がらせたかっただけだったんだ。

 ちょっとした仕返しのつもりが惨殺事件に発展してしまったんだ。

 おまけに自分まで死ぬはめになってしまったというわけさ。」

 とクロウは言った。

 「可哀相な子ですね。」

 セバスチャンが言った。

 「血の繋がった母親に虐待され、兄には利用され・・・哀れと思います。

 死神に魂を回収されないように逃がしたのは無実を証明する証人が

 必要だときっと思ったからですよ。お話の内容はよく分かりましたが、

 結果的に生き残って爵位を継いだ者だけが得をした惨殺事件を
 
 このまま事故として処理して良いものかどうか悩みますね。もしも、

 心の中で描かれたシナリオが手を下す前に起きた場合、たとえ真犯人と

 言えないとしても、陰で犯行に導いた者が悪くないと思いますか?

 幽霊になった今では爵位を継ぐ事は叶いませんが、クロウ男爵を真犯人だと

 女王に報告する事はできます。どちらになさいますか?」

 セバスチャンに聞かれて、幽霊の少年は

 「お兄様は悪くないよ。悪いのは僕なんだ。お兄様を真犯人なんかに

 しないで。お兄様は独りぼっちの僕にいつも優しかった。

 学校に行かせてもらえず、家庭教師に勉強を教わっていた僕の世界は

 キノコの森と狂ったクロウ家だけだった。お兄様に森に連れて行って

 もらって、キノコについて学んだり、呪術の本を見せてもらったり・・・

 友達のいない僕にはお兄様との楽しい思い出だけが心の支えなんだ。

 だから、僕は死んでもお兄様から離れたくなくて・・・

 お兄様とずっと一緒にいたいんだ。お兄様から指示は受けていない。

 僕が一人で全部やったんだ。本当だよ。」

 と言った。

 「分かりました。」

 セバスチャンは静かに答えた。シエルはもう何も言わなかった。

 人の心の中の真相は誰にも分からない。真実は一つとは限らないのだ。

 シエルは帰る事にした。

 屋敷の外に出ると、濃い霧が視界を妨げ、森が霞んで見えた。

 馬車に乗る時にクロウはお土産にマッシュルームをセバスチャンに渡した。

 セバスチャンはお礼を言って馬車に乗ったが、シエルはお礼を言わなかった。

 見送りに来た執事やメイドには幽霊の少年が見えていないようだった。

 馬車が出発するまで少年は手を振っていた。シエルは無言で少年にだけ

 手を振った。屋敷の敷地を出る頃、朝霧に包まれた森の中の屋敷は

 クロウの心のように霞んで、もう何も見えなかった。



 その夜、シエルが女王への手紙を書き終えた後、セバスチャンが言った。

 「坊ちゃん。なんだか浮かない顔ですね。まだ何か気がかりな事でも?」

 「・・・クロウに弟は騙されている気がするんだ。」

 「左様でございますか。でも、報告書は魔女と幽霊に関する事を除いて、

 ありのままを書いたのでしょう?」

 「ああ。そうだ。詳しい事は書かなかったが・・・」

 「私も昨夜の事は秘密にしておいたほうが良いと思います。それよりも、

 坊ちゃんは夕食をあまり召し上がらなかったので、そちらのほうが心配です。」

 「マッシュルームのソテーにマッシュルームのシチューにマッシュルームの

 ゼリー寄せ。そんなものが食えるか。何の嫌がらせだ?」

 とシエルは不機嫌そうに言った。

 「せっかくマッシュルーム1箱お土産に頂いたのです。

 全部食べたほうがと思いまして・・・でも、さすがに料理しきれなくて、

 少々残してしまいました。今から食べますか?」

 セバスチャンはニッコリ笑って、マッシュルームをシエルに見せた。

 「な・・・まさか変な事を考えているんじゃないだろうな?」

 「はい。そのまさかでございます。」

 セバスチャンはシエルの服を脱がせ始めた。シエルは抵抗したが、

 あっという間に全ての衣類を剥ぎ取られてしまった。そして、セバスチャンは

 マッシュルームを一つ手に取り、シエルの下の口に入れようとした。

 「や、やめろ!キノコは嫌だ!」

 シエルは拒絶したが、セバスチャンは

 「お嫌いですか?水晶玉に映った夢の中では気持ち良さそうでしたが・・・」

 と言った。

 「観ていたのか?」

 シエルは青ざめた顔で聞いた。

 「はい。悪魔は眠らないものですから、1時間も経たないうちに

 目が覚めてしまいまして、水晶玉に映った坊ちゃんが何度も絶頂を

 迎えるのを見ておりました。」

 「な、なんで助けなかった。」

 「キノコはともかく、虎に興奮してしまいまして・・・人間50人と

 虎1匹どっちが良かったか感想を聞きたくなったのでございます。

 どちらが良かったですか?」

 「?!!!・・・チッ。悪趣味だな。」

 シエルは頬を染めて、吐き捨てるように言った。だが、セバスチャンは

 「感想を言わないんですか?言わないと、こうですよ。」

 と言うと、マッシュルームをペロッと舐めて、シエルに入れた。

 「あっ。やっ。やめっ。ああっ。」

 「やっぱり、キノコが好きなんですね。では質問を変えます。

 私とキノコどちらが好きですか?」

 「どっちも嫌いだ。」

 「素直じゃないですね。」

 と言って、セバスチャンはシエルに挿入した。

 「ああっ。ま、待て。キノコがまだ中に・・・ああっ。」

 「二つとも味わって、後で感想を言って下さいませ。」

 「や、やあっ。あっ。あんっ。ああっ。」

 シエルは喘いだ。セバスチャンは激しく腰を突き動かし、マッシュルームで

 いつもは届かない奥を責められたシエルは絶頂を迎えた。

 「ああっ。あああ~」

 欲望を吐き出した後もシエルは感想を言う訳もなく、再び責められ、

 苛められた。幾度となく繰り返される中、シエルは気を失い、夢を見た。

 夢の中でシエルは悪魔と交尾していた。

 霧に包まれた森の中の焼き払われた廃墟で長い漆黒の髪の魔女が微笑んで、

 美味しそうなキノコを指差すのだった。シエルが交尾に夢中で

 キノコを採取しないと、彼女は笑いながら消えて行った。

 夢とは不思議なもので、夢を見ている間はそれが現実なのだ。

 死後の世界も魂は生き続け、骸が朽ち果てようと存在している。

 ゆめまぼろしは儚くて、人の記憶は不確かなもの。

 目が覚めれば、忘れてしまう。

 夢幻の世界から引き戻されたシエルは現実にいる悪魔に接吻された。

 「おはようございます。坊ちゃん。よく眠ってらっしゃいましたね。

 本日の朝食はマッシュルームのスープでございます。」

 とセバスチャンは言って、ニッコリと笑った。

                                   (完)



 
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黒執事「猫」

黒執事部屋



街にサンタが溢れる頃、シエルは誕生日を迎える。

誕生日の前日、シエルはセバスチャンを連れて、

ファントムハイヴ社の経営する玩具屋の視察に出かけた。

クリスマスキャンペーンで12月1日~24日までの売り上げの

1%を恵まれない子供達に寄付すると公言したとたん

慈善事業家としてファントムハイヴの名が新聞に載り、

クリスマスプレゼントを買い求める客が店に押し寄せて来たのだった。

「坊ちゃん。大繁盛ですね。」

「世の慈善事業家どもは目玉の飛び出る金額を教会に寄付したりするが、

我が社はタダでは寄付しない。たった1%だというのに物珍しさで

新聞に取り上げられ、店は連日大盛況だ。クリスマス商戦は

我が社の勝ちだな。ワッハッハ・・・」

シエルは悪そうな顔で笑った。

「慈善事業を上手く利用して広告代を浮かすとは坊ちゃんも

悪知恵が働きますね。お見事です。」

セバスチャンはシエルを褒めた。店は親子連れで賑わっていた。

シエルがご満悦の表情で店内を眺めていると、1匹の猫が客に紛れて

ドアから入って来た。最初は客のペットかと思ったが、どうやら違うようだ。

猫に気付いた店員が慌てて駆け寄り、猫を店の外に摘まみ出した。

シッシッと言って追い払う店員に何故か猫は逃げなかった。

もう一度店の中に入りたいのか店員の足に猫はすり寄った。

随分人懐こい猫だなとシエルが思って、フッと笑った瞬間、

店員が猫を蹴り飛ばした。蹴られた猫は勢いよく道の真ん中まで飛んで行った。

すると、その時、猛スピードで駆けてくる馬車が猫を轢きそうになった。

「あっ!危ない!」

と、シエルが叫んだ瞬間、セバスチャンが馬車の前に飛び出して、

猫を助けた。猫を抱きかかえ戻ってきたセバスチャンは

「この猫を屋敷に連れ帰ってもよろしいですか?」

と言った。猫は毛並みの色つやも良く野良猫には見えなかった。

「迷子猫かもしれないぞ。飼い主を探せ。飼い主が見つかるまでなら

飼っても良いぞ。」

「イエス・マイ・ロード。ロンドン中に100枚貼紙をします。」

「セバスチャン。おまえ、猫には親切だな。」

シエルは猫を屋敷に連れて帰る事にした。


その夜、シエルはなかなか寝付けなかった。

部屋の明かりは暖炉の火のみで、赤々と燃える炎が床を照らしていた。

セバスチャンは視察から戻るとすぐに猫の飼い主を探すビラ作りに取り掛かり、

100枚もの猫の似顔絵を描き、街中に貼って回った。

夕食後は明日のバースデーパーティーの準備に忙しいと言って、

調理場に閉じ籠り、あまり顔を出さない。

大方、ケーキを作っているフリをして猫と遊んでいるんじゃないかと

シエルは思った。シエルは溜息をついて、窓から夜空に浮かんでいる

大きな月をぼんやりと眺めた。

その時、月明かりが差し込む部屋のドアのほうから僅かに物音がした。

一瞬、セバスチャンが来たのかと期待したが、違っていた。

換気の為にと開けたままになっているドアの隙間から

昼間拾ってきた猫がスーッと入って来たのだった。

「なんだ。猫か・・・おまえも放っておかれていたんだな。」

とシエルはつぶやいた。人懐こい猫はシエルのベッドに

ぴょんと飛び乗り、シエルの上に座り込んだ。

「一緒に寝たいのか?」

と、シエルは猫に聞いた。

「ニャー。」

と猫は鳴き、シエルの顔をペロペロと舐めた。

「コラコラ。くすぐったいだろ。」

思わずこぼれた笑みに猫はつけ入るようにシエルの唇を舐めた。

ザラザラとした猫の舌の感触がシエルの唇に奇妙な刺激を与えた。

「坊ちゃん。何をしているのです。」

突然、セバスチャンが部屋のドアを開けて、シエルを咎めるような顔で言った。

「な、なんだ?いきなり。何もしていやしないぞ。こいつが勝手に・・・」

シエルは慌てて猫を引き剥がした。

「何も?坊ちゃん。嘘はよくないですよ。今、猫とキスしていましたよね?

