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秘密部屋

秘密「お見舞い」

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 太陽が沈みかけて空を赤く染める頃、高級マンションのドアの

 前に岡部は立っていた。

 両手にスーパーの袋を提げて、突然押しかけてよかったものかと

 今更ながら気にしていた。

 薪が倒れて高熱を出したと聞いて、仕事の帰りにお見舞いに来た

 のだが、インターホン越しの薪の声を聞いてから、すでに3分ほど

 待たされている。

 やはり迷惑だったかと悩み、差し入れだけして帰ろうかと思った

 瞬間、ドアが開いた。

 物憂げな表情で玄関に出てきた薪はパジャマの上に白いシルクの

 ガウンを羽織っていた。

 岡部は気恥ずかしくなって薪から目をそらして、こう言った。

 「あの、これ、差し入れです。食べてください。失礼します。」

 「なんだ。もう帰るのか。いいからあがれよ。」

 「えっ、いいんですか?」

 「見舞いに来たんだろ。入れ。」

 「じゃぁ、すみません。おじゃまします。」

 岡部がペコペコとお辞儀をしながら入ると、薪は玄関に鍵をかけて、

 黙ってリビングの奥のソファーに腰掛けた。

 部屋は白と黒のインテリアで統一されていて、きちんと整理整頓

 されて片付いていた。しかし、装飾品はおろか写真すら飾られて

 いない殺風景な部屋だった。

 岡部はまるで人が住んでいないモデルルームのような部屋だと

 思った。

 「薪さんにお粥でもお作りしようかと思って、いろいろ買って来た

 んですけど・・・あの、大丈夫ですか?」

 薪がソファーにもたれてけだるそうにじっと黙って岡部を見上げて

 いた。しかも聞いているのかいないのか分からないような感じで

 焦点の合わない目で岡部を見ている。

 「薪さん本当に大丈夫ですか?」

 岡部は心配して、薪の額に手を当てるとひどく熱かった。

 「ひどい熱があるじゃないですか。寝ていないと・・・」

 「39度くらい大丈夫だ。」

 薪は軽く振り払うそぶりをみせたが、岡部は薪の背中に腕をまわし

 寝室に連れて行った。

 そして、窓際に置かれているセミダブルのベッドに寝かせると、

 「ちゃんと寝てなきゃダメですよ。今お粥をつくってきますから、

 寝ててください。」

 と言って、台所へ向かった。

 キッチンも掃除が行き届いていて清潔に保たれていたが、

 岡部は冷蔵庫を開けて唖然とした。

 中にはミネラルウォーターとビールしか入っていなかったのだ。

 仕事が忙しいから料理なんてするわけがないと思っていたが、

 まさかここまでとは・・・

 岡部は食器や鍋はあるのかとそれすらも心配になってキッチンの

 棚や引き出しを開けてみたら、ちゃんと揃ってはいたが、かわりに

 ビタミン剤やらサプリメントの瓶がごろごろ出てきて、睡眠薬まで

 見つけてしまった。

 夜、眠れないと言っていたが、こんなものを飲んでいたのか・・・

 岡部は目頭が熱くなった。

 もともと食が細くて生活感のない人だったが、実際に殺風景な部屋

 と食料のないキッチンを見て、岡部は何があの人をこうさせたのか

 と考えるとどうしようもなく切なくなった。

 岡部はかろうじて流し台の下にあった調味料でお粥を作り、

 薪の所へ持っていった。

 「薪さん、お粥ができましたよ。」

 声をかけたが、薪は眠っていた。

 いつの間にか太陽は沈み、月が低い空に浮かんでいた。

 窓から差し込むわずかな光のみの薄暗がりの部屋には

 静寂だけが漂っていた。
                         

 岡部は薪の眠りをさまたげないように部屋の小さな照明をつけて、

 サイドボードに作ってきたお粥を置いた。

 そして、薪の寝顔をそっとのぞきこんだ。

 薪は熱があるためか苦しそうに眉をしかめて苦悶の表情を浮かべ

 ていた。

 うっすらと開いた唇からは甘い吐息が漏れている。

 寝苦しいのか着ていたガウンの前がはだけてシルクのパジャマの

 隙間から鎖骨が見えていた。

 薪の首は雪のように白く、片手でつかめそうなほど細かった。

 岡部は吸い寄せられるように寝ている薪の顔に近づいた。

 するとその時、薪の閉じた瞳からひとしずくの涙があふれて、

 「う~ん。う~ん。鈴木・・・」

 薪は寝言を言ったかと思うと岡部にしがみついてきた。

 「薪さん。ど、どうしたんですか。起きて下さい。」

 岡部は慌てて薪に言った。