坊ちゃんがそういう御趣味とは知りませんでした。」

セバスチャンはわざとらしく眉をひそめて言った。そして、何やら色々

載せたワゴンを押してベッドの横までやって来ると、こう言った。

「お誕生日おめでとうございます。坊ちゃん。時刻は真夜中の12時を

1分過ぎました。2人だけのバースデーパーティーをしましょう。

素敵なケーキを作って差し上げます。」

ワゴンの上には生クリームがたっぷり入ったボウルと

イチゴが盛られた皿と蝋燭とリボンが置いてあった。

シエルは嫌な予感がした。


「何をする気だ?」

シエルが聞くと、セバスチャンはニコッと笑って、

「ケーキを作るのです。坊ちゃんの身体に生クリームを

たっぷりと塗って、イチゴで飾り付けして差し上げます。」

と答えた。

「何で僕の誕生日なのに僕がケーキになるんだ?」

「まあ細かい事は気にせずに・・・きっと素敵なバースデーケーキに

なると思いますから。」

セバスチャンはそう言うと、シエルの寝巻を脱がせにかかった。

「や、やめろ。」

シエルは抵抗したが、あっという間に全裸にされてしまった。

セバスチャンは嫌がるシエルの両手首をリボンで縛り、

裸体に生クリームを塗り始めた。

「うわっ。冷たい。や、やめろ。」

シエルは生クリームのベタベタする感触に鳥肌が立った。だが、

セバスチャンはシエルの言う事など無視して、胸、腹、下半身へと

ヘラを使って身体中にどんどん生クリームを塗って行く。

万遍なく塗り終わると、今度はシエルの尻にホイップクリームを詰め込んだ。

「あっ。やっ。や~。」

ホイップクリームを注入されて、シエルは悶えたが、セバスチャンは

おかまいなしだった。セバスチャンは楽しそうにホイップクリームで

シエルの両の胸を飾り付けして、イチゴを乗せた。そして、

上を向きかけている下半身もホイップクリームで飾り付けして、

最後にイチゴを並べて、セバスチャンは人間ケーキを完成させた。

「美しい坊ちゃんケーキの出来上がりです。味見なさいますか?」

「あ、味見なんか・・・どうやって食うんだ。」

「坊ちゃんに言っているのではないですよ。猫に言っているんです。」

セバスチャンはさっきから興味津々といった眼差しで見つめていた猫を

シエルの足と足の間に置いた。そして、

「さあ、どうぞ召し上がれ。」

と言って、猫にシエルを舐めさせた。猫はシエルの下半身の

ホイップクリームを美味しそうにペロペロと根元から先端まで

上手に舐め上げた。シエルはカブッと噛まれないか心配で

ヒヤヒヤしていたが、逆にそれはおぞましい快感をシエルにもたらした。

猫はほんのりピンク色の肌が見えるくらいまで舐め続けると、

満足したのか今度は喉をゴロゴロ鳴らし、ベッドを足モミし始めた。

「蝋燭に火を灯しましょう。」

セバスチャンは蝋燭に火をつけて、シエルの身体に塗られた

生クリームに数本差した。

「あ、熱い。や、火傷したらどうするんだ!」

「大丈夫ですよ。すぐに消しますから。でも、その前に、

こちらにも蝋燭を・・・」

セバスチャンは線香のように細い蝋燭を1本手に取ると、火をつけて、

先ほどまで猫が舐めていた薄ピンク色のシエルの先端に

ゆっくりと挿し込んだ。

「あっ。や、やめっ。ああ。」

シエルは喘いだ。


「坊ちゃん。とても可愛いですよ。」

セバスチャンは妖しく輝く美しいケーキを満足げに眺めた後、

フーっと一息で火を消すと、1本だけ残して蝋燭を取り去り、

シエルの足を開いた。

「まるで、おまえの誕生日のようだな。おい。1本消し忘れているぞ。」

シエルは線香のように細い蝋燭にまだ火がついている事を指摘した。

「これはそのままで。」

セバスチャンはそう言うと、まだ慣らしてもいないシエルの中に入って来た。

「あっ。ああ。ああ~」

何度も激しく突かれて、シエルは苦痛と快楽の狭間で嬌声をあげた。

身体を突かれる度に蝋燭の炎が揺れる。熱く激しく蝋燭に灯された炎が

幻想的に揺らめき、狂気的な快楽へと誘っていく。

「あっ。ああ~。も、もう。ダメだ。ぬ、抜け。ああっ。」

「御意。」

セバスチャンが蝋燭を抜くと同時にシエルは絶頂に達した。

セバスチャンもシエルの中で欲望を放ち、シエルに口づけした。

シエルは余韻を味わうように口を開け、舌と舌を絡ませ、

セバスチャンの舌を味わった。

「猫とどちらが良かったですか?」

セバスチャンが聞いてきた。シエルは頬を赤く染めて、

「バカ。」

と言った。

行為の後、セバスチャンはシエルの身体を拭き、シーツを取り替え、

全て片付けた。そして、バスタブを部屋に用意し、熱いお湯を注ぎ、

シエルを入浴させた。セバスチャンがシエルの身体を洗っていると、

再び猫が寄って来た。

「こいつも風呂に入りたいんじゃないのか?」

とシエルが言った。

「まさか。猫は水が嫌いですから、お風呂には入りませんよ。

それにしても、この猫は不思議な猫ですね。あの舌使いは

ただ者ではありませんね。ひょっとしたら、そっち専用に

飼いならされた猫かも知れません。」

「じゃあ、こいつが居れば、おまえはもう要らないな。」

と、シエルは意地悪く笑って言った。すると、セバスチャンは

「では、次回は猫の手足など入れてみますか?」

と言った。

「おまえが言うと、冗談に聞こえない。」

シエルは笑うのをやめて、口元までお湯に浸かった。

暖かな暖炉の火と月の明かりが湯を照らしていた。

「坊ちゃん。お誕生日おめでとうございます。」

セバスチャンが金の指輪をシエルの目の前に浮かべた。

指輪はゆっくりと湯に沈んで行き、シエルは両手ですくうように

指輪を受け取った。指輪を指で摘まみ上げて、よく見てみると、

三日月・上弦の月・十三夜月・満月・十六夜月・下弦の月など

月の形の細工が施されていた。月の満ち欠けが描かれた

金細工の指輪をシエルは薬指にはめてみた。

「彫金に時間がかかりまして、坊ちゃんにいささか寂しい思いを

させてしまいました。申し訳ございません。しかし、誰よりも先に

バースデープレゼントを渡したかったのでございます。」

「ずっとこれを作っていたのか?」

「はい。」

セバスチャンは背後から抱きしめ、シエルの指に接吻した。

金色に輝く月は満ちても欠けても美しくシエルの薬指に繋がっていた。

愛よりも深い絆で結ばれた二人の蜜月は月が満ち欠けを

幾度となく繰り返すように永遠に続くだろう。

「坊ちゃん。・・・」

そして、今日もまた悪魔が耳元で囁く。

                             (完)

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ハイキュー二次創作小説

ハイキュー部屋



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ハイキュー「砕け散った王様」

ハイキュー部屋


 試合に負けたのは王様のせい。皆の冷たい視線が突き刺さる。

 集団無視され、一人孤独に壁に向かって影山はサーブの練習をしていた。

 部活の練習が終わり、皆が帰った後も影山はサーブを打ち続けた。

 影山が練習を終えて、帰ろうとした日の暮れかけた夏の日に

 蝉の死骸が落ちていた。体育館の下駄箱の影山のスニーカーの中に

 蝉の死骸は落ちていた。

 「くそっ!いじめかよっ!」

 影山は怒って、下駄箱を蹴った。スニーカーを両手で持って全力で振り、

 地面に落ちた蝉の死骸を蹴飛ばした。運動場を走り抜け、部室に着くと、

 何故か3年生5人が部室に残っていた。

 「よお!遅かったじゃねぇか。王様。」

 今日、影山に初めて声をかけたのは金田一だった。

 「テメェ!おまえか!蝉なんか入れやがって!小学生のいじめ

 みたいなことしやがって!」

 怒った影山は金田一の胸倉を掴んで殴りかかろうとした。

 すると、横から国見が影山の腕を掴んで、こう言った。

 「蝉を入れたのは俺だよ。」

 「あっ?なんだと!」

 影山は片腕を掴まれたまま国見を睨んだ。だが、国見は

 不敵な笑みを浮かべて

 「王様に負け試合のお礼がしたくてさ。」

 と言った。

 「おまえらのせいだろうがっ!」

 影山は怒鳴って、腕を振り払おうとしたが、金田一に腹を殴られて、

 腹を押さえてうずくまってしまった。

 「へっ。へっ。へっ。」

 不気味な笑い声と共に他の3人の部員も寄ってきて、

 金田一が影山を部室の床に押し倒した。

 「や、やめろ!何しやがる!」

 抵抗する影山の両腕両足と頭を5人がかりで押さえつけて、

 金田一が影山のジャージのズボンに手をかけた。

 「嫌だ!やめろ!」

 「今更、純情ぶるなよ。知ってるんだぜ。影山が及川さんと

 付き合ってたこと。男とやりまくってたくせにガタガタ喚くなよ。

 影山。試合に負けた代償は身体で払え。」

 金田一はそう言うと、一気にズボンを引き下ろした。



 「あっ。や、やだ。放せ!やだ。やっ。」

 金田一に身体を弄られて、影山は泣きそうになった。

 体操服をまくり上げられ、パンツも脱がされて、身体の中心を

 金田一に掴まれた。両胸の突起は国見に摘ままれ、人差し指と

 親指を擦り合わせるようにしてクリクリと捻じられた。

 「あっ。やっ。あっ。」

 嫌なのに感じてしまう影山は無意識のうちに拒否や抵抗を忘れて

 艶っぽい声になっていった。

 「ねえ。俺も触っていい?」

 影山を押さえつけていた部員の1人が聞くと、

 「いいよ。」

 と言って、国見は両手を離した。すると、すぐに右側と左側から

 手が伸びてきて、右と左の胸を左右別々に摘ままれた。

 引っ張られたり捻じられたり、2人の人間に弄ばれて、影山は

 更に感じてしまった。

 「お、俺も・・・」

 後から遅れて右足を押さえつけていた部員が下半身に手を伸ばした。

 しかし、金田一は国見と違って、手を離さなかった。伸ばした手は

 掴むべきものがなかったせいか袋のほうをわし掴みにしてしまった。

 「痛い!」

 突然の苦痛に影山が叫んだ。慌てて手を離したのを見て、国見は

 「金田一。代わってやりなよ。」

 と言った。

 「分かったよ。」

 と言って、金田一は握りしめていた手を放した。

 そして、また代わりの手が影山を握りしめ、今度は激しく上下に

 動かし始めた。下手なのか乱暴なのかよく分からない動作に国見は

 クスッと笑った。金田一は自分の人差し指をペロッと舐めてから

 影山の尻に指を1本突き刺した。



 「あっ。あんっ。あっ。」

 身体の中を指で掻き回され、影山は甘い声を上げた。

 影山は身体の最も感じる4か所を同時に4人に片手で弄ばれて

 気持ち良くなってしまっている自分が情けなかった。

 しかし、もう片方の手で両腕両足を押さえつけられている為に

 抵抗しようにもできなかった。しかも頭は国見の太ももに挟まれて、

 肩は国見の両手で押さえつけられていたのだった。

 影山は頭に当たる国見の股間が気になった。当然のことながら

 大きく固くなっているのだった。

 「そろそろ大人しくなってきたから、しゃぶらせても大丈夫かな?」

 と国見が言った。

 「いいんじゃね。こっちもスゴイことになってるし・・・

 1本じゃ足りないみたいだ。」

 金田一が緩んで開いてきた蕾を見ながら言うと、国見は

 「2本入れなよ。こいつ淫乱だからさ。3本入れてもいいと思うよ。」

 と言った。それを聞いた影山は

 「3本は無理。」

 と言った。5人とも一斉に影山を見た後、国見が

 「2本が良いみたいだよ。」

 と言った。

 「ねぇ。2本にしてあげるからさ。しゃぶってよ。」

 国見が自分のジャージをずり下げ、大きくなったものを取り出して、

 影山の頬に擦り付けた。

 「はい。口開けて。」

 国見は口元まで持ってきて、スリスリと擦り付け、唇に押し当てた。

 「あっ。やっ。やめろっ!」

 影山は首を振って嫌がり、そっぽを向いた。

 「こっち向けよ。おまえ、昔、部室で及川さんのを美味しそうに

 咥えてた事あるだろ?俺、見た事あるんだよ。及川さんが卒業した後も

 一つ上の先輩と何度か部室でしてただろ?先輩が言ってたぞ。影山は

 お願いって拝み倒すと、何でもさせてくれるって。」

 「俺もその話聞いた事あるぞ。影山はバレー部の先輩の何人かと

 寝たことあるって。」

 「う、嘘だ。お、俺は・・・お、及川さん以外とは・・・寝てない

 ・・・あっ。」

 指が2本に増やされた。

 「白状しろよ。でないと、3本入れるぞ。」

 金田一は人差し指と中指を指の付け根までズッポリと沈めて、

 更に親指を入り口付近に差し込もうとした。



 「あっ。やっ。やめっ。い、痛っ。や、痛いっ。あっ。ああっ。」

 肉を抉じ開けて無理矢理入ってくる親指に影山は悶えた。

 苦痛の表情を浮かべて嫌がる影山に興奮しながら金田一は親指を

 第一関節まで入れた。

 「ああっ。い、痛いっ。も、もう、無理。あっ。抜いて。ああっ。」

 涙目になって懇願する影山を見て、金田一は

 「白状する気になったか?」

 と言って、人差し指と中指は残したまま親指だけを引き抜いた。

 「・・・て、手で・・・あっ・・・お願いされた時は・・・手で・・・

 あっ・・・してたから・・・あっ・・・ホントに・・・寝てない・・・」

 「ふーん。そっか。でも、及川さんとは最後までしてただろ?」

 今度は国見が質問した。

 「・・・うん。でも・・・及川さんが・・・卒業してからは・・・

 あっ・・・だんだん・・・会わなくなって・・・あっ・・・」

 「すぐに立ったのは溜まってたからか。金田一、良かったな。

 おまえが二人目だってよ。クジ運いいな。」

 「へへっ。誰が最初に王様を犯るかクジ引いてたんだ。

 ああ、もう、たまらねぇ。入れていい?」

 と金田一は言って、指を引き抜き、影山の足を大きく広げて抱え上げ、

 挿入した。

 「あっ。い、痛っ。やっ。あっ。あ、ああっ。」

 影山が挿入時に痛みを感じたのか顔を歪めた。

 「うわっ。きつい。おいっ。そんなに締めつけるなよ。」

 金田一は影山の中に身体を全部沈めて嬉しそうに腰を動かした。

 「あ、ああっ。ああ~」

 痛みと快楽との狭間で嬌声をあげる影山に国見は

 「随分と気持ち良さそうだな。ほら。俺のも咥えろよ。」

 と言って、無理やり口の中に押し込んだ。

 「うぅ。う、うぐぅ。」

 口の中を犯されて影山は呻いた。



 「ちゃんと舌使えよ。」

 と国見は言った。だが、金田一に貫かれながら両胸と下半身を

 弄ばれている影山は咥えているのがやっとだった。影山に

 業を煮やした国見が自ら腰を動かし始めると、国見の大きく

 固いものが影山の喉まで入ってきて、影山は嗚咽を漏らした。

 「おいおい。苦しそうにしてるぞ。手加減しろよ。」

 と金田一が言った。しかし、国見は

 「苦しいくらいが気持ち良いのかもよ。さっきから涎垂らして喜んでる。」

 と言って、蜜を垂らしている影山を見て笑い、髪を掴んで、

 国見の草むらに唇が触れるほど深く押し付けた。

 「うぐっ。うぅ。んっ。うぅ。んっ。んんっ。」

 両方から犯されて感じてしまった影山は呻き声をあげた。

 「うぅ。締まる。俺、もうイキそう。」

 金田一はそう言うと、激しく腰を動かし、影山の中に欲望を放った。

 「んっ。んあっ。あっ。ああ~」

 金田一と同時に絶頂を迎えた影山が思わず声をあげた時、影山の

 顔に国見の放った白い液体がかかった。三人同時に迎えた絶頂に

 酔いしれたように放心状態に陥った影山は顔を拭う事も忘れて、

 少しの間、空中を見つめていた。

 すると突然、カシャッとシャッターを切る音がして、影山は

 ハッと我に返った。

 「な、写メ撮んな!」

 慌てて手の甲で顔を拭いながら、起き上がろうとする影山を再び

 5人で押さえつけて、金田一は他の部員に影山の両足を広げさせ、

 白い液体が流れ出る蕾をスマホでカシャッと撮った。

 「誰にも言えない恥ずかしい写真を撮っておこうと思ってさ。もし、

 誰かに言ったら、ネットに流すよ。でも、影山が誰にも言わなきゃ

 大丈夫だから心配すんな。」

 と国見は言った。すると、影山は

 「そ、そんなことしたら、け、警察に訴えるぞ!」

 と怒った。だが、国見は

 「警察?影山は相変わらず、頭良いのか悪いのか分からない子だな。

 誰にもっていうのは警察もだよ。それと、気持ち良くてイッちゃう子は

 訴えても裁判に負けるよ。裁判になったら、証拠の品として影山の

 恥ずかしい写真を公開するよ。それが嫌なら、大人しくするんだな。」

 と言って、ニヤリと笑った。



 「次、俺、入れていい?」

 くじ引きで2番目が当たった部員が影山にのしかかった。

 「やっ。やめろ。あっ。ああっ。」

 影山は拒否したが、問答無用に挿入された。

 「うわぁ。熱い。トロトロだぁ。」

 と言って、腰を動かした。その様子を黙って見ていた金田一は

 「ハメ撮りもしないとな。」

 と言うと、再びカシャッと写メを撮った。

 「あっ。うわっ。と、撮るな。」

 慌てる影山に国見はこう言った。

 「分かったよ。もう写真は撮らない。3枚だけだ。影山、取引しよう。

 俺達を受け入れたら、俺達も影山を集団無視するのやめるよ。

 写真は俺と金田一で保存して、誰にも見せない。約束するよ。

 だからね。皆で楽しもうよ。」

 影山は国見がどうしてそんなことを言うのか分からなかった。

 ただ、最悪な状態に比べて、そんなに悪い条件ではないような気がした。

 2人目が済み、3人目が影山を四つん這いにして、後ろから貫いた時、

 国見が影山の手を握った。

 「俺はくじ運が悪い。5番目なんだ。」

 国見は喘いでいる影山の顔をじっと見つめて指を絡めた。

 4人目になっても国見は手を繋いだまま放さなかった。

 影山の体力も気力も尽きた頃、ようやく国見の順番がまわってきた。

 「やっと影山を抱く事ができる。」

 と言って、国見はぐったりしている影山の足を開いて挿入した。

 「気持ち良い。でも、グチョグチョのビチョビチョだ。

 なんか動くたびに溢れてくる。」

 国見は残念そうに接合部から溢れる白い液体を見た。

 「そりゃ4人分入ってるんだから仕方ないだろ。」

 金田一が下卑た笑みを浮かべて言った。

 「緩いんだったら、首絞めてみろよ。きっと締まるぜ。」

 「うん。ゆるゆるってほどじゃないけど・・・そうしてみようかな。」

 国見が影山の首に手を伸ばした。

 「やっ。やめろっ。お、俺を殺す気か!」

 影山が身の危険を感じて国見の手をはらいのけた。国見は一瞬

 動きを止めて、

 「あっ、今、なんか・・・締まった気がする。首絞めると締まるって

 本当だったんだ。」

 と言った。

 「萎えただけだろ。お前らマジで頭イカレてるぜ。」

 と影山は吐き捨てるように言った。だが、怒る影山に国見は

 悪びれもせず、こう言った。

 「だって、初めてなんだもん。分かるわけないだろ?」

 「ど、童貞?」

 「俺達5人は経験豊富な影山と違って童貞だったから、影山を使って

 童貞卒業しようって計画立てたんだよ。中学最後の思い出にしようってね。

 BL漫画とか読んで一生懸命勉強したんだ。」

 「どんなSMBL漫画読んでんだよ?!し、信じらんねぇ・・・あっ・・・」

 呆れる影山の顔に国見はキスした。

 「影山、好きだよ。俺、漫画に描いてある事を全部真似したら、

 きっと影山が手に入るって金田一が言うから、頑張ったんだよ。」

 国見は激しく腰を動かした。

 「あっ。ああっ。あっ。ああ~」

 影山は無意識に国見の腰に両足を絡めた。もう押さえつける者もなく、

 欲情のままに国見の背中に爪を立ててしがみつき、影山は絶頂を迎えた。

 それと同時に国見も影山の中で果てた。

 「気持ち良かった?」

 終わった後、国見に聞かれて、影山は赤くなった。好きと言われて、

 何故だか感じてしまったのが恥ずかしくなったのだった。

 すると、その時、

 「次、二年生な。部室の外に待たせてる二年生呼んで来いや。」

 と金田一が言った。部室の扉が開くと、影山がいつも怒鳴って威張り

 散らしていた二年生が立って並んでいた。

 「に、二年生は嫌だ。それに5人相手にして身体が限界なんだよ。

 国見。やめさせろ。おまえ、俺のこと好きなんじゃないのかよ。」

 影山は泣きそうになって、国見の腕にすがった。

 「好きだよ。影山、安心して。二年生もみんな影山が好きだって。

 それと、俺達全員が童貞っていうのも本当だから。俺達ホントに

 中学卒業するまでに童貞捨てたかったんだよ。」

 「な、なんだよ。それ・・・うわっ。く、来るな。や、やめろ。

 や、やだっ。やっ。」

 二年生達に再び身体を押さえつけられて、影山の心は砕け散った。

 身体を弄ばれ、挿入され、泣き叫びながら影山は何度も絶頂に達した。

 砕け散った心は拾い集めて繕い直しても甘い言葉で誘っても

 歪な形となって復元し、もう元に戻る事は二度となかった。

  
                                    (完)



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ハイキュー「大王様の憂鬱」

ハイキュー部屋


揺れる木洩れ日の木の下に人影を見た瞬間、影山の胸の鼓動は高鳴った。

「及川さん。」

影山が声に出して、想い人の名を呼ぶと、及川が影山に気付いて振り向き、

微笑んだ。

「飛雄ちゃん。」

懐かしい響きだった。

練習試合の後、学校の裏庭に来るよう及川に言われて、影山は及川と

逢引きする為に青葉城西に一人残って、約束の場所を訪れたのだった。

「この桜の木は入学式の季節になると、満開に咲いて綺麗なんだよ。

飛雄ちゃんにも見せたかったな。どうして、青葉城西に入らなかったの?」

爽やかな笑顔で聞いてくる及川に影山は答えられなくて俯いてしまった。

「・・・」

「まぁ、いいさ。こうして、来てくれたんだものね。俺の可愛い飛雄ちゃん。」

及川はそういうと、影山の顎に手をかけ、上を向かせて、キスをした。

及川の柔らかい唇が影山の唇に触れ、思わず漏らした吐息の隙間に及川は

舌を入れて絡ませ、影山を優しく包み込んだ。甘いキスにうっとりとした影山に

「相変わらず、感度良いね。飛雄ちゃん。ここでしようか?」

と及川はにっこりと笑って言った。

「えっ?何言ってるんですか。やめてください。」

顔を赤らめて、逃げようとする影山の腰に及川は手をまわして、引き寄せ、

「久しぶりなのに・・・つれないね。」

と言った。及川の寂しげな顔を見て、影山は心が痛んだ。


中学生時代、影山は及川をふっていたのだった。

原因は影山の浮気。厳密に言うと、及川が卒業した後、

他の先輩達に言い寄られて、断りきれなかったのだ。

そのことがバレた時、及川は影山を淫乱と罵り苛めたので、

喧嘩になり、気まずくなって、だんだんと会わなくなって、

別れたのだった。影山には恋愛感情はなく、手でして欲しいとか

身体を触らせて欲しいとか、いろいろなお願いをされて、

仕方なく相手しただけの事であって、それを浮気だの何だのと

及川にネチネチ責められるのが影山は嫌だったのだ。

そもそも恋をする事もまだ知らない無垢な少年を押し倒して、

無理矢理ものにしたのは及川だった。

中1の時に部室で何度も押し倒され、身体を慣らされ、

気持ち良くさせられて、男を受け入れる事を覚えさせられた影山は

及川を恨んでいた。及川さえ手を出さなければ、他の奴らもきっと

手を出さなかっただろうと影山は考えていた。

中3の夏、試合に負けてからは、無視され、苛められ、まわされて、

恥ずかしい写真を撮られて脅され、中学を卒業するまで金田一と

国見の玩具にされて、影山は地獄の日々を送ったのだった。

自分を裏切った仲間を見返してやろうと思って受験した高校も落ちて、

影山は烏野に入学した。青葉城西の推薦を受けなかったのは

北川第一中学の仲間と縁を切りたかったからだ。

そして、最大の理由は及川に会いたくなかったからだった。

及川の顔を見たら、きっと泣いてしまう。

ずっと我慢して心の中に閉じ込めていたものが溢れてしまう。

影山はそう思って、青葉城西を受けなかったのだった。


皮肉な事に練習試合で及川に会ったら、泣き言よりも先に、及川が

恋しくなった。

「試合が終わったら、学校の裏庭においで」

ネット越しに囁かれた言葉と自分を懐かしむ視線と絶対的な加護の元で

過ごした中学1年の思い出と心も時間もすれ違ってしまった中学2年の

悲しい別れと逆恨みを糧にして過ごした中学3年の過酷な日々とが

走馬灯のように駆け巡り、影山の心をグチャグチャに溶かして、

一番会いたくなかった人のところに会いに来てしまったのだった。

「もしかして、好きな人とかできた?」

及川の質問に影山は首を横に振った。

「じゃ、いいよね?」

及川は影山のジャージに手を入れた。

「や、やめて下さい。誰かに見られたら・・・あっ。」

「大丈夫だって。ここには滅多に誰も来ないよ。」

及川が再び影山にキスをして、舌を絡ませながら握った手を動かした。

舌を吸い上げる度に影山の吐息が口の中に漏れてくる。握ったまま

グリグリと親指で刺激すると蜜が溢れてきた。

「飛雄ちゃん。気持ち良い?先っちょが濡れてきたよ。」

と及川が言うと、影山は頬を赤らめて、及川の肩に顔を埋めた。

左腕をぎゅっと掴んで、耐えている影山を及川は可愛いと思った。

「あ、あっ。で、でる。あっ。」

呻くように小さな声を出し、影山は及川の手の中で果ててしまった。

「早いね。もうイっちゃったんだ。パンツの中、スゴイ事になってるよ。ほら。」

及川は影山のジャージを引っ張って、白く汚れたパンツの中を見せた。

そして、手をゆっくりと引き抜くと、影山に手の平を見せて、

「いっぱい出たね。溜まってた?」

と聞いた。すると、影山は顔を真っ赤にして、コクッと頷いた。


「手が汚れちゃった。舐めてきれいにしてよ。」

と言って、及川はニコッと笑った。

「い、嫌です。」

と影山は拒否したが、

「どうして?自分のだろ?」

と及川は言って、影山の唇に指を押し込み、指についたドロッとした

白い液体を舐めさせた。影山は諦めたように人差し指だけでなく、

中指も薬指も舐め、手の平までもペロペロと舌ですくい取るように舐めた。

「飛雄ちゃんのそういう犬みたいなとこ、俺、好きだよ。

俺が躾けた事はちゃんと忘れてないんだね。」

と及川は言った。自分が汚した手を舐めている影山の従順な表情には

娼婦が男を誘うような艶っぽさがあった。

「ひょっとして、高校入ってからも、こういうことしてた?」

と及川が尋ねると、影山は

「いいえ。やってません。高校入ってからは誰とも寝てません。

日向とか烏野の仲間には知られたくないので・・・」

と言った。

「知られたくないのって飛雄ちゃんが男好きの淫乱ってこと?