 「鈴木」

 耳元で薪がつぶやく。

 その悲しい声に反応して岡部は薪を抱きしめた。

 薪の流した涙が頬を伝って岡部の頬を濡らした。

 岡部は薪の髪を撫でながら、優しく引き離して顔を見つめると、

 薪は寝ながら泣いていたのだった。

 「う~ん・・・むにゃむにゃ・・・」

 なおも寝言を言う薪に岡部はため息をついて独り言を言った。

 「薪さん、まだ鈴木が忘れられないんですか。俺じゃダメですか。」

 その時、薪の大きな瞳が開いた。突然、薪の目が覚めたので、

 岡部は動揺した。

 薪は不審そうに岡部をじっと見つめていた。

 独り言を聞かれたかもしれないと思って岡部は真っ赤な顔に

 なってしまった。

 「どれだけ寝てた?何か喋ったか?」

 薪は岡部に尋ねた。

 薪は寝言で何か言わなかったか心配しているようだった。

 「いいえ。何も。」

 岡部は薪を安心させる為に嘘をついた。

 「お粥ができたんで召し上がってください。」

 「うん。」

 「食べさせてさしあげましょうか?」

 「うん。」

 てっきり断られるかと思ったら、素直にうなずかれて、

 岡部はまた真っ赤になった。

 「自分で聞いておいて何を赤くなってるんだ?」

 薪は意地悪く言うと、微かに笑った。

 からかうつもりがからかわれたと知って岡部も笑った。

 「おまえがいてくれて良かったよ。」

 薪は岡部の手をとって言った。

 「薪さん。」

 岡部は薪の手を握りしめて真顔になった。

 「食べさせてくれ。」

 薪も今度は真剣な顔で言った。

 岡部は一瞬、躊躇したが、次の瞬間、魔法にかけられた

 かのようにお粥をスプーンですくっていた。

 岡部がおそるおそる薪の口元にスプーンを運んでいくと、

 薪は大きな瞳をさらに見開いて、スプーンをくわえた。

 そして、ごくりとお粥を飲み込んだ後、媚びるでもなく

 また口を開けた。

 岡部は薪にお粥を食べさせながら、これは何かの儀式の

 ような錯覚に陥った。

 上司にお粥を食べさせているだけなのに、信頼関係以上の

 ものが築けた気がするのは何故だろう・・・

 だがそれはつかの間の幻想に過ぎないことを岡部は悟っていた。

 熱が下がれば、いつもの冷徹な上司に戻るに決まっている。

 この人はただ淋しかっただけなのかもしれない・・・

 赤ん坊のように無心でお粥を食べている薪を見て岡部は思った。

 薪の美しさが男を狂わせることを本人は自覚していない。

 窓から差し込む月の光は二人を照らし、空に浮かぶ月は

 嘲笑うかのように二人を見ていた。
                  
                          (完)




   秘密「お見舞い」(エピローグ)


  僕は鈴木の夢を見る。

  銃口をこめかみにあてて泣いている鈴木の夢ばかり見る。

  「やめろ。鈴木。」

  僕の声は虚しく響き、鈴木には聞こえない。

  目が覚めるといつも僕は泣いている。

  僕はもう何年もこんな夢を見続けている。

  これはきっと僕にあたえられた罰なのだと思う。

  鈴木を殺した罰なのだ。

  僕はもっと自分に罰をあたえなければならないと思う時がある。

  鈴木の夢を見た日は食欲がなくて、

   朝から晩まで何も食べずにいることもある。

  眠るのが恐くて徹夜で仕事をしたりしたこともある。

  休日も遊びに行かないし、特に贅沢したいとも思わなくなった。

  死んだように生きることで自分自身に罰をあたえているのかも

  しれない。

  でも時々、淋しくてどうしようもなくなる時がある。

  39度の熱を出した時もそうだった。

  岡部が見舞いに来てくれた時、うれしかった。

  つい、甘えてしまった。

  朝から何も食べてなくて、このままじゃ死ぬんじゃないかと

  思うくらいに体が弱っていたので、

  岡部がつくったお粥をスプーンで食べさせてもらった。

  幼子のように口を開けて美味しいと食べた自分に僕は

  後でゾッとした。

  熱があったとはいえ、なんてことをしてしまったんだと後悔した。

  結局、岡部は昨日の夜、徹夜で看病してくれたのだが・・・

  熱が下がった翌朝、岡部になんて言ったらいいのかわからない。

  看病に疲れたのか僕の隣でいびきをかいて寝ている岡部を見て

  僕は途方にくれていた。

                             (完)


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