それともバレー部員8人にまわされちゃった過去のこと?」

及川は皮肉屋の表情を浮かべて言った。

「何でそれ知ってるんですか?及川さん。」

「金田一と国見に聞いたからね。あいつら高校入って来てすぐ、

飛雄ちゃんの恥ずかしい画像をネタに飛雄ちゃんを誘い出そうとしててさ。

俺が携帯を叩き割って壊して、二度と飛雄ちゃんに近づくなって、

注意しといたんだ。その時に聞き出したんだよ。飛雄ちゃんがまわされて・・・

その後も中学卒業するまで何度も3P4P強要されたんだって?

何で俺に言わなかったの?もっと早く知ってたら、助けてあげたのに・・・」

と及川は言った。すると、影山は泣きそうな顔になって、こう言った。

「・・・言えなくて・・・誰にも・・・苛められてる事・・・話せなくて・・・

あいつら、コートの上では王様で居させてあげるって言うし・・・

本当にその通りだったし・・・部活の練習が終わった後、週に何回か部室で

1時間か2時間くらい我慢すれば、何事もなかったかのように過ごせたから。

・・・俺、誰にも知られたくなくて・・・」


涙を堪えて俯いた影山を及川は桜の木に押し付けて、握り拳でドンッと

桜の木を叩いた。

「みんな知ってるよ。噂になってたらしいよ。俺もちょっと去年、

聞いた事あったんだよ。飛雄ちゃんがビッチになってるって。その時は

とうとう誰にでもやらせる子になっちゃったのかなぁって思ってて・・・

あの時に俺が気付いてあげれば良かった。飛雄ちゃん。これからは

辛い事とかあったら、俺に相談して。俺が守ってあげるからさ。」

ハッとしたように及川を見つめる影山を及川は真剣な目で見つめ返した。

「及川さん。」

「飛雄ちゃん。もう一回、俺と付き合わない?」

「・・・俺なんか・・・ダメです。及川さんとは付き合えません。」

「どうして?飛雄ちゃんは穢れ過ぎて、もう、俺に顔向け出来ないから?」

「俺・・・」

再び泣きそうになった影山を及川は抱きしめて、

「俺は構わないよ。たとえ飛雄ちゃんの身体が10人に穢されていたとしても

俺の好きな気持ちは変わらないよ。」

と言った。すると、

「15人でもですか?」

抱きしめられた状態で影山が言った。

「15人?8人じゃないの?」

「あとから増えまして。全部で15人です。」

通りで噂になるはずだと及川は思った。

影山はバレー部員の大半と寝ていたのだった。

「か、構わないって言ったろ?俺も入れて15人?」

「いえ、及川さんは忘れてました。及川さんを足すと16人です。」

「もう、何人でもいいよ。」

及川は唇で影山の口を塞いだ。


「飛雄ちゃん。その木に両手をついてお尻を突き出してごらん。」

影山は言われた通りに、桜の木にそっと手を伸ばして両手をついて腰を屈めた。

及川が影山のジャージをパンツと一緒に膝のあたりまで一気に下して、

両手で双丘を押し広げると、

「あっ、恥ずかしい。見ないで下さい。」

と影山は言った。

「飛雄ちゃんのここ、きれいな色のままだね。こっちもピンク色だ。」

及川はそう言うと、影山の垂れ下がった袋をパクッと口に含んだ。

「あっ。やぁ。そんな、や、やめて下さい。」

及川は下から上へと舌を這わせて、押し広げた穴に舌を入れた。

「あっ。やっ。き、汚い。洗ってないのに・・・あっ。あぁ。」

「汚くなんかないよ。飛雄ちゃんがどんなに汚れてても俺は

構わないって言ったろ。」

及川は親指を入れながら、クスッと笑って、更に続けた。

「でも、ここは洗ってなくても汚くないよ。変な味もしないしね。

飛雄ちゃん、ホントはトイレで洗ってきたんじゃないの?俺と

するつもりで来たんだろ?」

「そ、そんな事ないです。」

「嘘ついちゃダメだよ。嘘つく子はお仕置きだよ。」

と及川は言って、尻を押し広げている左右の親指を指の付け根まで入れた。

「あっ。い、痛い。ああっ。」

「気持ちイイくせに。」

及川は親指と親指の隙間に舌を入れて、内壁を舐めた。

「あ、ああっ。イ、イク。あっ。ああっ。」

影山の放った体液が桜の木を白く汚した。

「飛雄ちゃん、今度はお尻だけでイっちゃったんだ。淫乱過ぎるよ。

俺が入れるまで我慢できないなんて、躾け直さなきゃいけないかな。」

及川は影山の尻をバシッと叩いた。そして、

「入れるね。」

と言って、雄々しく天を仰いでいるものを挿入した。


「あ、ああ。あっ。」

及川は腰を動かしながら、前に手をまわして、喘ぐ影山の身体を弄った。

「あん。あっ。ああ。」

貫かれながら愛撫されて、影山は部室で金田一たちに弄ばれていた時の事を

一瞬ぼんやりと思い出し、興奮した。影山は腰をくねらせて、及川を自分の

最も感じやすい所に導き、及川の動くリズムに合わせて腰を振った。

「あっ。ああ。ああ~」

喜びに満ちた影山の身体が絶頂を迎えようとした時、及川が影山の中で果てた。

及川は崩れ落ちるように影山を背後から抱きしめて、影山の中に留まったまま

耳元で囁いた。

「好きだよ。飛雄ちゃん。愛してる。」

及川が愛を語るのは初めてではなかった。影山の身体を愛す人も沢山いた。

しかし、影山の心を愛してくれる人は及川一人だけだった。影山は及川の

愛に包まれて幸せだった頃を思い出して、

「俺も・・・です。」

と言った。及川が耳朶を甘噛みしながら、

「本当に?愛してるって飛雄ちゃん、もう1回言って。さっき、

よく聞こえなかったから。」

と言うと、影山はこう言った。

「言ってません。俺もって言っただけです。それより、早く抜いて下さい。

いつまでいるつもりですか?」

「また、そんなこと言う。飛雄ちゃんまだイってないじゃん。だからさ。

抜かないで2回するんだよ。今度はもっと激しくしてあげるね。

飛雄ちゃんの好きな所いっぱい攻めてあげる。」

と及川は言うと、再び腰を動かし始めた。


「あっ。もう、入れる前に2回イッたから、別に良いのに・・・あっ。」

影山の身体は言葉とは裏腹に熱く蕩けていた。及川はゆっくりと深く

突きながら、

「飛雄ちゃんって1日に4回イク事あったんだって?金田一から聞いたよ。

俺も4回イかせてあげるから。我慢しないで連続でイッていいよ。」

と言った。

「及川さん・・・それって・・・あっ・・・やっぱり・・・あっ・・・

気にしてるんじゃないですか・・・あっ・・・及川さんって・・・あっ

・・・嫉妬深いから・・・俺は・・・嫌いなんですよ・・・あっ・・・」

及川は影山に心の中を見透かされている事に気付いて、返す言葉がなかった。

代わりに腰を激しく突き動かし、影山の口を快感で封じた。

「あっ。あ、ああ。ああ~」

影山は嬌声を上げながら快楽を貪るように締めつけ、及川に余裕を失くさせた。

身体を震わせて、影山が絶頂を迎えると、同時に及川も影山の中に欲望を

吐き出した。終わった後、及川は身体を離し、ポケットティッシュを取り出し、

影山の尻から及川の放った白い体液を掻き出して拭いた。後始末が終わると、

影山は照れたように言った。

「及川さんと付き合ってあげても良いですよ。身体の相性も良いし・・・

及川さんが彼氏に戻りたいって言うなら、彼氏にしてあげます。

その代り、過去をネチネチ言うのはもうやめてもらえませんか?

4人や8人相手に4回イクって、時間長いから当たり前じゃないですか。

1人相手に何回もイクって及川さんだけなんですよね。」

悪態をついているのか告白しているのか慰めているのかよく分からない影山に

「あ、ありがとう。」

と及川は言った。及川は昔からドMでプライドの高い傲慢な影山を可愛いと思い、

一途に想い続け、影山の言動に一喜一憂する自分が不安で憂鬱だった。そして、

今日からそれがまたずっと続くのかと思うと、憂鬱であり、嬉しくもあった。

及川は影山の頭をポンポンと撫でて、笑い、

「今から俺の家に行こう。4回目イかせてあげる。」

と言った。

「だから、過去と張り合うのはやめたほうが・・・」

説教を始めようとした影山の唇にキスをして、恋人を黙らせた及川は手を握って

歩き出した。影山は気恥ずかしそうにしていたが、繋いだ手を振り払わなかった。


                               (完)


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ハイキュー「大王様の憂鬱2」

ハイキュー部屋


バレンタインデーなんか大嫌いだ。女の子から100個チョコを貰ったって、

飛雄ちゃんから貰えなければ意味がない。今日は映画を観る約束なのに、

何で来ないんだ。こんな事なら、女の子100人から貰ったチョコを

コインロッカーになんか預けないで、家に持って帰ってから来れば良かった。

何故1時間も待ち合わせ場所に来ない?映画はとっくに始まっている。

俺は待ち合わせの時間に遅刻するといけないと思って、学校から直接

来たのに・・・ひょっとしたら、また浮気しているのかもしれない。

飛雄ちゃんは誰とでも寝る子だったから心配だ。中学の時なんか

俺が卒業した後、知らない間に部員全員とヤッてたし・・・

きっと烏野の連中ともヤッてるに違いない。特に日向があやしい。

なんかいつも、あの二人イチャイチャしてないか?日向って奴、

俺と会う度にライバル心燃やしてる感じがするんだよね。それって

恋のライバルってことだよな?うん。きっとそうだ。だって、

バレンタインデーに遅刻する理由って言ったら、他の男にチョコを

渡してる以外に考えられない。

「飛雄ちゃんなんか嫌いだぁ。」

及川は思わず、声に出して、呟いてしまった。すると、背後から

「嫌いなんですか。」

と、声がして、及川は振り返ると、無表情の影山が立っていた。

「い、いつから居たの?」

「さっき・・・」

「飛雄ちゃんが1時間も遅刻したせいで、映画始まっちゃったよ。

どうすんの?」

「すみません。他の映画にしませんか?」

「ま、チケット買ってた訳じゃないから他のでも良いけど・・・

この時間だと恋愛物の映画しかやってないよ。それでいい?」

「はい。」

影山の観たがっていたアクション映画をあっさりと変更して、

愛と感動のラブストーリーを観る事にした。

すると、バレンタインデーという事もあって、映画館の中は見渡す限り

カップルばかりだった。制服姿の男子高校生2人組は目立つ気がして、

及川は一番後ろの隅っこの席を選んで、座った。

「ここなら、映画は観にくいけど、隣に人がいないから、

二人の世界に浸れるね。」

ストローが二つ挿さったLサイズのコーラとポップコーンを

買ってきた後、影山の手を握って、及川が言った。しかし、

「コーラはMサイズ二つが良かったんですけど・・・ま、イイっす。」

相変わらず、影山はそっけなかった。及川は握った影山の手を放して、

黙々とポップコーンを食べ出した。


                       
映画は感動的だった。意地悪な継母に苛められ、学校にも行かせてもらえず、

毎日床を磨いて暮らしている少女が王子様と出会って、結婚する話だった。

及川は少女が階段で靴を脱いで走り去るシーンに感涙した。

アクション映画も良いけど、可哀相な少女と王子様の恋愛映画に変更して

良かったなと思った。きっと影山も感動して泣いているに違いないと思い、

影山の顔を見ると、影山は寝ていた。及川は映画に集中していただけに

スヤスヤと寝ている影山にショックを受けた。

「おい。起きろよ。」

と小声で言ったが、影山は目を開けなかった。及川はムカついて、

影山に悪戯してやろうと思った。そして、そっと手を伸ばして、

寝ている影山のズボンの上から股間を撫でた。それでも影山は

目を覚まさないので、ファスナーをそっと下ろしてみた。

下着の上から握ると、突然、影山は目を開いて、及川を見た。

「な、何してるんですか?」

「シーッ。今、良い所なんだから、黙ってて。」

及川は人差し指を一本立てて口に押し当て、小声で言った。

そして、再び手を忍ばせて、下着の中のものを握った。

「あっ。」

「ダメだよ。声出しちゃ。」

及川は耳元で囁くと、影山の耳朶を噛んだ。首筋に舌を這わせ、

感じる影山に指を這わせ、巧みな指使いで影山を快楽の渦へと突き落とした。

「あっ。もう、イキそう。ト、トイレ行きませんか?」

「トイレでするって事?」

想像を斜め上に超えた影山のビッチ発言に及川は引いた。

恥ずかしそうに嫌がって拒む姿を見て楽しむ作戦が台無しだった。

及川は迷ったが、荷物を持って、映画を中断して、トイレに行く事にした。



男子トイレの個室に二人で入ると、及川は影山を壁に手をついた状態で立たせ、

後ろから抱きしめた。そして、及川は影山のズボンのベルトを外しながら、

「俺、トイレでするの初めてなんだよね。飛雄ちゃんは何回くらいしたことある?」

と言ったが、影山は答えなかった。及川は黙っている影山のズボンの

ファスナーを下ろし、掴み出して、手で愛撫しながら、こう言った。

「数えきれないくらいしてるの?トイレってさ。狭くて臭くて汚いよね?

普通、しないよ。中学の時って、いつもどこのトイレでしてたの?

学校のトイレでしてたのかな?よく先生に見つからなかったよね。

喘ぎ声とかダダ漏れだと他の生徒達にも聞こえちゃうよ。

飛雄ちゃんって喘ぎ声を人に聞かれると、感じるタイプなのかな?」

「・・・違います。」

「でも、人に見られると、感じるタイプだって、金田一が言ってたよ。

まわされるのが大好きな飛雄ちゃんは授業後、部室でするだけじゃ足りなくて、

休み時間もトイレでしてたんだ?」

及川は意地悪く影山のものをギュッと強く握った。

「あっ・・・い、痛っ・・・や、やめて・・・下さい」

「本当は止めて欲しくないくせに。ねえ。何でこんなに感じてんの?

濡れてきてるよ。」

及川は右手で握りながら親指でグリグリと先端を刺激した。

「やっ・・・あっ・・・・」

「そろそろ後ろも欲しいんじゃない?」

と及川は言って、右手は握ったままで左手を影山のズボンの中に突っ込んで、

影山の尻の割れ目に指を這わせ、中指をゆっくりと挿入した。

「ローションなしでも指なら入るね。中学の時は毎日ローションを

持ち歩いてたって本当?いじめられっ子って大変だね。人に逆らえなくて。

俺だったら、集団無視されるのとまわされるのとどちらか選べと言われたら

無視されるほうを選ぶけどな。」

「・・・だから嫌なんだ。及川さんは・・・ネチネチネチネチ根に持って

・・・誰も助けてくれない時の気持ちが分からない人だから・・・それに

・・・俺を・・・こんな身体にしたのは・・・及川さんだろ・・・」

前と後ろを同時に弄られて感じながら、文句を言う影山に及川はこう言った。

「昔は可愛かったのにね。穢れのない天使だった飛雄ちゃん。

最初は俺一人しか知らない身体だったから、飛雄ちゃんを穢して行くのが

楽しかったなぁ。別れてた間に俺が教えてないプレイをいっぱい覚えて、

穢れ過ぎちゃった飛雄ちゃんは許せないよ。」

及川は中指を動かしていた尻に人差し指を追加した。

「あっ。」

「ほら。そうやってすぐに感じる飛雄ちゃんが悪い。

僕のは入れてあげないからね。指2本でイってごらん。」

及川は指2本を激しく動かすと同時に、握っていた右手も動かした。

「あっ。ああっ。」

影山は数分間、耐えていたが、とうとう我慢できずにイってしまった。

影山の白い体液がトイレの壁を汚した時、及川は興奮と虚しさを感じた。

ティッシュで手を拭いて、影山のズボンをきちんと整えた後、及川は

「続きは俺の家でしよう。」

と言って、影山の手を引っ張って、トイレを出た。



及川は映画館を出てから家に行くまでの間、あの桜の木の下で

手を繋いで歩いた時の事を思い出した。

今日も手を繋いでいるのに、影山の心が見えなくて、憂鬱だ。

今日は親が家にいないから、映画を観て、食事して、一晩中、

ベッドで愛し合おうと思っていたのに、なんでこうなるんだろう。

デリカシーのない影山に及川は苛立っていた。

及川はデートに遅刻した理由もまだ聞いていない。

日向と遊んでいたなんて言われたら、ショックで立ち直れない気がして、

怖くて聞けなかったのだ。

部屋に着くと、影山はベッドに腰掛けて、カバンからコンビニの袋を取り出した。

「それ何?」

及川が聞くと、影山はこう答えた。

「日向と買ってきたんです。チョコを1人で買いに行くのが恥ずかしくて、

買ってなかったから、今日、日向と一緒にコンビニに行って買って来たんです。」

影山は無造作に袋からチョコを取り出した。一応ハート柄の包装紙の箱を

渡されたのだが、日向と買いに行ったと聞くと、面白くない。

「日向と遊んでて、遅刻したのかよ。」

と及川は聞いた。すると、影山は

「実は、待ち合わせの時間に着いてたんですが、及川さん、

コインロッカーに大量のチョコを入れてたでしょ?それ見たら、

なんか・・・俺が買った700円のチョコ渡すのが嫌になって・・・

日向にやるって言ったんですけど、日向は要らないって言って、

1時間くらい俺を心配して慰めてくれたんです。」

と言った。

「ああ。そう。それじゃ、遅刻したのは俺のせいってわけ?」

及川は逆ギレした。

「いえ。そういう訳では・・・」

と影山は言ったが、及川は冷静になれなかった。

「飛雄ちゃん。俺が女に興味ないってこと知ってるくせに、

やきもち妬いてくれたってこと?それとも沢山チョコもらってくる

俺よりも日向のほうが良くなった?俺と日向とどっちが好き?」



突拍子もない及川の質問に影山は

「なんで、そうなるんですか?俺、及川さんのそういう思考回路、嫌いです。」

と言った。すると、及川は怒って、

「嫌いなんだ。もう、いい。分かった。別れよう。」

と言った。しかし、影山は眉をひそめて、

「また別れるんですか?」

と言っただけだった。

「またって何だよ。俺の方から別れるって言ったのは初めてだと思うよ。

飛雄ちゃんに別れ話を切り出された事ならあったけどね。」

「まだ根に持っていたんですね。でも、これだけは言わせていただきます。

日向とは何でもないんです。」

「本当に?」

「はい。友達ですから。」

影山はぎこちない笑顔を浮かべた。

「金田一や国見も友達だったよね?」

疑るような眼差しで及川が聞くと、影山は不愉快そうに

「あいつらは友達なんかじゃありません。」

と言った。

「そうなの?」

「・・・。今日、俺が遅刻した事については謝ります。日向が言ってました。

フェミニストでサディストな大王様はホモだから大丈夫。きっと女の子から

貰ったチョコも平気で捨てるような性格してるから気にしないほうが良いって。」

と影山が言った瞬間、及川の怒りが爆発した。

「なんだよ。その悪口。人からの贈り物を捨てる訳ないだろ?

飛雄ちゃんと違ってさ。あ、そうだ。別れるんだったね。このチョコ返すよ。

それから、クリスマスプレゼントにもらった地味な手袋も

誕生日プレゼントにもらったスポーツタオルと神社の御守りも返すよ。

大体、飛雄ちゃんはプレゼントのセンスがイマイチだよね。

誕生日プレゼントもタオルがお揃いならまだ分かるけど、御守りがお揃いって!

なんか飛雄ちゃんの感覚ってホントおかしいよ。俺みたいにセンスの良い物

プレゼントしなよ。指輪とかさ。俺が誕生日とクリスマスに飛雄ちゃんに

あげたシルバーリング返せよ。何が気に入らないのか知らないけどさ。

一度もつけてないだろ?誕生日にあげたやつはエンゲージリングっぽくて

恥ずかしいとか言うから、クリスマスはカッコイイやつにしたのに、結局、

どっちも指に嵌めないじゃないか!」

影山は何か言いたそうな顔をしたが、少し考えて、溜め息をついた後、こう言った。

「分かりました。返します。でも、最後にもう1回ヤリませんか?」



「いいよ。服脱いで。」

制服のネクタイをほどきながら及川は言った。影山は服を脱ぐと、床の上に

きちんと折りたたみ、首から下げて身に着けていた御守りを服の上に置いた。

「縛っても良い?」

「・・・少しだけなら。」

「手、出して。」

及川は全裸になった影山の両手首をネクタイで縛った。

影山の腕を頭の上に押し上げながらベッドに押し倒すと、キスをした。

「最後のキスだね。」

及川は口角を上げて、そう言った。そして、ベッドから床に手を伸ばし、

影山の御守りの紐を引っ張り上げて、及川は

「ここも縛っていい?」

と、影山の上を向きかけている薄ピンク色のものを指でつついて聞いた。

「あっ。そこは・・・ダメ。です。」

「どうして?飛雄ちゃんはすぐイっちゃうから縛っといたほうが良いと思うよ。」

及川が嫌がる影山を無視して、御守りの紐で縛ると、影山のものは更に大きくなり、

紐が喰い込んだが、及川はお構い無しだった。

「滑稽だね。ダサい趣味の飛雄ちゃんにピッタリだよ。そうだ。これも咥えなよ。」

と言って、及川の御守りを影山の口に咥えさせた。

「次は何をしようかな。お腹空いたなぁ。チョコを食べよう。

さっきは返すって言ったけど、食べちゃってもいいよね?」

及川は影山に貰ったチョコの包装紙をビリビリ破いて、箱を開け、

チョコを口に放り込んだ。

「うん。美味しい。お腹が空いてると、安物のチョコでも美味しいね。

飛雄ちゃんも一つ食べる?あ、でも、口が塞がっていて、食べられないね。

下のお口に入れたげようか?何個入るかな?飛雄ちゃんだったら、

8個全部入るんじゃないかな?あれ?何期待して大きく膨らませてるの?

冗談だよ。このチョコは俺の夕食にするんだから。飛雄ちゃんにはあげないよ。

映画の後、食事しようと思ってたのに、いやらしい飛雄ちゃんのせいで

食事できなかったんだから、罰として、飛雄ちゃんは食事抜きだよ。」



及川は一人でチョコレートを全部平らげると、放置していた影山に近付き、

胸の飾りを指で摘まみ、軽く捻じって引っ張った。

「うっ。んっ。」

影山は呻いたが、口に御守りを咥えたままだった。

「飛雄ちゃんって放置プレイの後で触られると、一段と感じるよね?」

と及川は言い、左の胸の突起を摘まんだまま右の突起を口に含み、

舌で転がすように舐めた。

「んっ。んんっ。」

勢いを失いかけていたものが再び天を仰ぐほど反り返り、紐がきつく

影山を締めつけた。及川は片手でそっと撫でるように触ると、

縛めた紐をグイッと引っ張った。

「うっ。」

「あ、ごめん。痛かった?でも、これって面白いかも。」

と及川は言い、何度も紐を引っ張って遊んだ。

「うぅ。んっ。うっ。」

悶える事しか出来ない影山がサディスチックな遊びに耐えていると、

及川は影山の両足を抱え上げて、片方の足の親指に御守りを引っ掛けた。

「このまま入れてもいいよね?前戯はトイレで済ませたから。」

と言って、及川は自らのものにローションを垂らして、挿入した。

「んんっ。んんっ。」

肉を掻き分けて入ってくる熱く雄々しいものに影山は喘いだ。

嬌声を上げる事すら叶わず、御守りを噛みしめて、激しく腰を打ち付けてくる

及川に影山の身体は狂わされた。足を揺り動かされる度に縛められたものは

引っ張られ、絶頂へと上りつめる影山に苦痛をもたらした。

「あっ。ああ~。もう、ダメ。ほ、ほどいて下さい。ああっ。」

とうとうついに耐えきれずに泣き叫んだ影山に及川は

「ちゃんと咥えていなきゃダメじゃないか。いけない子だ。」

と言って、影山の膝が肩に届くくらいに身体をグッと折り曲げた。すると、

影山の足の親指に引っ掛けられていた御守りの紐が千切れて、吹っ飛んだ。

「あああっ。」

絶叫と共に影山は絶頂に達した。両足を及川の腰に絡ませて、

必死にしがみついてくる影山に及川は

「ドライでイッたの?」

と言った。そして、縛っていた紐をほどくと、及川は

「俺も、そろそろ限界。」

と言って、激しく突き腰を動かし、影山の中で果てた。影山は

及川を体内に感じながら再び絶頂を迎え、欲望を解き放った。

               

及川は繋いでいた身体を離した。ティッシュで身体を拭き、

手首を縛ったネクタイを解いている時、ふと枕元を見ると、

ベッドに指輪が2つ転がっている事に気付いた。

「これって・・・」

「及川さんから頂いた誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントです。

さっき紐が千切れた時に御守りから飛び出たみたいです。バレーしてると、

指輪できないから、御守りに入れて、肌身離さず持ち歩いてたんです。」

「何で?」

と及川は呆然とした顔で聞いた。しかし、影山は平然とした顔で、こう言った。

「ボールが指輪に当たると、正確なトスができないじゃないですか?

俺は1ミリのミスもしたくないんで。」

「だから、そういうことじゃなくて・・・俺だってバレーやってる時に

指輪なんかしないよ。デートの時もしないから、怒ってたのに・・・

何で御守りに指輪入れてる事を俺に言わないんだよ。」

「それは・・・恥ずかしいからです。及川さんに貰った指輪を

いつでも1人の時に眺められるように常に持っていたくて、

御守りに入れて首から下げてたなんて、言えないですよ。」

「いや、そこは言おうよ。」

及川は苦笑いを浮かべた。すると、影山は指輪を及川に手渡して、

「お返しします。今までありがとうございました。」

と言って、ベッドから下りた。及川は影山の腕を掴んでベッドに引き戻し、

「返さなくていいから。やっぱ、別れない。」

と言った。しかし、影山は

「別れないんですか?俺は別れてもいいですよ。そうだ。別れた後も

いつでも及川さんがしたい時だけ相手してあげますよ。その代り、

俺が日向としても妬かないで下さいね。」

と、悪魔のようなセリフを吐いた。

「嫌だ。妬くよ。俺は飛雄ちゃんの恋人じゃなきゃ嫌なんだ!」

と及川は言って、影山を抱きしめた。すると、次の瞬間、

影山がフッと鼻で笑った。ぎこちない作り笑いと違って、

心の底から楽しい時に勝ち誇ったようにフッと笑う事を

知っていた及川は最初から影山には別れる気がなかったと悟った。

「もう1回してもいい?今度は優しくするから。」

及川は影山をベッドに押し倒し、そっと口づけした。

二人の間に言葉は必要なかった。影山はもう何も喋らなかった。

及川が言うべき言葉はただ一つ。恋人の為だけに唱える

魔法の呪文だけだった。及川は影山に口づけした後、

「愛してる。」

と言った。

                              (完)


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オリジナルBL小説「落日」

オリジナルBL小説「落日」部屋


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オリジナルBL小説「落日」(第1部)

オリジナルBL小説「落日」部屋



 僕は羽をもがれた蝶を見ていた。夕暮れの公園で独り

 ベンチに座りながら地べたを這っている蝶を眺めていた。

 誰が羽をもいだのだろう。羽さえあれば美しく空を飛べる

 蝶が他愛のない悪意による悪戯で傷つき、醜く変貌した

 身体を引き摺って、みすぼらしく這いつくばって生きている。

 ヨタヨタと地面を這う蝶はまるで僕の人生のようだ。

 身体を引き裂かれるような痛みを味わい、人から奇異の

 目を向けられ、虫ケラのように踏み躙られ、自尊心を

 無くすほどに苛められ、死にたいと願いながら死ぬことも

 できないまま、地を這う思いで生き続け、早く死ねと

 人に嘲笑われ、それでも、惨めに生に固執している自分に

 そっくりだと僕は思った。似た者同士仲良くしたいのか

 蝶が僕の足元に寄ってきた。僕のスニーカーに這い上ろう

 とする蝶を、僕はそっと指で摘まんで、優しく引き剥がし、

 手の平に乗せてみた。蝶は何か言いたそうに触角と前足を

 動かしながら、僕を見つめていた。ほんの少しの間だけ

 見つめ合った後、僕は蝶を地面に戻し、ゆっくりと足を

 踏み下ろし、僕の足元から去ろうとしない蝶をぎゅっと

 踏み潰して殺してあげた。

                      

 「麻里緒、待たせたな。」

 ハッとして顔をあげると、息を切らして走り寄ってきた先生が

 僕の目の前にいた。

 「先生。」

 僕は蝶に気を取られて、先生が来た事に気付かなかった。

 僕は靴の裏についた蝶の残骸をこっそりと地面に

 擦り付けて、体裁が悪そうに笑った。でも、先生は僕が

 蝶を殺した事には全く気づいていないようだった。

 僕の恋人である先生と会うのは久しぶりだ。僕が

 小学生の頃には担任だったから、毎日、学校で会えたし、

 放課後も先生のアパートにしょっちゅう通ってた。ところが、

 僕が小学校を卒業して、中学生になってからは週に2回

 この公園で待ち合わせをして、先生の家に行くだけに

 なってしまった。しかも、昨日は急用が出来たと言われて、

 キャンセルされたから、中学生になった僕が先生に会うのは

 まだ4回目だ。先生のいない学校生活は毎日辛くて、

 2週間しか経ってないのに、もう2ヶ月くらいに感じる。

 部活も入るか入らないか先生に相談したいし、何よりも

 Hがしたい。もう5日も先生とHしてないから、早く先生と

 したくて身体が疼いちゃう。僕がウキウキとベンチから

 立ち上がると、先生は何故か困ったような顔をして、

 物凄く真剣な声で、こう言った。

 「麻里緒。話があるんだ。」

 「話って何?」

 「しばらく会うのをやめようと思うんだ。」

 「えっ?!」

 僕は突然の先生の言葉に絶句した。

 「しばらくって言っても、1ヶ月。いや、2、3週間でいいんだ。

 すまないが、今日はこのまま帰ってくれ。今は理由は

 言えないが、後で説明するから。」

 「何だよ。それっ!」

 僕は語尾を荒らげて、ふくれっ面をしてみせた。

 いつも先生は僕が怒ると、ごめんって謝ってくるから、

 今日も当然謝ると思ったのに、何故か今日は違っていた。

 先生は目を細めて、僕をじっと見た後、酷く冷たい感じで、

 「じゃ、そういうことだから。2週間後にまた電話するよ。」

 と言った。僕はショックで何も言えなかった。ただ黙って

 俯いていると、先生も黙って去って行った。

 さよならも言わないなんて・・・そう思うと、涙が出てきた。

 僕は手の甲で目を擦ると、恨みがましく、先生の後姿を

 睨みつけてやった。

                      
              
 太陽が沈む頃、僕は泣きながら公園を出た。歩きながら

 涙が溢れて止まらなかった。僕はどうして先生の目の前で

 泣かなかったんだろうって後悔した。僕があと1分早く

 泣いたら、先生も少しは態度を変えたかもしれないのに、

 僕はいつだって、少しズレている。いつも独りで泣くくせが

 ついているから、後から涙が出てきてしまう。きっと誰かに

 見られたら、また苛められたんだろうなって思われるかも

 しれない。僕は小学校3年生の頃から、あの事が原因で

 いじめられ始め、4年生は地獄だった。登校拒否になった

 僕を助けてくれたのが5年で担任になった神崎先生だった。

 先生は毎日、僕の家に学校のプリントを届けてくれて、

 学校に来るように説得してくれた。僕が恐る恐る学校に行くと、

 僕をいじめる子たちを叱って、僕がいじめられないように

 傍でいつも見張っていてくれた。3ヶ月間学校を休んで、

 勉強が遅れているのが心配だって、授業後も勉強を僕にだけ

 教えてくれた。6年生になっても担任は神崎先生で、僕は

 誰からもいじめられない幸せな1年間を過ごす事ができた。

 中学校に入学するまでは・・・

 「おいっ!麻里緒じゃないか。こんなとこで何してるんだぁ?」

 突然いじめっ子の坂田たちに声をかけられて、僕はビビって

 立ち止まってしまった。逃げようかとも思ったけど、迷ってる

 うちに、道の向こうから駆け寄ってきた3人にあっという間に

 囲まれてしまった。

 「何だよ!お前、もうビビって泣いてんのか?」

 まるでチンピラのように僕の顔を覗き込んできた3人は

 小学生の頃に僕をいじめていた3人だった。6年生は

 違うクラスで大人しくしていたのに、中学に入ってから、

 同じクラスになって、また僕をいじめるようになった。

 「何とか言えよ!コラァ!」

 坂田が僕の頭をげんこつで殴った。

 「痛っ!」

 僕は思わず、睨んでしまった。すると、

 「何だぁ!その眼は!!」

 と言って、坂田の仲間の竹内と一之木がポカポカと強く

 僕の頭を殴った。僕は今度は我慢して黙って俯いた。

 こいつらは昔、僕をサンドバッグだって言って、ボコボコに

 殴ってた連中だから、庇ってくれる先生がいなくなった今、

 何を言ってもムダだった。

                      

 「ひょっとして、お前、また神崎と会ってたのか?中学に

 なってもまだ先生って甘い声出してまとわりついてんのか?

 キモいなぁ。」

 「ホモってキモ~!」

 「エイズになるぞ~!ハハハ・・・」

 竹内と一之木が坂田に続いて、はやしたてた。

 「なあ、知ってるか?神崎が生徒に手を出したって。今度は

 小4だってさ。俺の妹が神崎のクラスになっちまってよ。

 なんかやたらとひいきするからムカつくって思ってたら、

 ひいきしてる男子に手を出したらしいぜ。今、学校中で噂に

 なってるってさ。一昨日、男子生徒を居残りさせて、教室で

 二人っきりになった時に体中をベタベタ触ってきたらしいぜ。

 ケツまで撫でられたって、泣きながら教室を飛び出して、

 大騒ぎになったってさ。神崎はスキンシップだって言い訳

 してるけど、服の上からでも触った事には変わりないから、

 教育委員会に訴えるって、そいつの母親が怒ってるってさ。

 前から神崎は怪しいってみんな思ってたからな。お前の事を

 ホモって言うと、あいつはいつも怒ってたけど、あいつが

 ホモだったんだろ?どうせ陰で隠れてヤッてたんだろ?

 絶対に違うって言ってたけど、嘘なんだろ?正直に言えよ。

 キスくらいはしてたんじゃないのか?」

 興味津々といった感じで聞いてきた坂田に、僕はこれだから

 童貞は嫌なんだ。質問のレベルが低すぎる。キスなんか

 小5の1学期に済ませたよ。先生とは夏休みからずっとH

 してたって言ってやりたかったけど、僕はバカじゃないから

 黙ってた。坂田は

 「何とか言えよ。ホモ!ホモのくせに生意気だぞ~!ホモは

 人間のクズだからな。クズはクズらしく俺の質問に答えろよ。

 『先生とホモってました。すみません。』って謝れ!」

 と言って、僕を突き飛ばした。僕は道端に転んでしまい、

 手と足を擦り剥いた。痛くて悔しかったけど、何か言うと、

 殴られるから、黙っていた。すると、坂田はいい気になって、

 「土下座して謝れ!」

 と言ってきた。でも、さすがに土下座は僕のプライドが

 許さなかった。小4の頃は殴られるのが恐くて、何度も

 土下座してたけど、こんなバカな連中に土下座するのは

 もう真っ平だと思った。僕は怒りを込めて、坂田を睨んだ。

 しかし、坂田は憎たらしい顔をして、僕の腹を蹴った。

 続いて竹内と一之木も僕を蹴りつけた。小4の時よりも

 蹴る力が強くなっていて、僕は痛みに耐えられなくなって、

 泣いてしまった。

                     

 悔しさと痛みで訳が分からなくなって、僕がうずくまって

 泣いていると、

 「おいっ!!コラァ!!てめぇら、何してやがる!!」

 と、怒鳴り声がした。びっくりして、一斉に振り向くと、
 
 同じクラスの伊藤君が立っていた。伊藤君は小2の時まで

 僕と親友だった。小3から4年間クラスが別々で、あんまり

 口も利かなくなっていたけど、ずっと僕には優しかった。

 僕をいじめた事は一度もなかった。

 「何だよ!伊藤!お前には関係ねぇだろ?それとも何か?

 お前も神崎と同じかぁ?」

 坂田が粋がって伊藤君につっかかった。伊藤君はギッと

 睨んで、拳を握りしめたかと思うと、坂田の顔を殴った。

 坂田はよろけて倒れそうになり、

 「何すんだ!!」

 と自分の顔を押さえて、睨むと、伊藤君は迷うことなく、

 もう一発坂田の顔面にパンチをくらわせた。

 「ヒィッ!」

 と悲鳴を上げて、竹内と一之木が逃げ出した。

 一人残された坂田もビビって、

 「おいっ!待てよ!」

 と言って、二人の後を追うようにして逃げて行った。

 「伊藤君、ありがとう。」

 僕は助けてくれた伊藤君にお礼を言った。

 「礼なんか言わなくていいよ。それより、大丈夫か?

 麻里緒。最近またあいつらにいじめられてるって

 聞いたけど、本当だったんだな。どうして俺に内緒に

 してた?今度からあいつらに何かされたら俺に言えよ。

 俺、昔と違って、ケンカ強くなったんだ。これからは

 俺が麻里緒を守ってやるよ。ずっと気になってたんだ。

 麻里緒のこと・・・」

 心配そうに聞いてくる伊藤君が僕には白馬に乗った

 王子様に見えた。

                      

 家に帰ると、母さんと妹の麻美が楽しそうに夕食のカレーを

 食べていた。僕が帰ってきた事に気付いた母さんは

 「あらっ?!どうしたの?また転んだの?」

 と、怪訝そうに聞いてきた。

 「うん。」

 と、僕は答えて、リビングの救急箱を持ち出そうとした時、

 「そんな汚い手で救急箱に触らないで。ちゃんと手を

 洗いなさい。服も脱いで洗濯カゴに入れて、パジャマに

 もう着替えなさいよ。」

 と、言われた。

 「はい。」

 僕は小さな声で返事をして、洗面台に行って、泥と血で

 汚れた手を洗った。服を脱ぐと、腹と背中にいくつもの

 アザがついていた。足から血を流したまま自分の部屋に

 パジャマを取りに行って着替えると、リビングに戻って、

 消毒液とバンドエードで手当てをした。その間、母さんは

 麻美とダイニングルームでカレーを食べていた。僕が

 ダイニングテーブルに着くと、嫌そうな顔でお皿にご飯と

 カレーをよそって、僕の前に置いた。僕は黙ってカレーを

 食べた。母さんは食事中、僕と一言も会話しなかった。

 母さんは僕の事が嫌いだった。女の子が欲しかったから

 と言って、昔から4つ歳下の妹ばかり可愛がっていて、

 いつも僕はいないものと思いたいような素振りをみせる。

 昔は優しかった父さんも今では僕にどう接していいのか

 分からないみたいに僕を避けるようになった。僕を見てると

 イライラするって母さんに言われた事もあった。父さんは

 毎日残業で夜遅く帰ってくる。千葉県に30年ローンで家を

 建てたのは約6年前。毎日片道2時間電車に揺られて

 通勤する父さんは朝早く僕が起きる前に家を出て、妹が

 寝る時間に帰ってくる。僕は家では食事以外常に一人で

 自分の部屋に閉じこもっている。家族は僕が嫌いだった。

 多分みんな僕の事が許せないのだろう。あの夏の日以来、

 誰も僕と会話したがらない。

                      
 
 あれは8歳の夏休みだった。小学校2年生の僕は伊藤君と

 蝉を捕る約束をして、神社の公園の林に出かけて行った。

 だけど、伊藤君は来なかった。僕が一人で蝉を捕まえて

 遊んでいると、近所のマンションに住んでいる大学生の

 お兄さんがお菓子をあげるって寄って来た。僕は近所の

 お兄さんと一緒に遊びながら、伊藤君を待つ事にした。

 でも、5時になっても6時になっても伊藤君は来なかった。

 僕が帰ろうとすると、お兄さんは

 「もう少し待とうよ。」

 と言って、引き止めた。日が落ちる頃、お兄さんは突然

 僕を抱きしめてキスをした。びっくりした僕はお兄さんを

 突き飛ばして逃げようとしたけど、お兄さんは僕の腕を

 掴んで押し倒し、僕の服を脱がそうとした。僕が悲鳴をあげ

 ようとしたら、口にハンカチを押し込まれて、窒息するかと

 思うくらい手で口を押さえつけられた。ズボンを脱がされて

 足を抱え上げられたかと思うと、激痛が走った。痛くて痛くて

 死にそうだった。僕はもう何が何だか分からなくて、泣きながら

 お兄さんに殺されるんだと思った。優しかったお兄さんが何故

 豹変したのか今でも分からない。終わった後、僕のお尻は

 ナイフで刺されたみたいに血だらけだった。ぐったりした僕を

 見て、死んだと思ったのかお兄さんは逃げて行った。自力で

 僕は泣きながらパンツとズボンを穿いて、下半身から血を

 流しながら、家に帰ると、母さんは慌てて警察に通報した。

 その後の事はよく覚えていないけど、僕を犯したお兄さんは

 合意の上で抱いたと嘘をついた。仲良く遊んでいる姿も

 目撃されていて、お兄さんは犯罪者にはならなかった。

 僕が犯されている時の目撃者は一人もいなくて、長引くと、

 余計に恥をかくから、示談にしたと母さんが言っていた。

 100万円持ってきたらしい。相手の親が息子の不始末を

 詫びて、土下座したらしい。母さんは金を受け取って、

 告訴を取り下げたって言っていた。大学生のお兄さんは

 引っ越して、僕の前から姿を消した。本気で好きだったって、

 何で手を出してしまったのか分からないって、弁護士に

 ずっと言ってたらしい。反省してるから、許してあげてって

 言われて、許してあげたけど、その後、学校でいじめられる

 って知ってたら、僕はあの時、許さなかった。厳密にいうと、

 2年生の時は可哀想な被害者で、3年生になってから、人に

 興味本位でいろいろ聞かれたり、ホモってからかわれたり、

 落書きされたりするようになった。段々とエスカレートして、

 いじめに発展していったけど、僕が登校拒否になるくらいに

 いじめられたのは4年生の時だった。それにしても伊藤君は

 いつからあんなに喧嘩が強くなったんだろう。昔はあんまり

 強くなかったのにと僕は思った。明日の朝、伊藤君に何て

 言おうかと考えて、僕は眠りについた。僕は明日、学校で

 伊藤君に会うのが楽しみだった。

                        

 翌朝、僕が学校に登校すると、教室の前に坂田たちが

 待ち構えていた。僕が立ち止まって、怯えていると、

 伊藤君が教室の窓から廊下に顔を出して、

 「麻里緒!こっち来いよ!」

 と、僕を呼んでくれた。僕は嬉しくて、伊藤君のところに

 駆けて行った。

 「おはよう。伊藤君。」

 僕が笑顔で挨拶すると、伊藤君はニコッと笑ってくれた。

 伊藤君は目が細くて、笑うと更に細くなって、まぶたを

 閉じているかと思うくらい目が細い。でも、僕は伊藤君が

 韓流スターのようにカッコ良く見えた。

 「オッス。安部って伊藤の昔のダチだったんだって?

 全然知らなかったぜ。」

 伊藤君の新しくできた友達の加藤君が僕に話しかけてきた。

 加藤君は小学校が隣の学区だったから僕の事は知らない。

 「麻里緒でいいよ。僕は苗字で呼ばれるより名前で呼ばれる

 ほうが好きだから。」

 「そっか。じゃ、麻里緒って呼ぶよ。」

 「よろしく。」

 僕は握手をしようと、笑顔で手を差し出した。ところが、フッ

 と鼻で笑われてしまった。加藤君は両手をズボンのポケットに

 つっこんだまま、

 「よろしくだってさ。俺によろしくなんて言う奴、初めて

 見たぜ。ハハハ・・・」

 と、笑った。よく考えたら、僕がいじめられている理由を

 加藤君が知らないように僕も加藤君のことを知らなかった。

 加藤君はちょっと不良っぽいところがあって、入学式から

 すぐに伊藤君と仲良しになった子で、背が高くて、喧嘩が

 強そうな子だった。顔は可もなく不可もなくといった感じで

 服装は派手だった。学ランは短ランで、シャツをズボンから

 出して着ていた。通学用デイバッグは指定の濃紺ではなく

 黒色で、沢山の缶バッチが付けられていた。僕はどうして

 伊藤君が加藤君と友達になったのかは知らないけど、

 とりあえず、にこやかに笑っておこうと思って、ヘラヘラ

 笑っていた。すると、廊下からヒソヒソと声がした。

 「ヤクザの子とつるむなんて、バカだぜ。」

 坂田たちだった。

 「あいつの親が関東青龍会常磐組の若頭だって知ったら、

 麻里緒のやつ、きっと、ビビって逃げ出すに決まってるぞ。

 笑っていられるのも今のうちだけだぜ。」

                        

 加藤君が恐いのか坂田たちは僕に手を出さなくなった。

 僕は伊藤君と加藤君にくっついて毎日平和に過ごすように

 なった。加藤君は優しかった。学校帰りにコンビニに寄って、

 ジュースやアイスを奢ってくれる気前の良い子だった。

 「俺も最初、びっくりしたんだぜ。加藤って、すっげぇ

 金持ちなんだ。」

 伊藤君がコーラを飲みながら言った。僕も買ってもらった

 オレンジジュースを飲みながら、僕に奢ってくれる人は

 先生以外いなかったなって思った。お土産も他の友達は

 もらってるのに、僕だけくれなかったりとか・・・疎外感を

 ずっと感じてた。

 「加藤の1ヶ月の小遣いっていくらだと思う?」

 伊藤君がクイズを出してきた。僕はちょっと考えて、

 「5千円。」

 と言った。すると、伊藤君はニヤッと笑って、

 「1万円。」

 と言った。

 「1万円?!スゴイ!お金持ち~!僕のお小遣いなんて

 3千円だよ。」

 「俺は千円だ。しかも、文房具代含めてだから、ジュース1つ

 買えやしない。加藤が最初にコンビニ行こうって言ってきた時、

 俺、正直に、金ない。借りても返せないって言ったら、ジュース

 奢ってくれたんだ。加藤って良い奴だろ?」

 伊藤君家は貧乏だった。僕は伊藤君が加藤君と友達になった

 訳がようやく分かってきた気がした。

 「そういえば、神崎って学校辞めて、茨城の田舎に

 帰るんだってな。」

 「えっ?何で?」

 「あれ?知らなかったのか?教え子に手を出したせいで、

 学校を4月いっぱいで辞める事になったらしいぜ。」

 「神崎って誰?」

 加藤君が僕の肩を抱き寄せて、聞いてきた。加藤君と並ぶと

 身長145センチの僕は本当に子供のように思えてくる。

 ちょうど頭一個分違う身長なので、肩に腕を置き易いのか、

 加藤君はやたらと肩を組むのが好きみたいだった。

 「僕の小学校の時の担任。」

 「ロリコンなの?いくつ?若い先生?」

 「29歳。」

 「オッサンじゃん。」

 オッサンってほどの歳でもないけど・・・僕は自分の恋人を

 オッサンって言われて少しムッとした。

 「麻里緒は可愛いから気をつけろよ。変態に狙われる顔

 してっからな。俺なんか入学式の日に学ラン着てる女子が

 いると思って、びっくりして、ガン見したからな。」

 「ハハハ・・・俺も小1の時に最初、麻里緒が男子トイレに

 入って来た時、女の子が入って来たと思って、ビビったよ。

 麻里緒はどっから見ても女の子にしか見えないからな。」

 「ヒドイなぁ。僕のどこが女の子なの?」

 「顔。」

 伊藤君と加藤君が声をそろえて言った。

                         

 家に帰る途中、先生に会った。

 「あれ、神崎じゃね?」

 伊藤君が眼鏡をかけた中肉中背のスーツ姿の男を指さして

 言った。先生は普段から神経質そうな顔をしていたけど、

 更にピリピリした空気を漂わせて、僕のほうを見ていた。

 「先生・・・」

 僕が先生に気付くと、先生は暗い顔で僕に近づいてきた。

 「麻里緒。今、ちょっといいか?」

 「うん。・・・あっ、ごめん。僕、先に帰るね。バイバイ。」

 僕は伊藤君と加藤君に別れを告げて先生について行った。

 先生のアパートは案外、加藤君の家の近くだった。先生の

 部屋に入ると、引っ越しの段ボールの荷物が積んであった。

 「引っ越すの?」

 僕が先生に聞くと、先生は

 「ああ。実家に帰るんだ。小学校は辞めたよ。」

 と言った。

 「どうして?」

 「どうせ噂は耳にしてるんだろ?」

 「うん。伊藤君から聞いた。4月いっぱいで学校辞めるって・・・」

 「そうか。少し辞めるのが早くなったんだ。今日、退職したよ。

 茨城に帰ったら、また別の小学校に就職するか塾の講師

 にでもなるよ。」

 「ふ~ん。」

 「麻里緒は怒らないんだな。」

 「怒ってるよ。浮気されるなんて思ってなかったから・・・」

 「浮気?普通、あれは浮気って言わないぞ。」

 「じゃ、何て言うの?」

 「・・・。麻里緒こそ伊藤とまた付き合い出したのか?

 全然聞いてなかったぞ。」

 「先生がしばらく会えないって言った後からだから・・・」

 「ま、いいさ。それより、デレデレと麻里緒の肩を抱いていた

 奴は誰だ?あんな不良と付き合ったら、人生ダメになるぞ。

 もっと友達を選びなさい。」
 
 「先生、妬いてるの?」
 
 「フッ。そうかもな。」

 先生が僕の顎に手をかけて口づけをした。久しぶりのキスに

 僕は眩暈を感じた。やっぱり僕は先生が好きなんだなって

 思っていると、先生が僕をベッドに押し倒した。

 「学生服も萌えるな。」

 先生はそう言うと、学ランとシャツのボタンを外して、僕の

 胸の突起を摘まみ上げた。

                          

 「あっ。」

 先生に胸を吸われて、僕は感じてしまった。パンツの中に

 滑り込ませた先生の手が熱くなった僕の下半身を掴む。

 僕は扱かれて、更に身体が熱くなった。腰を少し浮かせて、

 先生にパンツを脱がせてもらうと、先生は悪戯っぽく観察

 するように、僕の下半身を包む皮のたるみをひっぱって、

 口に含み、先端を舐めた。ペロペロと舐める先生の舌が

 僕の身体を熱く溶かす。僕は喘ぎ、舐められただけで

 イキそうになった。先生がローションを取り出して、指に

 たっぷりとつけると、僕の中に中指をゆっくりと入れてきた。

 「あ、ああ・・・」

 先生は第二関節まで指を入れると、再び僕のものを口に

 含み、舌と指の両方を動かした。

 「あ、ああ、イク。ああ~」

 僕は気持ち良くてイってしまった。あっけなく果てた僕を見て、

 先生はこう言った。

 「早いな。もうイったのか。」

 「だって、久しぶりだったから。」

 僕は顔を真っ赤にして、潤んだ瞳で言った。すると、先生は

 「麻里緒は可愛いな。」

 と言って、僕の足を肩まで抱え上げて、僕の中に入ってきた。

 「あっ、ああ、ああ~」

 身体を引き裂く痛みに顔を歪めて、僕は声をあげた。

 「麻里緒。痛いのか?」

 「・・・」

 「たった2週間していないだけで痛みを感じるのか。麻里緒の

 中はホントきつくて、女とは比べものにならないくらいに

 締めつけてくる。麻里緒のせいで俺は女を抱けなくなった。」

 先生は真剣な顔でそう言うと、僕の首に吸い付いた。僕は

 首が弱いのか首を吸われると、すごく感じてしまう。いつも

 先生はキスマークつけるといけないからって加減するのに、

 今日は違っていた。執拗に僕の首を吸い続け、腰を激しく

 動かし続けた。

 「あ、ああ、ああ、ああ~」

 僕はいつしか痛みも忘れて、嬌声をあげながら、先生に

 しがみつき、頭の中が真っ白になった。頭の中が空っぽで

 何も考えられない状態になって、宙に浮くような感覚と同時に

 ドクンっと放たれたのを感じて、僕は果てた。先生が僕の

 身体から離れると、僕の身体からドロっとした白い液体が

 垂れて出てきた。ティッシュでそれを拭い取った後、僕は

 こう言った。

 「先生。大好き。」

 僕はいつも終わった後、ベッドで夢を見ているかのように

 先生に言う。僕は先生と別れる気はなかった。先生が茨城に

 帰っても会いに行こうと思った。

 「先生に手紙書くよ。今度の週末ゴールデンウィークだし、

 茨城に会いに行くよ。」

 僕は先生が喜ぶと信じて疑わなかった。でも、違っていた。

 「正気か?」

 先生は信じられないものでも見るように僕を見て言った。

                        
  
 「悪いが、今日で最後にするつもりだったんだ。実家には

 来ないでくれ。」

 「何で?」

 「俺は何もかも忘れて、心機一転やり直したいんだ。」

 「僕は先生のこと忘れないよ。」

 「忘れるさ。そのうちに。・・・まさかと思うけど、麻里緒は

 遊ばれていた事に気付いていないのか?」

 先生は僕に冷たい視線を浴びせた。

 「・・・。」

 僕は急に裏切られた気分になった。悲しくなって、涙が

 溢れてきた。でも、先生は僕が目の前で泣いているのに、

 明らかにうんざりした顔で、こう言った。

 「麻里緒は俺の天使じゃなかった。俺は心の中でずっと

 天使のような純真な子供を探していた。麻里緒の顔を

 最初に見た時、天使がいたと思ったよ。でも、麻里緒は

 違っていた。天使のような美しい顔とは裏腹に心の中は

 ずるくて、汚い。人に媚びて見返りを求めるような堕天使は

 いらないんだ。麻里緒は親の愛が薄く育ったから、親に

 愛されたくてしかたないんだろ。俺は麻里緒の求めるような

 愛は与えられない。俺は麻里緒の父親じゃないからな。

 もちろん、母親の代わりにもなれない。身体を差し出す

 代わりに愛してくれっていうような子はいらないんだ。

 麻里緒の身体が穢れた時も俺と同じような人間に懐いていた

 からなんだろ?8歳で翼をもがれるように男に襲われた

 麻里緒は可哀想だと思うよ。でも、それは麻里緒に原因が

 あるんだ。誰でもいいから愛して欲しいなんて顔してる

 麻里緒がいけないんだ。俺は麻里緒と出会うまで一度も

 生徒に手を出した事はなかった。それなのに、ホイホイと

 ついてきて、何をされても嬉しそうにしている麻里緒を

 見ていたら、理想や妄想と現実の区別がつかなくなった。

 麻里緒のせいだ。俺は現実に戻るよ。茨城に帰ったら、

 好きでもない女と見合いして、結婚でもするさ。だから、

 もう麻里緒とは会わない。」

 「酷いよ・・・」

 「麻里緒は優しくしてくれる人なら誰でも良いんだよ。

 俺じゃなくてもいい。こんな関係は早く終わらせたほうが

 お互いの為なんだ。頼むから、もう、帰ってくれ。」

 泣きじゃくる僕に先生はそっとティッシュを渡して、涙を

 拭くように言った。そして、ベッドの傍に脱ぎ捨ててあった

 服を拾い集めて僕に着せてくれた。僕は先生に何を言って

 いいのか分からなくて、最後に何か言わなくちゃと思っても

 言葉が出てこなかった。先生はアパートの玄関まで僕を

 見送ると、

 「元気でな。麻里緒。さようなら。」

 と言って、パタンとドアを閉めた。ガチャっと鍵をかける音が

 悲しくて、僕は泣きながら独りで家に帰った。


                              (完)

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オリジナルBL小説「落日」(第2部)

オリジナルBL小説「落日」部屋




 先生と別れた数日後、僕は学校帰りに加藤君に誘われて、

 伊藤君と一緒に加藤君家に遊びに行った。加藤君家は

 豪邸だった。およそ百坪の土地を囲む高さ三メートルの

 外壁に守られた要塞のような3階建ての家だった。庭には

 獰猛そうな犬が2匹いた。

 「今日はみんな出かけてて、誰も家にいないんだ。」

 と加藤君は言って、玄関の鍵を開けた。玄関には高そうな

 壺に花が活けてあった。廊下にも高そうな絵が飾られていて、

 吹き抜けの螺旋階段を上って2階に行くと、長い廊下の両端に

 いくつものドアが見えた。

 「すっごいね。この家、全部で何部屋あるの?」

 「10部屋くらいかな。3階は事務所と倉庫になってるんだ。」

 「事務所?!」

 「事務所って言っても、組の看板掲げてる事務所は駅前の

 繁華街のビルにあるから。家を建て直す時に10LDK+

 事務所って設計にしたらしいんだけど、実際には組員が

 自宅に出入りするのをおふくろが嫌がって、使ってないんだ。」

 「へぇ~。」

 僕は加藤君が別世界の住人のような気がした。

 加藤君の部屋も別世界だった。壁一面の棚にプラモデルと

 ゲームソフトが並べてあって、ゲーム機が5台置いてあった。

 テレビ、ステレオ、ガラスのテーブル、学習机、ベッドと

 ウォークインクローゼットのある広い子供部屋だった。

 「すげぇ。想像以上の金持ちだぁ。」

 伊藤君も初めて加藤君の部屋に入ったのか、驚きの声を

 あげた。伊藤君の家は2DKのボロアパートだから、自分の

 部屋が伊藤君はなかった。小学校1、2年の頃は何度も

 遊びに行ったから知ってるけど、お母さんと二人暮らしだった。

 お父さんと離婚してから看護士のお母さんが一人で育てて

 くれているらしい。今でもお母さんと一緒に寝てるのかなって

 僕はふと思った。

 「まあ、座れよ。ゲームでもやるか?あ、そうだ。飲み物と

 食べ物とってくるから、ちょっと待ってろ。」

 と加藤君が言った。僕と伊藤君は部屋に二人きりになった。

 僕は少しドキドキした。先生にフラれたばかりだっていうのに

 不謹慎な気もするけど、僕は伊藤君の事が好きだった。

 初恋の人って言うのかな。小学校入学に合わせて引っ越して

 きた僕は知っている子が誰もいなくて不安だった。そんな

 僕に伊藤君は笑顔で話しかけてきてくれた。僕達はすぐに

 仲良くなって、毎日、学校から帰ると、家の近所の神社で

 よく遊んでた。あの忌まわしい神社は僕の家から徒歩2分。

 忘れたくても忘れられないほど近い。あの日、伊藤君に遊ぶ

 約束をすっぽかされたことを今でも僕は根に持っている。

 でも、それとこれとは話が別で、やっぱり僕は伊藤君が

 好きだ。何を話そう。緊張すると僕は何も喋れなくなる。

 「お待たせ。いいもの持ってきたぜ。」

 会話する暇もなく、加藤君があっという間に戻ってきた。

                       
 
 「ビール飲むか?」

 加藤君が持ってきたのはお酒だった。僕はお酒なんか

 飲んだことなかった。

 「遠慮しとくよ。」

 僕はお酒を断った。加藤君は少し残念そうな顔をしたけど、

 すぐにニヤッと笑って

 「伊藤は飲むだろ?」

 と聞いた。しかし、伊藤君はきっぱりと言った。

 「飲まないよ。俺、酒なんて飲んだことねぇし・・・

 加藤家は酒飲んでいいのか?」

 「いいってことないけどさ・・・ビールの2、3本消えたって

 誰も気付かないからな。たまに隠れて飲んでるんだ。」

 「へぇ。」

 「みんな飲まないなら、俺一人で飲む。」

 加藤君はちょっとムッとした顔をして、缶ビールを開けた。

 加藤君がビールを飲むのを僕らはじっと見ていた。

 「やっぱり麻里緒も飲め!」

 と加藤君は言って、僕に無理やり飲ませた。

 「へへ・・・間接キスだ。」

 加藤君は酔っぱらっているのか嬉しそうに笑った。

 「麻里緒。キスってしたことある?あるよな。」

 加藤君が僕の顔を覗き込んで聞いてきた。僕が返答に

 困って、黙っていると、加藤君が僕にキスしてきた。一瞬、

 唇に触れただけのキスだったけど、僕はびっくりして逃げた。

 「な、何するんだよ!」

 「俺、麻里緒のことが好きなんだ。だから、キスさせろよ。」

 加藤君が僕を床に押し倒した。僕はジタバタ抵抗して

 「嫌だ!」

 と言ったけど、加藤君の力に敵うわけもなく、唇を奪われた。

 がむしゃらに唇を押し当てる加藤君のせいで息苦しくなって、

 何か言おうと口を開いたら、加藤君の舌が僕の口の中に

 入って来た。僕の舌に加藤君は舌を絡ませて、吸ったり

 舐めたりした。襲われると思って、僕が泣きそうになると、

 加藤君は唇を離してくれた。加藤君は僕から離れると、

 「へへ・・・キス。どうだった?俺、上手いだろ?」

 と満足そうに言った。加藤君は先生よりもキスが下手だった。

 僕が黙っていると、加藤君は

 「もし、伊藤と俺とどっち